ヴォルケンズ登場
「なぁ、まだ街にはつかないのかー?」
「んー、あと半日ってとこだな」
あと半日か…
起動してから早数日、街を目指して歩いては狩りをしての繰り返し。
歩いても歩いても草原しかない。
ほんとに街なんてあるのか?
「それにしても本当に広い草原ですね〜」
「あぁ、時期によっちゃ一面花畑だろうよ」
そう話すメリオダスの顔はなんだか楽しそうだ。
好きなのかな?
ちょっと以外だ。
「主メリオダスは花がお好きなのですか?」
シグナムもそう考えてたのか、聞こうと思っていたが先を越された。
少しでも知っておきたい気持ちは同じだな。
「花?そーだなー、育てたりとかは無理だが見んのは嫌いじゃねぇ」
「あっ、じゃあ街についたらお花屋さん行きませんか?大きい街ならきっと種類もたくさんありますよ」
「宿さがしてからな」
アタシ達が今目指してる街はこの次元世界では大きい規模だそうだ。
といってもこんなだだっ広い草原が広がっているところを見るとあまり文明レベルは高くないのかも。
「あっ、その前にお前らの服買わないとな。いい加減甲冑だけじゃ嫌になってくるだろうし。そんで服買った後は祝いの意味も込めてうまいもんでも食うか」
「祝いってなんのですか?」
「そりゃあ仲間が出来た祝いに決まってんだろ。久しぶりにたらふく飲んじまおっと」
そう言ってニシシと笑いかけてくる。
・・・・やっぱり変わってる。
(今までの奴らとはてんで違う)
今までこんな風に笑いかけてきた奴なんていなかった。
蒐集もしないと言うし、命令もしてこない。
戸惑いがないと言えばウソになるけど・・・
(悪い気はしないな)
こいつは私たちという存在をみてくれている。
ただの物ではなく、仲間として。
それだけのことがうれしいんだ。
それはきっと皆も同じだ。
(初めてだ…)
義務じゃなく、自分の意志で守りたいって思えたんだ。
★
「おぉ!でっかー!」
「ヴィータ、あまり大きな声をだすな。確かに大きいが…」
小さな丘を終えると目的地である街が見えた。
その規模は予想よりも大きい。
街というよりも国だな。
「思ったより全然大きいじゃん!」
「外壁も高いですね~」
「造りも頑丈でしっかりしているのがここからでもわかるな」
それぞれ思ったことを口にしている。
皆驚いていると言う事だろう。
「ここでなら見つかるかもな…」
その中で主だけが目を細め、街を見つめていた。
・
・
・
街に入ってみれば人、人、人。
凄い賑わいだ。
それにしても・・・
(先ほどの言葉、主メリオダスは何かを探しているのだろうか?)
ここ数日で私は初めて主の真剣な表情をみた。
余程大事な探し物なのだろう。
何かお力になれれば良いのだが…
しかし、私が立ち入って良いものなのか…?
「シグナム?」
「ど、どうかなされましたか主メリオダス」
「いや、難しい顔してたからどうかしたのかと思ってよ。体調悪いのか?」
「あっ、いえ…そういうわけではないので大丈夫です。ただ少し人の多さに気圧されしまいまして」
「そうか、ならいいんだけどよ」
咄嗟に嘘をついてしまった。
・・・主に心配をかけてしまうなら素直に聞いておくべきだろう。
「・・・・主メリオダス、一つお聞きしてもよろしいですか…?」
「ん?なんだ?」
もし、お前には関係ない、必要ないと言われたなら…
私はどうすればいいのだろうか…?
私に価値はあるのか…?
「その・・・この街でなにを―――」
「おーい、二人ともなにやってんだよー!はやく行こうぜー!」
遮るようにヴィータの大きな声が聞こえてきた。
気が付けば私と主以外は既に先に進んでいた。
「気の早い奴らだな。で、シグナム。今なんて言った?」
「いえ、やはり大丈夫です。大したことではありませんので」
「?まぁ、いっか。行こうぜシグナム」
結局聞くことができなかった。
私は結構小心者らしい…
そんな自分の未熟さを感じながら主の後を付いて行く。
その途中皆に念話を飛ばす。
『お前たち自分たちの使命を忘れているのではないか?』
距離が離れていてはとっさに主を守れないではないか。
主がやさしいと言えど少し気が抜けすぎだ。
『アタシは二人が進んでたから…』
『ご、ごめんなさい。綺麗なお店があったからつい…』
『俺はてっきり主の通る道に危険がないかの確認だと思ったのだが、お前たち…』
はぁ、頼りになるのだが抜けてるところがあるのが玉に瑕だな。
「お前ら、この人の量で知らない街なんだから先走ると迷子になるぞ?特にヴィータ」
「ならねぇよ!」
「冗談だ冗談、ははは」
主はヴィータと戯れるのがお気に入りのようだ。
きっと子どもが好きなのだろうな。
「そんじゃ、服買いに行きますか」
★
「メリオダスちゃん、お洋服ありがとうございます」
「気に入ったの買えてよかったな」
「はい!」
手に持った紙袋の中身を覗き見るとつい笑みがこぼれちゃう。
主であるメリオダスちゃんが選んでくれたのがまたうれしくて、うれしくて。
(ふふっ、皆嬉しそう)
「はやく宿探して着替えようぜ!」
「落ち着けヴィータ。袋を落とすぞ?」
「そういうお前も早足だぞ?シグナム」
「む、そうか?」
こんなこと今までなかった。
事務的でも高圧的でもない、心ある言葉をかけてくれた。
ましてや仲間と言ってくれた。
「シャマル、泣いてんの?」
自然とポロポロと涙が溢れては落ちてく。
やだ、私ったら…
「だって、メリオダスちゃんが優しいんだもの」
「それにしたって泣くことはねぇだろ?大げさだな」
「大げさじゃありません!それほどうれしいんです!」
「お、おう…」
あぁ、もう!
