10分で読めるわたモテSS   作:umadura

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モテないし三人の関係

 

 

 

 

『アニメ化企画再始動! 各ゲーム会社が協力!』

 

 あっ……この広告のマンガ、出版社が家宅捜索されて作者が書類送検されたやつだ。

 あの騒動でポシャったのかと思ったけど結局アニメ化するのか。

 

 にしても……どうなんだ?

 こういう、作者を守れずに書類送検させちゃう出版社って。

 

 私だったら絶対こんな所で仕事したくないな……

 仮に人気出てアニメ化しても、ちょっとでも人気落ちたらガッツリ部数絞られそうだし。

 そのあとテコ入れと称して変なコラボの仕事とか持って来そうだし。

 

 でも案外、そういうのが復調のきっかけになって人気再燃するとかもありそうだから恐いな。

 もしそうなったら、仕事持ってきた編集とかからすんごいドヤ顔で自慢されるんだろな……

 想像しただけで寒気がする。

 

 まあ、私はマンガ家になる気はないが……今の時代いろいろ大変そうだし。

 

 せっかくだし買っていくか、このマンガ。

 騒動前に読んだっきりだったし、この機会に全巻揃えとこう。

 また何かあって絶版になったら入手困難になるしな……

 

 ん?

 なんか最初の方の巻、前に見たコミックスと微妙に違うような……

 ああ、色んな箇所を修正しないとダメってなって、ついでに一稼ぎする為に新装版出したのか。

 

 なんか一気に購入意欲が萎えたんだが……最新巻だけ買って残りはブックオブで買うか?

 でもそういう時に限って抜けがあるんだよな。

 もし真ん中くらいの巻だけ売ってないとかだったら完全に読む気失せるぞ。

 

 仕方ないな……出所祝いに全巻購入してやるか。

 色々あったとはいえ格ゲーを題材にしてるマンガは貴重だしな。

 

 今日はおじいちゃんのとこにみんなで行くから、読むのは明日だな。

 学校に持って行くか。

 

 そういえば2年になりたての頃、マンガで釣って友達作ろう作戦みたいなのやったっけ。

 今にして思えば、あんなの上手くいく筈なかったんだけど――――

 

 

 

 

「おはよークロ。あっ、マンガ読んでるー」

 

 ……なんかアッサリ釣れたんだが。

 当時の私の苦悩と屈辱はなんだったんだ……

 

「それ何?」

 

「ん……昨日買ったマンガ。作者が書類送検されてたやつ」

 

「あー、あれね。アニメ結局やるんだって?」

 

「そう。前にも読んでたんだけど途中で止めてたから、この機会に読み直してる最中」

 

「ふーん。面白い?」

 

「面白いけど、なんか思ってたのと違ってた。最初の方はゲームの話だったけど、後半は三角関係の恋愛話がメインになってる」

 

「え? ドロドロ系?」

 

「でろでろじゃないけど」

 

「ドロドロってちゃんと言ったよね? でも意外、そういうマンガってイメージなかったから」

 

 ネモも何気にチェックくらいはしてたのか。

 まあアニメ化するレベルの人気作だし、声優志望なら当たり前か。

 

「なんかマンガとかアニメの三角関係って、大体キャラ配置が決まってるよな」

 

「そう? 例えば?」

 

「男は優柔不断で鈍感、あと性に対して淡白。女Aは優秀でミステリアス、それでいて挑発的だけど実は純情で根は良いやつ。女Bは元気がいいか気立てが良くて、でも寂しがり屋で男の気を引こうとして暴走する」

 

「で、女Bは負けフラグ立ちまくり?」

 

「そんな感じかな。そして大抵、終盤にはギスギスして全員好感度が落ちる」

 

「あー、それはあるねー。三角関係あるあるかも」

 

 まあこれは男1、女2のパターンだな。

 男2女1の場合は金持ちでなんでもできて偶に弱音吐く男とそいつが何故か好きになる普通の女、そしてその当て馬になるそこそこなレベルの男ってケースが多い。

 少女マンガなんか大抵そうだろ。

 

 多分あのクズ後輩もそういう関係を天然で築いてるんだろな。

 今度武勇伝を聞かせて貰おう。

 

「あと高確率で解散か活動停止か放牧する」

 

「それは三角関係じゃなくて三人組のミュージシャンだよね? どっちかとくっついて一人余って居場所なくなるパターンじゃん」

 

「でもそれも一種の三角関係だろ?」

 

「んー……言われてみればそうかも」

 

「全員同性だったら、そういう面倒もないんだろうけどな」

 

「……」

 

 何故黙る……?

