「先生!」
「し、師匠!!」
「なんだ騒々しい。」
儂は既に日課となっている学園の整備をしている途中、
何やら大慌てでアイギスとソーマが走ってきおった。
「き、聞いてください先生!
私達やっと岩を砕けるようになりました!!」
「ほう、それは良い事ではないか。
儂の見立てでは後5年は掛かると踏んでいたがな。」
なんだ、その程度の事か。
とはいえこいつ等に取っては大きな一歩であろうな。
何せアイギスの奴はデッドリーウェイブが使える癖に、
まだあの程度の岩を粉砕出来なかったときた。
これでは折角の流派東方不敗も名前負けしていると言うものよ。
「いえ、確かに岩を砕けるようになったのは嬉しいのですが。
問題はその時の事なのです!」
「…お主等がそこまで言うとは余程の事なのであろうな、話せ。」
「はい、…実は。」
そう前置きをして2人は話し始めた。
…しかし、その内容は確かに驚く物であった。
「…真か?」
「真です…本日転入してきた男が私達の前に表れ、
正しき気の練り方を教えたかと思えば一撃で粉砕して見せました。」
「その後、その人の言う通りに実践してみた所。」
「砕けるようになった…と言うわけか。」
ふむ、確かに興味深い。
岩を砕く事等儂の世界では当たり前ではあったが、
この世界では素手で岩を砕くものが居るとは聞いたことが無い。
その男は余程の手練れなのであろう。
…まったく、久々に血が騒ぎおるわ。
「その男の名は?」
「…ヴァイスです。」
「ヴァイス…」
聞いたことが無い名だ。
しかし、その名は覚えておいたほうが良さそうだ。
もしかすると、闘う事があるやもしれぬ。
PiPiPiPi、PiPiPiPi
「おっとスマン、儂だ。」
暫く考えていると、不意に儂の端末が鳴りおった。
手に取り名前を確認すると、そこには束の名が表示されていた。
「儂だ。」
儂は迷う事無く呼び出しに応じると、
「やっほーふーちゃん、元気してるぅー?」
何時もと同じ調子で声が返ってきた。
「うむ、儂は特に変わっておらぬ。
して、今回はどんな用事だ?」
「そーそー、
実は前に話したふーちゃんのマスターガンダム用のユニットが完成したんだけどー。
今から届けに行ってもオッケーかなー?」
「儂は構わぬ。」
「りょー、それじゃあこれから向かうねー。」
という声と共に電話が切れた。
「篠ノ之博士ですか?」
「うむ、前に依頼していたユニットが完成したらしい。
これから直ぐに来るという事だ。」
「ア、アハハ。相変わらずフットワーク軽いですねー。」
「それが奴の長所もである。
…アイギスにソーマよ。」
「「はい」」
「ヴァイスなる者の情報、もし何か分かれば儂に必ず伝えよ…良いな?」
「了解しました。」
「了解です!」
儂は2人にそれだけ言うと、
2人は直ぐに寮へと戻っていった。
…しかしヴァイスか。
そういえば同じ様な名の男が居たな…もしや。
「いや…そのような事はあるまい。」
浮かんだ疑問を一笑に伏し、儂は再び整備へと戻った…。
???<束サイド>
「いやー、ここに来るのも久々かなぁー。」
ふーちゃんへの電話を切った後、
私は早速ふーちゃんの元に行くべく歩き始めた。
ふっふっふー、
実はふーちゃんの都合が悪くても押しかける気マックスな束ちゃんでした!
それにしても、ふーちゃんはどこに居るかなぁー?
多分真面目に仕事してれば学園だと思うんだよなー。
そんな事を考えつつ私はトコトコ歩いている。
…んだけど。
「ん~、喉渇いた!!」
ここに来るまでの間、私何も飲んでなかった!
いけないいけない、これは束ちゃん失敗した!
喉が渇いては戦は出来ぬというし、
ここは一つどこか適当なお店に入って水分を補給しよー!
そう思った私は早速適当な喫茶店へと足を踏み入れる
「いらっしゃいませ、お1人ですか?」
「うんうん、可憐な美女が1人寂しくご来店だよ!」
「は…はぁ、畏まりました。
それではこちらの席へどうぞ。」
「うむ、苦しゅうない。」
ウェイトレスさんの案内を受け、
私は適当な席に座り、店内をグルッって見回す。
「いやー、にしてもやっぱりこの時間は学生さんが多いねぇ~。」
周りを見ると、IS学園の制服を着た人達が一杯居る。
うーむ、このリア充共め!
アーちゃんとソーちゃんなんか沢山修行してるんだよ、まったく!
「・・・ん?」
そして、私はある1人の学生を見て視線が止まる。
「ん~???」
なんだろーなー?
何か気になるなー?
私、気になります!
私の視線の先には、
何だか明らかに新品です!っていう学生服を着た学生さんが1人で座っています。
でも、アレって明らかに男の子だよねー?
私のISが男の人でも適正があるっていうのが分かってるのは、
今だと2人なハズなんだよねー?
