「おっかえりー☆」
束からの仕事を終え、
儂は再び隠れ家へと戻ってきた
あの程度であればISを使用するまでも無かったが
己が持つ武器の性能を把握したかったと言うのもある
なのでISを使用し、派手に暴れさせてもらった
結果は・・・大変満足がゆくものであった
ハイパーモードこそ使うことは無かったが
以前使用していたマスターガンダムとほぼ同性能であった
これならばどんな敵が来ても遅れは取るまい
「戻ったぞ」
そう考えながら束へと返答をした
「いやーそれにしても凄い暴れっぷりだったねぇー」
恐らくモニターしていたのであろう束からそう感想を言われる
「IS乗りは居なかったからな、
あの程度の兵器を破壊する事等赤子の手を捻るよりも容易い」
そう答えながらも椅子に腰掛ける
全力ではないとはいえ少々疲れがある
まったく、
年は取りたくないものだ
「ちなみにだけどさー、
ふーちゃんって生身だとどこまで出来るの?」
「どこまで・・・というのは試したことは無いが、
我が弟子と共に己の身一つで倒壊した高層ビルを蹴飛ばしたことは有る」
「いよいよ人間辞めてるよねそれ!?」
ドモンに石破天驚拳を会得させた時の事を思い出す
あの時は儂が怪我を負ってしまうと言う不覚を取ってしまった
とはいえ元々はドモンに修得させるつもりではあった
故にあの状況は最適と言えた
「まったく・・・私も大分常識無い方だけどさ、
ふーちゃんの場合は更にそれを軽く超えるよね」
己が知っていた常識と言うものが音を立てて崩れているであろう束はそう言った後に
「とりあえず、ほいコレ」
そう言って端末を渡してきた
「これは?」
始めて見る機械を受け取りつつ束に聞くと
「この世界での・・・まあ携帯電話みたいなものだよ、
それと約束通り戸籍も作っておいたよ」
「手が早いな」
「失敗するなんて思ってなかったからねー、
使い方は分かる?」
「分からぬ」
「即答だねー」
そんなやり取りをしつつ
端末の操作を教えてもらっていると
「な、縄を解け・・・!」
そう声が聞こえてきた
その方角を見ると
どうやら例の3人が目を覚ましたらしい
こちらを忌々しげに見ていた
「お、やっと目を覚ましたかー」
束も気が付いたらしく
儂と同様に3人を見た
「私達は基地に戻らなければならない!」
手酷く痛めつけられたと言うのに
隊長の女は威勢良くそう言ってきた
「うーん、君達の基地に戻してあげたいのは山々なんだけど」
本心ではない言葉をこうも容易く言えるとはな
まあ良い
ここは束に任せよう
「ISが無い君達は一体どうやって戻るのかな?」
「な、なに・・・!」
隊長の女はそう言って意識を集中するが
ISは装着されなかった
他の2人も同様だ
「か、返せ!」
「返せって言われてもねぇ、
もう君達のISはバラして他のISにしちゃった☆」
なるほど
これで得心がいった
こやつ等のISを取り上げた後
速やかに分解し取り出したコア3つ分を
儂のマスターガンダムに移植した・・・という所だろう
中々にえげつないことをしおるわ
「そ・・・そんな・・・」
捕虜達の表情は絶望に沈んでいる
それも仕方が無き事だろう
ISのコアと言うものは個数が決まっている
故にそれを与えられるという名誉は如何ともしがたい物が有る
それを儂が相手だったとはいえ
生身の男に負けた挙句
取り上げられ解体されたのだ
心中察するに余る
「ついでに言うとぉ、
君達が所属してた基地、ついさっき壊滅させちゃった」
無邪気に舌を出しながら
まるで子供が悪戯を親に見つかった時の様な反応を見せる
ここで儂は束の意図を理解する
こやつ、この3人を引き込む気だな
「そ、そんな与太話を信じられるか!」
隊長の女が否定しているが
恐らくは今の言葉は自分でも信じているわけでは有るまい
事実
奴の額には汗が浮かんでいた
「もう、束さんは嘘をつかないんだよ?
