年齢 メリオダス>闇の書
「突然だが資金が底を尽きた」
「へっ?」
時刻は朝の7時前、全員を集めたところでメリオダスが重大発表をかました。
「明日を生きる金もない」
「と、突然過ぎんだろ!?」
「だから突然だがって言っただろ?」
慌てるヴィータに対してメリオダスはとても冷静に切り返す。
他三名は暗い表情だ。
「あ、あの・・・メリオダスちゃん…」
「その原因はもしかしなくても…」
「我々のせいでは…?」
ヴォルケンリッターの仲間入り。
つまり四人分の生活費が増えると言う事だ。
それは万年金欠のメリオダスの資金力ではどうあがいても無理があった。
「気にすんな、必要経費ってやつだ。それにこうなるのは最初から分かっていたしな」
「ってことは何か解決策が…?」
「もちろんある。というかこの街に来た目的の九割は当分の資金を得るためだしな」
それを聞いたヴォルケンリッターは一安心といった表情。
因みにもちろん残り一割は記憶の手がかりである。
「でもどうやって?」
「ここはでかい街で自然と人は集まる。人が増えりゃ、さらに栄えるがその分問題も多いのさ」
「つまり、その問題を解決することによって資金を得ると言う事ですね」
「その通り。だからまずは酒場に行くぞ。大抵酒場に行けば問題は転がってるからな」
宿を出るとメリオダスは迷いなく歩き始める。
場所は前日調べておいたからだ。
「ずいぶん手慣れてますね」
「そりゃそうさ。もう五百年はこうして旅をしてるからな」
「五百年・・・改めて聞いてもすごいわね…」
「五百年前というとまだベルカが住める土地だった頃だな…」
「メリオダスちゃんは旅で行ったことありますか?って、戦乱だったから行くわけないですよね」
「いや、あるぞ。というか一時期は騎士もやってたしな」
メリオダスの放った言葉にヴォルケンリッターは絶句する。
なぜならベルカにおける〈騎士〉とは魔法使いの中でも上位の実力を持つ者に与えられる称号だからだ。
彼女達もまた騎士であるが故その重みを理解している。
「そ、それって本当なのか!?」
「本当だ。魔法は苦手だったけどな」
「では、なぜ―――」
「着いたぞ。昔話はまた今度だな」
ヴォルケンリッター達は疑問はあるものの主がそう言ってしまったのでは仕方がない。
それに今は自分たちの為に尽きてしまった資金をどうにかしたいという気持ちの方が勝ったのだった。
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「ほんとにいっぱいあるんだな」
酒場に置いてある掲示板を見上げるヴィータ。
そこには20枚ほどの依頼書が貼られている。
一つの酒場でこれならば、街中のすべてを合わせるととんでもない数になるだろう。
「ペット探しに、仕事の手伝い、街の清掃業・・・ほとんどが他愛ないものだな」
―――その方が良いのだがな
そう言いながらシグナムは依頼書を見ていく。
「しかし、我らには資金が必要だ」
「といっても高そうな依頼はなさそうね…」
「じゃあどうすんだ?」
ヴォルケンリッターが掲示板の前で頭を抱えているとメリオダスが近づいてくる。
「主メリオダス、ここでは期待に添えるような依頼はないように思えます」
「あぁ、大丈夫大丈夫。でけぇ依頼があっからよ。ザフィーラ、ちょっとついて来てくれるか」
「勿論です」
メリオダスはザフィーラを連れ、カウンターに向かって行く。
カウンターの向こうにはこの酒場のマスターがいる。
『ザフィーラ、これから俺が念話で話す通りに喋ってくれ』
『わかりました』
マスターの目の前の席にザフィーラはドカッと座り、喋り始める。
『「おい、少しいいか?」』
「注文は?」
『「でかい依頼を一つだ」』
「・・・依頼ならあそこにあるので全部だ」
『「下手な嘘だな。俺の予想では依頼は流通に関すること・・・違うか?」』
「!?」
その一言にマスターは驚く。
『「商人が愚痴をこぼしてたぜ?最近バケモンが出て仕入れ値が上がってやがるってな」』
(この男…なかなか)
『「大方そいつを退治するっていうのが依頼だろう。それを俺にやらせてほしい」』
「・・・わかった、これが依頼書だ。サインは既にしてある」
『「いい判断だ」』
依頼書を受け取るとザフィーラは席を立ち、外に出る。
その後に続くようにメリオダスたちも店を出た。
「ナイスだザフィーラ」
「いえ、これも主のお言葉のおかげ」
