10分で読めるわたモテSS   作:umadura

27 / 31
このお話は、26話「モテないし髪型を変えてみる」をゆりちゃんの視点で書いた番外編です。
先に「モテないし髪型を変えてみる」を読んでから、こちらにもお目通し頂ければ幸いです。


モテないし髪型を変えてみる(裏側)

 

 

 

 

「おはよ、ゆり」

 

「おはよ。黒木さんまだ来てない?」

 

「まだみたい。最近後輩の子と仲良くなったみたいだし、その子と話してるのかも」

 

「……」

 

 三年になってから、黒木さんの交友関係が随分と広くなってる気がする。

 それは別にいいんだけど……黒木さんがここまで社交的なのは意外だったな。

 修学旅行の時なんか、あんなに不安そうに私や吉田さんと接してたのに。

 

 でも、本当は元々そういう子だったのかもしれない。

 私や真子と知り合うずっと前から成瀬さんみたいな感じの良い子と仲良くしてるし、学食で暴れてたあの人……小宮山さんだったっけ、あの人とも息が合ってたし。

 いろんなタイプの子と仲良くできる人だったんだ。

 

 そういうところは私とは違う。

 私は黒木さんといると無理に話さなくていいって思ってたけど、向こうはそう思ってなかったのかもしれないな……

 

「……ゆり? どうしたの?」

 

「なんでもない。ただ、黒木さんが後輩と仲良くしてるのが意外だなって」

 

「そうだね。部活入ってないと後輩との接点なんてまずないし。でも黒木さんって凄く気遣いできる人だから、後輩に慕われても違和感はないかな」

 

 私が二年の時に風邪で休んだ日以来、真子は黒木さんを誤解してる……

 と思ってたけど、本当は真子の方が正しいんじゃないかって最近思い始めた。

 

 根元さんはともかく、加藤さんにあれだけ積極的に話し掛けられてるんだから、人を惹き付ける何かがあるんだと思う。

 ……遠足の時とかあんな露骨に媚び売ってたのに嫌がられないって、そういうことだよね、絶対。

 

 一回本人に聞いてみたいけど、最近そういう話する機会もあんまりない。

 黒木さんの周りにはいつも誰かがいる。

 二年の頃は、そんなことまずなかったのに……

 

「ゆり! 右手! プリントくしゃくしゃになってる!」

 

「あ」

 

 なんとなく、黒木さんが遠くに行ってしまった気がする。

 このままだと、黒木さんの中での私がこのプリントみたいにどんどん小さくなっていくような……

 

「私も黒木さんみたいに、もう少し社交的になった方がいいのかな……」

 

「え?」

 

「……なんでもない」

 

 真子は多分、私より私のことをわかってる。

 その真子が今『そんなの無理に決まってるよ、なんて顔に出したらゆりが傷付くから我慢しないと』って顔をしてる時点で多分無理。

 

 吉田さんも、いつも話してる人達が他にいるし、毎日一緒って訳にはいかない。

 せめてお昼を一緒に……って思っても、前みたいに大所帯になったら居心地悪くなってあんまり楽しくない。

 

「あ、そろそろ授業の準備しておかないと。ゆり、宿題ちゃんとやった?」

 

「うん」

 

「それじゃ」

 

 真子こそ、誰にでも気遣いができる人。付き合いの長い私にも。

 そんな真子とこれだけ長く友達やってるのに、それを見習おうって気にならないのは、私の中で根本的に協調性が欠けてるから……なのかな。

 

 私と真子と、黒木さんと吉田さん。

 みんなバラバラでまとまりがなくて、共通の話題も少ないけど、誰にも気を使わなくていいし、誰もズカズカと入って来ない。

 協調性がなくても一緒にいられるし、一緒にいて楽しい。

 

 でも……私以外の三人は、私以外にも仲良くしてる人がいる。

 多分、私だけが協調性のない人間。

 黒木さんは私と同じだって思ってたんだけどな……

 

 もしこのまま黒木さんの中での私が居場所を失ったら、私自身の居場所がなくなるかもしれない。

 多分そうなる。

 それだけは、そうならないで欲しい。

 

 ……音楽聴こ。

 気分転換しないと。

 

 音楽聴いてると、誰も話し掛けて来ないって思えるから楽だけど……結局そういうところがダメなのかな。

 けどこれも今更変えられないし……

 

「いや……別になんでもないんだけど」

 

 今のは……黒木さんの声?

 あの方向だと、会話してるのは根元さんかな。

 

「そんな言われ方したら余計気になるじゃん。言ってよ」

 

 やっぱり。

 何話してるんだろ。

 

「その髪型が一番オタくさい。っていうかアニメキャラっぽい」

 

 アニメキャラっぽい髪型って何……?