 

「クロってさ、ぼっちだった割にこういうの結構スラスラ出て来るよね。あっ、おはよーあーちゃん」

 

 ぼっちだったからこういう事ばっかり考えてたとも言えるがな……

 まあ、ぼっちだったのは1年半くらいで、それ以前はゆうちゃんがいたし……ゆうちゃんとこういう話した事ないけど。

 

 そう言えば、中二の時はコオロギもいたんだったな。暫く存在忘れてたが……

 あの頃は私も三人組だったんだよな。

 私とゆうちゃんがカップル同然だったから、自然とあいつは居場所なくなったんだろな。

 

 ……よく考えたら、私も何気に三人組で活動する事が多いんだよな。

 今も田村さんとガチレズさん(あの2人)とよくいるし。

 

 あ!?

 

 ヤバいな……どう考えてもカップルなのはあいつらだよな……

 このままだと私ハブられる?

 またぼっちになるのはまだしも、コオロギと同じ顛末になるのは耐えられんぞ。

 

 それだけでもキツいのに、あのボケから『うわー……あいつ高3にもなってハブられたのか。終わってんな』とか思われたら最悪だぞ……

 同じクラスなんだから、私が田村さんとガチレズさん(あの2人)とお昼食べたり帰ったりしてるのは知ってるだろうし、急にそういうのしなくなったら確実にバレる。

 絶対にそれだけは避けたい。

 

 どうする……?

 今更田村さんとガチレズさん(あの2人)に媚び売ったりは出来ないし、したくもないし……

 

 こうなったら、新しい三角関係の在り方を構築するしかないか。

 

 

 

 

 何があっても決して壊れない強固な絆を持った三人組とかいれば参考になるんだが……

 

「なんか今ネズミーのパレード全国でやってっけど、茉咲あーいうの好きなんだよな? 行ったりすんの?」

 

「行きたくても行けねぇよ。九州とか東北ばっかだし」

 

「全部田舎じゃねーか。ネズミーって田舎モンがターゲットなん?」

 

「千葉にあるくらいだからそうなんじゃね?」

 

 ん? 廊下で話してるのはヤンキー軍団か?

 修学旅行とか遠足でも駄弁ってたし、あの三人で普段つるんでるんだな。

 

 ヤンキーの三角関係ってどんななんだ?

 ちょっと観察してみるか……

 

「でもよー、あんなパレードって何が面白ぇんだ? ハニウのやつなんて10万人集まったとか言ってたけどよ、ただ手ぇ振ってゆっくり進んでるだけじゃねーか」

 

「あ!? バカかテメーは!? あんなのとネズミーのパレードを一緒にすんじゃねぇよ!」

 

 なんか険悪な雰囲気になってきたぞ。

 ヤンキーが長髪ヤンキーをぶん殴って修羅場になるのか……?

 

「いちいちケンカすんなよ。麗奈だって別にネズミーバカにしてるワケじゃねーよな?」

 

「たりめーだろ」

 

「……だったらいいけどよ」

 

 修羅場は回避か。つまらん。

 あのデカ目ヤンキーがバランス取る調整役っぽいな。

 巨乳ってバカばっかだと思ってたが……意外とそうでもないのか?

 

 恋愛の絡まない三人組にはそういう役回りのやつ結構いるよな。黒い三○星とか……

 私もあのポジションを確立すればハブられずに済むかも。

 調整役って何事にも沈着冷静に対応できる人間の役目だし、それなら私が適任だろ。

 

 例えば、田村さんとガチレズさん(あの2人)がちょっとした言い合いになった時、さりげない一言でクールダウンさせる役とか。

 

『なんでゆりは最近いつもそんなに無表情なの? 昔はそこまでじゃなかったでしょ?』

 

『真子だって昔はそんな八方美人じゃなかったじゃない』

 

『まあまあ落ち着いて。感情を表に出さなくなるのも、周りに気を使っていい顔をするのも、大人の階段を上ってる証拠だよ』

 

『黒木さん……!』『黒木さん……』

 

 いける……!

