「む、今日は何だか騒がしいな」
IS学園に清掃員として潜入して早数日
今ではすれ違う生徒達と挨拶をする程度には馴染めたぞ
最初の頃は興味深々といった様子で遠くから眺められるだけであったが
特に騒がずに行っていればホレ、この通りよ
しかし
静かな朝だと言うのに
何やら騒がしい
そう思っていると
「あ、清掃員さん、おはようございます」
そう生徒に声を掛けられた
「うむ、おはよう。
何やら今日は騒がしいが何かあるのかね?」
「そうなんですよー!」
儂がこの騒ぎの原因を聞くと
生徒は話したくてしょうがないのか目を輝かせてきた
「今日はなんと一夏君とセシリアさんが
クラス代表を決める為の模擬戦をやるんですよ!」
「一夏君は分かるがセシリアとは誰だ?」
「えーとですね!
セシリアさんはイギリスの代表候補生で
一週間前に行われたクラス代表を決めるSHRで
何か色々あってISでの模擬戦を行うことになったみたいです!」
「色々・・・か」
こやつの話だけではいまいち人物像が掴めぬな
可能であればその模擬戦を見たいものだが・・・
「その模擬戦はどこで行われるのだ?」
「えーとですね、
確か放課後のアリーナですよ!
くぅー、楽しみです!!」
「そ、そうか。
とりあえず早く行きなさい
儂が止めておいてなんだが、SHRに遅れてしまうぞ」
「あ、そうでした!
織斑先生の教簿攻撃は効くのでなんとしても避けなければ!
失礼します、お仕事頑張ってください!」
「ああ、気をつけて行きなさい」
言うが早いか
生徒は正しく飛ぶように走り出して行った
「ふむ、放課後のアリーナか」
儂は直ぐ頭の中で今日の掃除予定を組み替えていく
・・・うむ、午前中には全て終わるな
儂は一夏対セシリアの模擬戦を見るべく
急ピッチで掃除を始めた・・・
放課後
「やれやれ、凄い熱気だな」
アリーナの観客席に着くや否や
多数の生徒の姿が見受けられた
「さあさあ、どっちが勝つと思いますか!」
・・・どさくさに紛れて賭け事をしている輩も居るな
そやつは後ほど千冬に告げ口しておくとしよう
学生の身分で賭け事はいかん
「なんだ、シュウジも来たのか」
「千冬先生ではないか」
丁度良い席を探していると
今来たばかりであろう千冬から声を掛けられる
「一夏とセシリアの模擬戦を見に?」
「まあ、そんなところよ」
特に隠すような事でも無い為
儂は正直に千冬に言う
「千冬先生よ、お主の見立てではどちらが勝つと思う?」
「・・・そうだな、
ISの錬度で言えばセシリアが圧倒的に有利だ、
アイツも専用機を持っているしな」
ほう、専用機持ちか
まあ考えてみれば当然か
セシリアなる者はイギリスの代表候補生と聞く
それならば国の面子を守る為、
専用機を与えていても不思議ではないな
「だが、一夏にも勝ちの目はある
アイツが白式の力を引き出せれば・・・」
「白式の力?」
「・・・いや、忘れてくれ。
私はもう行くとするよ、今回の立会人なのでな」
「・・・うむ、承知した」
そう言って千冬はアリーナへと下りて行く
しかし、白式の力か
興味があるな
暫くそのまま眺めていると
やっと2人がアリーナへと姿を表した
「男の方が一夏で女の方がセシリアか」
事前に得ていた情報で
どちらが誰なのかを確認する
「あの装備、恐らく中距離から遠距離型の装備か」
セシリアの装備を見ると
かなり大きいライフルを構えていた
無論それだけではあるまい
恐らくは他の装備がかなりあるはずだ
あとは一夏の方だが・・・
「・・・実体剣のみだと?」
一夏が持つ武器
それは己の身長の半分を超える刀だった
とすれば、
恐らくは近距離万能型か近距離特化型のどちらか
となれば大体の試合の流れは想像がつく
セシリアの放つ攻撃を掻い潜り
一夏が攻撃を当てる
逆に言ってしまえば
セシリアは一夏を近付かせなければ良い
さあて、どうする?
