……今日も
さあ、木曜はこれからが一日の始まりだ!
学校生活なんて所詮はアバンみたいなもんだからな。
まずコンビニでヤ○○ャン。
○○○様○告○○○○は毎週チェックしてるからな。
なんか波長が合うし。
今週は○ァミ○も見ておこう。
2年の時に知った「慟哭」がリマスター版出るらしいし、ちょっと気になる。
にしても、20年くらい前のゲームを今更作り直して世に出すって、どんな判断なんだ?
そういうの決める企画会議、一回見てみたいな。
どこかの二流メーカーが○be○a○Vと組んでやってたら、つい観てしまうかも……
「クロ」
家に帰ったらゲームとネット、どっちを優先するかも考えとかないと。
夕飯までの短い時間に何をするか……これで一日を終える時の充実感が結構変わってくるのを私は知っている。
ゲームだと中途半端なところでお呼びが掛かるのがネックだし、ネットだと場合によっては変な気分になって夕方に変なことしてしまう可能性も……
「ねー、クロってば」
「は、はい!?」
……なんだネモか、ビビらせやがって。
脳内のヤバい妄想が無意識の独り言になって周囲に漏れたのかと思った。
ネモならそういうのなくても私に話しかけてくるからな。
っていうか、今更だけどクロって何だよ?
怠惰の真祖か?
それともTwitterで嘘ばっかついてるお笑い芸人のことか?
ん?
そう言えば……
「やっとこっち向いた」
「いや。アレって遠足限定の呼び名じゃなかったの?」
「そんなワケないじゃん。クロってやっぱり、ちょっと普通の人とはズレてるよね。ぼっち生活長すぎて」
こいつ……!?
「ね、根元さんさ……最近ちょっと……」
「……」
なんでそっぽを向く!?
あーくそが!
「……おいネモ」
「何?」
「最近の絡み方、なんかおかしくないか? 別にそんな親しくもないのにズカズカ入り込み過ぎっていうか……」
「そうそう。クロってやっぱそれだよね」
なんなんだこいつ……人のことわかったふうに言いやがって。
私の本性見抜きましたみたいなしてやったり感出してるけど、違うからな!
私だけが知ってる裏の顔みたいに思ってるかもしれないけど、全然違うからな!
確かに、1年の頃はこいつに話しかけられて精神的にフワッとした時期があった。
それは認める。
2年の自己紹介の時に、私の事を認識してくれていたり白紙の件をわかっていてくれたりしたのは正直感動した。
それも認める。
リップクリーム貸してくれた時には若干エロい目で見たりもしたっけ。
あれは一時の気の迷いだった。私も若かった……
そういうアレやコレやはあったけど!
ここまで急に馴れ馴れしくされると裏がありそうで怖いわ!
「大体お前、他に喋る人いっぱいいるだろ? 自分のコミュニティもっと大事にしろよ。私に構うより」
「何それ? どうしてクロにそんなこと言われなくちゃいけないのかな?」
な、なんか怖いんだけど……!
私何か間違ったこと言ったか!?
寧ろかなり謙虚に、かなり下手に出てアドバイス風に主張したつもりなんだけど……!?
「私が誰と話したいかなんて、私が決めるから」
「知らねーよ……こっちもこっちでやることがあるから。じゃ、お先」
「もしかして、溜まったアニメ観るとか?」
……こいつ、人前でアニメの話するの嫌いとか言ってなかったか?
まあ、声優志望なのカミングアウトした時点で、もう関係ないのか。
かといって、趣味の合わないこいつと話すのもな。
以前なら社交辞令的に無理して話そうとしたかもしれないけど、今となってはその必要はなさそうだし。
「……週刊誌だよ。5時までは立ち読みタイムなんだ」
「ふーん。だったら私も一緒に立ち読みしよっかな」
はあ……!?
まさか○春で声優ネタがないか確認する気か……!?
「いや、立ち読みなんて二人でしても楽しくないでしょ」
「そう? だったら……」
あー……嫌な予感がする。
これ絶対ロクでもないこと言い出すやつだ。
「家行ってもいい?」
ホラ来た!
