10分で読めるわたモテSS   作:umadura

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 前回のあらすじ
 明日、三人くらい家に来ることになった……





モテないしぼっちルートを夢に見る

 

 

 

 

「智子ー、掃除機かけるから部屋出なさい」

 

「今日は自分でやる。先に他の部屋かけて、終わったら前に置いといて」

 

「あら珍しい。智子ももう高3だし、そろそろ一人暮らしの準備も初めておかないとね」

 

「そんなんじゃないよ。友達が来るから念入りに掃除しておきたいだけ」

 

 ……よし。

 

 お母さんには三者面談の時に『最近までぼっちだった』って余計な情報知られたからな……クソ担任のせいで。

 これでもう『智子、友達いないって。どうしよう?』とかお父さんに相談したりはしないだろう。

 親に引きこもり化を心配されて家族会議とか開かれるのはさすがにな……

 

 さて、一つ片付いたとはいえまだまだ難題続きだ。

 まずはこの部屋をどう改造していくか。

 

 今回、この部屋に来る予定なのは田村さん(陰キャ)、ガチレズさん、ヤンキーの三人。

 前の二人はネモみたいにグイグイ来るタイプじゃないから多分大丈夫だと思うけど、ヤンキーはヤバイ。

 ヤンキーって基本、無神経で空気読めない上にそういう世間から浮いた自分達に酔ってるクズな人種だから、あいつも何しでかすかわかったもんじゃない。

 

 まずは……パソコンだな、やっぱり。

 履歴見られたら即アウト。

 面白半分で検索したとはいえ、アヘ顔画像まとめ一覧……はまだしも○○○○○○○○○○○○とか一文字たりとも見せられない。

 

 スマホは私が肌身離さず持ってれば大丈夫だけど、PCはそうもいかない。

 私がトイレに行っている間に見られるかもしれないからな……!

 

 取り敢えず閲覧履歴と検索履歴は全部消去しておくとして……いや、その前にバックアップとっておくか。

 予測検索って便利だけど、こういう時にはクソ厄介だな。

 

 一応、画像フォルダも避難させておくか。

 こういうのはUSBメモリに移しておけばOKってワケにはいかないからな。

 寧ろUSBメモリに入れてる時点でいかがわしい、ってなるし、万が一落とした時のリスクがデカい。

 

 取り敢えずフォルダ名を偽装して……普段使わないフォルダの中に押し込んでおこう。

 万が一、何処に入れたか忘れたとしても画像ファイルの名前から検索できるし大丈夫。

 

 ふう……これでよし、と。

 デスクトップのショートカットも一緒に避難させとくか。

 

 次はブックマークか。

 これはバックアップさえ取っておけば、再現余裕だから問題ないな。

 バックアップフォルダを隠蔽する必要もないし。

 

 念のためキャッシュも消しておくか。

 意味があるかどうかわからないけど……消したところでデメリットなさそうだしな。 

 

 パソコンはこれでよし、と。

 今度はグッズ関係に着手するか。

 

 電マはネタ的に置いててもいいけど……問題はやっぱこれだな、ドラマCD。

『豹変○氏』シリーズはギリ大丈夫だろうけど、『○のポ○ム付き言葉攻めCD』なんかはタイトルの時点でアウトだ。

 まあ、この辺は最悪バレてもどうって事ないんだが、他の一軍のはさすがにキツい。

 

 にしても、知らない間に大分量も嵩張ってきてるな……私の五年間が詰まってるからな。

 安全圏に退避させるなら部屋の外が無難だけど、これだけ多いと隠し場所は限定されるし、隠してる最中に身内に見つかる可能性が出て来る。

 前に両親に見つかった時の、『なんでこんなん育てたんだ』って顔はもう見たくない。

 

 ベッドの下はどうだ?

 いや……エロ本隠すベタな場所だし、ヤンキーの嗅覚に引っかかりそうだから止めとくか。

 机や本棚は論外だし、クローゼットも絶対安全とは言えない。

 

 ……あれ?

 もう他に隠すとこなくね?

