「…は!!」
私は目を覚ますと、そこは見覚えが無い部屋です。
ここはどこだろう?
「…痛ッ!」
現状を把握しようと、
寝かされていたベッドから立ち上がろうとしたら痛みが走る。
周囲に誰も居ない事を確認してから痛みが走った場所を見ると、
そこには大きな傷跡があった
「…そうだ、私確か。」
フレイのISのブレードで胸を貫かれて死んだハズ。
…なのに、なんで生きてるんだろう?
うーん…分からない。
「お、ソーちゃん起きたー?」
「た、束ちゃん?」
ドアが開く音と共に、
そこから姿を表したのは束ちゃん。
「いやー、危ないところだったよー。
あと数分処置が遅れてたら死んでたかもねー。」
「え…と、どういう状況なのかいまいち把握できないけど…。」
「うんうん、そうだよねー。
まあとりあえず説明はしてあげるけど、その前に…入りなよー。」
腕を組みながらしきりに頷いている束ちゃんは、
私からは見えない位置に居る人を呼んだ。
「ア、アイギス…それに、フレイ?」
束ちゃんが呼ぶと、
そこからアイギスとフレイが出てくる。
「…ソーマ!!」
「わっ!!」
目を覚ましている私を見たアイギスは、
一目散に私の元まで来て思いっきり私を抱きしめる。
「ソーマ…ソーマ…!」
「く、苦しいよア、アイギス…!」
思いっきり抱きしめられてる私は、
アイギスのその胸に鼻と口を塞がれて呼吸が…
「こらこらアーちゃん、
ソーちゃんをまた死の淵まで行かせるつもりかいー?」
「ハッ!…す、スマン。」
私の動きがどんどん鈍くなり、
再び意識が落ちる直前にやっと離される。
「それで、説明をしてくれるって事なんだけど?」
「…その前にソーマ、謝罪をさせて下さい。」
そう言ってフレイが私の近くまで来て頭を下げる。
「ソーマ…申し訳ございません、アナタを刺してしまって。」
「フレイ…ううん、良いよ。
確かに死に掛けたけど、今はこうして生きてるんだし。」
「それでは私の気がすみません!」
…うーん、フレイってこんなに頑固だったっけ?
「まあまあともかく、
今はソーちゃんがなんで生きてるかの説明をしようじゃないか!」
束ちゃんがクルクルと回りながら私達の元まで来て、
事の成り行きを説明しだした…
廃ビル<アイギスサイド>
あの男を取り逃がしてしまった私は、急ぎ再びソーマの元へと戻る。
そこには胸から夥しい量の血を流し、
既にその顔から生気を失っているソーマの姿が。
「…ソーマ!!」
ソーマの近くまで行き、ソーマの体に触れる。
ソーマの体からは人間特有の暖かさが感じられなかった。
「…スマン、俺が着いていながら。」
フレイのISを完全に破壊した兄上は、
目を伏せながら私に謝罪してくる。
「…いえ、兄上の所為ではありません。
寧ろ兄上が居なければ私達はアイツに捕らえられていました。」
最早冷たさしか感じられないソーマの体に触れながら、私は兄上に答える。
…もう、ソーマの名を呼んでも返事はしてくれないんだな。
「もー、さっきからうるさい!。
ちーちゃんに居場所がバレたら面倒でしょうがー!」
「…へ?」
「何…!」
重い空気の中、
妙に明るく場違いな声が響いてくる。
こ…この声は…!
「篠ノ之博…「束ちゃん」た…束ちゃん…!?」
「で、とりあえずどしたのー?
