その日の四時限目から俊輔達は授業に参加する前に職員室へ来ていた。ただし、俊輔だけである。
「遅くなりました」
「……事前に聞いていたが、管理局に呼ばれたようだな」
「ええ、それとご報告が………」
俊輔は烏間に管理局での会話を説明した。
「それでは何か? 君たちの一言で、この世界は戦争に巻き込まれる…とでも言いたいのか?」
「そこはご心配なく。我々とて、戦争がしたいが為に戦力を持って来ている訳では無いです。ジェミニ・ハエルフ並びにジェイル・スカリエッティの逮捕の為には。これ位の戦力が必要と言う事です。と言っても、納得はされないでしょう?」
「当たり前だ‼ 何が嬉しくて、生徒を危険に巻き込まなければならないのだ‼」
「烏間先生ならそう言うと思っていました………俺達は管理局員であり地球出身です。無闇に戦力を晒したりはしませんよ。それと、烏間先生………俺達の戦力を知る為には、見せた方が早いので………今週中にでも特殊武装管理部隊所属艦、強襲機動揚陸特装戦闘艦“タケミカズチ”をお見せしようと思いますが………記録等はしないで下さい」
「それは、戦争回避のためか?」
「当たり前です。何が好きで戦争をしないといけないんですか? 俺の部隊は質量兵器の取り締まりです。武器の携帯は許可しますが、それ以外の記録某体は持ち込まないで下さい」
「………良いだろう。奴は来るのか?」
「暗殺対象に見せると思いますか?」
「フッ。愚問だったな」
俊輔の言葉に烏間は笑う。
「判った、明後日なら行けると思う」
「承知しました。では」
俊輔はそう言って職員室から出て行く。
「彼らは小学生の頃からあの様な事をしてきた………親は何を考えているのだ?」
烏間は俊輔達の親を見たいと思ってしまうのだが、それがある意味で間違いだと言う事は、この時、烏間は知らなかったのであった。
俊輔がE組に入ると、授業が始まる一歩手前であった。
「遅かったですね? その様子じゃ、烏間先生にこっ酷く怒られたんですね?」
「ええ、殺先生。怒られましたよ………遅刻した事にね?」
俊輔と殺せんせーの会話はなのは達にとっては、事前に説明していたので怒られる事は無かったが、事の説明をしていたので、こんなにも遅れてしまったのである。
「さて、家庭科の授業です。山本君達は高町さん達と一緒にお願いします」
「判りました」
俊輔は殺せんせーに言われた通り、なのは達と一緒に料理を作る事になったのだが、生徒達は知らなかった。なのは達の実力に………
「どうですか? 高町……さん達………はい?」
殺せんせーがなのは達の班の所に来ると、そこには色々とツッコミどころ満載な状況になっていた。
「これは何ですか?」
「味噌汁です」
「え?」
「味噌汁です」
「二回も言わなくても判ります‼ なんですか、この数の多さは‼」
なのは達が作っていたのは味噌汁なのだが、量が可笑しかった。なんせ、四人前で十分なのに、クラス全員分を作っていたからである。しかも、極家庭で作られている様な物では無く、料亭などで作られている様な味噌汁であった。
「あれ? 言ってませんでしたか? なのはちゃんの実家は喫茶店を営んでるんですよ。そこでランチを出してるんですけど、そのランチで出している味噌汁を作っただけですけど?」
「……………」
はやての説明に殺せんせーは言葉を失うのであった。
「さて、次の物を作るか………はやて、発揮する場所やぞ?」
「はいな‼」
俊輔の言葉にはやてはお母ん力を発揮した。俊輔達ははやてのサポートに入り、手早く料理を作り出すのであった。
そして、家庭科では誰も勝てなかった。と言う事を表記しておこう。
五時限目は国語なのだが、俊輔達は退屈であった。それもその筈である。彼らは既に中学を卒業している身。復習するにしても当たり前な事なので、なのは達は俊輔が遅れて来た事について質問していた。
