「これは…凄いな。」
暫く歩いていると、大きな屋敷の様が見えてきた。
「でしょでしょー!、
まあ、これはカモフラージュなんだけどねー。」
「これがカモフラージュ?」
「そうそう、本当は…こっち!」
束さんはそう言いながら、
近くの壁に張り付きそのままドンっと叩くと…。
「…これは!」
壁がクルリと回転して束さんの姿が消えた。
紛れもない、これは忍扉!
「いやー、最近普通の設備に飽きちゃってねー。
気付いたらこんなの作っちゃったよー!。
今の私みたいにやれば来れるよー!。」
壁の向こうから束さんの声が聞こえる。
…よし、折角だから試してみるか。
俺は束さんが消えた壁とは違う壁に張り付き、意識を集中する。
…この感じ、行けそうだな。
「…おそーーーーーい!!」
痺れを切らしたらしい、
束さんは再び壁をクルリと回し出てくるが、
そこに俺の姿は無かった。
「…ってアレ?」
つい先ほどまで、その場所に居た俺を束さんは探す。
…しかし、俺は既にそこには居ない。
「束ちゃん、俺はここだ。」
「ふぇ!?」
俺は既に先ほどの壁の向こう側に居る。
やはりな、
俺はドモンに討たれる直前、
生み出したクローンであるシュバルツと同化した。
その時に、恐らくだがシュバルツが持っていた技も俺と同化したのだろう。
試す気はないが、おそらくはシュツルム・ウント・ドランクも使えるハズだ。
「…。」
再び壁をクルリと回す、束さんは姿を表す。
…もしかして怒らせただろうか。
であれば謝罪を…。
「す…。」
「す?」
「凄い凄い!、
なにそれなにそれ!。
機械を使ったの?、
いや機械を使っても壁を通り抜けるなんて出来ないし、
何かしらの外的要因ていう訳でもなさそう、
という事はまさか、今のは忍術!忍術なんだね!!
うわー凄い!、私忍術なんて初めて見たよ!
他にも何が出来るのねえねえねえねえ!!」
「ま、待てそう捲し立てるな…!」
「これを捲し立てるななんて無理な話だよ!、
だって私の前に空想上の代物だと思ってた忍術があるんだよ!、
これは是非とも隅々までしゃぶりつくすように研究して今後の研究に生かしたいよ!」
「わ、分かった。分かったからとりあえず離れてくれ!」
ぶつかりそうな距離まで近付いてきた束さんを何とか引きはがし、俺は一息つく。
「もしかして、キョーくんの前世はNINJA!?」
「…すまない、その話は。」
あまりしたくは無い、
何せドモンを苦しめる切っ掛けになってしまった事でもあるし、
そもそも束さんに言ったとしても理解は出来まい。
「…ふーん、キョーくん。
今天才である私の事を侮ったね?」
俺の考えていた事を見透かしていたのか、束さんは怪しく笑いながら。
「なら、見せてあげちゃう!。私の
そう言って、階段を駆け下りていった。
「あ、危ないぞ!」
「大丈夫大丈夫ー!、
この程度なんて朝飯前だよー!」
階段を踏み外し、落ちていくかと思ったが。
そんな俺の予想を覆すように束さんはあっという間に降りて行った。
「…はは、パワフルな人だ。」
「キョーくんはーやーくー!!」
「分かった、今行く!!」
束さんの俺を呼ぶ声が聞こえてきた為、俺も急いで階段を下りて行った…。
束の隠れ家
「さあキョーくん、括目してみよ!。
これが私が開発したISだよ!!」
