IS武闘伝Gガンダム   作:西方有敗

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第19話

「はあああああああ!」

 

先制は、更識。

受けに回れば瞬殺されると判断した楯無は、

闘いの主導権を握るべく、ドモンに攻撃を仕掛ける。

 

「(左の拳はフェイント、

本命は右のボディーからの正中線への一撃か!)」

 

ドモンは素早く楯無の一撃を読み、

左の拳からの攻撃を敢えて受け、本命をしっかりとガードする。

 

「まだよ!」

 

正中線への一撃は難しいと判断した楯無は、

脚による攻撃の軌道を変え、すかさずドモンの脚を狙う。

 

「遅い!」

 

「クッ!」

 

ドモンは楯無の考えを既に見抜いていたのか、

脛の部分で楯無の蹴りをガードし、

 

「ハアアアアアアア!」

 

そのまま空いた左の脇腹へカウンターのフックを放つ。

 

「ッ!」

 

蹴りを脛で防がれた楯無は一瞬しかめっ面を浮かべるが、

ドモンより放たれた一撃を受けるわけにはいかないとすぐさま距離を取った。

 

「(ヴァイス君の一撃を防いでも駄目!

防いだ瞬間、その隙を突かれて一瞬で倒される!)」

 

ドモンの一撃を何とか回避した楯無はそう判断する。

その判断は正しい。

ドモンの放つ一撃は簡単に岩をも砕く。

そんな一撃を防いだ瞬間、

防いだ反動で体が動かなくなり、

その隙を突かれて連撃を受けることは明らかだった。

 

「その程度の距離で安心できると思うな!」

 

「ッ、速い…!!」

 

しかし、ドモンの強みは一撃の威力ではない。

断崖絶壁をも容易く登りきるほどの身軽さだ。

脇腹へのフックは躱されると判断したドモンは、

すかさず追撃を加えるべく距離を開けた楯無へと肉薄した!

鈍痛が走る脚で無理に後退した楯無は動くことが出来ない。

 

「肘打ち、裏拳、正拳!

とおおおおりゃあああああ!!」

 

「クッ!ツッ!」

 

結果、ドモンの連撃に身を晒すことになる。

その連撃の速度は比喩ではなく、正しく百裂の如し。

しかし、その連撃を数発受けているとはいえ。

何とか捌いている楯無もまた十分異常だ。

 

「破ァ!!」

 

「カッハ!!」

 

連撃の終わり間際、

ドモンは背中を楯無へとぶつける。

その一撃の威力に耐え切れず、楯無は吹き飛ぶ。

 

「で、出鱈目過ぎる…!」

 

壁にぶつかる瞬間何とか体勢を整えて着地した楯無はそう叫んでいた。

勝負は始まったばかりとはいえ、

楯無は既にドモンとの力量差を感じていた。

 

「(やっぱり勝てない…!!)」

 

楯無の心が絶望に沈み始める。

更識楯無はIS学園の中でも生身、IS共に最強と言っても過言ではない人物。

だからこそ、

自分よりも遥かに強いドモンを相手にそう判断してしまった。

しかも、更に悪い事にドモンは明らかに全力ではない。

無論闘う相手に失礼が無い様に手を抜いている訳ではないが、

そうだとしてもここまで一方的な展開になるとは楯無は思ってはいなかった。

 

「(やはりISを………いや駄目!

ここでISを使ってしまっては、私が私じゃなくなる…!!)」

 

楯無の頭の中にISを使うという選択肢が生まれるが、

楯無はすぐさまその考えを否定する。

相手は明らかに生身の状態、

そんな状態で楯無がISを使って勝利しても、

東方不敗やドモンは気にしないとは言え、楯無自身が納得できるハズが無かった。

 

「勝負の途中で考え事とは余裕だな!」

 

「しまっ!」

 

しかし相手は待ってはくれない。

ドモンは追撃を行うべく、楯無へと再び肉薄した…!!