壊滅させる為に行ってもらったのってそこに居るふーちゃんだからね?」
「・・・では、本当に」
自分達が為す術も無く蹂躙された時の事を思い出したのであろう
3人は一斉に儂を見ながら震える声でそう言っていた
「うん本当、
まあ早い話が見せしめって奴?」
見るものが見たらゾッとするような顔で
束は言い切った
まったく
あそこに居る人間は誰一人殺してなどおらん
・・・機械と言う機械は徹底的に潰させてもらったがな
更にご丁寧に束特製のプログラムを流し込んだのだ
恐らくあの基地は二度と使い物になるまい
「わ、私達は・・・どうすれば・・・」
「・・・お主達、親はどうした」
可能な限り優しい声で儂は3人に声を掛ける
飴と鞭、と言う奴だ
「・・・居ない、
身寄りが無い私をあの基地が拾ってくれた」
「「私も・・・」」
3人はそうポツポツと語りだした
ここで口を挟むのは野暮と言うもの
儂は静かに3人の話に耳を傾ける
「IS適正があったのは偶然だ、
基地の人達は大いに喜んでくれたこれで自分たちも戦えるって、
無論私達も嬉しかった、
決して余裕があったわけではないのに
拾ってくれた人達に恩返しが出来るって・・・
それなのに・・・敵に捕縛され、あまつさえISを奪われてしまい、
更に基地は壊滅してしまうなんて・・・」
つまり、
こやつ等には帰る場所は無い、という事か
・・・まるで今の儂のようだな
「私達、これから一体どうすれば・・・」
「隊長・・・」
ふむ、
こやつ等の話を聞き儂の意思は固まった
「束よ」
「良いよー」
儂が言わんとしている事が既に分かっている束は直ぐに返答をしてきた
「おい小娘共」
束の許可は得た
ならば、後はこやつ等次第だ
「なんだ・・・」
力無く隊長の女は返してきた
「帰る場所が無い、そう言ったな?」
「それがどうした・・・」
「ならば、儂と共に来い。
今の儂もお主等同様帰る場所は無い。
縁あって束の元におるが近いうちに離れるつもりだ」
「なに・・・?」
信じられない
そんな様子で隊長の女が答えてきた
「そのついでだ、お主等を一から鍛えてやる。
途中で死ぬかも知れぬが
もし修行を終えれば力を得ることが出来る、
その時儂の元を離れるかどうか決めるが良い」
既に儂の力の一端を己が身で味わった3人は顔を見合わせる
こやつ等にとっても悪い話ではないハズだ
「・・・一晩、時間をくれ」
「構わぬ、
もしこの申し出を受けられぬという事であれば
どこへなりとも失せるがいい、縄は解いてやる」
そう言って儂は束より借りた布で縄を切り裂く
拘束を解かれた3人は暫くの間俯いたままであった
「さて」
「どっか行くのー?」
「儂が此処に居てはこやつ等は落ち着くまい、
折角だから鍛錬でもしてくるとする」
「いってらー」
そう言って束は手をヒラヒラさせた後
儂は扉を潜り外へと出た・・・
「フゥー・・・」
時刻は深夜
鍛錬を一先ず終えた儂は新鮮な空気を体に循環させるべく静かに座禅を組む
思えば、
このように静かに鍛錬をしたのは何十年ぶりだ
地球に絶望し、
デビルガンダムと共に人間を排除し
地球を再生させるという計画を行うと決めてから
儂はただその為だけに動いた
既に限界を迎えていたキョウジの変わりに
ドモンをデビルガンダムのコアにすると決めてから
ドモンの鍛錬に付きっ切りだった
しかし
あのガンダムファイト最終戦の時
儂はドモンに叱咤され気付かされた
人間もまた地球の一部
それを排除するなど、地球を破壊すると同じことだと
そして、最後は石破天驚拳の打ち合い
そこでドモンは己のオリジナルの技を放ち、
等々師である儂を超えた
ドモンが真のキングオブハートになった瞬間でもあった
その瞬間に立ち会えた儂は幸運だ
不治の病にかかり余命幾ばくも無い身であったというのに
地球を破壊しようとしていた身であったというのに
その最後はとても幸福なものであった
「ここに居たんだねー」
暫く座禅を組んでいると束の声が聞こえた
「束か」
「そだよー、
随分長い時間鍛錬をしてたんだね」
儂の隣に座りながら静かに言ってくる
「うむ、