「(俊輔君。烏間先生と何を話してたの?)」
「(ん? ああ、レティさんやレジアスとの話を説明していたんだ)」
なのはの質問に俊輔は念話で答える。この念話は、なのは達、魔導士たちだけにしか聞こえていない。
「(そうなんだ……それで、タケミカズチだっけ? もう展開してるの?)」
「(いや、到着は明日になる。兵器を積み込んだり人員を配置させたりしているからな………速くても明日の昼前には到着してるだろう………だが)」
「(なんや? 問題でもあるんか?)」
俊輔の懸念にはやてが聞き出そうとしていた。
「(ああ、どうも嫌な感じがするんだ)」
「(どういうこっちゃ?)」
「(確信は持てないんだが………明後日、何か起きそうな感じがするんだ………)」
俊輔の言葉になのは達は黙ってしまう。
「(まっ、起きない事を願う他無いな)」
俊輔の言葉になのは達は殺せんせーや生徒達にばれない様に小さく頷くのであった。
その日の放課後、カルマは崖に這えている木に座っていた。
「クッ………」
「カルマ君……焦らないで皆と一緒に殺って行こうよ」
カルマの後ろでは渚がカルマを説得していた。
「普通の先生とは違うんだから……あの先生は」
「先生……ね………」
渚の言葉にカルマはある事を思い出していた。
A組にいた頃の担任はカルマの事を応援していた。だが、ある時。E組の生徒をイジメていたA組の生徒にケンカを吹っ掛け、ボコボコにした。
だが、次の日……カルマは職員室に呼び出されていた。それは、今までカルマの事を応援していた担任が、この時、カルマの事を否定してしまったのである。
「カルマ君」
すると、後ろから殺せんせーがカルマの名前を呼んだ。
「今日は沢山、先生に手入れをされてきましたね……まだまだ殺しに来ていいのですよ?」
殺せんせーは舐めた表情で、カルマをおちょくりに来た。
「もっと手入れをしてあげますから」
「ねぇ、せんせー………確認したいんだけど殺せんせーって先生だよね?」
カルマの質問に殺せんせーは頷く。
「先生ってさぁ……命がけで助けてくれる人?」
「もちろん、先生ですから」
この言葉にカルマは安心したかのような表情をする。
「そっか……良かった。なら殺せるよ」
そう言うとカルマはハンドガンを掲げながら、崖へ落ちて行く。
だが、殺せんせーは体を蜘蛛の巣上にすると、カルマをキャッチした。
「カルマ君…自らを使った計算づくの暗殺お見事です」
「えっ?」
殺せんせーも言葉にカルマは驚く。
「音速ではカルマ君の体にダメージを与えてしまいます。かといってゆっくり動いてしまったら、撃たれてしまいます。なので、先生はちょっとネバネバしてみました」
そう言うと殺せんせーは「ニュフフ」と嗤うが、真剣な声になった。
「それと、先生は見捨てると言う選択肢は持っていません。いつでも信じて飛び降りて下さい」
「あっ」
この言葉でカルマの中の先生と言う存在が変わった時であった。
これを俊輔達は遠くから見ていたが、殺せんせーが助けると判っていたので手を出さなかった。
「なんやカルマって子は……無茶しよるな」
「まぁ、そう言った暗殺もある意味で効果的だと言う事だ……ま、殺先生には意味ないけどな………さ、帰るぞ」
俊輔達はそう言って、帰るのであったが………この時、ある男がこれを見ていた。
「ほう…あれが噂の殺せない先生ね………楽しそうだ」
男はそう言うと懐に仕舞っているある物を取り出した。
「これで奴の生徒に取りつけたら………さぞ面白い事が出来るだろうな……」
男の手には箱の様な物が握られていた。
「さて、作戦でも練るか………どうやって楽しんで殺そうかな」
男はそう言って姿を眩ますのであった。
俊輔達が魔導士だと言う事が、生徒にバレるきっかけになる男が現れるのだが………この時、誰も知る由も無かったのであった。