なーんかアーちゃんの凄い叫び声が聞こえてきたけど?」
「…ソーマが。」
「ソーちゃん?…ああ、なるほど。」
そう言って篠ノ之博士は言うが早いか、直ぐにソーマの亡骸の近くまで来る。
「…うん、何とかなるかも。
確かに思いっきり貫かれてるけど臓器は殆ど傷ついていない。」
「ほ…本当ですか!!」
「これなら傷を塞いで血を補給すれば可能性はあるかも。
…でも参ったなー、ソーちゃんの血液型なんて分からないや。」
頭を掻きつつも、直ぐにゴム手袋を着ける。
「アーちゃん、ソーちゃんの血液型って分かる?」
「ソーマの血液型…。」
…ダメだ、分からない。
ソーマの身体検査の時、私は別で訓練をしていた。
「…ソーマの血液型は私達と同じです。」
「お前…まだ!」
突如として聞こえたフレイの声に、兄上は再び構える。
「…今の私に交戦の意思はありません。」
「怪しいものだ。」
兄上によってISを完全に破壊され、
自身も深刻なダメージを受けているというのに。
フレイは体を引き摺りながらソーマの元まで歩く。
「…束博士、私達の血液は使えますか?」
「うーん、出来ればあんまり使いたくないんだけどねー。
ちゃんとした精製工程を経ていない血液って色々とリスクあるし。」
そう言いつつも篠ノ之博士は、
「ま、背に腹は変えられないかー。
2人ともこっち来て、超特急で処置をするよー!」
そう言いつつも、すぐさまにソーマへの処置を始めた…。
<ソーマサイド>
「それで、無事に成功して今に至るって感じかなー。」
束ちゃんが最後にそう言うと、
「さて若人諸君、質問はあるかな?」
「…束ちゃん、医療の心得もあったの?」
「私天才ですからー。」
なんだろう、
その一言だけで片付けちゃいけない気がするけど、
触れてはいけない話題な様な気もする。
「そういえばフレイって、薬物による強化をされていなかった?」
私はクソ野郎の話していた事を思い出しながらフレイに聞く。
「…はい、無論輸血の際も束博士にお伝えしたのですが。」
「そんなもん、
こっちでどうにかするからさっさと来なさい!、
と言われていたな。」
「…束ちゃんって一体。」
「アハハー、私天才ですからー!」
「あ、そういえばあのクソ野郎はどうなったの!」
そこに来て、
私はあのクソ野郎のその後を思い出す。
しかしその話題を出すとアイギスは暗い顔で、
「…すまない、逃がした。」
そう答えてきた。
…そっか、アイツ逃げたのか。
「ううん、気にしないで!
それよりも今はアイギスとフレイが戻った事の方が嬉しいんだから!」
「もしや、レーちゃんにお薬ぶち込んでアーちゃんに欲情してたあのクソ野郎?」
「…改めて言われると怒りしか湧かないが、そうです。」
「それなら、フーちゃんからこんな画像が送られてきたよー。」
そういって束ちゃんは私達に端末を見せてくる。
その画像にはこんな事も書いてあった。
「風雲再起の確認を行っていたら、
ローターが破損したヘリが飛んできた。
脱出する為のドアも開かなかったから搭乗員は助かるまい。」
…プッ、
そんな説明文みたいな文章を見て思わず笑いそうになってしまう。
「アーちゃん、そのクソ野郎が乗ってたのってこのヘリ?」
「…そうです、確かにこのヘリで間違いない。」
「なら、今頃お魚さんの餌になってるかな?」
そう言いながら束ちゃんは端末を仕舞う
「ま、とりあえずはゆっくりしていきなよー。
もうそろそろちーちゃんが来ると思うし。」
「織斑先生がですか?」
「そだよー、さっき連絡しておいたー。
君の大事な生徒が太い物で貫かれて大変な事になってるからハリーアップ!って。」
「…束ちゃん、間違いじゃないけどその表現ってどうなの?」
「やーここまで言わないとちーちゃんってば急がないからねー。」
あ…アハハ、
なんだろう、織斑先生に同情してしまった。
「ま、とりあえず私はそろそろ行くね。
またちーちゃんのながーーーい話は勘弁願いたいしー。」
「…束ちゃん。」
「ん?」
そそくさと部屋を出ようとした束ちゃんをアイギスは引き止め、
「…本当に、本当にありがとうございました…!!」
そう頭を下げてお礼を言いました。
「ん、良いって事よー。」
束ちゃんはこちらを振り返ることも無く、
そのまま部屋を後にし、数分後には何かが飛び去る音が聞こえた…
「…さて、フレイ。」
束ちゃんが居なくなった後、私達は改めてフレイを見る。
「改めて教えて、3年前私達と分かれて何があったのかを。」
3年前、私達は3人一組で組んでいた。
形的にはアイギスを隊長としていたけど、
その実は殆ど関係が無かった。
近距離特化型のアイギス、
遠近万能型の私、
そして遠距離特化型のフレイ。
それそれが得意なポジションで戦果を上げていた。
そして、運命の日である束ちゃん捕獲の作戦が伝えられる。
その時の私達は拍子抜けしていた。
ISを作った博士とはいえ、
こちらは3人、博士は1人。
とても負けるとは思えなかった。
だが、結果はどうだろうか?