これだから陽キャは絡み辛いんだよ……風邪引いたクラスメートにプリント持って行く小中学生の頃から思考が止まってるんじゃねーか?
「いやダメに決まってるだろ……」
「なんで? いいじゃん。それとも、見られて困る物とかあるの?」
あるに決まってるだろ!?
3年分のヤンデレ男子言葉責めCD。
頭フットーしそうな乙女ゲー。
未洗浄の電マ。
三種の神器が常に揃ってるわ!
あんなの見つかったらち○こ画像どころの騒ぎじゃねーぞ。
自分の名誉を、私の聖域を守護らねば……!
「別にクロが何持ってても、今更引かないけどなー」
「だから知らねーよ。大体、私んチに来て何すんだよ。やることないだろ」
「プロの声優とドラマ作ったことあるんでしょ? CDドラマだよね? 見せてよ」
そ、そんな昔の話覚えてんじゃねーよ!
大体アレはお前をフォローする為に捻り出した私なりの気遣いだろうが!
っていうか、声優志望なら大体どんなオチかわかるだろ!?
知ってて笑いに来る気か……!?
「クロって、過去観たアニメをExcelでリスト化して10段階評価とかしてそうだし、それも見たいかな」
「いや、それどっちかっていうとそっちだろ。有名どころの女声優全員リスト化してるだろ? リンク付きで」
「あはは、まさかー」
……やってんなこいつ。
まあ私の場合は男性声優編だけど。
「それじゃ行こっか。まずはコンビニだっけ?」
「いや行かないから。どうしてもって言うなら、先にそっちが家バレしろよ」
「私は別にいいけど?」
こ、こいつ……マジか?
仲良くなったワケでもない、ちょっとラフに話すようになっただけの相手を家に招待とか、本当に同じ星に住んでる生き物か?
なんだろう。ネモと話してると、やっぱりフワフワした感じになるな。
地に足が付かないっていうか、別世界にムリヤリ連れ出されてる感がハンパない。
でも、なんていうか……
ネモが私に構う理由がなんとなくわかった今、その気持ちもわからなくもない。
私だって昔は、何の気遣いもしないでアニメやゲームを語れる同士が欲しかった。
そういう部活を立ち上げようと思った事だってある。
……今、こいつを受け入れたら、それに近い環境が生まれるんだろうか?
もう随分、部屋で同世代の誰かと楽しく遊んだ記憶ないな。
中学時代はゆうちゃんとゲームやってたけど……今となっては懐かしい思い出だ。
でも、趣味が合わないヤツと無理に遊んだところで、楽しめる自信は私にはない。
よくカプ厨が好みの違いから戦争起こして絶縁するなんて話聞くけど、それに近い事が起こりそうな気がする。
今のネモにだったら、割とドギツイ事言ってムチャクチャになってしまいそうだ。
「あー……やっぱ止めとく」
「なーんだ、残念。親にクロのこと紹介しようと思ったのに」
周辺から固めてくるタイプだと……!?
「じゃあ今日は解散でいっか。でも一学期中には家、教えてくれるよね?」
「ねえよ。私は家バレNG派だから」
「あはは、何それ」
ふー……やっと解放された。
ネモとの会話はいろんな感情が湧いて来て疲れるんだよな。
もっとこう、どうでもいいヤツなら無味無臭のトークが出来るんだが……
なんか今日は生気持って行かれたし、コンビニは明日にするかな。
いや、でも○○○様はチェックしておきたい。
さあ、気を取り直してプレミアムな木曜を満喫――――
「黒木さん」
「うわあっ!?」
「え? 何?」
……ああ、
もうとっくに帰ったかと思ってた。
「真子は今日お母さんの誕生日で、準備あるから先に帰るって」
「あっ そうなんだ」
ガチレズさん、家庭環境良さそうだもんな。
如何にも幸せな家庭で育ちましたって感じの性格だし。
私がこんななのは家族の所為……とは思わないけど。
「もう帰る?」
「うん」
今日はこいつと二人か。
ネモと話し込んだせいで立ち読みタイムが大分削られてしまったし、本当は早足で帰りたいけど……ま、いっか。
にしても、放課後の廊下ってなんでこう人多いんだ?