 そういうポジションになれば、私の存在価値は約束されたも同然……!

 あの三人、中々良い事を教えてくれたな――――

 

「っつーか逆にスゲーよネズミーキャラ(あいつら)。クソ暑い中アレやるのヤベーわ。あいつらの中身ってバイトのおっさんだろ? いい年して……」

 

「おら――――!!」

 

「ぐえ!?」

 

 なんかいつの間にか殴り合ってるんだが……

 幾ら三角関係って言っても尖り過ぎだろ。

 しかも見慣れた風景なのか、廊下の周りの連中全然気に留めようともしてないし。

 

 やっぱヤンキーはダメだ。

 もっと健全な三人組を参考にしよう。

 

「でさー、結局小陽これからもうちらと昼食べるの? ハブられたんでしょ?」

 

 あれは……隣のクラスの三人組か。

 

「そうじゃない? 本人は『たまたまいつも一緒に食べてる子が二人とも休んだだけだし』とか言ってたけど、あれ絶対嘘だよね」

 

「ね、ね、じゃ次なんて言って来ると思う?」

 

「『一緒に食べてた子達がさー、前にこっちで食べたって言ったら私に遠慮するようになったんだよねー。つまんないから今日からこっちで一緒に食べさせてー』とかじゃん?」

 

「あるある!」

 

「じゃあさ、『なんか前から合わないっていうか、ノリ悪いやつらだったからーもういいかなって』みたいなのは?」

 

「それもあるー」

 

「そんでめっちゃその子たちの悪口言う」

 

「あはは! めっちゃ言う! お前何様!?ってくらい絶対言う!」

 

 ……なんかさっきから陰口しか言ってないんだが。

 女が三人集まると悪口大会が始まるってアナログ時代の再放送のドラマで言ってたけど、あんな感じなんだな……

 

 でも案外、そういう関係って続くって言うよな。

 結局人間って他人の悪口が一番面白いから、居心地が良いとかなんとか。

 

 だったら、私達もそういう関係になったら……

 

『吉田さんって面接とか就活の時、髪黒く染めるのかな? 想像したら違和感しかないよね。えっ誰? って感じ』

 

『そ、そう?』

 

『さあ……』

 

 ……ダメだ、あの二人がノってくる未来が見えない。

 そもそも私の命が危ない。

 

 あういう感じの三人組は遠い存在って感じだし、参考にはならんな。

 所詮は他人、自分と重ね合わせても無理があるか……

 

 いつまでも廊下に突っ立ってても仕方ないし、教室に戻るか――――

 

「黒木さん。こんなところで何してるの?」

 

 ん……? ああ、田村さん(張本人)か。

 お前達との付き合い方を考えてたんだよ、とは言えないしな……

 

「別に何も。あ、さっき向こうでヤン吉田さんが殴り合いのケンカしてるの見たよ」

 

「え?」

 

 しまった……ついヤンキーって言おうとしたのを無理矢理回避しようとしたら不敗の魔術師みたいになってしまった。

 

「止めなかったの?」

 

「へ? いや、いつもの三人組だったし……」

 

 つーかヤン吉田の件無視かよ!

 もしかして私が日頃から心の中でヤンキー呼びしてるのバレてるのか……?

 

「えっと、付き合い長そうだし、あの三人にとって殴り合いはじゃれ合いっていうかコミュニケーションなんだよ」

 

「ならいいけど……」

 

「吉田さんだったら今さっき笑って友達と肩組んでたよー」

 

 今度はネモか。

 にしても仲直りの仕方がいちいち古いな……もはや伝統芸能じゃねーか。

 

「クロ、さっき話したマンガだけど、私に貸すのってアリ?」

 

「まだ私も全部読んでないから、少し待てるならいいけど」

 

「アニメ始まってからでいいよ。アニメで観た後に原作でもう一回その話読んでみたいだけだから」

 

 声優がどういう演技してるのか、原作を見ながら分析とかするのか?

 意識高いなネモ。

 

「……」

 

「あ。ごめんね田村さん、話の途中に割り込んで。それじゃ」

 

「待って」

 

 ん?