「うん、こういう時は行動あるのみだよね!」
そう結論付けた私は、
早速気になるあの子に猛烈アタック!を仕掛けるべく席を移動する。
「もーしもーし、ハロハロー!」
「…何だお前は。」
むぅー。
この超絶美女の束ちゃんに声を掛けられて舞い上がらない男の子が居るなんて!
「ねえねえ、君って男の子だよね?」
「どこを見れば俺が女に見える。」
「それもそうだよねー!」
男の子は相変わらず仏頂面で答えてくる。
何かこの子あんまり友達いなさそー。
「君ってIS学園の生徒さん?」
「…ああ、一応な。」
「ん~、でも可笑しいんだよねー。
男の子がISに適正があるって分かってるのは2人だけなんだよねー。」
瞬間、明らかに男の子が警戒度を引き上げる。
あれれ?
おっかしいなー、何か言葉間違えちゃった?
「だからどうした?」
「ん~、もしかして君って。3人目の適正者さん?」
少し回りくどくなってしまったけど、
聞きたい事を男の子に聞くと。
「…ああ、俺の情報は軍が規制していてな。
今までまったく話が出ていなくても不思議じゃない。」
ほほー、軍が情報を秘匿ですかー。
大方ドイツ辺りが戦略的に使おうとでもしたのかなー?
あいつ等、割とこっすいしねー。
「そうなんだねー!
ところで君ってどんなのを使ってるの?」
「何故そこまで言わなければならん、…俺は行くぞ。」
むぅ、取り付く島も無いとはこの事。
さっさと男の子は立ち上がり会計をしようとしてるけど。
何故だかそこで動きが止まってる。
「…俺とした事が。」
あれれ?
もしかして財布を忘れちゃった感じかな?
「ねえねえ、きみきみ。
話を聞かせてくれるならお姉さんが代わりに出しても良いよ?」
うん、私を知ってる人が聞いたら目玉が飛び出ちゃうかな?
何せ興味が無い人は徹底的に無視する私がこんなことを言っちゃうんだからね!
「…必要無い、知り合いに連絡する。」
でも男の子は私の厚意を無視して知り合いに連絡を取ろうとしてる。
むぅ、そこまでスルーされると幾ら私でも悲しくなっちゃう。
さて、どうやってこの男の子を振り向かせようかな?
そんな事を考えていると。
「テメエ等、手え上げろ!!」
という怒声が響いてきました。
あれ?
もしかして絶滅危惧種の強盗さん?
うっわー、始めて見た!
というか、こんな喫茶店に強盗に入るなんて。
最近の強盗さんも世知辛いんだねー。
でも残念!
ここには束ちゃんが居るのだ!
もし私に危害を加えようとしたらただじゃおかないぞ☆
「おい!、
店の有り金全部このバッグに入れろ!!」
そう言って強盗さんは店員さんにバッグを投げます。
うわー!
映画の中の台詞をリアルで言う人始めて見た!
「…おいガキ!
テメエもさっさと両手を上げて地面に伏せやがれ!!」
そう言って強盗さんは私の意中の男の子に銃を突きつけてる。
うーん、これってちょっとヤバイ感じかな?
まだ話せてないから、ここで死なれちゃうのは困るんだよねー。
…しょうがない、束ちゃんが手助け、
「…ガキっていうのは俺の事か?」
…へ?
銃を突きつけられているというのに、
男の子はまったく意に介してない?
うーん、なんだろーなー。
あの空気を見るとなんだか慣れてるように感じるんだよなー…。
「テメエ!、この銃が見えねえって言うのか!!」
「フン、弱い奴程良く吠えるもんだ。」
「テ、テメエ!!」
うわー、男の子ってば完全に挑発してるー。
でも、これは本格的にマズイかも。
流石にあの距離で撃たれたら痛いだけじゃ済まないよね?
仕方無い、此処は束ちゃんの秘密道具で・・・。
「五月蝿い、来るのか来ないのかハッキリしろ。」
「もうただじゃおかねえ、死ねや!!」
瞬間、バンバンッ!っていう音と共に男の子に向けて銃が撃たれる。
狙いは寸分違わず男の子に命中!
ありゃりゃ、残念。
話聞きたかった…ん…。
「…これで終わりか?」
「な…なぁ!?!?」
…うっそー。
あろう事か、強盗さんが結構な至近距離で撃った銃の弾をキャッチしてるぅー
…ってアレ?
なんだかこの光景を割りと最近見たような…。
「て、テメエ。どんな手品を!!」
「手品じゃない、あとこんな所で銃を撃つな。店に迷惑だろ。」
すると、男の子の姿が一瞬ブレた思ったら。
「ギャ!!」
っていう強盗さんの声が聞こえました。
辛うじて目で追えたけど、
男の子がそれはもう物凄い速さで強盗さんの顎に一発!