本当に止まらなくなってきちゃった。
「はぁ…大の大人がいつまでもそのままじゃみっともねぇ。これ使え」
そう言って自身のスカーフをこちらに渡してくるメリオダスちゃん。
またそんなこと・・・
「う、うわ~ん!私メリオダスちゃんが主で良かったです~!」
「ほんと大げさだな~」
「大げさじゃないです~!」
「わかったわかった。とりあえず周り見て見ろ?」
「?」グスッ
皆こっち見てる…?
・・・・あっ…
「お、お騒がせしてごめんなさい!?喧嘩とかではないので大丈夫ですから!?」
そりゃあ街中で泣いてたら注目浴びますよね…
あらぬ誤解が生まれてそう…
「本人が言ってんなら大丈夫か、行こうぜ」「そうだな」
「泣いてるもんだから驚いちゃったけど大丈夫そうね」「おねーちゃん元気出してね~」
「坊主、あんまり姉ちゃん困らせんなよ?」
「俺はガキじゃねぇっての」
ふぅ、とりあえず誤解はなさそう。
「すいません…お恥ずかしいところをお見せしました…」
「まぁ、いいさ。泣くほど喜んでもらったんだからな」
「メリオダスちゃん…」グスッ
「おいおい、流石に二度目は勘弁してくれ…」
「シャマル、少しこちらで落ち着け。主メリオダス、シャマルが落ち着いたらヴィータとザフィーラの魔力を感知して追いつきますので」
「そうか、なら任せた」
シグナムに手を引かれすぐ近くの路地へ。
そうよね、いったん落ち着かないとね。
「どうした?多少涙もろいとは知っているがここまでではなかっただろう?」
「今までこんなことなかったから」グスッ
中々止まってくれないからもう少し時間が掛かっちゃいそう。
皆には迷惑かけて申し訳ないわね。
「語り掛けてくれたり、私たちの為に物を買ってくれたり、仲間と呼んでくれたわ」
「あぁ、初めてのことばかりだ」
「それで嬉しそうな皆の顔を見てたら私、すごく幸せな気持ちになって・・・」グスッ
「シャマル…」
皆が笑っていられる。
皆で守りたいと思える。
そんな主にようやく出会うことができた。
「だからメリオダスちゃんで良かったって心の底から・・・」グスッ
「ストップだ。皆まで言わずとも我ら全員同じ気持ちだ。それにまた泣かれては帰りが遅くなってしまう」
「うん…」
自分でもこんな涙もろいとは思わなかった。
これからはなるべく泣かないように気をつけないと。
「ところでシャマル、主メリオダスからこの街で何をするか聞かされたか?」
「ううん、何も」
そういえば街に向かうとだけしか聞いてない。
「そうか……」
「シグナム…?」
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
一瞬シグナムが暗い表情をした気がする。
気のせいかしら?
「さて、そろそろ戻るとしよう」
★
「シグナムの元気がない?そのようには見えんが」
「うん、私の気のせいかもしれないけど…」
宿に着いて着替えを終えた後シャマルから相談を受けた。
なんでもシグナムが何か悩んでいるのではないかということだそうだ。
「いや、お前が言うのなら恐らく間違いじゃないだろう」
ヴォルケンリッターの中で一番周りを見ているのはシャマルだ。
そのシャマルが言うのだから間違いではないだろう。
「それにシグナムは抱え込む悪い癖がある。今回も十中八九そうだろう」
「確かにそんな感じだったかも。どうしたらいいと思う?」
「ふむ、シャマル、まずどんな時にシグナムに違和感を覚えた?」
「ええっと・・・シグナムから質問されて、それに答えた後の一瞬だけよ」
質問?
