「…ここか。」
「そうだよ!!」
あの後軽く準備をしてから、俺と束は共に海へと来た。
…来たのだが。
「…もう少し離れてくれ。」
何故か密着状態な俺と束。
「無理だよー、このロケットは元々一人用だからー。」
「何故2人で行くと行った矢先に一人分のしか用意していない!」
「楽しそうだったから?」
「…聞いた俺が馬鹿だったよ。」
現在の体勢だが、
束がメインでコントロールする為束が前で、
俺がその後ろにほぼ密着している形になっている。
なんと言うかだが、物凄く気まずい。
一応聞いては見たのが、触りたければ触れば?と言われてしまった。
据え膳食わねばなんとやらという言葉はあるが、
生憎そこまで肝が据わっている訳ではない。
そもそもそれで手元が狂って墜落、
2人仲良く魚の餌というのは勘弁願いたい。
「お、あれは!!」
モニターしていた束が声を出す。
「どうした?」
「フッフッフー、いっくんはっけーん!!」
いっくん?
あだ名からして一郎とかそんな名前だとは思うが…。
「いっくんとは誰だ?」
「世界で2人目の男性適正者だよー。」
「…成程な。」
そのいっくん…という人物の重要性はあまり分からないが、
恐らくは束にとっては重要な人物なのだろう。
「ねえねえキョウジ、一個聞きたいんだけど。」
「何だ?」
「その面白い格好は何?」
「顔は晒したくないのでな、変装…という奴だ。」
ちなみに今の俺の格好はかつてシュバルツと名乗っていた時の物だ。
「…変か?」
「面白いから良いと思うよ?」
…面白い、そうか…面白い、か。
…今度変装という物を学ぶとしよう。
「目標、いっくんの近く!
着陸したらキョウジはヴァイスを探してねー。」
「分かった、特徴は?」
「多分赤いハチマキ巻いてるから直ぐに分かるよー。」
「赤いハチマキか…、分かった。」
しかし赤いハチマキか、否が応でもドモンを思い出してしまうな。
イカンイカン、ここは恐らくは別の世界だ。
この様な事を言っても仕方が無い。
「それじゃあ、レッツゴー!」
という、束の声と共に目的地へと向かった…。
「…聞いていないぞ。」
私は現在、森の中に居る。
「束め、まさか着陸寸前で私を落とすとは…。」
束の奴め、付く寸前であろう事か私だけ落とすとは。
まったく、ゲルマン忍法をシュバルツから引き継いでいなければ死んでいたぞ。
「しかし…、ここはどこだ?」
見渡す限り、周りは木だ。
これでは人を探すのも一苦労。
「ここか…!」
「む?」
さてどうしたものかと思案していると、声が聞こえた。
その方向を振り返ると、
そこには片方を眼帯で隠した少女がいた。
丁度良い、あの子に聞いてみよう。
「そこの御仁、少々尋ねたい事がある。」
「…人?、それにそのマスクの配色は…!」
…やはり変なのだろうか?
「そのマスクの配色、それは我がドイツの国旗と同様の物!
お前はドイツの者か?」
そう言われて気がつく、
確かにこのマスクの配色はドイツの物と同様。
とすると、この少女はドイツの者か?