「いやいや、俺みたいなのが言うと全然話が通じなくてよ。いつも依頼書にこぎ着けるまでが一番苦労すんだ」
子供にしか見えないメリオダスは酒場に入ることすらいつもは一苦労なのだ。
それを依頼を受けたいなどと言われても子供のお遊び程度に取られてしまうのは仕方ないのかもしれない。
「そもそもなんで解決してほしいのに依頼書を隠すような真似してたんだ?」
「恐らくは金に目がくらんだ者達への対策だろう。実力がないものが討伐に赴いたとしても犠牲者が増えるだけだからな」
「で、そこで採用された方法が〈自分たちで見極める〉ってな訳」
「へぇー、なんか色々めんどくさいんだな」
「そうじゃなきゃシステムが成り立たないしね」
「まっ、ガキには難しい話だったな」
「ガキじゃねぇよ!」
「落ち着いてヴィータちゃん。メリオダスちゃんもあまりヴィータちゃんをからかわないで上げてください」
「面白くてついな。悪かったなヴィータ」
「・・・フンっ!」ムスー
からかわれたことでヴィータはご機嫌斜め。
どうしたもんかと考えるメリオダス。
「そう怒るなって」
「別に!怒ってんじゃなくて呆れてるだけだし!」
「じゃあ、見直せるようにこの依頼ですげーもん見せてやるよ。ぜってぇ驚くぜ?」
「・・・どうだか」
そう言うものの内心は興味があるため、チラリとメリオダスを見てしまうヴィータであった。
(これは主メリオダスの実力が見れるのでは!)
そしてヴィータの横でそれ以上に期待している者もいた。
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・
「ここら辺だな」
街から数キロ離れた場所にメリオダス達は来ていた。
被害の多くがここら一帯で襲われているためだ。
「依頼書では全長20メートルほどの虫だそうです」
「絶対気持ち悪い…」
「見当たりませんね?」
周りを見渡すもそれらしき生物などいない。
ここは草原、それほどの巨体が隠れられる場所などないはずなのにだ。
「そもそもそんな巨体じゃ、襲われる前に気づけたはずだ。それが出来なかったってことは・・・」
メリオダスの視線は下、すなわち地面に向く。
そして拳を握り、腕を振りかぶると・・・
「ここしかねぇ!」
そのまま拳を地面に叩きつけた。
その威力にあたり一帯が揺れる。
「無茶苦茶すぎんだろ!?」
「これが主メリオダスの実力なのか!?」
「うそっ…魔法すら使わずに…!」
「何というパワーだ…!」
拳一つで小規模ながら地震を起こすメリオダスに対しさすがのヴォルケンリッターも驚愕背ざる負えない。
「さぁ、お出ましだ」
メリオダスの起こした揺れとは違うもう一つの振動が大地を揺らす。
それは地面を盛り上げ、姿を現した。
「うへぇ…気持ちわる…」
「こりゃ、30メートルはくだらねぇぞ?」
近しい生物は何かと言われればムカデだろう。
全長は依頼書に書かれていたものを遥かに超えており、
その無数の足がウネウネと動くさまは不快な気分にさせるには十分すぎるものだった。
《Gaaaaaa!》
ムカデは巨体をうねらせ、あたり一帯を無差別に破壊していく。
メリオダスたちは巻き込まれないように大きく後ろに跳ぶ。
「あっぶな。あいつ相当キレてるみたいだな」
「地表であれだけ揺れたのであれば地中ではより揺れたはずです」
「あはは・・・それは怒りますよね…当然…」
「どうする?ギガントで一気にやっちまうか?」
「確かにヴィータのギガントが最適だ」
ヴィータは既にハンマー型デバイス【グラーフアイゼン】を構えている。
それはカートリッジを用いることでギガントフォルムと呼ばれる身の丈のおよそ十倍ほどのハンマーとなる。
それを喰らわせれば巨大ムカデあろうとひとたまりもないだろう。
「うんにゃ、その必要はねぇ。俺一人でやる」
「はぁ!?確かにあの馬鹿力はすげーし、驚いたけど無茶すんな!」
「ちっちっち、俺はまだとっておきを見せちゃいないぜ?まぁ、みてろって」
余裕を見せるメリオダスの背後でムカデの口元に魔力を溜まっていく。
そして凄まじい速度で溜めたその魔力弾をムカデはメリオダスに向けて放った。
依然メリオダスはヴィータの方を向いている。
《Gaaaaaaa!》
「バカ!?後ろ‼」
一切避ける素振りを見せないメリオダスにヴォルケンリッターは驚愕し、一斉に駆け付けようとする。
(くっ!間に合わんッ!)