その場に居合わせた生身の師匠によって私達は敗北。
捕らえられたばかりか、ISを奪われ初期化されてしまった。
だけど私達が気絶している間に、
今度は師匠は基地を強襲、
死亡者を1人も出さないまま、壊滅させた。
その後は、師匠の下に残ると決めた私達と。
壊滅していたとしても戻ることを選択したフレイで別れた。
…私が気になっているのはその後だ。
「…アイギスとソーマと別れた後、私は基地へと戻りました。」
覚悟を決めたフレイはポツポツと話し出す。
「何とか基地へと到着し、生存者を探していると。
確かに基地の人達は全員生きていました。
私も戻り次第、次の指示を仰ごうと司令官に近付いたら…。」
…まさか。
「…失敗作が戻りやがったと罵られました。
私は最初、意味が分からなかった。
失敗作とは何の事か。
その事を司令官に聞いた時…。」
良かった。
私が考えていた最悪の事態じゃ無かったみたい…。
となると、この事しか無いかな。
「…私達が試験管ベビーって知ったのね。」
「知っていたのですか…!」
「うん、前にちょっと暇だったからデータベースに侵入して色々見た。」
私はそう事も無げに言う。
別に試験管ベビーでも構わない。
私達は確かに生きてるのだから。
…でも、あのクソ野郎の考えは違った。
自分達が作った命だから何をやっても良いとか考えていた。
それを聞いた瞬間、殺してやろうかと思った。
でも、出来なかった。
アイギスとフレイが悲しむと思ったから。
それが、こんなことになるなんて。
悔やんでも悔やみきれない。
「…ともかくですが、
その後は私を忠実な兵器にするべく、
薬物による無理な強化が私を待っていました。」
「…ごめん。」
私は思わず謝ってしまう。
修行が辛くても私の場合はアイギスが居てくれたから耐えられたけど、
フレイは頼るべき人が居ない状態でただ1人3年間を過ごしていたから。
「いえ、良いのです。
再びこうして2人と再会できましたし、
話をする事も出来ました。」
フレイはそこまで言うと、
束ちゃんが開いたドアが開いた。
「もう、思い残すことはありません。」
「…ちょっと待って、どう言う事!」
そのドアからは沢山の警察の人が入ってきた。
「今回のIS学園の生徒の拉致監禁の実行犯は君かな?」
「そうです。」
その言葉を聞いて、私は理解してしまった。
フレイは、今回の責任を取るために逮捕されるつもりだ。
…フレイは操られていただけだったと言うのに!
「…分かった、○○時○○分、容疑者を確保。」
警察の人が時間を読み上げ、フレイに手錠が掛けられる
「フ…!」
「駄目、ソーマ。」
フレイの名前を叫ぼうとした私をアイギスは止める。
「…なんで!」
「…あの子は操られていた、だけど。
それを免罪符にする事は出来ない、そう考えて。
自分から警察に連絡したの。」
…そんな!
フレイだって、被害者だって言うのに!!
「…すいません、一言だけ良いですか?」
フレイは警察の人にそう確認をする。
「…君、部屋の入り口で待機していてくれ。」
「…は?」
「良いな?」
「わ、分かりました。」
声を掛けられた人は困惑しながらも、
部屋の入り口の前で待機をした。
「…アイギス、ソーマ。」
手錠をかけられたままだけど、フレイはしっかりと私達の顔を見て、
「お元気で…。」
「「フレイ…!!」」
そう一言だけ残して、連行されていった…
警察の人がフレイを連行してから直ぐに、織斑先生は来た
私の姿に驚きつつも、何も言わずにアイギスを連れて帰った。
…私は死に掛けたこともあって暫くはこのまま入院する事になった。
そして
体が十分に回復し、退院の許可を貰った翌日。
私は久々に学園へと登校した。
自分のクラスである1組の教室を開いた直後。
「ソーマちゃん!!」
「ソーマ、無事だったか!!」
「もう怪我は大丈夫なの!!」
という、クラスメイトの言葉が私を出迎えた。
「あ、アハハ。
お医者さんからは暫くは激しい動きは厳禁です、って言われたけど。
普通に動けるくらいまでは回復したよ。」
皆の声に困惑しつつも、私は返事をする。
「「「よ、良かったー。」」」
私の無事な姿を見て、
クラスメイトは安堵の声を上げた。
「ソーマ…。」
「アイギス…。」
先に登校していたアイギスと顔を見合わせる。
なんだか気まずい…
「お前等、間もなく時間だ。
さっさと席に着け。」
暫くそうしていると、
後ろから織斑先生が来た。
…あれ?
