「やっほー!」
「…お主はいつも唐突だな。」
昼の休憩に入り、
食事を取ろうとするといきなり目の前に束が出てきた。
「して、今日は何の用だ?」
しきりに誰かを探しているから、儂は一応今回の用を確認した。
「ドーくんは居ないね…よし。」
「ドモンがどうかしたか?」
「いやー、実は今内緒でドーくんの専用機を作ってるんだけど。
どんなのが合ってるかふーちゃんに確認したくてねー。」
「何故ドモンの専用機なのに儂に聞きに来る?」
「それはねー…。」
ニヤリと悪戯を思いついた様な顔をしながら、
「いきなり渡してドーくんを驚かせたくて!」
そう言い切りおった。
「…お主。」
あまりの下らなさに儂は頭を抱えそうになる。
こやつが千冬と同い年と言う事を疑ってしまうわ。
しかし、ドモンの専用機か。
「で、ふーちゃん。
何か私のアンテナにビビッ!ってくるのってある?」
「ふむ…あるといえばある。」
「ホント!
さっすがふーちゃん!」
指をパチンと鳴らしながら褒められても、あまり嬉しくはないな。
「…かつてのあやつが乗っていた機体よ。」
「ほうほう、それってどんなの?」
「しばし待て。」
そう言って、儂は紙を取り出す。
そこにかつてランタオ島にて死闘を繰り広げた、
ドモンの機体を描いてゆく。
「…これだ。」
「うわー、ふーちゃん上手ぅー。」
出来た図を束に見せるとしきりに関心していた。
「この程度であれば当然よ。」
「そうかなー?、
ちーちゃんなんて私を書いたら棒人間にアンテナだったよ?」
「それはそれで気になるな。」
しかしあれほどの傑物である千冬が、か。
今度頼んでみるとするか。
「ちなみに、これって何て名前なの?」
「確か、………ゴッドガンダム。」
「ゴッドガンダム…。」
束がその名を噛み締めるように口にし、
「…良いねえ、ビビッっと来たよ!」
「それは良かった。」
「待っててねー!
今日中に作っちゃから!!」
「あ、おい待たぬか!」
「待たないよー!、
善は急げってねえええ!!」
そう叫びながら、
正しく嵐の如く束は去っていった。
「…忙しない奴め。」
まったく、
しかしこれでやっとゆっくりと昼食を…。
「あ、お父さん。」
…取れるハズだったのだがな。
「…フレイ、学園に居るときはその呼び方をやめなさい。」
「善処します。」
分かっているのか、分かっていないのか…よう分からんわ。
アリーナ<ドモンサイド>
「本当に良いのか、ラウラ?」
「ああ、構わない。そこで見ていろ。」
俺は今、ラウラと共にアリーナへと来ている。
いや、正確には勝手に着いてきた…だな。
「俺が居ない間に何があったんだ?」
「お前には関係が無い事だ。」
一応内容を聞こうとするが取り付く島も無い。
「…おい、お前等。
一体何があったんだ?」
そう言いながら、俺は目の前に立つ一夏とシャルルを見る。
「…ヴァイスは黙っていてくれ、これは俺達の問題だ。」
しかし一夏も答えようとしない。
一応名目としては、この3人で鍛錬をする…という事だが。
一夏とラウラとの間に流れる空気は鍛錬のそれではなかった。
「ごめん、ヴァイス君。
理由は後でボクの方から教えるよ。」
「…分かった、ただし少しでも危険と判断したら止めさせて貰うぞ。」
「ああ、分かっている。」
俺は、最早言葉でこの3人は止まらないと判断した。
ならば、拳を通じて語りあってもらうしかない。
一応俺が居るんだ、
最悪何かあっても止める事くらいは造作も無い。
「…準備は良いな?」
「「いつでも!」」
「ああ。」
「それでは…始め!!」
俺がそう合図をすると、
3人は己の思いをぶつけるべく戦いを始めた…。
「…なるほどな、何となくだが掴めてきた。」
3人はそれぞれの思いを相手にぶつけている。
その様子を見て、幾つか分かった事がある。
まずはラウラの思い、
この学園に来てから、ラウラは一度一夏を叩こうとしていた。
俺が居た為寸での所で止められたが、その時はアイツの行動の意図が読めなかった。
しかし、今なら分かる。
どんな思いがあるにせよ、ラウラは一夏の事を憎んでいる。
それに対し、
一夏は憎まれる理由は無いと困惑してはいるが、その思いを受け止めようとしている。
…シャルルの奴は純粋に借りを返してやるという意気込みだが。
しかし、勝負は次第に一夏達へと流れが傾いていく。
単純な人数差もそうだが、
ラウラが繰り出そうとしている武装を先回りして封じてるのが大きい。
「…だが、何故だ?
