10分で読めるわたモテSS   作:umadura

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モテないしポイント還元セール

 

 

 

 

 思うんだけど、高校の校舎って要らなくね?

 もう授業とかネットで全部流して、好きな時に家で見て勉強すりゃ良くね?

 

 そうすれば、日本で一番教えるのが上手い先生の授業を全国の学生が受けられるし、時間にも縛られないだろ?

 教え方下手な教師から一年教わるより、その方がよっぽど実になるし、不平等もなくせる。

 

 真面目に勉強したい奴は何度でも見直せるし、やる気がない奴は寝てれば良い。

 プロスポーツ選手やマンガ家目指す奴は勉強なんかしないで、筋トレやファンアートに精を出せば良いしな。

 

 義務教育でそれを実現するのはどうかと思うけど、高校生なら構わないだろ?

 日本人に足りないっていう自主性を育む良いチャンスにもなる。

 

 最高かよ……良いこと尽くめだろコレ。

 

 朝から学校なんて行かなくていい。

 行かなくていいんだ――――

 

「智子! まだ寝てるの? 早くご飯食べて学校行きなさい!」

 

「あっ起きてる! 起きてるから部屋入らないで! 今行くから!」

 

 あっぶねー……女同士が泥んこになって殴り合ってるのを観てニヤニヤしてるのを親に見られるトコだった……

 

 朝からアニメの感想サイト巡るのは危険だな。

 感想を通して他人(ニート)の思考が入って来る所為で、つい訳のわからん現実逃避をしてしまった。

 危うくあっち側に引きずり込まれるトコだった……

 

 でもこのアニメ、結構ゲスくて悪くないな。

 クラスの成績でポイントが溜まって、それで色々買い物が出来たり進路が決まったりするのか。

 

 もしウチの学校にそんな制度が導入されたら……ダメだ、担任が脳筋の時点で地獄絵図しか見えない。

 メチャメチャ心理戦やってる最中に『今日はみんなで本音を語り合いなさい! 全員がちゃんと正直に話さないとHRは終わらないからね!』とか言い出しそうだ。

 

 ……ポイント制か。

 そういえば二年の時、私もそんな事やってた気がする。

 

 確かノートに……あったあった、これだ。

 うわ、懐かしいなー。

 

「智子!」

 

「今行くから!」

 

 仕方ない。

 確かにもう時間ギリギリだし、学校に持って行って授業中にでもコッソリ見るか――――

 

 

 

 

・同性(人気者)と会話する … +1P

 

・異性(地味~普通)と会話する … +1P

 

・異性(人気者・イケメン)と

 会話する … +2P

5分以上の会話はさらに+1P

 

・お昼を誰かと食べる … +2P

 

 異性(ぼっち・クズ)と会話する … +1P

 異性(強がり・ぼっち)と会話する … +1P

 

 

 学校がある日は毎日-1P

 -5Pになった時点で罰ゲーム(弟ビンタ)

 

 

 

 

 ……あらためて見ると、昔の私ってショボいな。

 こんなヌルゲーで罰ゲーム寸前まで行ってたのか。

 

 今の私なら、常に『お昼を誰かと食べる(+2P)』が達成されるから、マイナスになる事はあり得ない。

 同性(人気者)の枠もネモで埋まるから、かなりの可能性で+1Pが追加される。

 

 1週間で二桁に乗る可能性さえあるじゃないか。

 どんだけぼっちだったんだ? 一年前の私は。

 

 いやいや、過去の自分からマウント取ってどうする。

 私がやりたいのはそういう事じゃない。

 

 一年前と比べて、どれだけ成長したか。

 不遇の時代を乗り越え、生まれ変わった私をそろそろ自覚しても良い頃合いだ。

 

 ポイント制度、復活させるか。

 

 罰ゲームは-5Pじゃなく-1Pで十分だな。

 つまり、マイナスで放課後を迎えた時点で罰ゲーム決定。

 それくらいじゃないと緊張感が出ないからな。

 

