コードギアス 戦わないルルーシュ   作:GGアライグマ

3 / 25
人質救出作戦

「こちら枢木スザクです。日本最後の首相枢木ゲンブの1人息子として、説得に当たらせていただきます。間違った手段で得た結果には何の意味もないので、おとなしく人質を解放し、投降していただきたいです」

 

 ただただ絶望している中に、ホテルの外から日本語が聞こえてきた。

 人質達は少しだけ安堵し、手を合わせて彼の成功を祈り始める。

 しかし、ルルーシュとナナリーだけは頬をゆるめていた。

 

「スザクさんですよね」

「ふふっ、そうだね。しかし、相変わらずのバカだなあ」

 

 こんな事態なのに、急に緊張感が解けていく。

 大したものだと勝手に賞賛させてもらう。

 

「僕は話し合いを望みます。一度中に入れてください」

「証明できるものはあるのか? いや、そもそもあいつは裏切り者だ。お前の言葉に耳を貸すことはできない」

「分かりました。では、この身1つで参りましょう。もしや、武器も持っていない相手を遠くから撃ち殺したりはしませんよね。日本人の誇りがあるのならば」

「チッ。この痴れ者があ!」

 

 解放戦線の指揮官が叫ぶ。

 スザクはあくまで冷静に、しかし痴態を露わにしているのだろう。

 

「スザク、あいつもしや」

「危ないことになっていなければいいのですが」

 

 その応酬に、ルルーシュもナナリーも途端に恐怖し始めた。

 もしや、裸でここに乗り込むつもりではないだろうか、と。

 

「ルルーシュ、日本語は分かるの?」

 

 ユーフェミアがのんきに尋ねる。

 武装した男は指揮官と何やら連絡を取っており、今だけは会話しても怒られそうになかった。

 

「分かる。今、日本最後の首相の息子がテロリストの説得に当たっている」

「そう。それで、成功しそうなの?」

 

 ルルーシュは何も答えない。

 

「そう」

 

 ユーフェミアは視線を下げてそれだけつぶやいた。

 

「ところでルル、彼女は?」

 

 シャーリーがユーフェミアを見ながら尋ねる。

 ルルーシュは何も答えない。

 シャーリーは首をひねり、眉をひそめる。

 

 しかしその瞬間、真っ白な光があたりを包んだ。

 

 

「オオオルハイイイルブリタアアアアニアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

 よく分からないが、おそらくブリタニア軍が急襲をかけてきたのだろう。

 そう理解したルルーシュは、すぐさまナナリーを抱き寄せて、己の身でその身を隠す。

 咲世子は立ち上がり、隠し持っていたクナイを次々と投げ放つ。全て足音を頼りにしてである。

 

「ぐあっ」

「あううっ」

 

 しかし、その全ては軍人の急所をとらえた。

 室内にいる軍人全員が崩れ落ちる。

 恐るべき能力、そして集中力である。

 

 部屋の外では銃声が鳴り響く。

 怒鳴り声、悲鳴も聞こえてくる。

 

 ユーフェミアだけは、その声から、助けに来た軍人にジェレミア・ゴットバルトが含まれていることに気付くことができた。だからなんだという問題だが。

 

 4人の少女はこの隙に、またルルーシュに抱きついていた。

 リヴァルも隙ありとばかりにミレイに抱きついていた。いや、間違ってニーナに抱きついていた。

 咲世子はクナイを回収していく。証拠は残さない。

 

 

 しばらくすると、銃声が鳴りやんだ。

 

 

 緊張の一瞬である。

 果たしてどちらが勝ったのか。

 

「オールハイルブニタアアアニアアアアアア!!!!」

 

 初めに聞こえてきたのはそれだった。

 

 歓声が沸き起こる。

 勝ったのはブリタニア側だ。

 

「ユフィ。俺達のことは秘密にしておいてくれ」

「えっルルーシュ、どうして?」

「俺達はもう戻れないんだよ。戻ったとしても、また戦地に送られるだけだから」

「それは、でも今度は、私達が守るから」

「悪いが、信用できない。一度見捨てられた身だから」

「そんな……」

 

 ルルーシュはこの間にユーフェミアの説得を試みる。

 うまくいくかどうかは五分五分と考えている。だから、覚悟を決めなくてはならない。

 今日に比べればマシな覚悟だが。

 

「ユーフェミア様! ご無事ですか!」

 

 ジェレミアが飛び込んできた。

 彼はまず室内を見渡し、ユーフェミアを見つけると、くしゃりと表情を歪める。

 

「ううっ。ユーフェミア様、ご無事で何よりです。そして申し訳ありませんでした。私どもが情けないばっかりに」

「いえ、お気になさらずに。それよりも、まだ解放戦線のメンバーは残っているはずです。引き続き警護をお願いします」

「イエス、ユアハイネス」

 

 キリリッ、とジェレミアは背筋を伸ばし、敬礼する。

 それから急いで無線に手を伸ばし、部下に指示を出していく。

 

「ユーフェミア様、私について来てください。他の人質は前に4名、それ以外は後ろで頼む」

 

 と、ここで女の軍人が出てきた。

 人質は、ユーフェミアが何者かは分からないが、とても偉いらしいので、文句を言わずに後ろについた。

 前の4人は緊急用の盾だろう。それは分かっているが、特に人選で揉めることはなかった。

 

 ミレイ、シャーリー、リヴァル、ニーナと、年の近そうなのがちょうど4人いたからだ。

 ルルーシュとナナリーと咲世子はいつの間にか遠くにいた。

 しかし、その姿がジェレミアの目に止まる。

 

「ん? ちょっときみ」

「ジェレミア卿! こんな時に何をなさっているのですか!」

 

 待ちたまえ、という言葉はユーフェミアによってかき消された。

 

「も、申し訳ありません」

 

 ジェレミアは平謝りし、再び任務に集中する。

 ユーフェミアは心の中でホッと一息ついた。

 ルルーシュはそんなユーフェミアを見て、少しだけ信用してもいいかもしれないと思った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。