儂が腕試しを行った数日後、
本来ISの授業を行うハズの時間は全て個別鍛錬の時間にしておる。
全員上げてしまうとかなり長くなるゆえ、
主要なメンバーのみのメニューを紹介しておく。
まず織斑一夏。
こやつは恐らく剣道の嗜みがあったのであろうな。
剣を振り下ろす際の動きが妙に手馴れておった。
しかし、現在は恐らく行っていないであろう。
そこで、儂はまずは一夏に剣を扱った動きを叩き込むことにした。
ただ振り下ろすだけとしっかりとした動作で振り下ろすとでは威力はまるで違う。
それにあわせて基礎体力の向上。
進む、飛ぶ等の動作はISで行う際は己の体を使わぬが、
攻撃を行う等の行動は己の体を扱う、
体力が無くなり、疲弊してしまえばその分攻撃は乱雑になる。
それを懸念しての事よ。
次に篠ノ之箒。
こやつの攻撃は正に剣道そのもの、
腕前についても一夏よりは上だ。
だが、こやつは精神面での脆弱さが目立つ。
その原因までは分からぬが、
剣とは己の心を映し出すもの。
そこに迷いがあっては倒せる敵も倒せなくなる。
次にセシリア・オルコット。
狙撃のセンス等は目を見張る物があるが、
こやつには致命的な弱点がある。
それは儂が腕試しの際に突いた物だ。
こやつの装備の殆どは多大なる集中力を要する。
攻撃を行うときに動きが止まってしまう等本末転倒。
なのでひたすらに座禅を組ませ、
背後に千冬を置いておる。
集中力を欠いた瞬間注意をさせる為だ。
そしてアイギス。
流石に儂直々に修行をしていただけあって、
基本的な動きについては問題は無い。
故に、
ただひたすら流派東方不敗をマスターさせるべく鍛錬をさせている。
最後にソーマ。
相変わらず近接格闘はアイギス程では無いが、
こやつの本領はそこではない。
こやつの本領、それは大局観に優れている事。
そして、ソーマ自身の器用さだ。
流石にその道の手練れには及ばぬが、
あらゆる距離での万能さと言った意味合いでは、アイギスすら凌駕する。
なので、ひたすらにあらゆる距離での戦闘をさせている。
現在のメンバーの中では、
恐らくソーマが一番化けるであろうな。
儂自身は、
鍛錬についていけなくなりそうな者の元へ行き、
面倒を見ておる。
己を高める事が目的の鍛錬で潰れてしまっては意味が無いからだ。
そして…
放課後
言い付けていた鍛錬を終えたアイギスとソーマは儂の元へ来る
「師匠、お話があります。」
「何だ?」
2人は何時もと同様、正座をしながら儂に
「師匠ご自身の事を教えていただきたいのです。」
そう聞いてきた。
「儂自身の事だと?」
「はい、私達は先生を敬っています。
しかし、余りにも先生の事を知らなさ過ぎます。」
「ふむ…。」
確かにな、
こやつ等には儂自身の事を話したことは無い。
直ぐに投げ出すと思い、深く関わることを避けてきたからだ。
しかし、予想に反してこやつ等は投げ出さずに着いてきおった。
そればかりか死んだ方がマシとも言える修行さえも乗り越えてきた。
ならば、教えても良かろう。
「教えてください師匠。」
ソーマは真っ直ぐに儂を見ながらそう言ってくる。
「…その目、懐かしいものよ。」
今のソーマの目はとても懐かしい。
あの目は。
幼き日のドモンを思い出す。
「懐かしい…ですか?」
「ウム…。」
「儂はな、以前にも1人弟子を取っておったのだ。」
「私達以外にもですか?」
「そうだ、名をドモン・カッシュ。
石破天驚拳を会得し、遂には儂を超えた真のキングオブハートだ。」
「先生を…超えたのですか?」
「ああ…良いな?