 罰ゲームの内容も変えよう。

 弟のビンタなんてよくよく考えたら割と頻繁に食らってるし、大した罰にもならんしな。

 もっと、今の私を脅かすような、危機感を煽ってくるような内容にしておかないと……

 

 

 

 

・きーちゃんに週末来るよう電話をかける

・こみなんとかさんを家に誘う(弟不在時)

・こみなんとかさんを家に誘って自由に徘徊させる(弟不在時)

・こみなんとかさんをカフェに誘う

・こみなんとかさんを野球観戦に誘う(ロッテの試合)

・こみなんとかさんを野球観戦に誘う(ロッテ以外の試合)

・こみなんとかさんをカラオケに誘う

・こみなんとかさんをカラオケに誘って一緒に恋ダンスを踊る

・こみなんとかさんをカラオケに誘ってライオンを歌う

・こみなんとかさんを一日中褒めまくる

・こみなんとかさんとプリクラを撮る

・ヤンキーにカンチョーして「やンのかコラァ――――!?」と逆ギレする

・ヤンキーの前でネズミーをディスる

・ガチレズさんと二人きりの時に「あいつと別れて私と付き合えよ」と言う

・ガチレズさんと二人きりの時に「あいつ陰キャ過ぎて疲れね?」と言う

・ガチレズさんをトイレに誘う

・田村さんをトイレに誘う

・ネモに「○気○優のつ○り○た」をプレイさせる

・凸の額を平手打ちする

 

 

 

 

 ……色々考えてはみたけど、どれもなんかピンと来ないな。

 実践したら殺されそうなのや人間関係破壊しそうなのがチラホラあるし。

 

 もうちょいソフトで、それでいて胃がキリキリするくらいのがいいな。

 

 最近そんな感じになったのは……遠足の時だな。

 ネモと田村さん(陰キャ)のキレ顔見た時だ。

 どっちも呼び方でキレてたな……

 

 おっ、いいの思い付いた。

 

 このクラスの誰かを名前で呼び捨てにしてみる、なんてどうだ?

 

 これなら大した実害はなさそうだし、罰ゲームらしい緊張感も出る。

 私が誰かの名前を呼び捨てにするなんて、まずない事だからな。

 心の中や本人のいない所で稀にゆうちゃんを「ゆう」呼びするくらいだ。

 

 弟すら呼び捨てじゃなく「智くん」だからな。

 育ちの良さがこんな所に出てるよな。誰も気付いてくれないが……

 

 よし、これで行こう。

 問題は誰を呼び捨てにするか……だな。

 

 ヤンキーはマズい。

 キレられるのは当然として、私が笑わずに呼べる自信がない。

 茉咲て……可愛すぎだろ。ラノベのヒロインかよ。

 

 ネモは……今更ネモ以外で呼ぶのもな。

 なんかこれ以上関係性をゴチャゴチャさせたくないし、止めておこう。

 

 ガチレズさんはどうだ?

 本人は普通に聞き流すか受け入れてくれそうだけど、相方がヤバいな。

 

『真子……? 何勝手に人の親友を呼び捨てにしてるの……?』

 

 怖っ! 想像だけでもう怖っ!

 

 じゃ、じゃあ逆に田村さん(あいつ)を「ゆり」呼びしたらどうだ?

 ガチレズさんの反応は、多分……

 

『へー……二人っていつの間にかそんなに仲良くなってたんだ(ニコニコ)』

 

 お、大丈夫そうだな。

 

『そっかー。そっか……』 

 

 ん?

 

『そう……なんだ……(ツ――――)』

 

 ガチレズさあああああああん!