ここ数十年、自分の為に修行をしていなかったからな」
「強いもんねーふーちゃん」
「いや、儂は弱い人間だよ
自然を破壊していく人間に絶望し、
人間を滅ぼそうとしていたくらいだからな」
「ふーちゃんにもそんなときがあったんだね」
「ああ、
だが、弟子の言葉で気付かされたよ
人間もまた地球の自然の一部だとな」
「ふーん・・・」
興味なさげに束は相槌を打ってくる
まあそれも当然だろう
これは儂が生きてきた世界での話しだ
束が天才とはいえ
実感までは湧くまい
「それじゃあ、
あの3人を鍛えるって提案はその罪滅ぼし?」
「・・・さあな」
実際の所
何故あのような提案をしたのかは分からぬ
ただ何となくではあるが
放っておけなかった
そんなところだろうな
「ふーん、まあ良いや」
「戻るのか?」
「そだね、やる事もあるからね」
そう言って束は恐らく来たであろう道を戻っていく
そのやることというのはどんなものか分からぬが
まあ放っておいても問題なかろう
「・・・束よ」
「なにかなー?」
そういえば
一つだけ言い忘れていたことがあった
「礼を言う」
色々と骨を折ってくれたことに対する礼だ
「フフ、変なふーちゃん」
儂が言わんとすることに気付きながらも
あえて茶化すように言ってから
静かに離れていった・・・
翌日
「さて、先日の答えを聞かせてもらおうか」
丁度3人が目覚めたタイミングで聞く
儂の提案を受けるか否か
別に断られても構わぬ
こやつ等からすれば
儂はこやつ等を拾ってくれた基地を壊滅させた怨敵
寧ろ断られる可能性のほうが高かった
「・・・お願いします」
たっぷり数十分
まず声を出したのは隊長の女だった
「私も・・・お願いします」
次に最初に倒された女
「・・・ごめんなさい」
最後に二番目に倒された女が答えた
「一応、理由を聞いておくとする」
「確かにアンタは私達の基地を壊滅させ、
他の皆を殺した「儂は誰一人殺しておらん」・・・へ?」
儂の言葉が予想外だったのか
隊長の女は素っ頓狂な声を上げた
「え、いやだって、基地は壊滅させたって・・・」
「お主等の頭の中は壊滅=皆殺しか?」
「「「・・・あ」」」
3人は思い違いがあったのだろう
漸くその事に気が付いたとばかりの反応をしてきた
「別に壊滅させるのに人員を皆殺しにする必要は無かろう
例えばその基地に存在する兵器を全て破壊したり
基地を運営していくにあたってのシステムを崩壊させるだけでも良かろう」
「・・・という事は」
「お主等を育てた人間は誰一人死んではおらぬよ、
・・・少なくとも儂が襲撃したタイミングではな」
儂の言葉を聞いた3人の表情は明るくなる
まだ希望はあったのだと
ふと束を見るとあーあー言っちゃったといわんばかりの表情だった
「さあ、この事実を受けて先ほどの返答を変える気はないか?」
続きを促すように儂は3人に再び聞いた
「「「・・・ありません」」」
3人は同じ様に返答してきた
「ならば、儂の提案を断ったお主。
この場所の事は決して口外するな、
まだ死にたくはあるまい」
儂の提案を断った者を見るとしきりに頷いていた
あのような思いはゴメンなのだろうな
「では、儂の提案を受けた2人よ
お主等の名前を聞いておこう」
「私はアイギスと呼ばれていた」
まず最初に名乗ったのは隊長の女・・・アイギス
「私はソーマって呼ばれてました」
次に名乗ったのは最初に倒された女・・・ソーマ
「アイギスにソーマだな、
儂の名は東方不敗、マスターアジアとも呼ばれていた」
「え、初耳ー
そっちのが面白そうだったのに」
束が茶々を入れてくるが今は無視を決め込む
「さて、アイギスにソーマよ
儂の修行は厳しいぞ?」
「望むところだ!」
「はい!」
残る1人の女は束に任せ
儂は2人に言うと
2人共力強く返事をしてきた
さて、他人を修行するのは久しぶりだな
力加減を間違わぬようにしなければな
この日より
東方不敗は2人を一人前にするべく厳しく修行をつけた
2人は後に語る
どんな困難が立ち塞がろうと
先生が私達に施した修行に比べれば全然マシだね・・・と
そして時間は経ち・・・
次回より原作の時系列になります