 

 …………ヤバイな。

 あらためて見返してみると、私の部屋って殺風景だよな。

 いつもパソコンやスマホやゲーム画面にばっかり目が行ってたから、自分の部屋の凹凸の少なさを実感した事がなかった。

 

 この際、姿見やポスターの裏にテープで貼り付けるか?

 いや無理だろ、どう考えても!

 

 マズいぞ、頭がこんがらがってきた。

 大体何で私がこんなに焦らなきゃならねーんだよ!

 

 冷静に考えたら、幾らヤンキーがクローゼット漁ろうとしても他の二人が止めるだろ!

 アホか私は!

 

 そもそもなんで家にあげなきゃならねーんだよ!

 なんか流れでそうなったけど、こっちの負担ばっかりで全然楽しくないし!

 

 よし、断ろう。

 あとで全員にLINEで『おじいちゃんが危篤でお見舞い行かないといけなくなった』とか、適当に理由付けてご遠慮願おう。

 

「智子、掃除機使っていいよー」

 

「もう用意は必要なくなったから、お母さんやって。私下にいるから」

 

「……」

 

 あっ……あの目だ。

 なんで育てたんだろこんなゴミって目だ!

 掃除機で吸い込んでも悪臭強すぎて掃除機の掃除が面倒臭ぇなって目だ!!

 

「い、今のナシ! やっぱり自分でやるから! お母さんは休んでていいよ、うん」

 

「ちゃんとしなさいよ」

 

「大丈夫だから! はは、ははは」

 

 やべー……危うく親から絶縁宣言受けるところだった。

 お母さんに見捨てられたらニートになってからの生活に支障を来たすからな……危なかった。

 

 ……掃除するか。

 

 

 

 

 結局今日は部屋の掃除で一日費やしてしまった……

 こうなると日曜はいよいよ潰せなくなってきたな。

 夜はやること多いし、さっさと断りの連絡入れておくか。

 

『おじいちゃんが具合悪くて明日お見舞い行くことになった。ごめん』

 

 こんな感じでいいか。

 いやでもヤンキーはバカだから、これだけだと『だから家には来るな』ってニュアンスが伝わらないかもしれない。

 もっと率直にキッパリと書くか。

 

『おじいちゃんが具合悪くて明日お見舞い行くから、家には来ないでください』

 

 ……なんか一気に言い訳臭くなったっていうか、これ完全にバレるよな。

 他人行儀過ぎるのが良くないのか?

 

『ジジイがブッ倒れて明日にでもイっちまいそうだから、お前らと遊んでるヒマなんてねーわ』

 

 今度はヤンキーに寄せ過ぎた!

 ヤンキーに媚び売ってるなんて絶対思われたくないし、身内の不幸をこんな言い方する人格破綻者とも思われたくない。

 

 くっそー……全然良い文章が思い付かないな……

 掃除で疲れたせいか、まだ8時なのに異様に眠いし。

 なんで私が貴重な土曜日潰してまでこんなに悩まなくちゃいけないんだ?

 

 あー眠い。

 観たいアニメもやりたいゲームもあるのに……眠い……

 こんな事なら…… 

 

 

 

 

 ぼっちのままの方が良かった――――

 

 

 ――――――――――――――――

 

 ――――――――

 

 ――――

 

 ――

 

 

 

 

「――――智子! 早く起きなさい!」

 

「ん……?」

 

 なんだ……窓の外が明るい。

 もう朝?

 いや、仮にそうでも今日は日曜……

 

「遅刻するでしょ! 早く朝ご飯食べて学校行きなさい!」

 

「へ……?」

 

 何だ……おかしいな。

 それに机の上、なんだこの南国感がエグいポストカードは?

 こんなの私の趣味じゃないぞ?