可笑しいな、SHRの時間はまだ後なのに。
「今日は早くないですか?」
「ああ、今日は転入生が来るからな。
その紹介も兼ねて早めに始めるぞ。」
「また転入生ですか?最近多いような…。」
「良いから席に着け、始められんだろう。」
まあ、私も転入してきたから人の事は言えないんだけど…。
「…よし、全員席に着いたな。
先ほども言った通り、今日は新たな仲間を紹介する…入れ!」
織斑先生が廊下に向かって声を出すと、
閉まっていたドアが開き、そこから…。
「きゃあああああ!、可愛い!!」
赤色の、腰まである髪の毛に。
澄んでいる水色と燃える様な紅蓮の瞳。
そして、女性用のIS学園の制服を着ている。
「本日よりIS学園に転入させていただきました。」
…フレイが。
「…フレイと申します、右も左も分からない若輩でございますが。
皆様方どうぞよろしくお願い致します。」
頭を下げて自己紹介をしていた。
私とアイギスは思わず顔を見合わせてしまう。
「ア、アイギス?」
「いや、私も初耳だ。
知っていたら必ずソーマにも教えていた。」
あの反応を見るに、ソーマも同じく知らなかったようだ。
「…フフン。」
ふと隣を見ると、そこには何故か誇らしげにしているお兄ちゃんが。
…まさか。
「ヴァ、ヴァイス君…何か知ってるの?」
「さあな、気になるのであれば師匠に聞くと良いさ。」
お兄ちゃんはそう言いつつ、それ以上何かを言う事は無かった…。
ソーマの入院中。
「…正気か?」
ある居酒屋の個室で男と女の2人が密談を交わしている。
「儂は正気よ…して、可能か?」
日本酒を煽りながら男は女に聞いた。
「…馬鹿馬鹿しい、何故そんなリスクを背負うような事をしなければならん。」
「お主の意見は聞いておらぬ、儂は可能かどうか。それだけを聞いておる。」
男の提案を聞いた女はそう答えるが、
はぐらかす事は許さないとばかりに男は更に言った。
「…可能かどうかで言われれば、可能だ。」
男の提案に対して、女は考え込む。
「(…そんな事をしても良いのか、
さっきコイツにも言った通り態々リスクを背負うことになる。)」
男の提案はこうだ。
アイギスを拉致し、ソーマを殺しかけた実行犯をIS学園に入学させることは出来るか。
普通であれば考えられない。
ソーマはギリギリで生きていたとはいえ、
もしあの場に束が居なければ確実に死亡していた。
通常であれば未成年とはいえ、厳罰は免れない。
そんな実行犯を態々学園に入学させて良いものだろうか。
先ほど女も考えていた通り、リスクが高すぎる。
「お前の言わんとしている事は分かるが…頼む、千冬よ。」
しかし、
男は座ったままとはいえ頭を下げて女…千冬に懇願した。
「な…。」
男の予想外の行動に千冬は驚きを隠せない。
「何かが起きた際、儂が始末をする故。
儂の願いを聞き届けてはくれぬか?」
「…東方不敗、一つ聞きたい。」
「何だ?」
「幾ら鍛錬をしていたとは言え、
あの2人はお前に取っては他人のハズだ。
何故その2人の為にお前ほどの男が頭を下げる。」
千冬は射抜くような視線で男…東方不敗を見た。
もし誤魔化したりすれば、この話は断らせてもらう。
そう言外に告げていた。
「…3年前の事を覚えておるか?」
「お前が世界初の男性ISとして名乗りを上げた時の事か?」
「ああ、その際にな。
あの2人の帰るべき場所であった場所を儂は壊滅させた。」
「…その罪滅ぼしとでも言いたいのか?」
「それもある、…が。
アイギスとソーマには情がわいたのだ。」
「何?」
「アイギスとソーマには親も兄弟も居らぬ。
あの2人にとってはお互いこそが全て。
しかし、そこで家族と呼んでも差支えが無い者と再会した。
…儂はな、あの3人には共に生きていて貰いたいのだ。」
「例えそれが道理を捻じ曲げることになってもか?」
「うむ。」
千冬の言葉に対し東方不敗は短く返す。
…しばしの沈黙の後、
「…はぁ。」
千冬は溜息をついた。
「分かった、…ただしお前にも協力をしてもらうからな?」
「無論だ、儂に出来る事であれば何でも申せ。」
「言ったな?、…覚悟しておけよ?」
その後、
東方不敗は千冬に言った言葉を本当に軽くだが後悔することになった…
「…ふむ。」
1組の教室が見える場所で東方不敗は佇んでいる。
「無事にフレイの奴を学園へと転入させることは出来たが…。」
盛大に溜息を付きながら、ある紙を見た。
「…千冬の奴め、まさかこの様な手を使ってくるとは。」
千冬が行った方法に対して東方不敗は頭を痛めた。
東方不敗が持っている紙を見つつ、再び溜息をついた。
「まあ仕方があるまい。
…さて、儂にうまく出来るかどうか。」
その紙を懐に仕舞い、東方不敗は仕事へと戻った…。