部活やってるヤツはいいとして、他はどう考えても校舎より外の方が面白いことあるだろうに。
ただ駄弁りたいだけなら、外を歩きながらでも出来るし。
時間の無駄だわー……とか思わないんだろうか?
それとも廊下に特別な何かがあるのか?
同性とお喋りしながらも、実は別のクラスの異性に話しかけられるのを待ってる……とか。
いや、3年にもなってそれはないか?
でも、寧ろ3年だからこそ焦ってるかも知れないし……
「黒木さんって」
「えっ 何?」
ヤバイ、変な事考えてたのが顔に出てたか?
こいつもガチレズさんも男関係の話って乗ってこないんだよな……
まあ、本当にガチのガチだったらそれが普通なんだけど、さすがにそれはないか。
「家バレNG派だったの?」
「え?」
こいつ、立ち聞きしてやがっただと……!?
いや、別にネモとの会話を聞かれてたからって何があるワケじゃないけど。
でも何故その話をここでする必要が……?
「ああ……うん。普通に恥ずかしいし」
「それって、相手が誰でも嫌?」
「別にそういうのはないかな。知ってる人は知ってるし」
「じゃあ、相手が根元さんだったから?」
……なんでだろう、目が怖いんだが。
遠足の時もそうだったけど、なんでこいつら急にキレ顔晒すの?
そういうカンペ出てるの?
「……それは……ないような、あるような」
「はっきりしないね。どっち?」
だからなんでグイグイ来るんだよ! 普段はこっちがボケてもボーッとしてる癖に!
ネモといいこいつといい、最近変だぞ。
方向性は違うけど、どっちも明らかに遠足を境に私への態度が変わってきてるし。
まさかこいつら、私を……
私を介して仲良くなろうとしてるんじゃないだろな!?
ネモの奴、遠足の時に
こっちもこっちで、ネモの事妙に見つめてる時あるし。
はっ!?
まさかこいつ、私がネモと親しくしてると勘違いして私にイラついてるのか!?
『私の根元さんに近付かないで!』とか内心思ってるんじゃ……
だとしたら、誤解を解かないと……
「ネモ……根元さんとはそんな親しくないし、家に呼んでも話す事ないから」
「遠足の時はそうは見えなかったけど?」
間髪入れず!?
これはもう決定的じゃないか?
まさかガチレズさんよりガチレズだったとは……
いや、待て。
そうとは限らないぞ。
ネモは陽キャグループだからな。
案外、自分もその中に入りたいって思ってるのかも。
例え筋金入りの陰キャでも、一度くらいは背伸びして日の当たる場所に行ってみたくなる時期があるからな。
私がネモと仲が良かったら、私にネモとの間を取り持って貰うって算段か?
正攻法じゃ無理だけど、きっかけがあれば私だって……ってか?
ふ……ふ……
フザけんなよ!?
ここに来て踏み台になんてされてたまるか!
もし今こいつが私と疎遠になって、ガチレズさんまで一緒に離れられたら、私の立場はどうなる!?
せっかく、ぼっちから脱して学校がそこそこ居心地のいい場所になったんだ。
今の生ぬるくなった私がぼっちに戻ったら、心も人生も凍死するわ!
学校生活なんて所詮アバンだけど、アバンの弱いアニメに未来はない。
私はアバンを大事にする売れ線アニメになるんだ……!
「ネモとは仲良くないから。一応、似た趣味は持ってるかもしれないけど、嗜好は全然合わないし」
「趣味……」
ふう、キッパリと言ってやったな。
これでこいつの儚い野望は打ち砕かれた訳だ。
これに懲りたら二度と夢なんて見るんじゃないぞ?