 泣かしてしまった……何処まで思いを馳せてるんだよ……

 

 近場はダメだ。

 他の連中にしよう。

 

 キバ子は名前知らんし、加藤さんは恐れ多い。

 コオロギは論外。

 担任……はもっと論外。

 

 もう候補者がいなくなってしまった……

 まさか名前を呼び捨てに出来る奴が一人もいないなんて。

 もしかして、このクラスって相当ヤバいんじゃ……

 

 仕方ない。

 だったら隣のクラスの絵文字にしよう。

 あいつなら呼び捨てにしたところで元々関係性はないに等しいし、名前も遠足の時に把握済だし。

 

 確かエミリだったな(漢字はわからん)。

 よし決定。

 忘れないうちに纏めておこう。

 

 

 

 

 もこっちポイント3年Ver.(明日から開始)

 

・同性(人気者)と会話する … +1P

 

・異性(地味~普通)と会話する … +1P

 

・異性(人気者・イケメン)と

 会話する … +2P

5分以上の会話はさらに+1P

 

・お昼を誰かと食べる … +2P

 

 異性(ぼっち・クズ)と会話する … +1P

 異性(強がり・ぼっち)と会話する … +1P

 

 

 学校がある日は毎日-1P

 学校を出るまでに-1Pだった時点で罰ゲーム(呼び捨てで(・_・)の名前を呼ぶ)

 

 

 

 

 ……これでよし、と。

 待てよ、最後の絵文字はカッコが重複しててなんか気持ち悪いな。

 

 

 

 

 学校を出るまでに-1Pだった時点で罰ゲーム(呼び捨てで|・_・|の名前を呼ぶ)

 

 

 

 

 これでいいか。 

 

「黒木さん」

「うおおっ!?」

 

 田村さん(こいつ)……なんで授業中に話しかけてくるんだ?

 

「もう授業終わったけど」

 

「え? あっ、あー……」

 

 いつの間にか休み時間に入ってるな。

 集中し過ぎてチャイムにも気付かなかった。

 

 う……気が緩んだら急に尿意が。

 

「わ、私トイレ行って来る」

 

「あっ うん」

 

 やべー、なんだこの尿意は!?

 罰ゲームとか考えてる間にここまで尿の進行を許していたのか!?

 膀胱が直接救いを求めているかのような勢いだ……!

 

「黒木さん、これって……」

 

 なんか話しかけられてる気がするけど今はとにかくトイレだ!

 

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……お――――ふぅ。

 

 間に合って良かった。

 危うく生徒生命が終わるところだった。

 さっさと教室に戻ろう。

 

 

「ただいま。さっき何か言おうとしてなかった?」

 

「いや 別に」 

 

 相変わらずその返事がもう陰キャだよな……まあ愛想良くされ過ぎてもこっちが困るが。

 

「……」

 

 で、黙ってスーッと離れて行きやがった。

 あっ、次の授業もう始まるのか。

 やっぱりあれだけ大物の尿意となると、トイレ滞在時間ハンパねーな。

 

 って、ノート開きっぱなしじゃねーか!

 まさか見られた?

 

 ……ま、いいか。

 こんなの見たところであいつは何とも思わないだろうし。

 ネモやコオロギだったら全力で煽られたろうけど……

 

 とにかく、明日からが勝負だ。

 過去の自分を乗り越えれば、ジャンケンしてるだけで空も飛べるからな。

 私もそんなハイな気分を味わおう――――

 

 

 

 

 さて、いよいよ決行日。

 心なしか空が眩しく見えるな。

 

 そういえば、どの時点でスタートかは決めてなかった。

 例えば登校中の今、イケメンから話しかけられた場合はどうする?

 

 そうだな……学校に着いてからでも別にいいけど、ここからカウントするか。

 話しかけられたのにノーカウントじゃ損した気分になるし。

 

「おはよ」

 

 いきなり……!?

 

 あっ、なんだ。田村さん(こいつ)か。

 こいつは人気者じゃないから話しかけられても0Pだな。

 

「おはよう。今日は早いね」

 

 いつもは私の方が先歩いてるのに。

 いや別にこんな事で敗北感とか一切ないけども。

 

「……」

「……」

 

 沈黙が続くのはいつもの事。

 無理して話さなくていいのは楽だ。

 

「えっと、昨日……」

 

「?」

 

「昨日、黒木さん何してた?」

 

 な、なんだ?