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ 入り口<簪サイド>

 

 

 

 

 

 

 

「…来ちゃった。」

 

昨日の事、

校内放送でお姉ちゃんが清掃員の人を呼んだ時、

何があったのか気になってつい生徒会室の前まで行ってしまった。

完全に内容が聞こえていたわけではないけど、

お姉ちゃんとドモンが勝負をするという事はなんとか聞こえた。

 

その事を聞いた時、

私は思わずドモンへと話しかける。

ドモンが幾らあの清掃員の人の弟子という噂があるとはいえ、

お姉ちゃんが負けるイメージが湧かなかったから。

…ううん、寧ろお姉ちゃんが完膚なきまでに叩きのめしてる映像しか浮かばなかった。

だから、私はドモンを止める為に声を掛けた。

 

…何度も声を掛けたのに無視されたから、

聞こえていないかと思って反応するまで声を掛け、

やっと反応が返ってきたと思ったら、

意図的に無視されてたって知った時はちょっと傷ついた。

 

何とか話が出来る状態になって、

2人きりで話したかったから、普段ISを開発してる格納庫に連れて行き、

お姉ちゃんと闘うなんて言う馬鹿な事はやめてと言ったら、

闘う事すらせずに逃げ出すなんて出来ないと言われてしまった。

何故そこまでして闘うか気になったからドモンに聞いたら、

彼も優秀すぎるお父さんとお兄さんが居た為家出をしたという話を聞いた。

…その話を聞いて私は少し嬉しかった。

私と同じ悩みを持った人が居たと言う事に。

 

でも、彼はそれを乗り越えていた。

どうやってと聞いたら、

逃げると一生付いて回る事になる、

恐れずにぶつかれ、そうしないと何も始まらない。

そう彼は答えてきた。

 

その言葉を聞いた時、私の心が少し軽くなった。

確かに、私は今までお姉ちゃんと比較ばかりされちゃんと会話した事は無かった。

そればかりか疎ましくさえ思っていた。

 

「…私、お姉ちゃんの事何も知らない。」

 

その事に気が付いた。

私は去ろうとしている彼に名前を聞き、

1人になった後は、

ひたすら開発途中の私の専用機である打鉄・弐式の開発へと着手した。

…正直あんまり進まなかったけど。

 

そして翌日、

やっぱりドモンとお姉ちゃんとの勝負が気になった為、

立ち入り禁止と書かれていたけどこっそりアリーナへと来てしまった。

 

「…ウソ。」

 

私は見付らない様に隠れながら勝負の行く末を見ていたけど、

想像とは違う光景に思わずそう呟いてしまった。

 

「お姉ちゃんが…手も足も出てない。」

 

眼前に広がっていた光景は、

一方的にただ攻撃を受け続けているお姉ちゃんの姿が。

無論、お姉ちゃんも何とか反撃をしているけれど。

それでも全て読まれ、攻撃の隙を突かれている。

こんな事が…。

 

でも、今感じている私の感情は想像とは違う物だった。

あれだけ疎ましく思っていたお姉ちゃんが一方的に叩きのめされているのに、

私が今感じている感情…それは。

 

「…負けないで。」

 

負けないで。

そんな応援の感情だった。

 

気付けば、私は内緒で来ていたと言うのに。

私が出せる最大の叫び声で叫んでいた。

 

「負けないで…負けないで、お姉ちゃん!!!!」

 

負けないで、ただ負けないでと…。

ふと、視線を感じた。

それは誰の物かは分からない。

だけど、それはとても暖かい視線だった……。

 

 

 

 

 

 

アリーナ<楯無サイド>

 

 

 

 

 

 

 

それは、勝負と呼ぶにはあまりにも一方的なものだった。

敢えて言葉にするなら…そう。

 

蹂躙、

 

それは蹂躙と呼んでも差し支えない物。

 

「(私の方が弱いと思っていたけど、これほどなんて…!!)」

 

ヴァイス君の攻撃を受けつつ私はそんな思いが過ぎる。

こちらが何とかして一撃を叩き込んでも、

彼はその数倍以上の打撃を私に与えてくる。

気が付けば、私の体はボロボロになっていた。

 

「…これで終わりか?」

 

ふと、連撃が止んだ。

倒れそうになる体を必死に支えながら私はヴァイス君を睨みつける。

 

「まだ…これから…!!」

 

そう叫ぶが、

私の叫び声には力が篭っていない。

誰がどう見ても最早勝負は決している様に見えているだろう。

事実、私自身もそう思っている。

 

「…なら、次の一撃で終わらせてやる。」

 

ヴァイス君はそう感情が無い声で言いながら、

私に本気で打ち込むべく構える。

 

「(…あの一撃を受けたら、終わり…か。)」

 

でも、今の私に彼の攻撃を防ぐ手立ては無い。

腕を上げようにも殆ど力が篭らず、

私の脚は倒れそうになっている体を支えるので精一杯。

正直、満身創痍ね。

 

「…破ぁ!!」

 

ヴァイス君の気迫の篭った声が聞こえる。

段々と彼の一撃が私に迫ってくる。

その迫る一撃に対し、私は目を…。

 

「…負けないで、お姉ちゃん!!!!」

 

!!