クリティカルヒットで強盗さんは倒れました。
ひゃー、相手になってないなー。
っていか、私が闘っても多分負ける。
いや、絶対負ける。
「まったく、どこに来てもこんな奴は居るもんだな。
おい、さっさと警察に連絡しろ。」
「は、はいいいい!」
私でさえこれ何だもん、
店員さんはそれはもう訳が分からない様子で警察に連絡をしてる。
ってマッズイなー。
流石に警察が来たら私も危ないかも。
「店員さん!、
そこの男の子の代金払うね!」
「あ、お客様!」
「それじゃあねー!、
お釣りはその男の子に渡しておいてね☆」
「おい、勝手な事を!」
「良いの良いの!、
さっきの見事なパンチに対するお捻りって事で!」
そう言ってから私はすぐさま喫茶店を後にした…。
束が店を出た後。
「…アイツ、俺の一撃が見えていたのか。只者じゃないな。」
一瞬で強盗を制圧した男…ヴァイスは呟いていた・・・。
IS学園<東方不敗サイド>
「やっほーふーちゃん!」
整備が大体終了し、
一息ついているとそう声が聞こえた。
「来たか、随分遅かったな?」
「いやー、それが気まぐれに入ったお店で強盗さんが来てねー。」
アッハッハと笑いながら束は言ってきた。
強盗か、いつの世もそんな馬鹿な者が居るものだな。
「それで、その強盗はどうしたと言うのだ?」
束がここに居る以上、
何も無かったと思うが念のため確認する。
「いやー、それがねー。
ここの学園の制服を着た男の子がこうシュッ!って一発かまして倒しちゃったよー。」
恐らく強盗を倒した動きを真似ているのだろう、
束は妙な動きをしながら儂に説明してきた。
しかし、男か。
「一夏か?」
「ううん、いっちゃんじゃないよ。
束ちゃんは振られちゃってねー、名前は聞けなかったんだけど。」
うーんと唸りながら、
「結構特徴的な髪型で、
赤いハチマチをつけて頬に侍さんみたいなバツ印の傷があったよー。」
そう男の特徴を話してきた。
「…なんだと!!」
「え、どしたのふーちゃん?」
儂の余りの慌て様に束は思わずたじろぐ。
「…束よ、その男の外見的な判断で良い。
年齢はどのくらいだと予想する。」
だが、まだ確証は無い。
そこで、期待は薄いが男の年齢を聞いてみる。
「うーん、学生の服を着てたけど。
どうみても20代っぽかったんだよねー。」
「…まさ、か。」
いや、そんな馬鹿はハズがあるまい!
しかし、儂の中でその人物の人相が固まってくる。
「…束よ、その喫茶店と言うのはそう遠くは無いか?」
「多分ねー、今だと警察さんが居るから直ぐに分かるかも。」
「…少し空ける!!」
「あ、ふーちゃん!」
居ても立っても居られなくなり、
儂はすぐさまその喫茶店へと走り出した…
そして
「ここか!!」
走り出して数分後、
なるほど、確かに警察が居て分かりやすい。
頭にマスクをつけた男をパトカーへと詰め込み、丁度走り出していた。
儂は素早く店内を見回し、目的の男を捜す。
結論を言えば、その男は直ぐに見つかった。
「おお…おお…!!」
やはり!
忘れるはずもあるまい!!
あの男は…!!
「ハアアアアアアアアア!!」
男の姿を見つけた瞬間、儂はその男の元へと走った…!!
喫茶店<ドモンサイド>
まったく、今日は妙な一日だ。
ラウラの奴が一夏に攻撃を仕掛け、
妙な2人の女は岩を砕こうとしていた。
少し疲れた為、喫茶店へと入ったが。
そこで変な格好の女に絡まれて、
面倒臭くなったからさっさと出ようとしたら強盗が来た。
尤も、銃に頼っていた時点で俺の敵じゃないがな。
その強盗を一撃で制圧して、
やっと警察から開放された所だ。
「!!」
瞬間、俺は敵意を感じた。
その方角を見ると一人の男が俺に攻撃を仕掛けるべく、
俺に肉薄してきた。
「チッ、まったく今日は…。」
呟こうとした言葉が出ることは無かった。
それは何故か、
…理由は簡単だ。
その男には見覚えがあった。
「答えよ、ドモン!!」
…ああ、あのお方は!!!
「流派!東方不敗は!!!」
俺に向けて繰り出される無数の拳を相殺しながら、
俺はもう二度と言う事は無いと思っていた言葉を叫ぶ。
「王者の風よ!!」
「全新!」
「系列!」
「「天破!侠乱!」」
「「見よ、東方は、赤く燃えている!!」」
し、師匠…!!
紛れもない、あのお姿、この拳は…!!
「し、師匠!、師匠なのですか!!」
「応、儂は今だ負けを知らぬは東方不敗よ!!」
「いえ、俺に負けてます。」
「こういう時は合わせい馬鹿者!!」
紛れも無い、
ランタオ島で燃え尽きた筈の…師匠だ!!
「師匠…御久しゅう御座います!!」
気を取り直して、
互いに打ち付けた拳を握りながら俺はその人を呼んだ。
「ドモン…やはり、ドモンなのだな!!」
師匠も珍しく、その目に涙を浮かべながら俺の名を呼んだ…。
東方不敗とドモン、再会