「それでは・・・開始!」
試合展開を予想していると
千冬が試合開始の合図を出す
それと同時にセシリアは一夏から距離を取った
「さあ、踊りますわよ!」
先制は、やはりセシリア
腕に装備している大型のレーザーで距離を離しながら射撃をしている
ふむ、中々の威力よ
直撃すれば儂とてダメージを受けるであろうな
対して一夏はまだISの操作に慣れていないのか
一発一発をギリギリで回避していた
「・・・これは」
まるで勝負にならんな
詰まらん、これでは仕事を早く終わらせた意味が無いと言うもの
「・・・ほう」
暫く同じやり取りを続けていたが
直ぐに変化が起きた
ISの扱いに慣れてきたのか
一夏は余裕を持って回避しだしている
さあ次はどうする
このまま突っ込んでいっても恐らくは迎撃される
「成程な、確かにその戦術は有効だ」
次に一夏が起こした行動は
初撃のレーザーをバレルロールで回避し、
次のレーザーが届く前に着実に前へと進んでいる
単発レーザーという性質上
自分に向かってくるのは必ず一撃のみ
その隙を縫うように進みだした
「中々やりますわね、
ではこれならばどうですか!」
「アレは!」
レーザーでは有効打にならないと判断したセシリアは次の武器を射出する
見た目で言えば先ほどの板のようなもの
だが、
あれは恐らく・・・自立起動兵器!
「な、そんなの反則だろ!」
複雑な起動で攻撃を仕掛けてくる自立起動兵器相手に
流石に掻い潜るのは不可能と判断した一夏は再び距離を取る
「持ちうる武器を有効に活用してこその戦いですわ!」
うむ、正しくその通りよ
セシリアの言う事は全く間違えておらぬ
尚も続く攻撃に一夏は回避するのが精一杯といった様子だ
・・・だが
このままでは一夏は敗北するな
攻撃を避けているとはいっても
全ての攻撃を避けているわけではない
着々と一夏のISのシールドが削られている
しかし
「動きが単調すぎるな」
一夏の回避行動が、ではなく
セシリアの自立起動兵器の動きがだ
今現在射出されているのは4基
その内の2基を陽動として使い、
もう2基で攻撃を仕掛けている
そして儂の見立てが正しければ
自立起動兵器をセシリアが使用しだしてから
一切動いていない
恐らくあの兵器の使用に多大な集中力を使っておるのだろう
なれば後は簡単よ
自立起動兵器の攻撃を全て回避し、
4基全てを置き去りにする程の速度で持って接近し一太刀浴びせればよい
さあどうする一夏よ?
貴様がこの事に気が付かなければ敗北するのは必定よ
「・・・そうか!」
どうやら気が付いたようだな
恐らく一夏の頭の中ではどう回避するかのシミュレートをしている
さて、ここが正念場よ
「これで・・・どうだあああああ!」
「なんですって・・・!」
「クックック・・・ワッハッハッハッハ!!」
これは愉快!
まさかただただ真っ直ぐ全力でブーストを行い
無理矢理置き去りにするとはな!!
中々に思い切りが良い少年ではないか!
「捉えたぜ!」
「甘いですわ!
ブルー・ティアーズは6基あるのですわよ!」
「なにっ!!」
あと一息で届くと言う瞬間
セシリアは隠していたであろう残り2基の自立起動兵器で一夏を素早く包囲
一斉射撃を行う
「くそっ・・・!」
慌てて急降下することにより直撃を避けられはしたが
甚大なダメージを受けたらしいな
一夏の残りのシールドは4割、といった所か
だが、
瞬間奴の装着しているISが光に包まれる
・・・もしや
いや、流石に無いだろう
初期状態のまま戦っていたというのは
「・・・あの阿呆め、一度も装着しておらんかったな」
結果として儂の推測は当たっていた
一夏が装着していたISは先ほどまでの灰色から
その名が指し示すとおり白を基調とした物となっていた
さあて、装備が変わってどうなる?
その力、儂に見せてみ・・・
「って、うわあああああああ!」
・・・なにから何まで可笑しな奴よ
モニターに表示されているのは
勝者 セシリア
どうやら一夏はエネルギー切れになったらしい
しかし、
現在の高さは200mを越えておる
あのまま地面に叩きつけられれば無事では済むまい
折角肉薄し、切りつければ勝っていたと言うものを
・・・仕方あるまい
この様な事で怪我をするのも馬鹿らしい
ここは一つ、手を貸してやるか
「ハアアアア!」
「「なっ!!」」
儂は座っていた席から跳躍し、
クロスを一夏とセシリアに撒きつけ、
儂はそのまま着地
一夏はゆっくりと下ろす
「お・・・重いですわ・・・!」
流石に腕一本で支えるには重過ぎるらしい
セシリアは額に汗を浮かべながらも何とか耐えていた
「踏ん張れよ小娘!」
「あ、貴方がどなたかは、存じませぬが!
