ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

13 / 117
第十一話 変革の予兆

プラントの一角にあるゲルググの開発部は現在てんやわんやの状態であった。配備の遅れているゲルググ、新しく追加されていく設計書、新型機の性能実験、ミネルバなどから受け取った実戦データ改修、動いてない人間などおらず、誰もがせわしなく働いている。

そんな中で開発主任であるクラウ・ハーケンはいつものように眠気覚ましの不味いコーヒーを飲みながら、一つの報告に目を丸くしてた。

 

「出撃した三機ともが大破ぁ?」

 

先行配備させたゲルググF型の三機、しかも内一機は隊長機だ。にも拘らずそれが一機も戻ることなく全滅したとの報告を受ける。

 

「はあ、全く……ただでさえ配備が遅れてるのを無理矢理要請するから用意させたゲルググだってのに、どういうことだよ」

 

うんざりと溜息をつきながらデータを纏める。配備が遅れているのは別のものを造っているという理由があるが、だからといってそれが配備を遅らせていい理由にはならない。

 

「仕方ないか……データの方もないってことだしF型に関しては追々ってことにして先に他の奴を完成させるか。新型のテストにマーレ―――っていないんだったな。仕方ない、俺が乗るか」

 

そういったとたん、忙しかった室内が静まる。

 

「どうしたんだ、お前ら。さっさと仕事に戻りなよ」

 

「は、はい!?」

 

先程の空白が無かったように喧騒が戻るが、先程とは明らかに違いがみられた。

 

「―――何なんだ?」

 

そう疑問を出しながらも彼は機体のテストの準備の為に開発部から出ていく。テストをすると言って当然、すぐにテストなどできず、前持った下準備が必要だ。その為には色々としなければならず、仕事が滞るな、と思いつつ彼は移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

主任がテストの為に仕事をしばらく休むこととなった。開発部の殆どの人間は今すぐデータをかき集めるために機材を用意しだす。動いてないのは彼のテストを見たことがない新しく入った人達だけだ。

普通、開発者が直接機体を乗り込むことは滅多にない。開発者自身がその機体の特性を知っていても使いこなせない人間が殆どだからだ。例えるなら一流の監督やコーチが一流の選手になれるわけではないと言った所だろうか。一定以上の実力は必要だが、監督としての素質に選手としての素質は必要というわけではない。それと同じことだ。

だが、この開発部の主任であるクラウ・ハーケンは一流の開発者でありながら一流のパイロットだ。何より驚くべきは熟練したその腕。単なるエースではなく、培ってきたであろう力強さがあるのだ。そして、開発者である以上、機体の特性も把握しており、十全にその機体を使いこなす。

彼の操作は録画機一つで取るだけでも研究する余地があるものだった。

 

「全員、用意はいいな。仕事に関しては急を要するモノ以外は置いておけ。機材で得たデータは解析のみだけでなく全員に回して報告書を後に提出すること、以上だ。よし、動け」

 

さて、今回のデータで果たしてどれだけ価値のあるものが得られるのか――――――今から楽しみでしょうがない。きっと全員がそう思っているであろう。

 

 

 

 

 

 

 

さて、早いとこテストを終わらせて配備を進めたいと思いながら機体に乗る。今回のテスト機はJG型と呼ばれる機体だ。B型の強化機体と言ってもいいこの機体は性能が他のゲルググと比べても一回り上の性能を持っている(先行配備にフルチューンしているワンオフと言ってもいいマーレ機程ではないが)。

 

「スラスター良し、反応速度良し―――」

 

一つ一つの動作を確かめながら操作する。悪くない、むしろいい。バックパックの換装による性能低下が危惧されているが、この分ならこの機体単独で生産しても問題ないのではないだろうか。

そんなことを考えつつテストを進めていく。空間戦闘のテストも実際にB型以上のスペックをたたき出し、狙撃戦での性能も高く、近距離戦闘も十分な成績を出した。

 

「テストを終了する」

 

結果的に性能実験で出したJG型の性能は高かった。しかし、やはり問題は換装による性能の低下だろう。宇宙での使用がメインとなると判断する。それに、

 

「近距離戦はともかく近接戦の成績が高かったわけじゃないんだよな……」

 