 

 ……ああ、そうか、そうだった。

 昨日まで修学旅行で、ヘトヘトだったからすぐ寝入ったんだ。

 

 何かスゴく長い夢を見ていた気がする。

 ゆうちゃん以外の友達が出来て、学校で結構クラスメートから話しかけられるようになって、お昼は友達といつも一緒で、放課後も一緒に帰って……

 アニメやゲームの話は出来なくても、それなりに悪くない学校生活。

 

 イベントがある毎にぼっちなのを再確認して如何にその時間が穏便に過ぎるかだけを考えていた頃が嘘みたいに、周りにはいつも人がいて、気を張ったり遠慮したりする必要もなくなって、平凡だけど寂しくない……そんな日々。

 

 そっか。

 あれは夢だったんだ。

 

 そっか……

 

「智子!」

 

「今行くからー」

 

 なんのことはない。

 今日からまた変わらない日々がやってくるわけだ。

 

 

 

 

「おはよー。今日からまた学校だね」

 

「おはよ……」

 

 一瞬びびったけど、ネモが声かけてくれるのはいつも通り。

 これで今日も一日のノルマは達成したな。

 

「……」

 

 ん?

 あいつ、一緒の班だった……なんて名前だっけ。

 確かLINEの番号登録した時に、名前も……

 

 ……あ、もう行ったか。

 

 こっちから挨拶するべきだったか?

 一応、旅行中はそれなりに会話したんだし……

 

 まぁいいか。

 あいつには他に友達いるみたいだし、今後接点もないだろう。

 きっとあいつの思い出の中で、私は『修学旅行の時に班長として色々頑張ってくれた真面目で大人しい子』としてうっすらと残っていくに違いない。

 

 フォーエバー地味な人。

 いつか修学旅行のことを思い出して家族や友達に話す時は、ぼっち軍団を立派にまとめ上げた黒木さんを褒め称えてくれ……それまでLINE登録を残しててくれると尚嬉しい。

 

 さて、時間もまだだしトイレ行ってくるか。

 

「……」

 

 出入り口にヤンキーがいる……!?

 旅行中散々殴られたな、あいつには。

 

 ヤンキーなんかに朝っぱらから絡まれるのは嫌過ぎる……!

 遠回りだけど反対から出るか。

 

 

 

 

 ふー……

 

 さ、出るか。

 

「!?」

 

 ん?

 こいつとも旅行中少ししゃべったよな……

 目が合ったし、一応挨拶くらいはしとくか。

 

「あっ お おは……」

 

「――――!」

 

 ……逃げやがった。

 ここまで露骨に無視されるのは、さすがにイラッとするな。

 

 もういいや。

 挨拶するだけのクラスメートが増えたところで無駄に疲れるだけだよな、実際。

 こっちから声を掛けるのは、もう止めておこう。

 

 これでよかったんだ。

 中学時代の遠足の時と同じ。

 あいつらと私は、縁がなかったんだろう。

 

 だから違う道を行く。

 それだけのことだ――――

 

 

 

 それからしばらくの間、修学旅行の時のあの気苦労が嘘みたいに、私の学校生活は平穏そのものだった。

 

 体育祭では借り物競走でメガネを引き当て、無事こみなんとかさんのを借りて事なきを得た。

 例えば、もしあそこで『イケメン』なんて引いてたら、新たな出会いの一つくらいはあったかもしれないな……

 

 でも突然、修羅場が訪れたっけ。

 あれはそう、地獄の三者面談だ。

 

 あのクソ担任、私がぼっちなのをお母さんにバラしやがって……

 ま、そういう生徒のプライバシーを話すのはどうなんですかって大声で泣きながら訴えてやったから、ちょっとは心を入れ替えただろう。

 他の先生が別の教室から慌ててやってくるくらい、壮絶な一幕になったからな。

 

 おかげで私の後に面談した奴は、担任の犠牲にならずに済んだわけだ。

 感謝して欲しいくらいだけど、生憎私の元にそれを伝えに来るクラスメートはいなかったな。

 

 その時ほどじゃなかったけど、たまたま学食でリア充軍団と相席することになった時は結構ヤバかった。

 危うく陽キャのオーラに潰されるところだった。

 

 確かそこで、ネモは演劇の学校を目指してるとか話してたっけ。

 私にちょくちょく話しかけてくるのは、陰キャオーラ全開のモブとの会話に慣れておく為だったのかもしれないな。

 

 それからは特に何事もなく卒業式を迎えて――――私は今、3年生になった。

 私のことを気に掛けてくれた元生徒会長にも、ロクに挨拶もできないまま。

 

 別に親しかったわけじゃないから、話すことなんてなかったし、きっと困るだけだったろうけど……せめて一言くらいお礼を言いたかった。

 どうでもいいことは沢山してきたのに、肝心な時にあと一歩が踏み出せない。

 

