不条理なこの世界で   作:夕@ハーメルン

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真『起』

 

 あれから数日が過ぎた。

 あの日、ミラは誰にも見つからず指定された森を見つけることが出来た。

 そこには確かにレオーネがいて、彼女はミラがここに来たことに驚いていたが事情を話していくにつれ、その表情を冷たく、張り詰めたものにさせていった。

 グローブを渡した時にバカ野郎、と小さく言っていたのはきっとレオーネなりの別れの言葉なのだとミラは悟った。

 その後すぐにレオーネに連れられ、ミラはナイトレイドのアジトへと運び込まれた。

 そこで数日心の傷を癒すことに専念した。

 顔見知りのレオーネや優しく語り掛けてくれたシェーレという女性など、いろんな人が話をしにやってきてくれたが、遂にはミラの待ち人は現れなかった。

 そしてその後、ミラはナジェンダというナイトレイドのボスと会った。

 そこで一つの提案がされた。

 帝都に戻っても手配されているミラはもう戻ることは出来ない。

 だから革命軍の工房で働かないかと。

 ナイトレイドが革命軍と聞いた時はあまり驚かなかった。

 人手不足の革命軍は力仕事以外にも多くの仕事があるのだという。

 ありがたい申し出だった。

 生きる場所を失ったミラに居場所が出来る。

 だからミラは言った。

 

 ――お断りします。

 

 そう言った時のナジェンダの顔は、やっぱりかとでも言いたそうな表情をしてた。

 だからと言って自分の言った事を曲げる気もなかった。

 ミラは言った。

 

 戦う術をください、と。

 

 後方支援じゃない。

 共に戦地へ赴く同志として私を鍛えてくださいと。

 そんな私にレオーネは何か言いたそうだったが、ナジェンダが止めた。

 まずは鍛えることから始めなければいけないミラは一度形見とも言えるイサミの帝具を持って、後方の部隊へ向かう。

 その途中、ミラはイサミとの出会いを思い出していた。

 あの夜、もしもイサミを助けなかったらこんな未来は起こり得なかった。

 なら助けなければよかったのか。

 否、それも違う。

 以前、イサミが目を覚ました時に言った言葉があった。

 

 ――ちゃんと真面目に生きている人間から神様が幸せを運んでくれるのよ。

 

 確か父にも言った。

 

 ――神様は絶対良い世の中にしてくれる。そして本当にそうなった時に幸せになれる順番って今まで真面目に生きてきた人からだと思うの。

 

 それがミラの持論で、忘れてはいけない大切なものだった。

 

「間違ってた」

 

 ぽつりと呟く否定の音。

 それは酷い間違いだ。

 イサミはそれを知っていた。だから鼻で笑っていたのだ。

 真面目に生きてるだけじゃ世界は変わらない。

 世界の膿を取り除かないといけない。

 それをしてくれるのは神様だと思っていた。

 信じていた。

 けど、違った。

 

「――この世界に神はいない」

 

 いるのは人だけだ。

 人が人を貶め、肥しを得る。

 こんな世界は一度壊さないといけない。

 きっとイサミもそうしようとしていたに違いない。

 だから――

 

 

 

 

「ボス、あれで本当にいいのか!? ミラは戦うような人間じゃない」

 

 ミラがナイトレイドのアジトを出ていった後、レオーネは己のボスであるナジェンダに抗議していた。

 元帝国の将軍で、見る目もあり、頼りになる存在だ。

 しかし今回のことは納得がいかなかった。

 

「あんなのじゃいずれ死ぬだけだ!」

「だろうな」

「ボス!」

 

 レオーネの意見に短く肯定するナジェンダ。

 それがわかっていて何故彼女は行かせたのか。

 レオーネはその疑問をぶつける。

 

「あれに今何を言っても無駄だ。一度自分自身と見つめ合わせて、考えを改めさせるしかない」

 

 時間が必要なんだよ、と悲しそうにそう言った。

 ミラとの交友関係を持っていたのはレオーネだけだ。

 元々情に熱いレオーネはミラの事が心配でならなかった。

 誰も知り合いのいない場所で、一人でやっていけるのか。

 自分自身に喰われ、あのまま堕ちてしまわないか。

 それが酷く心配でならない。

 

「ミラはそんなに弱い人間なのか?」

 

 そう声を掛けてきたのは、黒い長髪の少女。

 真っ直ぐとレオーネを見つめる瞳で少女はそう問うた。

 

「……いや、強いやつだ」

「なら大丈夫だ。必ず良い選択をしてくれる」

「そうだな」

 

 彼女の言葉には力がある。

 何か元気を与えてくれるような、不思議な力が。

 

「ん、アカメにレオーネが慰められたところで今回のお仕事の話だ」

「慰められてねぇ!」

「今回の依頼は貴族の暗殺だ」

 

 がるる、と怒るレオーネを余所にナジェンダが仕事の話を始める。

 いつの間にかナイトレイドの全員がこの場に集まっている。

 

「今回の標的は地方からきた身元のわからない者たちを甘い言葉で誘い込み、趣味の拷問で死ぬまで弄ぶような連中だ。依頼主は以前までそこで看守を務めていたものだ。耐えきれなくなったらしい」

「屑が」

「その通りだ。レオーネとマインは聞き込みに入れ。裏が取れ次第実行に移す」

「了解」

 

 ナジェンダの言葉に頷いて返すレオーネとマインと呼ばれたピンクの少女。

 彼女たちだけでない。

 ここに集まったナイトレイドの全員が皆同じ想いをしている。

 ――腐ったこの世をぶっ壊す。

 それが彼女たち、殺し屋稼業――ナイトレイド。

 今宵も帝都の夜を彼女たちが闊歩する。





最後まで読んでいただきありがとうございました。

私はシリアスな話を書いたことがなく、読んでみたいと言ってくださった方がおり、今回この作品を書きました。
実際もともとの世界観が殺伐をしているものなのでそれを上手いように表現できたらと思っていました。
各章のタイトルは本編前の「起承転結」で最後の真が原作へとつながるという感じで締めてみました。
完全に販売促進です、はい。

ここまで読んでくれた方は是非感想や意見をくだされば幸いです。
この他にも作品は上げていますのでよろしければ是非そちらもご覧ください。
では、
ありがとうございました。
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