深夜が真夜の子供の誕生に涙し不退転の決意をする少し前。
西暦2079年4月24日、四葉家本邸 (旧第四研跡地)は旧山梨県の北西部に位置するが、何重にもなる認識阻害の結界により外部からは発見されない。その為四葉本邸に部外者が侵入する事は不可能になっており、立ち入りが許可されている極少数の者達しか敷地に足を踏み入れる事は出来ない。その四葉本邸の奥のとある一室で、知らせを待ちわびているその人物は、周りに人がいれば思わず畏怖してしまう面持ちで、空気を震わせながら知らせを待っていた。
「英作様!」
筆頭執事の葉山から連絡を受けた執事序列第三位の紅林が知らせを待ちわびているその人物....四葉家先代(二代目)七つある分家の一つ、椎葉家現当主の父で深夜と真夜から見て叔父(故 初代四葉家当主、四葉元造の弟)の四葉英作の下に知らせを持って来た。
「ついに産まれたか!」
英作はいつにも増して興奮した様子で紅林の言葉を待たずに立ち上がった。英作の鬼気迫る様子に若干後退りした紅林ではあったが、すぐに呼吸と姿勢を正して英作に向かって告げた。この辺りはさすが四葉家に仕える執事の中でも序列第3位に位置している者である。半端な者では英作が発する威圧感に呑まれそうになるぐらい空気が痛かった。年老いたと言っても四葉家先代当主の名は伊達ではない。
「おめでとうございます。4500グラムの元気な男の子とのことです。真夜様は少々お疲れの御様子だとの報告はありますが、母子共にお身体には問題ないとの事です」
そう言って一礼した。紅林の言動に、英作は年甲斐もなく必要以上に自分が威圧していた事を自覚した。それもそのはず、英作から見れば尊意していた兄、四葉元造の愛娘であり英作から見ても小さい頃から可愛がってきた姪の子供だ。事情はあれど、四葉家直系の
「そうか。無事に産まれたか。話の様子だと今はゆっくり静養した方がよいじゃろうな.....儂は大人しくしてるとしようかのう...」
英作がそう言うと紅林は一礼し、来た道を帰って行った。紅林の後ろ姿を見ながら英作はこれからの事を考えていた。今回の真夜の出産は、他の分家の者達は知らない。真夜の意向により英作と深夜、執事では序列第三位の紅林までと、世話係り予定のメイド長の白川と、その腹心二人、あとは直接取り上げた助産師しか知らない。真夜の妊娠が発覚した際に、真夜直々に情報規制が引かれ、最重要機密だとして、破れば先代の英作であっても処断する覚悟があると真夜と深夜に睨まれた。大漢の撲滅に参加した英作ですらも畏怖してしまうほどの迫力がその二人にはあった。その為、先の新年の【慶春会】でも【認識阻害】の応用魔法を用いて、真夜の姿を妊娠前の状態に見せていた。真夜と深夜、それに筆頭執事の葉山と英作で話し合い、一先ず、出産するまでは当主の仕事を、密かに英作と深夜で分担して真夜の負担を極力減らすなど、徹底してこの日を待っていたのだ。とりあえず無事に真夜の出産は、他の分家の者達にも悟られずに来たが、此れから先の事を考えると頭が痛い英作だった。それもそのはず問題は山積みであり、程度はあれど分家の当主達に話さないと解決しない問題が幾つもある。しかし、逆に話してしまう事で余計問題が大きくなる可能性もある。どこまでを話して四葉と分家が団結していくかは英作自身も判断が難しく、万が一にも真夜と深夜に分家が反逆して、内乱になる事だけは絶対に避けなければならないからである。まずは自身の固有魔法で産まれた姪孫の【魔法演算領域】を解析して潜在的な魔法技能を見通す事を決め、診断してからではないと話は進まぬかと一応の結論を出し思考を中断した。
「ふぅー...」英作は大きく息を吐くとこれといった解決策が見つからない現状に頭を悩ませているのだった。
原作では不仲の双子ですが今作では真夜と深夜は深い絆により先代四葉英作ですら丸め込んでしまうほど強気です。