 黒木さんはたまによくわからないこと言うけど、そっち方面は本当に私にはわからない。

 

「髪型変えよっかな」

 

 根元さんには通じてるっぽい。

 これも協調性の成せる(わざ)

 根元さんって声優目指してるって言ってたし、そっちに会話を寄せてるのかな……

 

「クロだってずっとその髪型だよね? 何か意識してるのとかある?」 

 

「いや別にないけど。先に言っとくけどクロだけに黒夫人とかでもないから」

 

 これも全然わからない……

 でも根元さんには通じるんだろな。

 

 もしかして黒木さんって、私と話してる時は私に凄く気を使ってて、ずっと本意じゃない会話をし続けてたのかも……

 

 やっぱり真子の方が正しかったんだ。

 黒木さんは私なんかといるより……

 

「黒夫人? 何それ」

 

 通じてなかった。

 

 やっぱり黒木さんってちょっとバカなだけなのかな……

 

「でも、友達がいきなり髪型変えて来たらちょっとドキってするよね」

 

 髪型……

 私が明日、いつもと違う髪型で来たら、黒木さんはドキッってするのかな。

 話題の提供にもなるし、やってみようかな。

 

 キーンコーンカーンコーン>

 

 あ、音楽消さないと。

 続きは放課後考えよ……

 

 

 

 

「620円になります」

 

 ファッション雑誌……前に買ったのいつだったっけ。

 そんなに髪長くないし、切るのはちょっと抵抗あるから、できる範囲は限られるけど……

 

 やっぱり黒木さんがリアクションしやすい髪型の方がいいのかな。

 でも奇抜なのにすると先生から怒られそうだし……

 

『今年の流行はルーズなお団子ヘア!』

 

 あ、これ同じクラスの……岡田さんだっけ、あの人と同じだ。

 これと同じ髪型にしたら、黒木さん驚くかな?

 しないけど。

 

 でも、身近にお手本がいる方が変えやすいかも。

 吉田さんみたいに金髪にしてみよっかな。

 染めて結ばないだけだから難しくなさそうだし。

 

 でも金髪ってどうすればいいのかな。

 帰ってからLINEで吉田さんに聞いてみよ。

 

 

 

 

 

 [やめとけ。ぜってー似わねーし元に戻すのも時間かかるし]

 

 そうなんだ……

 染めたことないからわからないけど、大変なのかな。

 

 [つーかあれだ] [メシくらいならいつでも一緒に食うからあんま思い詰めるなよな]

 

 なんか心配されてる……

 嬉しいけど、私が望んでたのはこういうことじゃない。

 

 [ありがと。私は大丈夫だから]

 

 [ならいいけどよ] [なんかあったら私とか田中に相談しろよ]

 

 [うん]

 

 黒木さんは入ってないんだ……

 やっぱり黒木さんって、人によって印象とか評価が随分違うみたい。

 変な人。

 

 そんな黒木さんがドキッってするような髪型……

 金髪は無理みたいだし、奇抜過ぎるのも良くないし……難しい。

 

 このゆるふわウェーブっていうのはどうかな。

 週末ヘアサロン行って……でも今月ちょっと苦しいし無理かも。

 

 真ん中で分けておでこを出してみるのは……あんまり代わり映えしない。

 結ぶ場所を変えて、もっと上の方に……もっと代わり映えしない。

 いっそハリウッド女優みたいにオールバックに……全然似合わない。誰これ。

 

 はあ……一旦横になろ。

 

 根元さんとか加藤さんとか、あの後輩の子とか……どうすれば黒木さんの中であの人達より大きくなれるのかな。

 今までこんな経験ないからわからない。

 

 なんか……もう疲れた。

 どうすれば……黒木さん……を……………

 

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 ――――――――

 

 ――――

 

 ――

 

 

 

 

「……はっ……はっ」

 

 目覚ましかける前に寝るなんて……

 完全にダメなら諦めるんだけど、走れば間に合うギリギリの時間。

 朝ごはんも食べられなくて身支度も最小限しかできなかったけど……

 

「……ふぅ」

 

 どうにか間に合った。

 もうベッドの上で考え事しないようにしないと……

 

 ……教室の前、騒がしいな。

 

 あれ? 真子もいる。

 根本さんと加藤さんも。

 もしかして、また黒木さんを囲んで何かしてるのかな。

 

 それに、あれは……内さん?

 なんで教室覗いてるんだろ。

 誰か声かけたい人がいるのかな?

 

 橋渡ししてもいいけど……前に電車で声かけた時変な感じになったし、止めとこ。

 こういうところが協調性ないのかもしれないけど。

 

 教室の中には……あ、黒木さんいた。

 だったらあれ、なんだったんだろ。

 

 別になんでもいいか。黒木さん絡みじゃないんだったら。

 

「黒木さん。おはよ」

 

「あっ、おは……」

 

 ……?

 どうしたのかな、急に固まって。

 

「……」

 

 全然動かなくなった。

 やっぱり……距離置かれてるのかな。

 黒木さんの中で私の存在は――――

 

「ふぅ……あ、ゆり。おはよ」

 

「……真子」

 

「どうしたの、元気ない……って、ゆり! 一緒にトイレ行こ!」

 

「え? でも……」

 

「早く!」

 

 どうしたんだろ……何か口元に付いてるとか?

 でも朝ごはん食べてないし……

 

「ほら鏡。もしかして今日、寝坊した?」

 

 ……あ。

 そういえば今朝、髪結ぶの忘れてた。

 慌てて走ってきたからボサボサになってるし……

 

 でも……なんか……

 

「ちょっと黒木さんっぽい髪型になってるね」

 

「……」

 

「どうしたの? 結ばないの?」

 

「私、ずっとこのままでもいいかも」

 

「ゆり!?」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。