束はそう言って、私にある機械を見せてきた。
大きさは、人間よりも多少大きいくらいか。
しかし装甲が薄いように感じられる。
というよりは装甲と呼べる部分があるのは足と腕、
それと背中と頭の部分のみだ。
…という事は恐らくは体の部分は何かしらの不可視の盾があるのだろう。
「…興味深いな。」
「でしょー!、ふっふっふー!!」
そう豊満な胸を反らし、ドヤ顔をしている。
「…これは俺も扱う事が出来るのか?」
「どうだろー、以前は女性しか扱えない様にデザインしてたけど。
最近はポコポコと男性でも扱える人が出てきてるからねー。」
「理由は?」
「これがまた分からないんだよねー、
1人はちーちゃんの弟で、何かしらの特別な要素がある可能性は考えられるんだけど。
後の2人はさっぱりでねー。」
「…なるほどな、ところでその3人の名前は?」
「さっき話したちーちゃんの弟はいっくん。
あとの2人は何だったっけなぁ。
…ごめん、最近忙しくてド忘れちゃった☆」
舌を出しながら謝ってくるが…。
「(…嘘、だな。)
俺はそう判断した。
だが、言いたくないのであればそれなりの事情があるのだろう。
ここは追及しないでおくか。
「(流石にわざと過ぎたかなぁ、でも今教えちゃったら面白くなさそうだし。
キョーくんは追及してこないみたいだからまあいっか。)」
「あ、そうだ。
ちなみにこの子達はね。」
束さんが続けて説明してこようとするが。
「…兵器の形をしているが、元は違うのだろう?
これは予想だが、元々は大型の機械が作業できない場所。
例えば大規模建設現場、後は資源の問題で機械の搬入が出来ない場所。
これは宇宙とかだな、…そこでの活動を想定した物と見た。」
俺は既にそう仮説を立てていた。
「…なんでそう思ったの?」
束さんは俺の言葉に驚きつつも、そう聞いてきた。
「そうだな、いくつかあるが…。
まず一つ、確かに武器と呼べる物を装備している。
しかし、ここに置いてある武器には実弾の類が少ないと思ってな。
宇宙空間で実弾を使うと、処理が面倒だ。」
「…続けて。」
「2つ目は、装甲の薄さ。
無論、他に操縦者を守るための機構は存在していると思うが。
それにしてもあまりにも薄い。
恐らくは装甲が破損して操縦者が傷つくのを避けたいから…そう判断した。」
俺は自分で建てた仮設を束さんに話し終え、
「…厳密に言えば違うだろう。
しかし、当たらずとも遠からずか?」
「…初めてだよ、
私が説明しなくてもそこまで言ってくる人は。」
「それは褒められてるのか?」
「とびっきりの褒め言葉だよ。
でも…うん、キョウジに物凄く興味湧いた!。」
…キョーくんとは呼ばなくなったな。
これは恐らく俺の事を対等の相手と認めたのだろうか。
「キョウジ、早速だけど。
明日までにこれ全部暗記して!!」
そう言って渡されたのは、
古い電話帳以上の分厚さがある本だった。
「こ…これは?」
中々の重さがあるソレを、受け取りながら束さんに聞くと、
「ISの仕様とかその他諸々が書いてある教科書に、
私が色々と付け足したスペシャル版!
いやー、暇だったからやってたんだけど使う日が来るなんてねー。」
「そ、そうか…。
ところで束ちゃん「束」…何?」
「私はキョウジの事を呼び捨てにしてるんだよ?