しかし、避けることは難しくない攻撃と先ほどのメリオダスが見せた実力の片鱗、それらがヴォルケンリッターの反応を僅かに遅らせた。
既にメリオダスの真後ろには魔力弾が迫っていた。
次の瞬間に魔力弾に飲み込まれるメリオダスの姿がヴォルケンリッターの脳裏に走る。
チンッ
「【
しかし魔力弾は鍔鳴りの音と共に数倍に膨れ上がり、跳ね返された。
攻撃範囲も広がっているそれを避けることが出来ずムカデは飲み込まれた。
「いっちょあがり!ってな」
圧倒的威力にムカデは断末魔すらあげずに消し飛んでしまった。
そしてメリオダスはヴォルケンリッターの方を向きニカッと笑う。
「な?言っただろ。とっておきがあるって」
「・・・・・」フルフル
「どうした?寒いのk「バカー‼」ってハンマー振り回すな」
「そういうのあるなら最初から言えってんだ!バカ!」
「そうですよ!私、心臓止まっちゃうかと思いましたもん!」
「主メリオダス、もう先ほどのようなことはおやめください」
「主、俺も同じ意見です」
「ちょっ…」
前後左右、四方向からそれぞれヴォルケンリッターにグイグイと迫られる。
これにはメリオダスも少し困ってしまう。
「わ、悪かったって。もうやんねーって」
「ほんとですか?」
「ほんとほんと。だから落ち着けって、な?」
そうしてようやくヴォルケンリッターから解放されたメリオダス。
しかし、落ち着いてくると自然と疑問が思い浮かぶ。
「でもどうやって跳ね返したんですか?魔法も使っていたように思えないんですけど」
「しかも威力は数倍に膨れ上がってな」
「それはだな~」
剣を引き抜き、一振りして見せるメリオダス。
「こうやって斬ったのさ」
「・・・からかってるのか?そんなんで跳ね返せるかよ」
「・・・主メリオダス」
「・・・冗談だ、冗談。そうムスッとするなって」
「それで一体どうやったのですか?」
「それはだな―――」
メリオダスは自身の魔力【
それを聞いてヴォルケンリッターはさらに驚く。
「攻撃的魔力を倍以上のものして跳ね返す・・・」
「しかも魔力も使わない、全くゼロの力でとは・・・」
「反則じゃね・・・?」
「でも魔力【
「そういや昔にもそんなこと言われたな」
自分以外に魔力にそこまでの性質があるものにメリオダスはあったことがなかった。
それほどメリオダスの魔力は珍しいのだ。
「主メリオダス、一つ我が儘をお許しいただけないでしょうか?」
「「「あっ…(察し)」」」
「なんだ?」
「私と手合わせしてもらえないでしょうか?」
そう言うシグナムの表情はとても生き生きしており、メリオダスを見る目は期待で溢れてる。
(あ~あ、またシグナムの悪い癖が出たよ)
(あいつはバトルマニアだからな・・・)
(巻き込まれないように今のうちに下がって置こっと)
先ほどのメリオダスの動きと今の魔力の凄さでシグナムは完璧に火がついてしまっていた。
待ちきれないと言わんばかりにうずうずとしている。
「手合わせ?いいぞ、ちょうど動き足りなかったしな」
「ありがとうございます!ではさっそく」
「あぁ、来い」
お互い五メートルほど離れ、構える。
シグナムは剣を、メリオダスは拳を。
(剣は抜きませんか。ならば抜かせるまで!)「はっ!」
先に仕掛けたのはシグナム。
剣による連撃がメリオダスを襲う。
「よっ、ほっ、うりゃっ!」
しかし、その連撃をメリオダスは軽々とかわしていく。
そして回避していくほどその動きが最小限になっていき・・・
「隙あり」
メリオダスはカウンターで拳を突き出した。
「いいえ、隙はありませんよ」
「うおっ!」
予想通りと言わんばかりにシグナムは拳をかわし、さらにカウンター気味に剣を繰り出す。
その剣は惜しくもメリオダスを捉えられないがメリオダスを後退させた。
「流石ですね、今のを避けられるとは」
「いや~今のは惜しかったぜ?」
僅か数秒、互いに牽制に留まった。
だというのにシグナムだけでなくメリオダスも笑みをこぼしてしまう。
「おいおい、あいつもかよ・・・」
「シグナムと合わせて苦労が倍だな・・・」
「まぁ、お互いで相手できるからいいんじゃない…?」
それを見ている三人は今後のことで頭を悩ませる。
そしてそんなことには気が付くはずもなく再び二人は衝突する。
「今度はこっちから行くぜ?」
今度はメリオダスから仕掛けていく。
最短で真っ直ぐに一直線にシグナムに突っ込む。
対するシグナムはその場から動かず剣に手を添えるのみ。
(速いが・・・愚直!)