 急に話し始めた頃みたいな場繋ぎ会話してきやがっだぞ!?

  

「あー……大体ネット見てたね」

 

「誰かが暴れてるみたいなの?」 

 

「いや、昨日は少し前の観てなかったアニメの実況まとめ漁ってた」

 

「観てないアニメの実況見ても楽しいものなの?」

 

「楽しいのもあれば下らないのもある。Twitterの引用は無難なのばっかりでつまらないけど、コメント欄のクソみたいなコメントに10個くらいアンカー付いてるのとか見るのは面白い」  

 

「そう」

 

 話振っといてその投げやりな着地はなんなんだよ! 食いつき悪すぎだろ!

 

 もういっそ、こういうのも声に出して言ってやるか?

 遠足の時に結構荒ぶってやったし、今更気を使っても意味ないよな。

 次変な話題振ってきたらビシッと言ってやろう。

 

「なんで10個くらい付いてると面白いの?」

 

 食いついてた!?

 えっ、さっきの反応で実はグイグイ来てたの?

 アタリとか全然なかったのにエサが付いてるかみようとしたらデカい魚が釣れてた、みたいな?

 

「なんか絵面っていうか、一つのコメントにアンカーが集中してる絵が面白い」

 

「よくわからないけど、そういうものなんだ」

 

「ちょっと待って。実物見せるから」

 

 確か昨日見たサイトに、袋叩きに遭ってる奴いたよな。

 確か……そうそう、ここだ。

 

「これ?」

 

 近いな……いつの間にこんな近付いて来てたんだ?

 

「そう。これ。どう?」

 

「確かにちょっと面白いかも」

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 ……まさか同意されるとは。

 もしかして私と感性が近いのか?

 

「でも、なんでわざわざ叩かれるようなこと書き込むんだろうね」

 

「多分、承認欲求を満たす為なんじゃないかな。こういう連中って大概――――」

 

 

 

 

 ……結局、学校まで一度も会話が途切れなかった。

 その所為でって訳でもないだろうけど、他は誰からも話しかけられなかったな。

 下駄箱でネモにでも会ってれば早々にポイントゲット出来たんだが……

 

 さて、ここからが本番だ。

 正直言って……異性からの声掛けは最初から期待してない。

 その点に関しては寧ろ1年の頃から退化してる気さえするしな。

 

 ここは素直に『同性(人気者)と会話する』を狙おう。

 

 ネモは多分勝手に話しかけてくれるから、今回のターゲットは加藤さんだな。

 戦闘力42,000くらいありそうな、このクラスでも最強レベルの女子。

 本当なら+3Pくらいでも良い大物だ。

 

 こっちから話しかけてみるか……?

 ネイルの話振れば、何かしら答えてくれそうだよな。

 興味が湧いたからちょっと教えて欲しいなー、的な。

 

 よし、それで行ってみるか――――

 

「黒木さん。ちょっといい?」

 

 田村さん(こいつ)か……また随分と間が悪いな。

 

「今日は私と真子、用事があって別の所でお昼食べるから」

 

「……へ?」

 

「ごめん。今日は一人で食べて」

 

 な、なんで今日に限って……!?

 約束された勝利の剣がポキンと音を立てて折れてしまった。

 

 落ち着け、まだあわわわわわわわわわわわわわ……

 

 慌てるような時間じゃない……よな?

 

 +2Pが消えたのは痛いけど、私にはネモがいるじゃないか。

 向こうから話しかけて来ないのなら、こっちから話しかければ良い。

 話題なんてなくてもテキトーに……そうだ、先週のLINEの件について聞けばいいんだ。

 

 あの時全消去してたけど、一体何書いてたの?

 よし、これでいこう。

 今度こそ……

 

「ネ――――」

 

「……」

 

 逃げた!?