この話は決して他人に話すことを禁ずる。」
「「…はい」」
儂の徒ならぬ雰囲気を察した2人は、
静かに儂の話に耳を傾け始めた。
「まず始めに、儂はこの世界の人間ではない。」
「「…え!?」」
「極めて近いが限り無く遠い世界。
そこで儂は自然を破壊する人間に絶望し、
ある機体を持って全人類を破滅させるべく行動を起こした。」
2人に話すは、儂自身の過ち。
あの時はそうする事が地球再生に繋がると信じていたが、
ドモンの言葉によりそれが間違いだったと気付いた。
「ある日の事だ、
新宿の地でドモンと初めて遭遇した。
この時の儂はドモンを鍛え上げ、
デビルガンダムの生体コアにするべく修行をつけた。」
……懐かしいものだ、
どれぐらい前かは思い出すことは適わぬが、
あの時の日々は儂に取っても代え難い物だ。
今思えば、
あの時から既に心のどこかでは、
儂の所業が間違いだったと気付いていたやも知れぬ。
「そして、第13回ガンダムファイトの時。
儂の目論見通り更なる力を付けドモンはガンダムファイトに参戦、
11ヶ月の予選を見事生き残り決勝ラウンドまで進んだ。
そして、決勝ラウンドを勝ち進み、
最終ラウンドまで進んだドモンをデビルガンダムの生体コアにするべく、
ランタオ島での最終決戦に臨んだ。」
「…結果は?」
「儂の敗北だよ、
そしてその時のドモンの言葉により、
地球を再生する為に人類を破滅させるのは誤りだと気付かされた。」
「…では、何故先生は。」
「焦るでない、
そもそも何故儂がドモンを育て上げ、
デビルガンダムの生体コアにしようとしたと思う?」
「…それは」
儂からの質問に、2人は言葉を詰まらせる。
「それはな、
その時点で儂は不治の病に犯され余命幾許も無かったからだ。
……この世界に来てからは何故か病は見受けられぬがな。」
そう、
この世界で目覚めてから違和感を感じておった。
それは、儂の命を削り続けていた病を感じなかった。
理由は分からぬが不治の病とされていた物が無くなったらしい。
「……話が逸れたな。
ランタオ島でのドモンとの最終決戦が終わった直後、
儂の体は到頭限界を迎えた。」
決して失敗は出来ぬと望んだ最終戦で、
儂はドモンから受けた攻撃と病によりこの世を去った
…ハズであった。
「最後は東方からの日の中、
真のキングオブハートとなった最愛の弟子の腕の中で息絶えた。」
「…それが。」
「うむ、
何故かと問われれば答えられぬが。
気付けばあの場所で眠っておったらしい。
それを散歩していた束が見つけ、儂を起こした。
……その後は主等の知っての通りよ。」
気付けば2人は涙を流していた。
「どうした?」
「……アレ、アレ?
可笑しいです……悲しく無いのに、涙が止まりません…。」
「……私もです、
先生、貴方はただ1人で戦っておられたのですね…。」
「…儂の為に泣いてくれるのか?」
「だって…だって・・・!!」
湧き上がる思いを言葉に出来ないのか、
ソーマはただただ泣いている。
「…先生、これだけ聞かせてください。」
「良かろう、申してみよ。」
「…先生は、最後はそのドモンなる者と和解出来たのですか?」
ふむ、答えに迷うことを聞いてきおって。
「…さあな、儂はそう信じておる。」
「…ありがとうございます。」
儂の本心からの言葉を受けたアイギスはそう礼を言ってきた。
「儂の過去は以上だ、先ほども言ったが。」
「はい、決して他人には話しません。」
「うむ、では本日は体を休めよ。
休息もまた鍛錬だ。」
2人にそう言った後、
儂も休むべく部屋へと戻り始めた…
「…どこだここは?」
ある地域で、
男は1人彷徨っていた。
赤い外套を羽織り、
背中には刀を背負っていた。
「…俺の知る場所じゃないな、
それにレインとも連絡がつかない。」
恋人に連絡を取ろうとするが、
連絡がつかない為途方にくれている。
「さて、どうしたものか。
野宿は師匠との修行で慣れているから問題は無いが…」
「そこの男、止まれ!」
「む?」
不意に聞こえた制止の声の方向を男は見る、
そこにはISを装着し、片目を眼帯で覆っている女性が居た。
「貴様、ここは軍の演習場だと言うのにどこから入ってきた。」
「…女か、それに軍だと?」
「質問に答えろ、さもなくば撃つぞ。」
男は状況をいまいち把握できていないが、
大人しく撃たれる筋合いも無い。
「やれるものならやってみろ、
ただし、当てられると思うなよ?」
「…言ったな、警告はしたぞ。」
言うが早いか、
眼帯を着けた女は装備されている銃を発砲した!
