四葉本邸がある広大な敷地内には、様々な施設も存在する。真夜達三人が居る分娩室もその一つだ。これは秘密が多い四葉家ならではであり、国内外問わず、四葉の遺伝子を欲しがる勢力が掃いて棄てるほど存在する故に、出来るだけ危険を排除するために設けられている。真夜と深夜も、この施設で極秘に産まれた。助産師も四葉が専属で囲っている一族であり、安心して出産出来る。
英作の心労など、今の真夜と深夜にはどこ吹く風だった。場面戻って、分娩室から病室に移って来た真夜。もちろん姉の深夜も付き添っている。産まれたばかりの息子を助産師に預けると
「葉山さん、後はお願いします」
とそう一言告げた。
「畏まりました。真夜様」
葉山は一礼して、助産師の後ろを着いて行った。産まれたばかりの息子の護衛役、兼助産師の監視の為だ。その命は現在の真夜にとって最重要であり、万が一があってはならないとその眼が物語っていた。当然、葉山も主の意志を理解している為、いつもは優しげな目も、今回の命には鋭い目つきになっていた。葉山を見送った後、深夜は自分と真夜の周りに防音障壁を張った。そしておもむろに口を開いた。
「改めてご苦労様、真夜」
「ありがとう姉さん」
「それにしても本当に天使のような子だったわね。どちらか言えば父親似かしら?」
「そうでしょう?彼と私の息子なのだから当然よ。確かにどちらか言えば父親似かしらね。男の子だから彼に似て良かったわ。将来は彼のような素敵な青年に成長するのが今から楽しみだわ。」
「気が早いわよ真夜。でも、将来は女の子からの人気で大変かもしれないわね。すぐ彼女とか連れて来ちゃうかも!?」
「...姉さんこそ、彼女なんて充分気が早いわよ」
クスクスと微笑み合いながら、真夜の息子の将来をそれぞれ頭に描きながら談笑していた。
「...ところで真夜、名前はもう決めたの?」
深夜が尋ねると、
「決めてあるわ。正式には四葉・ーーー・達也よ。けど、暫くは彼の事を明かせないから、
そう言うと少し哀愁を漂わせながら目尻を下げて微笑んだ。
「真夜...今は仕方がないわよ、時期が来たら達也には真相を教えて上げれば良いんだもの」
真夜の肩にそっと手を置き、自分の豊満な胸の前に真夜の顔を引き寄せて優しく抱き締めた。
「...ありがとう姉さん、大好きよ」
真夜はそう呟くと、深夜の背に手を回して抱き締め返した。深夜は黙ったまま頭を撫でながら、双子の妹である真夜の気持ちを落ち着くのを待った。気持ちが落ち着いた真夜が、深夜の背に回していた自分の腕を下ろしながら口を開いた。
「もう大丈夫よ姉さん。...此れからの事なんだけど、英作叔父さんの事だから達也の能力を診断するでしょう?達也がどんな魔法が使えるにしろ、英作叔父さんは分家にも伝えるよう言ってくると思うわ。けど、真相を話したら事態は最悪の結果になる可能性が高いわ。...だから最悪の事態に備えて準備しようと思うの。この機会を利用して私の意思を告げるわ」
真夜の発言に、深夜は一瞬身体がビクッと跳ねたが
「...分かったわ。貴女の考えを聞かせて頂戴」
真夜に続きを促した。覚悟を決めた深夜の顔つきを見て、真夜は自分の計画を深夜に聞かせた。話を聞くうちに聞いてる深夜の顔が強張っていく。一通り話を聞いた後、深夜は瞳を綴じて暫く動かなくなった。その様子を真夜は決意した表情で見つめていた。瞳をゆっくり開けた深夜は真っ直ぐに真夜を見て、
「....分家が動こうしたら、どちらの方法を取るにしても本当に決行するのね?」
最後の確認の意味を込めて真夜に聞き返す。
「えぇ姉さん、私は本気です。達也を守る為なら例え一人でも決行します。仮に大事にならなくても、決裂するようなら二つ目の計画を実行するつもりよ。葉山には前から計画を話して準備を進めさせてあるし、あと一ヶ月もすれば準備も整うわ。それに姉さんには今回の計画を話したけれど、話が決裂した際は姉さんは避難して頂戴」
真夜は慈愛に満ちた表情で深夜に語りかけた。
そんな表情を浮かべる妹を見て、これは決意した母親の顔ね、と深夜は思った。
「馬鹿ね...分娩室でも言ったでしょう。貴女達は私が守って支えていくから安心しなさいと。譲れないものが相反する事になったら選択するしかないのは世の常なのだから。その選択を一緒にする覚悟はしっかりしてあるわ」
深夜のその言葉に真夜の目からは涙が頬を伝う。無言の双子は抱き合いながら、お互いの存在を確かに感じながら、これからの戦いに挑んで行く...
達也の本名については今は明かせません。しかし、お気付きの方もいらっしゃると思いますが、父親は日本人ではありません!!故に4500グラムのBIGなベイビーです。