 なんだあのあからさまな席の立ち方は!?

 私が近付いていった途端、何かを察したように席立ちやがったぞ!?

 

 なんか嫌われるような事したかな……いや、してないよな。

 でもあの態度、露骨に私を避けてるだろ絶対。

 

 マズい、マズいぞ……!

 ネモにまで見放されたら、もう打つ手が……

 

 ……仕方ない。

 弟ってさ、こういう時の為に存在するんだよ。

 

 やれやれ。

 姉のピンチに手助け出来るなんて、こんな名誉な事はないんだからな……せいぜいありがたく思えよ。

 

「……ねえ」

 

 あ? なんだコオロギか。

 今はテメーなんかに構ってるヒマねーぞ。

 

「んだよ、教室で話しかけて来んなよ」

 

「今日、智貴くん休みなの?」

 

「は? なんでだよ」

 

「教室にいなかったんだけど……まさか重大な病気で入院したんじゃ……」

 

 してねーよ。

 っていうか登校の時間帯が違うからいちいち奴の安否なんて把握してないし。

 つーかなんで下級生の教室行くんだよ、キモいんだよいちいち。

 

「どどどどどどどうなんだよ! も、もしかして……もう既に……!?」

 

「どこまで飛躍してんだよ!! 入院なんてしてねーよ! 早引きとかだろ!」

 

「そ、そうなの? 智貴くん無事なの? 生きててくれてるの? 餞の言葉は用意してるけど、使わなくていいの?」

 

 老後まで想像してんのか。

 何処まで気持ち悪いんだこいつ……変態って言葉使うのすら憚られるわ。

 

 って、待て。

 本当に早引きしたんじゃないだろうなあのクソボケ!?

 

「確認してくる。お前も来い」

 

「え? あ、うん……」

 

 大丈夫だよな……健康だけが取り柄なのに、そんな訳ないよな……

 絶対違うよな!?

 

「黒木? あー、さっき寒気がするって保健室に行って、熱があったからそのまま早引きしたみたいっすけど」

 

 うわああああああああ……

 あの野郎……やってくれたよ!

 どうすんだよ、もう何も出来る事なくなったぞ……

 

「そっか、熱か。そっか……」

 

「おい、まさか看病しに家に来るとか言い出すんじゃないだろうな。言っとくけど黒木家出禁だぞお前」

 

「な、なんでだよ! 別に行かねーよ、迷惑になるだけだし」

 

 油断も隙もあったもんじゃねーなコイツ……

 

 あっ!?

 さっき弟の事教えてくれた下級生、男だった!

 こっちが何か一言でも返せば会話が成立したのに……!

 

 今更もう一回話しかけに行く勇気はない。

 ダメだ……逃した魚の大きさがそのままのし掛ってくる。

 こんなチャンスを逃したら、もう次はないぞ……

 

 いや気を強く持て!

 まだ終わったと決まった訳じゃない。

 

 時間は十分ある。

 きっと誰かが救いの手を差し伸べてくれるさ――――

 

 

 

 

 ……放課後になってしまった。

 

 昼休みにはクラスのリア充軍団から話しかけられた実績のある学食に行ってみたのに、誰からも声は掛けられなかった。

 

 何度ノートを見直してみても、今日の私の行動の中にポイントが加算されるものはなかった。

 素直に負けを認めよう。

 

 結局……自分で思ってるほど成長はしてなかったって事か。

 お昼とかネモとか、アテが外れたと言えばそれまでだが……そもそも自分から積極的に話し掛けられれば、どんなハプニングがあっても乗り越えられた筈だしな。

 

 せめてもう少し男に免疫が出来ていれば……

 

「黒木さん、まだ帰らないの?」

 

 ガチレズさんか。

 田村さん(陰キャ)よりは人望も人脈もあるだろうけど、人気者ってカテゴリーじゃないよな……

 

「それ何?」

 

「あっ うん。実は今日……」

 

 こうなった以上、恥ずかしいとか隠したいって感情すらも湧いてこない。

 せめて話のネタにして貰うとしよう。

 

「あはは……そんな遊びしてたんだ」

 

「遊びじゃなくて真剣だったんだ。私は過去を乗り越えられなかったよ……」

 

「し、仕方ないよ。今日だってたまたま、ゆりがあんな事言ったから」

 

 ……あんな事?