アイツのシュヴァルツェア・レーゲンは徹底的に情報が秘匿されていたから、
武装の情報をする術は皆無に等しいと言うのに。」
そう、これが分からない。
俺は以前アイツの基地で厄介になってたから知っているが、
その情報は一片たりとも漏らしてはいない。
それだと言うのに、一夏達は完璧に対応していた。
「…まさかアイツ。」
そこで、俺はある可能性に思い至る。
確かにデータベース等で調べる方法は無い…が、
例えば、そう。
それならば色々と合点がいく。
「馬鹿な奴だ、
手の内を晒してしまえば、
対策を取られるなんて事当たり前なのにな。」
そこで一度俺は考えるのを止め、目の前の戦いを見る。
俺の目の前に繰り広げられていた光景は、
シャルルからの至近距離からの一撃を受け、
大きく吹き飛ばされているラウラの姿だった。
「(勝負あり…だな。)」
先ほどの一撃は確実にエネルギーの大半を奪っただろう。
それなら後はどちらかが追撃して、そのまま終了だな。
「負けられない…。」
…なんだ?
ラウラの奴の様子がおかしい?
「私は…負ける訳にはいかない…!!」
「ッ!、シャルル離れろ!!」
ラウラの身に起きている事が尋常では無い事を察知した一夏は叫ぶ。
「アアアアアアアアアアアアアアア!!」
シャルルが離れた瞬間、
ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンが突如として姿を変え始める。
「一体何が…!」
その変貌を一夏は困惑しながら見ている。
…止めるべきだな、これは最早勝負ではない。
「離れろ一夏、…後は俺がやる。」
刀を正眼に構えながら2人の間に割って入る。
「…その刀!!」
しかし、一夏は俺の刀を見て驚愕の声を上げた。
「さ、錆びてるじゃないか!」
…別に研磨を怠っていたわけではない。
この刀は元々錆びている。
しかし、俺はこの刀で明鏡止水の境地へと至る為の足掛かりを見つけた。
ゴッドガンダムと同じく、俺の相棒と呼べるものだ。
「良いからどいてろ。」
だがまあ、それは今話すような内容ではない。
今は一刻も早くラウラを止めるべきだ。
「…いや、ここは俺に任せてくれないか?」
「…なに?」
しかし一夏は、再び俺の前に立った。
「別にヴァイスの腕前が信じられないわけじゃないさ、
…だけど、ここで逃げたらいけない気がするんだ。」
その言葉から、覚悟を感じた。
ならば、それを邪魔するのは野暮ってもんだ。
「…危険と判断したら止められても行くからな?」
「ありがとう、ヴァイス。」
一夏は俺に短く礼を言ったあと、武器を構える。
その視線の先には…既にシュヴァルツェア・レーゲンの姿ではなく。
まったく別の姿になったラウラの姿があった。
「…オオオオオオオオオオオオオオ!!」
「!!!!」
気合一閃、
一夏は咆哮し、ラウラへと攻撃を仕掛けた…。
<ラウラサイド>
「…ハッ!」
ここはどこだ?
何時の間に私は気を失っていた…?
「目が覚めたようだな。」
「…あ!」
声が聞こえた方向を見ると、そこにはドモンが居た。
「…一体何があったんだ?」
ダメだ、思い出せない。
無理に思い出そうとすると頭が痛む。
「…一夏達との勝負の時、お前の姿がいきなり変わった。」
「私の姿が…?」
「ああ、幸い一夏が身を挺したお陰でお前は救い出された。」
「…。」
…目を覚ます直前、アイツと何か話していた気がする。
「後で礼を言うだな。」
それだけ言った後に、ドモンは部屋を去ろうとする。
「…どこへ行くんだ?」
何となく気になったため、行く先を聞いてみた。
「野暮用だ、暫くは戻らん。…千冬の許可は取っている。」
そうドモンは短く返答し、部屋を後にした。
「…一夏が。」
1人取り残された部屋で、私は先ほどのドモンの言葉を考えてしまう。
何故、一夏が私を救い出したんだ?
私はアイツを憎んでいたと言うのに…。
「…あ。」
そこで思い出した。
気絶していた時にアイツと話した内容を。
「…そう、か。そういう事…か。」
私はそう呟き、窓の外を見た。
私の目には綺麗な夕日が写った…。
空港<ドモンサイド>
「…。」
俺は今IS学園を離れて、
ある場所に向かうべく空港へと来ている。
向かう場所は…ドイツ。
ラウラのISに搭載されていたあのシステムについて問い質す為だ。
「アレ?、アレアレアレ??」
ドイツへと行く飛行機を待っている時に、
聞き覚えのある声が聞こえた。
この声は…。
「…束か。」
ISの開発者である、篠ノ之束。
本来は隠れ家に居るハズのソイツが、今は何故か俺の目の前に居た。
「ヤッホー!、
皆のアイドル、篠ノ之束ちゃんだよ!」
束は態々ポーズをつけつつそんな事を言っているが、
生憎今の俺に反応する余裕は無い。
「む、ドーくんってば付き合い悪いなー。
そんなドーくんを私は笑って許しちゃう!」
「…今はお前に構っている暇は無い。」
しつこく絡んでくる束についそう言ってしまった。
「…ホントにどしたの?