「遅い!」
音速超えているハズの弾丸を男は軽く回避し、
「撃ってきたってことは、お前は敵ってことだな!」
攻撃を加えるべく走り出す。
しかし、その速度は走るという次元を超えたものだった。
「くっ速い!!」
予想外の速度に女は驚きつつも、
すぐさま攻撃を行うべく狙いを定めるが、
男はそれが初めから分かっているように狙いをつけさせない為、
女を中心に円の軌道で走る。
「どうした!」
「甘く…見るな!!」
銃による射撃は当たらないと判断した女は、
直ぐに別の装備で攻撃を加える。
「甘い!」
「なんだと…!!」
しかし、ここで女は目を疑う光景を目の当たりにする。
通常ISに装備されている兵器は破壊する事が困難である。
軽く破壊できてしまっては兵器としての意味が無いからだ。
だと言うのに、
目の前の男は射出されたワイヤーブレードを、
あろう事か背負っていた刀で簡単に切断して見せた。
「コイツ、出鱈目すぎる!」
女は目の前の男を過小評価していた事を認めた、
どうやって軍の演習場に潜り込んだは分からないが、
威嚇で数発発砲、もしくは少し痛めつければ簡単に逃げ出すと思ったからだ。
しかし、この男は迫る弾丸を物ともせずに突き進んでくる。
この事実に対して、
女は全霊で持って打ち倒すべく右手を翳した。
「…あの右手、嫌な予感がする!」
瞬間、翳された右手より妙な気配を感じた男は距離を取った。
「(気付かれたか?、どういう嗅覚をしている!)」
内心で舌打ちをしつつ、右手を翳すことをやめない。
隙を見せれば空いている距離を一瞬で詰められ攻撃されると思ったからだ。
「(まだ此処がどこか分からぬ以上、下手な騒ぎは起こしたくは無いが…)」
今更である。
既に女は完全に臨戦態勢に入っている。
ここで力付くで倒し、情報を入手する事も出来るが。
先ほどの女の言った事が真実であれば、
もしここで倒してしまったら指名手配されるかもしれない。
それだけは一応避けたかった。
「…女、聞きたい事が有る。」
刀を構えつつも、男は話し合いによる解決を選んだ。
「…なんだ。」
対する女も一挙手一投足を決して見逃すまいと目を光らせながら返した。
「ここはどこだ?」
「貴様…ふざけているのか?」
「違う、俺は気付いたら此処に立っていた。
どこか分からなくて歩いていたらお前が攻撃してきただけだ。」
「…なに?」
男の様子から嘘をついていないと判断した女は、
攻撃態勢を解かないまま、
「ここはドイツ軍の軍事基地の演習場だ。」
そう場所を答えた。
「ドイツ?
するとここはネオドイツか?」
「ネオドイツ?
貴様は何を言っている?」
「なに?」
ここで男は違和感を感じ始める。
「(ネオドイツを知らない?
いや、そんなハズは無いが…確認してみるか。)」
感じた違和感の正体を確かめる為、
男はある男の名を口にした。
「お前、シュバルツ・ブルーダーを知っているか?」
「黒い兄弟だと?、そんな男の名は知らん!」
「(…嘘を言っている様子は無いな、という事はもしやここは)」
ここで男はある可能性に行き着いた。
「(ここは俺が居た世界ではない…という事か?)」
「…来ないのであれば「待て、今はそれ所じゃない」…なに?」
動きが止まった男に対し、
女は攻撃を加えようとしたが男は制止した。
「…とりあえず情報が欲しい、
こちらに攻撃の意思は無いから一先ず武器を収めろ。」
男は刀を鞘に仕舞いながら女に言った。
その様子を見て交戦の意思は無いと判断した女も武器を収める。
「お前が装備しているその変なものは何だ?、新しいガンダムか?」
「ガンダム?、何だそれは。
これはISだ。」
「IS?」
「…貴様、ISを知らないだと?」
「初耳だ。」
男からの質問に答えた女も男と同じ様に違和感を感じ始めた。
「(ISを知らないだと…、そんな馬鹿な話があるか。)」
浮かんだ疑問をすぐさま振り払おうとするが、
一度生まれた疑問は中々消えてくれなかった。
「(…早急に確認する必要があるな、3年前の事もある)」
女が言う3年前とは、
それは東方不敗が1人で軍事基地を襲撃し、
本来女性しか扱えないISでもって基地を壊滅させた時の事だ。
幸い壊滅させられた基地はドイツ軍の物ではなかったが、
いつあれ程の力が襲い掛かってくるか分かった物ではない為だ。
「…分かった、貴様を一先ず基地に連れて行く。
一応の体裁で拘束させてもらうが構わないな?」
「…仕方あるまい、だが手荒な真似をした時は覚悟しておけ。」
男は睨み付けながら女に言い、
一応捕らえられたと言う体で歩き始めた。
「…名前を聞いていなかったな。」
「人に名前を聞く時は自分から名乗るもんだ。」
「…貴様、まあいい。」
不遜な物言いにトリガーを引きそうになるが、
辛うじてそれを堪えつつ、女は名乗った。
「私はラウラ・ボーデヴィッヒだ、
シュヴァルツェ・ハーゼ隊の隊長をしている。」
「ラウラか、…俺の名前だったな。」
男は歩きつつ、一度そこで言葉を区切り。
「俺の名前はドモン・カッシュだ。」
そう自分の名前を告げた。
ドモン・カッシュ
ISの世界に殴りこみ!