お前にネモは高嶺の花。ガチレズさんくらいが丁度いいんだ。
ま、ついでに私もいてやるけどな……
「趣味って、読書とか? 前に図書室で薦められた本みたいなの」
「え? あ、うん。そんな感じ」
なんか意図してたのとは違ったけど、会話の流れが正常化して良かった。
これ以上無駄に私の精神を磨り減らさないでくれよな、全く……
「あれ結構面白かったから、続きも読んだよ」
「そ、そう? 何巻くらい?」
「26冊かな」
学園さえもフルコンプだと……!?
いやいや、ここは引くとこじゃないだろ。
私のチョイスがいかに適切だったかの現れじゃないか。
これ、もしかしてチャンスじゃね?
キ○は今新アニメも放送されてるし、こいつをアニメの世界に引きずり込めるかも……
ネモよりは趣味合いそうだし、ここは攻め時か?
「アニメにもなってたからそっちも観てみたけど、落ち着いた曲使われてて映画っぽかったよ」
既に!?
「あっうん。あれは……」
「黒木さんもあのアニメ観てる? 1話見逃したから、録画してるなら貸して?」
「うん。いいけど」
「今日観たいから、今から取りに行っていい?」
おい! だから家バレNGだっつってんだろ!
「……」
な、なんだよその目。
まさか私につっこんで欲しいのか?
『家バレNGってさっき言ったじゃーん!』とか、ベタなツッコミが欲しいのか?
それとも、そういうんじゃなくてホントにドハマリしてて、一刻も早く観たいのか?
でも1話目ならネットで無料で観られるよな。
そっちを教えるべきか……?
「……」
ど、どっちだ?
それとも家にあげるのが正解なのか?
「……」
はっ、視線!?
後ろから誰かに見られてる気がする……!?
ま、まさかネモが見張ってるって事はないよな……? キモイキモイキモイキモイキモイ
ど、どうしたらいい?
この選択を間違えたら、私は今の自分の居場所を、大事な聖域を失う……そんな気がする。
「別に嫌だったらいいけど」
そんな顔してねーじゃん!
『断ったらわかってるよね?』って、顔面でほぼ脅迫してるじゃん!
な、何でこうなった?
私はただ、ネモと会話して、放課後いつもみたいに
そうだ、ガチレズさんがいないんだ!
だから機嫌が悪いんだな、ガチレズさんと帰れなかったから!
こいつそういうトコあるもんな!
「そ そ そうだ! 今度ガ……田中さんと一緒に遊びに来なよ! 二人で! ね!?」
最悪日を改めれば隠せる物も隠せるしな!
これなら向こうも……
「……」
これもダメか!?
クソが、二人でもダメなら三人ならどうだ!
「よ 吉田さんも一緒に! あの人がウチに来るとは思えないけど!」
一人断れば『やっぱいいや』の空気になるに違いない!
どうよこの機転、会心じゃね?
「聞いてみる」
……え?
何そのフットワークの軽さ?
「黒木さんの家、ぬいぐるみある?」
「え? まあ、結構大きいのとかあるけど……」
「なら行くって」
レス早え!
で何で来るんだよヤンキー!
ヤンキーに出す紙パックのリ○トンとかウチの冷蔵庫にはねーぞ!?
「いつにする? いつがいい?」
「え……いや……その……再来週の日曜、とか」
「……」
「あ! 今週の日曜も空いてたかなー……あとでスケジュール調べないとわからないけど、空いてるかもしれない……なー……」
「他のみんなにも空いてるか聞いてみるね」
あっ、この感じ……
小学生の頃にちょっとだけ仲良くなったゲーム好きの子の家に、少しだけ強引に押しかけようとした時と似てるわ……立場逆だけど。
あの時の私、こんなだったんだ……だからあれから疎遠になったのか……
まさかあの頃の報いが今になって襲いかかってくるとは……
子供のキ○ーパ○サーに○レ○レとかフザけた名前付けて、将来グレて村を襲うようになった、みたいな感じか?
攻略サイトしか見てないから内容は全然知らんけどな……
次回に続きます!