「…厳密に言えば違う。」
「そ、そうか…すまない、変な事を言って。」
「いや、気にするな。」
「そういえば私に聞きたい事があるのか?」
「うむ、実はだが人を探している。」
「人?」
「そうだ、ヴァイス…という名に聞き覚えはあるか?」
「なに…?」
私がヴァイスの名を口にした瞬間、少女は明らかにこちらを警戒してくる。
これは…早速当たりという奴だな。
「…ヴァイスに何の用だ。」
用か、流石に馬鹿正直に束に言われて探しているとは言えん。
「ある人より頼まれ事をされているだけだ。」
「信用できんな…さては貴様。」
そう言って少女は構える。
やれやれ、あまり荒事を起こしたくは無いのだが…。
「答えろ、さもなくば貴様を拘束する。」
これは穏便に事を済ませそうも無いな。
…仕方あるまい。
「断る。」
「ならば、拘束させて…っ!?」
言うが早いか、すぐさま少女はその場から飛びのいた。
「ほう、中々の反応だ。」
「貴様…!」
少女が居た場所には私のクナイが刺さっている。
少し痛めつければ直ぐに大人しくなると思ったが…侮っていたようだ。
「敵対行動を確認、速やかに制圧する!」
「やってみるが良い!、
このシュバルツ・ブルーダーを侮ってもらっては困る!!」
「…シュバルツ・ブルーダーだと!?」
私の名を聞いた瞬間、少女の動きが止まる。
「我が名がどうした?」
通常であればそのまま攻撃を仕掛けるが、
ここは私が居た場所とは別の場所だ、
一つ相手の出方を窺うとしよう。
「…一つ聞きたい。」
少しの間考えた少女は私にそう言ってくる。
「答えるかどうかは内容次第だ。」
「…この名に聞き覚えはあるか?」
「聞き覚えだと?」
何故だ、少女がそう言ってから高鳴りが起こる。
…もしや!
「ドモン・カッシュ。」
「…その名をどこで!!」
「その反応…聞き覚えがあるという事だな。」
何故だ、何故少女が我が弟の名を知っている!
別人という可能性もあるが、
このタイミングでのこの問答、人違いとは思えぬ!
「…先ほどの無礼を詫びる、案内するから付いて来い。」
「あ、ああ…。」
しかし、少女は答えること無く歩き出した…。
岩場<ドモンサイド>
「たぁ!!」
「どうした、その程度か!」
俺は今、アイギスと組み手をしている。
あまり気乗りではなかったが、どうしてもというので引き受けた。
「動きに無駄が多いぞ!」
「クッ!」
しかし、今しがたアイギスに言った通り。
その動きには無駄が多い。
まるで何か考えながら行っているようだ。
だが、それでは俺に攻撃を当てることは出来ん。
「…止めだ。」
「え…。」
アイギスが再び攻撃を仕掛けようとしてきた瞬間、
俺はそう宣言した。
「何故ですか…!」
納得が言っていないアイギスはそう叫ぶ。
「お前の動きは無駄が多い、
ただの無駄であれば気には止めんが…何に恐れている。」
「え…。」
こいつの今の感情は拳を通して俺に教えてきた。
アイギスは今、何かに怯えている。
それがそのまま俺にも伝わってきた。
「師匠とお前の組み手を何度か見ているが、
その時のお前はもっと生き生きとしていた。
それが今はなんだ?
拳の中に恐れや迷いの感情しか感じられん。」
俺は感じたことをそのままアイギスに伝える。
人に物を教えるのは苦手だが、何もしないよりは良いだろう。
「…話せるのであれば話せ、力になれるかも知れん。」
「…やはり拳に嘘をつけませんね。」
俺の言葉を受けたアイギスは観念したようにして、
「実は…このまま拳を極めても良いか、迷っているのです。」
そう話し始めた。
「なに?」
「…ソーマが殺されそうになった時、
私は怒り、憎しみ、殺意…そう言った感情に支配されました。」
そう話し続けるアイギスの体は震えている。
「…今回は偶然誰も殺める事は無かったのですが、
もし次に同じ感情に支配された時、
私は自分を止める事ができない…それが怖い。」
…成程な、少し理解できた。
「…アイギス。」
「はい…。」
「その迷いに対して、俺は答えることは出来ん。」
「…。」
「…だがな、経験者としてのアドバイスならしてやれる。」
「兄上にもあったのですか…?」
「ああ、何度もある。
そしてその度に何度も危機に陥った。」
「…兄上はその時どのように?」
「明鏡止水。」
「明鏡…止水?」
「そうだ…邪念がなく、澄み切って落ち着いた心。
それこそが明鏡止水。」
「邪念がなく、澄み切って落ち着いた心…。」
「もし再び負の感情に支配されそうになった時、その心を思い出せ。
そして明鏡止水を真に理解した時、お前は確実に強くなれる。」
アイギスの頭に手を置き乱暴に撫で回しながら、
「今は大いに悩み、迷え。
その経験は必ず武闘家としてのお前を成長させる糧になるからな。」
「…はい!」
「フッ、良い返事だ。」
返事に満足した俺は、アイギスの頭から手を離す。
「ヴァ…ヴァイス…!」
その瞬間、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「その声はラウ…どうした!!」
声のした方向を見ると、そこには傷だらけになったラウラの姿が…!