ビームサーベルもあるし、頭部バルカンやビームスポットガンのおかげで近距離戦は高い。だが、懐に入り込まれればビームスポットガンも使えず、ビームサーベルに関しても出力をあまり回してないので威力が低い。

 

「やっぱり、別の機体も生産すべきなのかね……」

 

ゲルググのスペックが高いといっても、当たり前だがゲルググが完璧なわけではない。カバーできない戦場は当然存在するし、だからこそ空中戦を行えるグフや水陸両用のアッシュがいるのだ。だが、当然クラウの記憶はゲルググだけしかないわけではない。色々な世界の技術を知っているし、宇宙世紀の様々な機体を造ることも可能だろう。

事実、一部の機体は既に造りはじめている。造ってない機体のデータに関しても記憶から掘り出せばすぐに登録できるだろう。結局は、戦争なのだ。勝つための戦いをしなくてはならない。

 

「はあ、仕事が増えて面倒だが、やるしかないか―――」

 

新たな機体の介入が予測される言葉となった。

 

 

 

 

 

 

 

ローエングリンゲート突破作戦。作戦内容自体はアスランの手によるものだ。現地のレジスタンスに協力を繋いで、地元の人間ですら殆ど知らない坑道を通る。その間に敵部隊をミネルバの部隊で陽動し、敵MAをこちらにおびき寄せることでインパルスによる不意打ちを仕掛ける、というものだった。

 

「で、MAの方を倒せる算段はあるのか?」

 

不機嫌そうに問いかけるのはマーレだ。現地のレジスタンスは当然ながらナチュラルだ。そのナチュラルであるコニール・アルメタに対して良い気を持たないマーレは見下した視線を無くすことなく対応する。

そんな性格を知っていたシン達はともかくアスランは驚きを見せていた。カガリと話している時も不機嫌な様子を隠してはいなかったが、見下した視線までは見られなかった。相手が国家元首であったのだから当然と言えば当然だが。

 

「MAに関してはシン達からも聞いている。オーブ近海でも戦ったようだな。それとはタイプが違うようだが、リフレクターを張れると言う面では同じだろう。その機体に関しては俺が相手をする」

 

「アンタにやれるんですか?」

 

アスランが自分がやると言うが、その発言に対してシンが突っかかる。マハルーム基地での話し合いで多少の距離は縮まったが、だからと言って決して仲が良くなったわけではないのだ。

 

「さあな、戦ったこともない相手に確実に勝てるとは言えんさ。だが、全力は尽くつもりだ。それとも、俺が倒せなかったらお前が倒してくれるのか?」

 

「別に、あんたがそうして欲しいならそうしますけど?」

 

アスランの冗談にシンは皮肉めいた発言をする。どっちも本気で言ってるわけではないのだが、周りからしてみれば彼らの応酬に不安が出てくる。特にアーサーなどは彼らが発言する度に声を上げていた。

 

「作戦は以上だ。シン、うまくやれよ」

 

「そっちこそ、失敗しないで下さいよ」

 

 

 

 

 

 

ローエングリンゲートにミネルバの部隊が先行する。ダガーL部隊が出撃するもののミネルバの部隊相手には地上戦ということもあり、時間稼ぎ程度にしかならない。

しかし、時間稼ぎ出来れば問題ない。敵の攻撃はゲルズゲーの陽電子リフレクタービームシールド―――シュナイドシュッツSX1021で防ぎ、こちらはローエングリン砲で一気に沈める。ゲルズゲーの防御力はかなり高い。シュナイドシュッツはザザムザーと違い前傾姿勢になる必要もなく、接近されても対応できる様に上半身は取り回しのきくMSだ。武装面でも火力の大きいものはないが充実している。

 

「さあ、シンが来るまでに引っ張ってやるよ」

 

マーレが先制攻撃とばかりにビームキャノンを放つ。しかし、それはゲルズゲーのシュナイドシュッツによって防御される。

 

「相変わらず厄介だな。あのリフレクターは―――アスラン、お前がやると言ったんだ。引きつけろよ!」

 

『分かってるさ』

 

マーレはそのままローングリン砲に向かって進み、それを止めようと敵のダガーLが複数機立ち塞がり、ローエングリンへと向かうのを防ごうとする。

 