 

「一年の時にね、少し仲の良い娘たちがいたんだけど、ずっと疎遠になってたんだ。クリスマスとか一緒に遊んだんだけど」

 

 そう言えば、前に聞いた時そんな事言ってたな。

 

「その娘たちと久し振りにご飯一緒に食べようって、ゆりが。そんな事今まで一回も言わなかったのに」

 

 あいつ……まさかわざと私を妨害したんじゃないだろな?

 まあ、それはないか。私が罰ゲーム食らったところで奴には何のメリットもないのに。

 

「もう罰ゲームは決定?」

 

「あー、うん。今から条件満たすのは無理。諦めた」

 

「じゃ、丁度いいね。下駄箱でゆり待ってるから行こ」

 

「……丁度いいって、何が?」

 

「え? だって罰ゲーム、ゆりを呼び捨てにするんだよね? これ、ゆりだよね」

 

 

 

 学校を出るまでに-1Pだった時点で罰ゲーム(呼び捨てで|・_・|の名前を呼ぶ)

 

 |・_・|←ゆり

 

 

 

「……なんで?」

 

「え? 違う? ゆりの顔っぽかったから」

 

 ……言われてみれば、そう見えなくもない……か? 

 カッコを直線にした所為で、おさげっぽく見えるからかもしれない。

 

「とにかく、一緒に帰ろ。ゆりも待ってるし」

 

「あっ うん。少し待ってて」

 

 この際、声に出して呼ばなくてもいいか。

 

 ノートを切り取って……

 

『エミリへ 遠足の時 気に掛けてくれて ありがとう 黒木』

 

 よし、こんなもんでいいだろ。

 これを絵文字の下駄箱に入れて、罰ゲーム消化って事にしよう。

 

「お待たせ。行こっか」

 

「うん」

 

 今日は本当、無駄に疲れた……ポイント制はもう懲り懲りだ。

 やっぱり徒らに過去と向き合うもんじゃないな。

 これからは普通に最新アニメのまとめサイトを巡ろう。

 

「ゆり、黒木さんと仲良くなってから少し社交的になった気がする」

 

「そ、そう? とてもそうは見えないけど……」

 

「あはは。これからも仲良くしてあげて貰えると嬉しいな」

 

 完全に保護者の目線だ……

 ガチレズさんはきっと与える側なんだろうな。

 

「あ、ゆりだ。お待たせー」

 

 で、あいつは私と同じ……か。

 下駄箱で待ってるって言ってたけど、校舎の外からじっとこっちを見てるな。 

 

 あー……やっぱり同じだ。

 

 あの何かを待ってる感じ。

 期待するような、それでいて不安に押し潰されそうな……

 多分私も、傍目ではああいう風に見えてるんだろうな。

 

 絵文字の下駄箱は……確かここだったな。

 これで良し。

 

 あとは……

 私は保護者役じゃないから、スパルタで行こう。

 ついてこれるか?

 

「待たせたな」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「いやつっこめよ! 元ネタ知らなくても声色変えてんだから大概ネタだってわかるだろ!!」

 

「え? なんで?」

 

「なんでじゃねーよ! だからお前はダメなんだよ!! 甘やかされ過ぎ!!」

 

「何が……? 大体私、お前なんて名前じゃないけど?」

 

「仲良いなあ」

 

 ガチレズさん、そういうんじゃないからこれは。

 

 あれだな。

 こいつにこそポイント制が必要だったんだ。

 後で私の考案したのを全部伝授してやるとするか……

 

 

 

 

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