もうちょっと反応してそうなのに。」
束がそう言いつつ俺の顔を覗き込んでくる。
…待てよ、こいつは曲がりなりにもISを作った女だ。
もしかしたら先ほどのシステムについて知ってるかも知れん。
「束…聞きたい事がある。」
「スリーサイズは内緒だよ?」
「…先ほど一夏達とラウラの勝負を見ていたのだが。」
「むぅーつれないなー。…それで?」
「ラウラが負けそうな時に、突然アイツのISが変異した。」
束の茶化しを無視して話を始める。
「…あー、分かったよ。
もしかしてそれがドーくんがここに居る理由かな?」
そこまで言ってくるって事は本当に分かったらしいな。
コイツがISを作ったと言うのは眉唾物の話ではないな。
「ああ、結論から言わせて貰う。
…アレはなんだ?」
「うーん…教えてあげても良いけど。
ちょっとここだと話辛いからこっちに来て。」
そう言いつつ束は先に歩いていった。
その歩き姿からは怒りの感情を感じられた。
「ドーくんが言ってるのって、
恐らくだけどVTシステムのことだと思うよ。」
「VTシステム?」
人の気配がしない場所で束は話し始めた。
「そうそう、
正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。
過去のモンド・グロッソのヴァルキリーの動きをトレースするシステムなんだけど、
操縦者の意思を無視して、
機体の限界を超えて無理矢理動かすそのシステム、
は今は禁止されてるんだけどねー。」
…なんだと?
本人の意思を無視してだと?
それはまるで…バーサーカーシステムじゃないか…!
「…で?
なんでドーくんが
隠しても仕方が無いか、
と言うよりもだ、興味を示したコイツをはぐらかすのは得策じゃないな。
「…かつて、俺もアレと同じ様なシステムを見たことがある。」
「へぇー、ちょっと気になるなー。」
「名を、バーサーカーシステム。
外部からパイロットを強制的にコントロールして、
能力を飛躍的に上昇させる代物だ。」
かつて一緒にタッグを組んだアレンビーが、
そのシステムにより後一歩遅ければ死亡する事態になった。
最終的にはレインの奮闘により事無きを得たがな。
「…なるほどね、
それと似たようなシステムを見たから放っておけないって事かな?」
「端的に言えば、だがな。
…それに、俺はラウラの護衛という任に着いている。」
「結構放っておいてる気がするけどねー。」
返す言葉が無いな。
「ん~、そう言うことなら…良いよー。
私も手伝ってあげるー。」
「何故だ?
お前には関係が無いと思うが。」
「関係大有りだよー!
もう怒りすぎて今ならお湯だって沸かせるよ!」
「…態度はともかく、
その言葉に偽りは無いらしいな。」
ふざけている態度からは予想が付きづらいが、
確かにコイツは本気で怒っているな。
俺の中のイメージでは、コイツが怒る事なんて殆ど無いかと思ったが。
「あ、そうだ!
あんな不細工なシロモノを消すついでに、
折角だからデータ採取でもしちゃおうかな!」
「…なに?」
「とりあえず、はいこれ。」
「何だこれは?」
束から手渡されたものは、ペンダントだった。
「俺にこんな物をつける趣味は無いぞ?」
「ふっふっふー!、
それはねー、ドーくんの専用機!」
「なんだと?」
「…の試作型!!」
こいつ、試作型とはいえ何時の前にそんなものを…!
「試しにつけてみてよー!、
きっと気に入ると思うよー!」
「…聞きたい事はあるが、まあ良い。」
束から促されたから…という訳ではないが。
早速俺はISを装着した。
「…これは!!」
そして、その姿を見て驚嘆した。
「所々違う所があるとはいえ…、
間違いない、ゴッドガンダム!」
カラーリングや装備が多少違うとはいえ、
紛れも無い、ゴッドガンダムだった。
「気に入ったでしょ?」
「…ああ、しかし何が狙いだ?」
束の思惑がいまいち掴めん、
何故こいつが俺の為に態々専用機を作った?
「まー、端的に言うと。」
束は一度わざとらしく言葉を一度そこで区切った後に、
「ひ・み・つ♪」
「…まあ良い。」
思わず頭を抱えそうになるが、今はそんなことどうでも良い。
「とりあえず、これを使って潰してくれば良いんだな?」
「そだよー!、
場所とかはこっちでナビするから安心して思いっきり暴れてきて!」
「…分かった。」
俺は短くそれだけ言い、直ぐに飛び立った。
俺の前にあんなシステムを出したんだ。
覚悟は出来てる…って事だな!
その日、ドイツ領から研究所が一つ跡形もなく消えた。
関係者の証言によると、
たった一機のISに研究所が保有するISが全て敗北、
その後機械と言う機械を徹底的に破壊して去っていったと言う。
束がその時のデータを見て狂喜乱舞したのは、また別の話。
VTシステムとバーサーカーシステムって共通点あるなぁって思ってこうなりました。
あとラウラはドモンのヒロイン枠と思った方、申し訳ございません。
アレ(世界三大恥ずかしい告白シーン)を見た私としては、
IS世界のヒロインをドモンとのカップリングにする事は出来ませんでした。