だったらキョウジも私の事を呼び捨てにして欲しいなぁー。」
…確かに、そうでなければ対等とは言えまい。
「分かった…束、これを明日までにだな?」
「そだよー」
「分かった、適当な部屋を借りるぞ。」
「了解ー、お好きな部屋をどうぞー!」
「では。」
分厚い本を持ち、俺は直ぐに部屋へと向かう。
しかしISか…中々興味深い物だ。
何時かは自らの手で作ってみたいものだ…。
「…いやぁ、流石の私も焦ったよ。」
キョウジは確実にISを初めて見たハズ、
それなのにISが元は宇宙空間での使用を想定した物だっていうのに見抜いた。
その後の考えは正直外れていたけど、
それでも私の考えていたことを見透かされたようだった。
先ほども言った通り、
ISは元々宇宙空間での活動を想定して、開発したマルチフォーム・スーツ。
それを、私の夢を叶える為に使うつもりだった。
だけどISが注目される切っ掛けとなった白騎士事件。
アレの所為で元の構想からかけ離れた道を進んでいる。
…まぁ、ほとんどの人は知らないけど。
あの事件、
私が世界各国をハッキングして日本にミサイルぶっ放したのを、
ちーちゃんに白騎士に乗ってもらって全部壊しただけなんだけどね。
と、ともかく。
あの事件を切っ掛けにISは世界中で運用されるようになった、
…兵器として。
いやぁ、そのあとは困ったよ。
ISを作ったからとか言って、政府に捕まっちゃんだもん。
それで望まない労働を強いられ、コアを作成する日々…!
まあ楽しかったから別に良いんだけど、
それでもやっぱり飽きちゃったんだよねぇ、
勝手に逃げ出してここに来ちゃいました☆
アレ、何の話してたっけ?
まーいいやー!
「束様。」
「お、クーちゃん!」
私を呼ぶ声に振り向くと、そこにはクーちゃんが居た。
その手には私の為に作られた料理がある。
「お、今日もありがとねー!」
「あ…。」
私は早速それを受け取り、いつもと同じように口に運ぶ。
うん、いつも通り美味しい!
やっぱりこれを食べないと1日が始まらないんだよねー!
「ふう、ごちそうさまー!」
「…はい。」
そんな私の様子を見て、
クーちゃんは何か言いたそうだけど、
「あ、そだそだ。
今日から同居人が1人増えるよー。」
「同居人…ですか?
それは3年の間、共に暮らしていたあの方達ですか?」
「ううん、違うよー。
そうだねー…。」
さて、キョウジの事を何てクーちゃんに紹介しようかな。
私と同じくらいの天才…なんて言うのは、私の沽券に関わる。
…あ、そうだ。
キョウジの事を教えるのに丁度良いのがあった!
「そう彼はね…忍者だよ!」
「ニ…NINJA?」
クーちゃんは困惑しながらそう答えた。
「そだよー、さっきなんて何もない壁を通り抜けたんだから!」
「そ、それは気になります…。」
そんな事を話ながら、
私はキョウジが出てくるのを待ち続けた…。
「これは…なるほどな。」
薄暗い部屋の中で、俺は束から渡された本をひたすら読み続ける。
その本に書いてある内容は驚愕の連続だった。
「(これほどの物を1人で考案し、更に実証したのか。)」
それには途轍もない努力が必要だ。
本来研究とは複数人でチームを組み、とり行うもの。
それを束は1人でやってのけていた。
「(はたして俺にも出来るだろうか…。)」
ついそう考えてしまう。
誇るわけではないが、
俺は研究者としてはそこそこ名が通っていた。
そして父親と一緒にアルティメット細胞を開発、量産する事に成功した。
正しく利用すれば、
汚染物質の分子レベルでの除去などを行うことでき、
それは汚染されていた地球環境の浄化に大いに役立つはず…だった。
しかし、この願いはある男によって曲げられてしまった。
…ウルベ・イシカワ。
自己増殖・自己再生・自己進化能力を兼ね備えていたアルティメット細胞を持ち去り、
あまつさえ全宇宙の支配という、下らない野望に利用されそうになった。
結果として、俺はパイロットが居なかったアルティメットガンダムへと乗り込み。
地球へと降りる事によって辛うじて難を逃れたが…。
「…いや、今はそのことは止そう。
それよりもこれを理解し、読破することが先決だ。」
優先順位を間違えてはいけない、
過去の事を振り返るなんて事は後でも出来る。
今は、今しかできない事をやらなければならない。
そう思い直し、俺は再び目の前の本へと集中しだした…。