移動中それらしい会話はなかったから路地に二人で残ってたときか。
「因みにその質問の内容は?」
「メリオダスちゃんがこの街でなにするか知ってるかって質問だったわ」
「言われてみればこの街で何をするのか俺は知らないな」
「私も知らなかったからそう伝えたわ」
・・・・なるほど
大体のことはわかった。
「またシグナムらしい悩みだな…」
「わかったの!?」
「恐らくだがな、行くぞ」
「えっ?どこへ?」
・
・
・
「シグナム、ヴィータ、入るぞ」
「ザフィーラか、いいぞ」
部屋に入ればヴィータはおらず、シグナムはレヴァンティンの手入れをしていた。
「あれ?ヴィータちゃんは?」
「護衛を兼ねて主メリオダスの所にいる。それでどうしたザフィーラ?」
「お前に少し話があってな」
「私に?」
レヴァンティンを机に置き、こちらを向く。
「単刀直入に言うが悩みがあるのだろう?」
「・・・なんだ唐突に」
少しだけ視線が泳いだ。
相変わらず嘘をつくのが下手な奴だ。
「隠さなくてもいい。主から目的を聞かされていないから不安なのだろう?」
「!?」
「やはりな」
「あっ、もしかして…」
どうやらシャマルもピンと来たらしい。
「我らは主の目的を知らない。それを我らが信頼されてないと思ったのではないか?それか我らの力不足だと」
「・・・その通りだ…」
「でもメリオダスちゃんは私たちの事を―――」
「わかっている。主メリオダスはお優しい方でとても良くしてくれている。だからこそお力になりたいのだ!しかし、主メリオダスは我らには語ってくれない。恐らくそれは我らの力不足だからだ…」
「そ、そうとは限らないじゃない。直接聞いてみれば・・・」
「その時にもし我らの力は必要ないと言われたら?我らはただのお荷物だ。何の価値がある?」
「それは・・・」
我らが存在できるのは僅かにだが主から魔力をいただいているからでおり、その上我らの分の生活費も掛かる。
「確かにその時は我らは不要な存在。しかし、我らはまだ主からそのような言葉を聞いてはいない」
シグナムは我らの為を想って悩んでいるのだろう。
もしその言葉が返ってきた場合今の生活は終わりを告げるわけだからな。
しかし、そのような心配は無用。
『ヴィータ、主をこちらに案内してくれ』
『ん?わかったー』
「ザフィーラ何を!?」
「決まっている。これから主に直接目的をお伺いする」
「本気か!?もし―――」
「何を狼狽えている!それでも我らが将か!」
「!」
「お前も知っているはずだ。我ら皆歴戦の騎士。力量不足と言われるほど弱くはない!そして―――」
シグナムが知っているように我々も知っている。
「我らが将がその程度のはずがないと!」
「ッ!・・・・そうだったな。済まない、忘れるところだった」
「シグナム」
「シャマルにも心配をかけたな。だがもう平気だ。私は烈火の将シグナム!必ずや主の力になる存在!」
「フッ」
目に力が戻ったか。
もう何も心配は要るまい。
「連れてきたー・・・ってどうしたんだよシグナム。すごいやる気に満ち溢れてるけど…」
「いや、他の二人も相当だぞ」
ヴィータが主をお連れしてきた。
いいタイミングだ。
「主メリオダス、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「お、おう」
今のシグナムに迷いなどない。
いけ、シグナム。
「この街での主メリオダスの目的を教えてもらえますか?」
「そういえば聞いてないなアタシも」
「・・・・」
主はしばらく考えこむと口を開いた。
「そういや言ってなかった気がすんな。いや~すっかり忘れてた」
「それで、その内容とは?」
「うーん、自分探しってとこだな。俺、記憶喪失だからよ」
「えっ!?」「マジ!?」「!?」「えぇ!?」
なんと・・・そうだったのか…
「わかってんのはメリオダスっていう名前と少しのことだけだ」
「・・・」
「おいおい、暗い顔すんなって。名前わかってるだけマシなんだからよ」
なんと前向きなのだろうか。
といってもさらりと言う内容ではないと思うのだが…
「我らも何かお力になれないでしょうか…?」
「う~ん、手伝ってくれるってのはありがたいけどいいのか?」
「はい!是非とも!」
しかし、記憶喪失か…
何をすればよいのだ?
「シャマルは治療系得意だろ?直してやれないのか…?」
「さすがに記憶はちょっと…」
「何か手掛かりはありませんか?」
「手掛かりっつーと〈七つの大罪〉っていうキーワードとか〈
「なるほど、まずはそのキーワードをもとに情報を集めるしかなさそうだな」
「アタシ色んなやつに聞いてみる!」
「じゃあ私は書籍を調べてみるわね」
「ザフィーラと私も聞き込みだな」
できることから始めるしかあるまい。
「そんな頑張んなくてもいいぞ?街を楽しむついでぐらいでいいからよ」
「自分のことなんだからもっと真剣に頑張れよ!アタシ達も頑張るから!」
「いやいや、ついでぐらいでいいって。なんせもう500年は探してんのに手掛かりもこれだけだからな」
「「「「・・・・」」」」
聞き間違いか…?
いや、そうに決まっている。
「ご、500年って今言わなかったか…?」
「おう、言ったぞ」
どうやら聞き間違いじゃないらしい…
思わず他の皆と顔を見合わせてしまう。
「「「「えええぇぇ!?」」」」
我らが主は我らよりも長い歴史を刻んでいたのだった…