俊輔たちはアリサと別れて、旧校舎へと向かっていた。何日も通っている道なので、いつしか体力もついた様子で特に最初の頃は息切れをしていたはやてもすんなりと旧校舎に向けて歩けるようになっていたのである。
「いつのまにかうちも体力がついたようやな」
「最初の頃はへばってたのにな」
「言うか⁉」
事実である為、はやても言い返せずにいた。
「みんな、おはよう‼」
俊輔たちが久々の登校と言う事もあって、クラスの殆どが俊輔たちの方へと駆け寄ってくる。
「山本君たち、家庭の事情で休んでたようだけど、大丈夫なの?」
最初に声をかけてきたのは渚であった。
「ああ、もう終わってるし問題無いよ」
「そうなんだ、良かった」
渚は胸を撫で下ろした。
「心配してくれて、ありがとう」
俊輔はそう言って笑うと、数人の女子たちの顔が赤く染まった。
「また始まったよ、俊輔のスマイル堕ち」
「うちらも最初の頃は、何度も堕とされかけたからな~」
「そうなんだ~」
フェイトとはやては一度、俊輔のスマイルに負けてしまった事があったのだが、その頃には既に俊輔はすずかと出来ていた為、入る余地がないと解っていながらも、俊輔に好意を寄せていたのである。ただし、現在は友人としての好意だけだが。
「そういえば、来週の修学旅行だけど高町さんたちは班決めはどうなるの?」
カエデがなのは達の班がどうなるのか気になっている様子であった。それもその筈。俊輔たち四人は他の生徒たちよりも一つ、歳が上なのだから一緒の班になれるのか気になっていたのである。
「それに関しては、烏間先生に判断を委ねているから、俺たちでは決められないんだ。ごめんね」
「そ、そうなんだ~あ、あはははは」
俊輔の顔にカエデも堕とされたご様子。どんだけ堕とせば気が済むのだろうか………おっと、作者の心の声が漏れてしまった。失敬。
「全く‼ 三年生が始まったばかりのこの時期に、修学旅行とは先生、あんまり気乗りしません」
殺せんせーが教室に入ってくるが、その姿はいつもの姿ではなく、舞妓さんの格好をしていたのである。
『ウキウキじゃねぇか‼ しかも舞妓……似合ってるし』
クラスの心は一致いていた。
「バレましたか」
殺せんせーはほっぺを赤く染め顔を掻いて恥ずかしそうにしていた。
「正直、君たちとの旅行が楽しみで仕方がないんです」
その言葉に、全員が苦笑いをする。
その日の体育の時間の終わりの時に、烏間先生は生徒たちをグラウンドに座って説明をしていた。
「知っての通りだが、来週から二泊三日の京都での修学旅行が始まる。君たちの楽しみを極力、邪魔をしたくはないのだがこれも任務だ」
「と言う事は、あっちでも暗殺ですか?」
「その通りだ。京都の町は学校とは段違いに広く、複雑。しかも君たちは回るコースを班ごとに決め、奴は一緒に付き合う予定になっている。その為、表立った暗殺は出来ない。なので、国が用意した凄腕の狙撃手を用意している。成功した場合、貢献度に応じた報奨金を支払う事となっている。暗殺向けのコース選びを頼む」
『はい‼』
「先生、しつもーん」
「なんだ、茅野さん」
すると、カエデが手を挙げた。
「高町さんたちはどうなるんですか?」
こういう時だからこそ、聞けるタイミングを見計らって聞いたのであろう。
「ああ、その事なのだが山本君たち四人には、君たちだけで班になってもらう。その上でコース選びを頼みたい」
「判りました」
烏間先生の言葉に俊輔は返事をする。
「では、本日の体育の時間を終了する」
『ありがとうございました‼』
授業が全て終わり、生徒たちは班決めに奔走していた。それを静かに見守っていたイリーナは見下したようにしゃべりだす。
「フン、ガキね~世界中を飛び回った私には、旅行なんて今更だわ~」
イリーナは地面気に話すが、生徒たちは目をやろうとはしなかった。
「じゃぁ、留守番しててよビッチ先生」
「え?」
「花壇に水やっといて」
「は?」
ここまでくれば、イリーナの目は点となる。そして、自分が無下に扱われていると知ったイリーナは段々、怒りが込み上げてきた。
「何よ‼ 私抜きで楽しそうな話をしてんじゃないよ‼」
イリーナの手にはコンパクト銃が握られていた。
「だぁ‼ 行きたいのか行きたくないのか、はっきりしろよな‼」
すると、教室の扉が開き殺せんせーが入ってくる。
「一人一冊ずつです」
殺せんせーの手(?)には六法辞書並みの厚さのある本があった。
「なんですか、それ?」
「修学旅行のしおりです」
磯貝の質問に答えた殺せんせーはマッハ20を使って、一人ずつにしおりを手渡した。
「重ッ⁉」
「辞書だろ、これ‼」
生徒の声に先生は恥ずかしそうにしながら説明をする。
「イラスト付き観光スポット、お土産人気トップ100、旅のしおり入門から応用までを網羅したものを徹夜して作りました‼ 初回特典はペーパークラフトの金閣寺です‼」
「どんだけ、テンション上がってるんだよ‼」
暗殺と教育を兼ね備えたE組はそれでも、皆が楽しそうに計画を立てるのであった。
修学旅行当日、東京駅から出発する新幹線に乗り込む生徒たち。椚ヶ丘中学は名門と言う事もあって、五両の新幹線を貸し切りにしていた。因みにだが、他の車両については他校のクラスが使っている。中にはガラの悪い生徒の姿もあった。
「うわぁ、A組からD組までグリーン車だぜ」
「うちらだけ普通車。いつもの感じだね」
菅谷と中村がそう言うと、D組の担任であろう教師が耳に入ったのだろう、車両に乗る前にE組対して見下した感じで説明をする。
「うちの学校はそういう校則だからな。入学時に説明したろ」
すると、二人の生徒が戻って乗降口から顔を覗かせた。
「学費の用途は成績優秀者に優先されます」
「おやおあや、君たちからは貧乏の香りがしてくるね~」
二人はそう言うと笑い始める。
すると、一人の女性の声がし、行く全ての人々の視線を釘付けにした。
「ごめんあそばせ~」
教師も二人も声のする方に顔を向けると、そこにはセレブのような恰好をしたイリーナの姿があった。
「御機嫌よう、生徒諸君」
「ビッチ先生、なんだよそのハリウッドセレブのような恰好はよ」
「ウフフ、女を屈しる暗殺者としては当然の心得。いい女は旅格好にも気を遣うのよ」
イリーナは自慢げに話すが、その後ろには烏間先生の姿があった。
「目立ち過ぎだ、着替えろ。どう見ても引率の先生の格好に見えない」
「固いこと言わないでよ、烏間~ガキどもに大人の女の「脱げ、着替えろ」………」
烏間の凄みに負けたイリーナは渋々、着替える羽目になったのであった。
「誰が引率なんだか………」
「金持ちばかりを暗殺してきたから庶民の感覚がズレていたんだろう………」
磯貝と片岡がそんなイリーナを見て、呆れるのであった。
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