これは四葉真夜の息子にして世界から後に【最も自由なる者】と呼ばれる少年の物語である。
この日、四葉に一人の男の子が産声を上げる。分娩室の前には姉の四葉深夜が祈るような体勢から膝が崩れ落ち、安堵から目には涙を浮かべていた。
「深夜様おめでとうございます」
四葉家執事序列筆頭の葉山が、床に崩れ落ちた深夜に柔らかな笑顔で語りかけ深々と頭を下げた。
「葉山さん....ありがとう....」
葉山の声に漸く意識をはっきりさせた深夜が、椅子に座り直して気持ちを落ち着けた頃、
分娩室から助産師が出て深夜に告げる。
「深夜様お祝い申し上げます。御当主様と御子息様、共に健康に問題ありません」
深夜は改めて安堵し、急いで自らを消毒や除菌を施して分娩室に入って行った。
「真夜!!」
深夜が声を発した相手は双子の妹である四葉真夜、出産直後の憔悴しているその腕の中には、男の子が大切そうに抱かれていた。
「姉さん....私の息子よ...こっちに来て顔を見てあげてくれないかしら...」
真夜がそう言うと深夜が駆け寄って行く。
「なんて可愛いのかしら...この天使の様な子が貴女達の息子なのね」
目に涙を浮かべ、その小さい手にそっと指を伸ばした。すると、深夜の指をその小さい手で力強く握り返した。
「真夜...本当におめでとう。ここまで色々あって、辛い思いと時間が随分掛かってしまったけど、貴女は立派にやり遂げたわ!姉としてとても誇らしく思います」
深夜が握り返された手を見ながらそう言うと
「ありがとう姉さん。でも、此れから私もこの子も、大変な事が幾つも待ち受けているのでしょうね...だから姉さん、此れからも宜しくお願いね」
真夜が神妙な顔つきで深夜に目配せをした。
「もちろんよ真夜...貴女達は私が必ず守り、支えて行くわ...安心しなさい」
深夜は真夜にそう言うと同時に自分自身を改めて戒め、不退転の決意をする。
こうして【極東の魔王】【夜の女王】と呼ばれる母と
こうして産声を上げた男の子の誕生は、事情により四葉家内でも最上位の極秘事項になる。その誕生を知らされたのは分家の当主、執事では序列第三位の紅林までであり 、あとは世話をするメイド長の白川とその腹心二人のメイドだけであり等しく戒厳令が出され、破った者には分家の当主であっても処断するという主旨を伝えて、徹底した情報統制が成された。それ故に、分家の子供達ですら彼の出生の真相を知るのは、随分後になってからになる。また極稀に四葉家本邸で見掛ける事があっても、出生を知る分家の当主や執事、メイドに至るまで皆が口を紡ぐのだから、真相を知らない分家の子供達や従者達から不気味がられる事になる。事実を知らされない者達には、素性の知れない男の子が四葉本家で威風堂々と闊歩する姿は到底受け入れる事は出来なかった。しかし彼の存在を探ることは禁止されていた為、受け入れられない者達からは、暗黙の内に冷遇される事になる。
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