 思えば、修学旅行の直後もそうだった。 

 もしあの時、少しだけ私が勇気を出してあいつらに話しかけてたら、違った未来があったのかもしれない。

 

 今、目の前にあるクラス替えの張り紙には、私が3-5に配属されたことが示されている。

 同じクラスだった奴はそこそこいるみたいだけど、ネモは3-4になったらしく、今年は別々になった。

 

 コオロギも3-4だな。こっちは朗報だ。

 

 他は……

 

「吉田さん」

 

「おう。お前も3-5だな。他の連中は?」

 

「真子も一緒。あと――――」

 

 あいつらは……修学旅行で同じ班になった地味なのとヤンキーだ。

 また同じクラスなのか。

 

「内さんも」

 

 内……?

 ああ、あの絵文字みたいな顔の奴か。

 わざわざ名前出すって事は、あの修学旅行組でその後も仲良くやってるんだろうな。

 

 だったら……私もその輪の中に入れるんじゃないか?

『修学旅行の時一緒だったよね』とか『あの時は色々あったけど良い思い出だよね』とか言って、無理矢理にでも飛び込んでいけば、渋々でも受け入れてくれるんじゃないだろうか……?

 

 踏み出すなら、今しかない。

 ぼっちを卒業して、高校生活最後の1年をせめて人並のものにする為には……

 

 どれだけ恥を掻いても、哀れみの目で同情されても、自分から行くしかない。

 

 行くんだ……!

 

 行け……

 

 

「教室行こっか」

 

「ああ」

 

 

 ……行け……ないだろ、今更。

 

 もう私の名前さえ忘れてるに決まってる。

 そんな奴が学年変わったからって話し掛けてきたら、同情以前に気持ち悪いだけだ。

 

 もう、あいつらを目で追うのも止めよう。

 同じクラスの仲良しグループに1年ずっと羨望の眼差しを向け続けるなんて、虚し過ぎる。

 

 早く教室に行って、机に突っ伏そう。

 

 3年ともなると、交友関係は完全に固まっていて、そこに外部から入り込む隙なんてないんだ。

 自己紹介でどれだけ笑いをとっても、そこから何かが生まれはしないだろうし、きっと私はこれからも一人でこの学校生活を乗り切っていくしかないんだろう。

 

 私にはゆうちゃんという友達がいる。

 友達じゃないし死ぬほど不本意だけど、もう一人……話ができる奴も一応、いる。

 学校やクラスは違うけど、本当の意味でぼっちじゃない。

 

 でも。

 

 今まで2年間、そしてこれから1年間、私の人生の一部を確かに刻んだこの学校で……  

 

 

「黒木智子です。趣味 読書です。よろしくお願いします」

 

 

 この学校で、友達を作りたかったな――――

 

 

 

 

 ――

 

 ―――― 

 

 ――――――――

 

 ――――――――――――――――

 

 

 

 

「……だよな」

 

 夢なのは、途中でなんとなく気付いてた。

 たまにそういうことがある。

 明らかに理屈が変だとか、現実的じゃないって思うわけじゃないけど、なんとなく『あ、これ夢だ』って思う瞬間が来る。

 

 そういう時って、なんか妙にワクワクすることが多いんだけど、今日のこれはちょっとそんな気分にはなれなかったな。

 悪夢だろ、こんなの……

 

「……」

 

 寝てたのは1時間くらいか。

 あれこれ断りの文章を考えてたら、いつの間にか眠ってたらしい。

 寝ぼけてたから記憶があやふやだけど、まだ送ってないみたいだ。 

 

 ……思い出した。

 そう言えば私、誰かと一緒に同じものを見て、楽しい時を過ごしたかったんだ。

 

 この部屋にあいつらが来て、楽しい時間になるかというと……そうとは限らないけど――――

 

 

 [明日何時に来る?こっちはいつでもいいけど]

 

 

 ……送信、と。

 

 

 ――――取り敢えず、一緒に同じもの見るのは、あいつらとなら出来るんだよな。

 

 

 

 

 




次回に続きます!
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