「に、逃げろ!
お前を殺そうとする刺客が…!」
「なに…!!」
何故だ!、
この世界で俺の正体を知る者はそう多くは無いハズ!
「フフフフフ…。」
「誰だ!!」
姿が見えない第三者の声が響いてくる。
「見つけたぞヴァイス!、その命…貰い受ける!!」
クッ!、
迷っている暇は無い!!
「アイギス!、ラウラを連れて逃げろ!!」
「兄上は!?」
「俺は逃げん!、コイツを捕らえて話を聞かせてもらう!!」
この声が誰だあれ、ラウラを傷つけた者に容赦はせん!!
「ゆくぞおおおおお!!」
「来い!!」
謎の声が叫び声を上げ、その姿を表す…!!
「シュトゥルム、ウント、ドラングウウウウウウ!!!」
「なに、この技は…!!」
謎の声は両手に持っていた刀毎高速回転し、俺に攻撃を仕掛ける。
忘れもしない、この技は…!
だが声の主が誰であれ、この技だけは受けるわけにはいかん!
「ゴッドスラッシュ、タイフウウウウン!!」
刀を抜き、同じ様に高速回転をしながらお互いの技がぶつかり合う…!
「フハハハハハ!、
更にやるようになったな、ドモン・カッシュ!!」
ぶつかり合った技の衝撃で周りの岩が全て砕かる。
しかし、そんな事は今はどうでも良い…!!
「この声、この技、そして俺の名前…。
まさか…!!!」
「その通りよ!、
久しぶりだな、我が弟よ!!」
「に、兄さん!!
本当に兄さんなのか!!」
「我が名はシュバルツ・ブルーダー、
そして、貴様の兄の名を持つ男だ。」
刀を仕舞い、兄さんは覆面を外す。
ああ…紛れも無い…!!
「兄さん…兄さん…!!」
「…久しぶりだな、ドモン。
元気そうで何よりだ。」
「に…兄さああああああん!!」
「おっと。」
思わず俺は兄さんの元まで走る。
しかし、分からない。
何故死んだハズの兄さんが…!
「分からないって顔をしてるな、実は俺も分かっていないんだ。」
俺が言おうとした事を兄さんは先に言う。
「…では、何故ラウラを?」
「ああ、その事か。…実はな。」
「シュバルツ、と言ったな。」
「ああ。」
シュバルツを案内しながら、
「一つ提案があるんだが…。」
そう言ってきた。
「提案?」
「ああ、お前はヴァイスの知り合いの可能性が高い。
だがそれを信じた訳じゃない。
一つ、手合わせを願いたい。」
そう言って、先ほどと同じ様に構えを取る。
「断ったら案内はしないぞ?」
「…仕方あるまい。」
シュバルツも同様に構え、手合わせを行った。
結果はシュバルツの圧勝だった。
「…その時に与えた傷であのような使い方をされるとは思わなかった。」
ふとラウラのほうを見ると、
したり顔をしながらこちらを見ていた。
「…言いたい事、聞きたい事は山ほどあるけど。」
一度呼吸をおいてから、
「また会えて嬉しいよ、兄さん!」
「…ドモン。俺もだよ。」
そう再会を喜び合った…。
ちょっと無理あるかなぁとは思いましたが、無事に再会
次は福音戦かなぁ。