この…声は…簪ちゃん!!

 

「…そうだ、私は負ける訳にはいかない。」

 

学園の皆を守る為にも、…そして。

 

「簪ちゃんを守る為にも…!!」

 

そう叫びながら、私は決意をした。

ISを使う決意を…!!

先ほど彼の防ぐ手立ては無いと言ったけど、

それは、あくまでも生身の状態での話。

私の専用機である霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)なら、防げる…!!

 

「…来なさい、霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)!!」

 

私がそう叫ぶと、

私の体に次々と装甲が装着される。

水色を基調とした、意のままに水を操ることが出来るIS。

ロシアのグストーイ・トゥマン・モスクヴェの、

機体データを元に私が組み上げた、私だけの専用機。

 

「…やっと使ったか。」

 

彼の一撃は私が纏う水のヴェールによって防がれた。

その事に対して、彼は眉一つ動かさないでただ私を見据える。

 

「…。」

 

私もまた、彼を無言で見据える。

簪ちゃんが居る以上、ここで無様な姿を晒すわけには…!!

 

「そこまで!!」

 

「…へ?」

 

いかない、…そう思ったのに。

シュウジさんが終了の合図を出した。

 

「ちょっと待ってよ、私はまだ…!!」

 

「いや、これで終いよ。

これ以上はお互いが無事で済まなくなる。」

 

私は無論抗議するけど、

それが聞き入れられることは無かった。

 

「…ヴァイスよ、お主石破天驚拳を使うつもりであったな?」

 

「はい、楯無がISを使用した以上。

俺も全力を持って応えるべきと判断しました。」

 

「ふむ、お前のその判断は間違えておらぬ。」

 

シュウジとヴァイス君が何やら話しをしているが、

私は勿論到底納得できなかった。

 

「ちょっと待ってよ!

その石破なんとかっていうのを受けても、私はまだ闘える!」

 

先ほどシュウジが言っていた技を放たれても、

霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)の防御性能なら防げると確信していたが、

 

「・・・言いおったな?」

 

そう静かに言ったシュウジの声に圧倒されてしまった。

 

「ならば受けてみるが良い。」

 

シュウジは続けてそう言って、己の中の気を練りだす。

 

「師匠…!」

 

「止めるな!

この分らず屋に流派・東方不敗の真髄を見せてやる!」

 

その様子を見てヴァイス君は慌てて止めに入るが、

それでもシュウジは止まらない。

 

「ハアアアアアアアアアアア!!」

 

瞬間、シュウジの体から視覚出来るほどの気が溢れ出す。

この膨大な気の量は…!!

 

「流派・東方不敗が最終奥義!、

石破ァ!天驚拳ンンンン!!!」

 

膨大な気が最高潮まで達したとき、それは…放たれた。

 

「(駄目、防ぎきれない…!?)」

 

その技を見て、私は自分の愚かさを呪った。

 

「お、お姉ちゃああああああああああん!!!」

 

…簪ちゃんの声が聞こえた。

だけどそれは酷く遠くから聞こえてきたように錯覚した。

 

そして、シュウジの最大の技が爆発となって着弾する。

 

「…ハァ、ハァ!!」

 

…私の横の壁へと。

初めて感じた明確な死の気配に、

私はその場にへたり込んでしまった。

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」

 

私を呼ぶ声に何とか首を向けると、

そこには涙を浮かべている簪ちゃんの姿が。

ふと彼の技が着弾した後を見た、

そこには本来であれば素手では決して砕けるハズが無い壁が、

…綺麗さっぱり吹き飛んでいた。

 

「…私の負けよ、完膚なきまでにね。」

 

それを見て、私は自分の負けを認めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やはりこうなるのか…。
IS学園最強が相手でも苦戦するイメージが湧きませんでした。
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