「あはあ。仕事が終わらないのに楽しいー」
ロイドは喜んでいた。
悩みの種であったデヴァイサーが次々と見つかり、存外に研究がはかどっていたからだ。
現在は3種の機体を同時に整備している。
ランスロット・オレンジ
ジェレミアの専用機であり、色はオレンジ。
その名は裏切りの騎士と忠義の証しを合わせたもの。まさに彼にぴったりと言える。
第七世代のナイトメアだが、実は少しだけ『改悪』している。ジェレミアに合わせるためだ。
そのためか「オレンジにはプリンセスハオ的なミカンの意味が込められている」と噂する人もいるらしい。
ランスロット・紅蓮
カレンの専用機であり、色は紅の赤。
公式にはランスロット・レッドと呼ばれるが、カレンや技術者の中では紅蓮ということになっている。
能力はランスロット・オレンジとほぼ同じ。
似た色を名前に付けたのは『ジェレミアを補佐するという立場を明確に示すため』と言われている。
が、色には上下がないだろうから、隙あらばカレンがユーフェミアの騎士になることもありえる、みたいな意味もあるらしい。
ランスロット・朱雀
単にランスロットとも呼ばれる。スザクの専用機であり、色は白。
名前に朱があるから色縛りはできているよね、が、ロイドの弁である。
しかし、この機体こそが真にロイドの発想を体現したランスロットであり、3機の中でも最も能力が高い。
一応はオレンジと同じ戦場で活動することが想定されている。
ジェレミアがユーフェミアに諭されてから親日派になっていたため、実力の高い日本人をふつうに評価するから可能となったことだ。
「はあい、ルルちゃん。また来たわよお」
「ホワァッ」
ルルーシュが自室でゆっくりしていると、突然ミレイが入ってきたのである。
それもタオル一枚で。
髪がまだ湿っているのを見るに、ふつうにクラブハウスの風呂場を使っていたのだろう。
「ふふっ。何度も見ているクセにいちいち驚くなんて、かわいいんだからっ」
「おい! 隣の部屋にはナナリーがいるんだぞ!」
「ナナちゃんは知っているわよ。初めから」
「ファッ」
「まあいいからさ、始めましょ。今日は特別に妹役になってあげるからさ」
「おい! ふざけるのもいい加減にしろ! ぐうっ!」
口では強気なルルーシュだが、やはり体は抗えず、簡単に押し倒されてしまった。
密接すると、風呂上りのシャンプーの匂いがやけに甘い。
アレがいつも以上に元気なるのも仕方がない。
「お兄様、大好きです。一緒に楽しみましょう」
「ナナリーを愚弄するな!」
「ルルーシュ! うれしいわ! 私にこんなSAOを当てつけてくれるなんて!」
「ユフィもだ! いい加減にし、ホワァッ」
やはりアレは弱点らしく、ちょっと触れられるとビクンとなってしまい、うまく動けなくなるのだった。
「はあ」
シャーリーはプールサイドでため息をついた。
ここのところ全く進展がない。無論思い人についてである。
「ユーフェミア様になんて敵いっこないよ」
彼女と比べられるのだしたら、自分は虫けらでしかない。
どうやっても振り向かせる方法を思いつくことができなかった。
それに、今の友人同士の関係がほどいいものだから、崩れるのも怖いと思った。
つまり、結局動けないのである。
「はあ」
リヴァルも自室でため息をついた。
無論思い人についてである。
だが、特筆することもなく、ただ彼がミレイと結ばれないのは自明であった。
「はあ」
ユーフェミアも紅茶を一口飲んでから、ため息をついた。
無論思い人についてである。
「どうしたんだ? ユフィ」
心配したらしい姉がやさしく声をかけてくる。
「なんでもないのです。なんでも」
「なんでもないことはないだろう?」
「いいえ、ですが、しかし……」
ユーフェミアは言葉を濁し、紅茶をすすり始める。
そこまですると、コーネリアも追及したりしない。
「これが俗に言う、恋なのかしら」
ぽつり、と上の空のままでつぶやいてしまう。
「なっ! 誰だ! 誰の事だ!」
が、見事それが聞かれていたらしい。
「え? 私何か言いましたか?」
「恋だと言ったぞ! 誰なんだ!」
「ええっ、そんな……、秘密ですわ。お姉様でも、さすがに」
「ええいっ! こうしてはおれん! ジェレミアは何をやっていたのだ!」
コーネリアは興奮して、どこかへと行ってしまった。
「しいいいつううう。ねえねえ聞いてよお。しいいいつうう」
マオは嬉々としてC.C.に近づいていく。
「なんだ?」
「昨日までは600メートルが限界だったけど、今日は630メートルまで聞こえるようになったんだよお。ねえねえすごいでしょ? これでまたあのクソ拉致野郎共に見つかりにくくなったよ、しいつううう」
「ふむ。まあその調子でがんばってみろ。期待せずに待っているから」
「期待してよお、しいつううう」
「うるさい。そしてあまり寄るな」
C.C.は口ではこう言っているが、本音では少しマオを評価し始めていた。
もう伸びないと思っていたギアスが、ここへ来ていいペースで伸びているのである。
愛は偉大ということだろうか。
ともかく、これはひょっとすると、ひょっとするかもしれない。
「とんだ拾いもの、いや落としものだったのかもしれないな」
C.C.は小さくつぶやく。
しかし、マオにはばっちりと聞こえていた。
「しいいつううう! やっぱり僕のことをおおお!」
「ああもうっ、クソッ」
勢いを増して突っ込んできた彼を、C.C.は避けることができなかった。
思いっきり抱きつかれて、頬ずりまでされてしまった。
「ぬあぜだああああ! なぜ見つからぬうううう! ルルーシュの周囲にいるのでは無かったのかあああ!」
「申し訳ございません。隈なく探したのですが、やはり、それらしい人物はどこにも」
「ぶらああああああ! ぶるううらあああああ!」
シャルルはまた腹心のビスマルクを恫喝していた。
「クロヴィスに実験されていたみたいだから、拗ねちゃったのかも」
「あぁいぃつぅかああああ」
が、マリアンヌの言葉で標的がクロヴィスに移ったようである。