衝撃の診断が終わり、真夜は部屋を出ていく英作に、公表するまで誰にも明かさないよう口止めした。英作は内心迷っていたが、真夜を刺激すると取り返しのつかない事になるのではないか、と戦々恐々しながらその場は従うことにした。
英作が退室した後、深夜はすぐに防音障壁を部屋に張った。
「真夜、英作叔父さんは大丈夫かしら?」
「大丈夫よ姉さん、私達を刺激したら取り返しのつかない事になると悟ったでしょう。それに【分解】と【再生】の事を視られるのは想定内でしょう?姉さん」
真夜が深夜に改めて計画通りだと告げると
「奥様、計画の準備も滞りなく進んでおります」
葉山も計画に抜かりはないと言わんばかりに報告する。
「ありがとう葉山さん、引き続き宜しくお願いしますね」
「御意」
葉山は一礼して退室した。
暫く、真夜に抱かれた達也を眺めていた深夜は、決心した様子で真夜に心中を明かす。
「真夜...私も子供作ろうかと思うの」
深夜の突拍子もない発言に流石の真夜も目を見開いた。それもそのはず、優秀な遺伝子を残す為に早婚が推奨される現代の魔法師の現状下で、真夜は達也を産みはした。しかし結婚はしておらず、子供の存在もその父親も世間には公表出来ない。姉の深夜に至っても、二十九歳になった現在まで頑なに結婚を拒んできた経緯がある。真夜は姉が現在まで結婚していない理由を知っている。その為、姉の発言には驚いた。そんな真夜の心中を察した深夜は言葉を続ける。
「真夜が驚くのも分かるわ。...けど聞いて頂戴。今回は仮に計画が上手く行っても、今後達也には困難が待ち受けているのは目に見えてるわ」
確かにと真夜も頷き、深夜に話の続きを促す。
「達也は英作叔父さんが言ったように世界を破滅させるだけの力を付けて行く。...彼の父親ですら比較にならないほどに。そんな達也が暴走したら、はっきり言って手の施しようがないのは容易に想像出来る。真夜の気持ちは理解しているけれど、私達は達也より早く死ぬ事になるわ。私達がいなくなった後でも達也を愛して、理解し、暴走を抑止する相手がどうしても必要だと私は考えるわ。だから私が娘を産んで達也のお嫁さんにするのはどうかしら?」
真夜としては自身の愛する人は達也本人に見つけて欲しいと思っている。と同時に姉の愁いも理解出来る為、どう返答しようかと迷っていた。
「達也自身に見つけて欲しいという真夜の気持ちも分かるわ。けど、達也の側にいるのは生半可な相手では無理だと思うのよ...だから私と相性の良い遺伝子を持つ相手を見つけて、以前から理論は完成してた私の調整技術を使って、完璧な娘を産もうと思うわ。勿論、将来達也がどうしても嫌と言えば結婚しなくても良い」
「...姉さんは本当にそれで良いの?姉さんも私と同じで自分が決めた相手じゃないと嫌だって言って来たじゃない!姉さんの気持ちはどうするの?」
「結婚はしないわ、精子だけ提供してもらうの。...今でも結婚するのも、抱かれるのも、愛した人でないと嫌よ。けれど、私ももう二十九になるし今までに惹かれたのは一人だけ。その相手も真夜を選んだでしょう?此れから先も彼以外を愛せるとは自分でも思わないわ。それは真夜が一番理解出来るでしょう?」
真夜自身もそう思っている上に、姉の深夜も同じ相手を慕っているのを知ってる真夜は何も言えなかった。
「それにね...真夜の念願が叶って彼を見つけた時、海外にまで飛び出して...帰国後に妊娠したと教えてくれた真夜を見てから、私も子供が欲しくなったのも事実なのよ。そして達也が産まれて気持ちを抑えられなくなったわ」
母親になった喜びを実感している真夜には、深夜が嘘の言葉を発しているようには見えなかった。これまで、いつも自身を支えてくれた双子の姉に、この幸せを感じさせる事が出来るならと、真夜は深夜の提案を受ける事にした。
「分かったわ姉さん、私も出来る限りサポートします。けれど相手はどうやって見つけて交渉するつもり?選定も交渉も身分を明かせない以上、困難なのは明白だと思うのだけど」
真夜は深夜の決断を肯定したものの、根本的にどう解決するのか解らなかった。
「実は、選定はもう済んでるわ。前から決断した時の為に調査してて、思いの外、身近に居たわ」
!!?想像もしてなかった返答に真夜は食いぎみに聞き返した。
「誰なの!?」
「FLTの第一営業部課長の司波龍郎という男よ。魔法力や資質は大したことない。けど、想子量がとてつもないの。どうせ調整技術で弄ってしまうつもりだから条件的には悪くない。それにFLTは四葉が出資している会社でしょ、交渉に関しても出資者として接触出来る。交渉材料を用意するのも、手間はそんなに掛からないと思うわ」
それが本当なら確かに深夜が言うように、案外簡単に解決しそうだ。というより深夜が本気で計画してきて、これから実行しようとしていると改めて実感した真夜であった。
深雪の出生の秘密が明らかになりました。達也の為の深雪というのは原作と一緒ですが、司波龍郎とは結婚しません。