「いいぜ、ナチュラル共……お前ら全員、俺の獲物だ!」

 

左手にビームバズーカを持ちながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

「こいつは確かに手強いな……」

 

タンホイザーがローエングリン砲に向かい放たれるがゲルズゲーが正面に立ち、リフレクターで防いだのを見て、アスランは思わずそう呟く。

収束ビーム砲を放ち、こちらに気を引くが攻撃は防がれる。逆にビーム砲やビームライフルによる連撃を放ってきてこちらを近づけさせない。

 

「厄介な奴だ!シンは一人でこれと似たようなのを倒したのか……負けてられないな」

 

ビームライフルを放ち足を止める。まずは接近しようと近づくがビーム砲によって迂闊に近づけない。それならばと変形し背後に回り込んで接近しようとするが、

 

「なッ!?」

 

戦艦主砲並の威力を持つ2連装125mm滑腔砲が放たれシールドで防ぐ。その衝撃に吹き飛ばされそうになっている隙に、距離を離し、反転してこちらにビームを放たれる。

 

「やらせるかッ!」

 

こちらもビームライフルを放ちながら回避する。不意を突いたにもかかわらず反撃されたせいかゲルズゲーはリフレクターが間に合わず、手に持っていたビームライフルを撃ち抜かれる。

 

「今だッ!」

 

今度こそとばかりに、ビームサーベルを抜出、切り掛かる。脚部をクローのように扱い迎撃しようとするがビームコーティングをされていない脚部では防ぐことも出来ずに逆に切り裂かれた。急いでスラスターを使い離れようとするが機動力で劣っているゲルズゲーにその術はなく、セイバーに止めを刺される事となった。

 

 

 

 

 

 

 

セイバーがゲルズゲーの足を切断するのと同時にインパルスが坑道を抜けて現れる。既に第二射の発射態勢にに入っており、シンはすぐさま破壊しようと動く。

 

『こ、こいつ、どこから!?』

 

『旧式でも何でもいい、直に出せ!ローエングリンは既に発射態勢に入ってるんだぞ!時間を稼がせるんだ!!』

 

ダガーや防衛用の火砲が現れるが、インパルスはビームライフルで火砲を潰し、接近してきたダガーをナイフでコックピットごと一突きする。そして、発射しようとしているローエングリン砲にダガーを投げつけ、そのままビームライフルで誘爆させた。

間近で爆発したローエングリンの爆風に煽られる。インパルスはシールドを構えながら後ろに下がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

ゲルズゲーとローエングリン砲、出撃した殆どのMS部隊を落とされた連合に抵抗する余力など残されておらず基地に残った残存兵はその殆どが撤退した。

しかし、現地のレジスタンスによる報復もあり一部の逃げ遅れた連合の兵士は捕虜として扱われずに処刑されていく。その様子を見たアスランは僅かに陰りが見える。

 

「あれが気になるのか?」

 

マーレがアスランに声を掛ける。

 

「撃たれたから撃って、撃ったから撃たれて、これで戦争は本当になくなるのかって……そう思うんだよ」

 

「恨みつらみっていうものはそう簡単に無くせないだろうよ。それは人にある当たり前の感情だからな。俺だってナチュラルは嫌いだ。だが、だからこそ俺たちやるべきことはそれを少しでも少なくすることなんじゃないのか?」

 

「そうなのかも、しれないな――――――」

 

シンもインパルスから降りて、民衆に囲まれて称えられている。今は―――喜びを分かち合うべきで意見の食い違いでいがみ合うことではないな。

そう思ったアスランはシンを称賛しようと思い、歩み寄っていった。

 




新型、別シリーズ機登場のフラグがたちました!
アスラン成長フラグがたちました!
本作主人公クラウが久しぶりの登場を果たしました!(え
何故だろう、タイトルにそこはかとなくOOっぽい感じがする。
実はこのローエングリン砲の所は大好きで連ザⅡでよくエールストライクに乗って砲撃の瞬間に盾構えてフラガごっこを楽しんでました(笑)友人とデスティニーとストフリでスピード種割りにして斬り合いも楽しんでたな……実家に帰ったらソフトもってこよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。