メリオダスが間合い入った瞬間、下から上への斬り払い。
その超速抜刀がメリオダスを捉え、真っ二つにした。
「!?」
・・・かのように見えた。
斬られたメリオダスが幻想のように消えたのだ。
「残像ってやつだ」
「ッ!」
声が聞こえ、振り返ろうとするシグナム。
しかしその暇もなく空中へ吹き飛ばされた。
背中への強い衝撃と痛みがシグナムへ攻撃されたことを理解させる。
飛ばされる瞬間、微かに捉えたのは脚を振り上げたメリオダスの姿。
シグナムは飛ばされながらなんとか剣の切っ先をメリオダスに向ける。
「くっ、レヴァンティン!」
主の声にレヴァンティンが応え、魔力弾が放たれた。
攻撃後の隙と予想外の攻撃にメリオダスは避けられない。
「忘れたわけじゃねーよな?」
が、メリオダスには【
剣を引き抜き、一閃。
魔力弾は数倍になってシグナムに直撃、爆発した。
「ちょっとやりすぎちまったか?」
空を見上げながらメリオダスは呟く。
盛大に爆発したため、煙でシグナムの姿は確認できない。
「おーい、シグ____!」
声をかけようとした瞬間、煙の中から蛇のように何かが出てきた。
それは連結刃と呼ばれる刃を備えた鞭であり、メリオダスを拘束するように巻き付いた。
「何だこれ?」
「レヴァンティンの別形態〈シュランゲフォルム〉と言います。ご存知でしょうがカートリッジシステムの変形機構です」
煙が晴れていき、シグナムの姿があらわになる。
その姿は多少傷ついているものの戦闘には差し支えないものだった。
「なるほど、でもなんでピンピンしてんだ?戦闘不能程度にはなってると思ったんだけどよ」
確かに【
それだというのにシグナムにはほとんど傷はない。
「あらゆる攻撃的魔力を数倍にして跳ね返す、確かに強力です。ですがそれは自分から攻撃はできず、威力は相手の魔力に依存すると言う事です」
「こんにゃろ、わかってて魔力を最低限に抑えたな~」
自身の魔力を逆手にとられ、拘束までされているというのにメリオダスの顔は笑っている。
心の底から楽しんでいるのだ。
「はい、上手くいきました。まぁ、実力を抑えるというのは不慣れで少しもらってしまいましたがね」
それはシグナムも同じだった。
普段の笑みとはまた違う笑みがこぼれる。
「名残惜しいですがあとは魔力を流し込めば私の勝ちです」
「そいつはどうかな?うしろ見て見ろよ、
「とっておき?」
メリオダスは今完全に拘束され、身動き一つとれない。
いまさらこの状況を変えられるとは思えないシグナム。
しかし、メリオダスがとっておきというのだから気にはなった。
「あ、主メリオダス!?」
「よっ!」
後ろを見たシグナムの視界には軽快に挨拶してくるメリオダスの姿があった。
(馬鹿な!?拘束は完璧なはず!?)
「やっほー」
急いで振り返ればそこにはちゃんと拘束されたメリオダスがいる。
つまりシグナムの前後にメリオダスが同時に存在しているということになる。
(主メリオダスが二人!?一体どういうことだ!?)
「悪いな、シグナム」トンッ
「くっ・・・・」バタンッ
動揺するシグナムにもう一人のメリオダスが首筋への当て身を決めたことで勝負はついた。