 なんか田村さん(こいつ)の周りに不穏な空気が……

 

「私はもう話し終わったから。二人で話していいよ」

 

「えっあっそう? だったら田村さんも……」

 

「私はいい。アニメの話はわからないし」

 

「……」 

 

 え、何この禍々しい空気? なんでこんな事になってんの?

 

「じゃ、じゃあアニメ以外の話しよっか! ねっ、クロ!」

 

「いや……そもそもお前、人前でアニメの話とか嫌いじゃなかったか?」

 

「……」

 

 ネモの周りの空気まで穢れていく……!?

 どういう状況……?

 私何か変な事言ったか?

 

「い、いいじゃんもうそれは。三人で話そうよ。ね? そういえば田村さん、この前の遠足の時――――」

 

「わざわざ私が入れるような話題にしなくてもいいけど」

 

 それ言うか……?

 私も味わったし気持ちはわかるけど、言ったらおしまいのやつだろそれ……

 

「……(`^▽^´;)」

 

 さすがのネモも呆気にとられてるな。

 他人を寄せ付けない事にかけては天才的だからな、田村さん(こいつ)は。

 

 仕方ない、フォロー入れとくか……

 

「悪気はないんだよきっと。ほら、そういう気遣いってアレだから」

 

「アレって?」

 

 さすがに『自分がそうさせちゃってる感が強くて負担になる。疲れる』って正直には言えないな……

 

「なんか作ってるみたいで微妙な気持ちになるっていうか」

 

「え!?」

 

 あ、効いてる……

 ネモを傷付けるつもりはなかったんだが……

 

「黒木さん、作ってるは言い過ぎだと思う」

 

 なんでフォローした相手から責められてるの……!?

 

「私は別にそこまでは思ってないから」

 

「そ、そう? 本当に?」

 

「うん。それじゃ私教室戻るね」

 

「あっうん」

 

 結局最後までネモに主導権与えなかったな……田村さん(あいつ)

 ネモにとっては天敵かもしれないな。

 

「……ねえクロ」

 

「ん?」

 

「私、今まで田村さんのこと、クロの友達だしどんな子か興味あるから絡んでみようとか思ってたけど……」

 

 撤退宣言でもするのか?

 まあ相性の悪い相手と絡んでも何も良い事ないしな……

 

「なんかもう、普通にあの子に負けたくないって気持ちが芽生えてきてるかも」

 

「は……? 負け……って、何が?」

 

「わかんない。けどなんか今日は負けた気がする……なんとなく。でも次は負けないよ」

 

 いや、だから何が?

 言ってることがサッパリわからん……

 

「じゃ、クロ。マンガのこと覚えといてね」

 

 なんか心なしか、背中にやる気が漲ってるような……

 そもそも何の勝敗なんだ……会話の主導権(マウント)争いの話なのか?

 

 ま、私には関係ないか。

 私も教室に戻ろう――――

 

「おい」

 

 今度はヤンキーかよ……一体なんなんだ?

 

「さっきのお前らのケンカ見てたけどよ、なんであんなギスギスしてんだ?」

 

「へ? ケンカなんてしてないけど」

 

 してたのはお前らだろ……?

 

「違うのか? ならいいけどよ、周りめちゃくちゃ引いてたぞ」

 

 え?

 そう言われてみれば……廊下の周りの連中が心なしか白い目でこっちを見てるような……

 声を荒げてさえいないのに、なんでこんな注目集めてるんだ……?

 

 しかもなんかヒソヒソと女子の声が聞こえるような……

 

「ねーさっきの見た?」

「見た見た。恐かったー。女の戦いってやつ?」

「例のあの人、二人をギスギスさせといて自分はしれっとしてるんだよ。エグくない?」

 

 え!?

 なんで私の好感度まで落ちてるの……!?

 呪い? これ三角関係の呪いか何か?

 

 やっぱ三人組ってクソだわ……

 もうこの際ぼっちに戻った方が――――

 

 

「ねーちょっと聞いてよ。うちのクラスの岡田、自分から話題振っといて私が乗ったら無視するんだよ。あり得なくない? しかも髪型くそダサいし、面接あれで行ったらソッコー落ちるよね」

 

「ほらねー?」

「うんうん」

「マジうける」

 

「で、でしょー? やっぱここが一番居心地良いなーみんな気が合うし。アハハ」

 

 

 逃げ場なし……!?

 

 

 

 

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