このまま、一夏さんが叩きつけられるのを、見ている訳には参りません・・・!」
そうして数分後
無事にゆっくりと一夏を地面に下ろすことに成功した
「・・・シュウジよ、なにをしている」
直ぐ近くには千冬が居る
「勝負は既に決した、
ならば不必要な傷を負う事は無いと判断したまで・・・何奴!」
千冬と話している最中
儂に向かって駆け出す影を2つ視界に捉えた
「ハアアアアア!」
「タアアアアア!」
「お主等か、ならば!!」
あの2人は・・・
「流派!」
「「東方不敗は!!」」
「王者の風よ!!」
「「全新!」」
「系列!」
「「「天破侠乱!」」」
「「「見よ!東方は赤く燃えている!」」」
アイギスにソーマだ
流派東方不敗が3人居る
ならば、これをやるしかあるまいよ!!
「・・・なんだこれは」
「「・・・さあ?」」
目の前で行われた舞踏に対し
千冬達は顔を見合わせて考え込んでいる
だが、
今はその様な事どうでも良いわ!
「フッフッフ、少しは腕を上げたようだな」
「お久しぶりです、師匠!」
「何故ここに居るのですか、先生!」
「後で説明してやる、
だが今はこの場を後にするぞ」
「「は、はい!」」
「ようし、ついて参れ!」
言うが早いか
儂はすぐさま駆け出す
アイギスとソーマも遅れを取らぬよう
儂の後を走り出した・・・
屋上
「それで先生、何故IS学園に居られるのですか?」
あの後
儂達は人目の付きにくい場所で話をする為に
屋上へと足を踏み入れた
「なに、束の奴からの依頼よ
お主等は生徒として、
儂は清掃員としてここに潜入しているだけの事よ」
「お言葉ですが師匠、
思いっきり目立ちました」
「細かいことは気にするな、
あの場ではあれが最善と判断したまでよ」
儂は立ちながら
2人は正座をしながら儂の話を聞いている
「というか、
最近話題になってた道着を着た清掃員って先生の事でしたか」
「道理で、
最近校庭やら何やらが使いやすいと思いました」
「当然よ、
鍛錬するのに場所の整備が出来ておらぬと話しにならんからな」
「「・・・確かに」」
「それで、鍛錬の方はどうだ」
儂は2人の最近の成果を聞く
「はい、やはりこの学園に入学出来て良かったです。
肉弾戦では遅れは取りませんが様々な状況が日夜私達を強くしてくれます」
「結構!
ならばその調子で鍛錬を続けるが良い!」
「「はい!」」
「ここに居たか馬鹿共が」
声をした方角を見ると
そこには額に青筋を浮かべた千冬が立っていた
「おお千冬か」
「・・・まあいい、
どうやらお前達は知り合いだったようだな」
千冬は大きく溜息を付きながらそう言ってきた
「知り合いと言うか」
「このお方は私達の師匠です」
「・・・貴様何者だ?」
どうやら束の奴は必要最低限の情報しか渡していなかったらしいな
「ふむ、はぐらかしても良いがお主であれば問題なかろう」
儂は千冬にブレスレットを見せながら
「儂の名はシュウジ・クロス
そう教えておったな?」
「・・・ああ」
「別名で言った方が分かりやすいだろな
儂のもう一つの名は東方不敗よ」
「東方不敗だと!?」
儂の名を聞き、
千冬は大いに驚いておる
「3年前軍事基地を1人で襲撃し
1人の死者も出さずに壊滅させたという、あの!」
「その通り!」
「道理でただの清掃員にしては・・・!」
「フッフッフ」
千冬の顔は驚きに包まれたままだ
「さて、儂はこの後千冬と話す
お主等は先へ行け」
「はい!」
「承知!」
儂は2人に言うと
2人はすぐさま屋上から去っていった
後には儂と千冬のみが残された・・・
早速炸裂東方不敗ワールド
マスターアジアってあらゆる意味で空気読まないと思います