ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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第十三話 存在する価値

色々とマーレと話し合った後に部屋に帰ろうとしていくと議長とアスランが話し込んでいた様子を見る。話し合いが終わりミーアに腕を組まれながらアスランはディナーのお誘いに連れていかれたみたいだ。

 

「色々と苦労してるようですね、彼も」

 

「ああ、クラウ――――君か。そうだね、彼女にも少し自重してほしいのだが」

 

議長に話しかける切っ掛けとしてアスランのことをあげるが、自重に関しては議長が言えば済みそうな気もする。

 

「で、何を話していたんで?あの時のお茶会では話せないようなことですか?」

 

「そうともいえるかもしれないな。君は、彼がヤキン・ドゥーエでザフトの敵として戦っていたことは知っているかね?」

 

それはプラントでも有名な話だ。ただ、ザフトを裏切ったテロリストとしてではなく、戦争を止める為に戦った英雄としてだが。

 

「当時の彼が所属してた組織の中にアークエンジェルという艦があってね。その艦はオーブに居たんだがオーブの姫を連れて脱走したのだよ。そこで、かつて居たであろう彼に艦が行くであろう当てはないかと思いきいてみたんだ」

 

その発言は色々と思惑が透けて見えそうで怖いんですが。それともこんな事まで教えてるんだから余計な真似はするなよっていう釘差しですか?

 

「はあ、まあでもアークエンジェルですか―――行く当ては限られそうなものですけどね?」

 

「何故だい?」

 

「いや、オーブの代表を拉致した以上、オーブ関連は在り得ないでしょうし、それなりの規模のマスドライバー施設を使うか特別な装備でもしないとアークエンジェルは宇宙に上がれない。ギガフロートにを使ったならともかく、それでもその過程で何一つ情報を得られないのはおかしい。

連合にとっても同盟国の国家元首を攫ったテロリスト扱いでしょうし、ザフトにも来てない。となれば元中立国でオーブ、というか代表とそれなりに親しく、隠しだてしても問題ない国―――例えばスカンジナビア王国とか?」

 

うーむ、前世の知識関連の推測のせいか?まずいこと言ったような気がしないでもない。でも、はっきり言ってこのくらいの推測なら出来そうな気がしないでも―――

 

「何故、候補としてありえそうな赤道連合や南アメリカの中でその一国だと、そう絞れるのかね?」

 

「あ―――」

 

その後は微妙に気まずい雰囲気があったのは言うまでもないと思う。議長はずっと微笑んでいたけど不味い気がしてならない。好意的に見てくれるなら独自の情報網を持ってるとでも、悪く捉えられると下手すればスパイ疑惑なんて事に――――――もっと真面目に献身的に働こうと思う。

とりあえず、暗殺とかされない位には。

 

 

 

 

 

 

 

 

町を歩くたびイライラする。ナチュラル共に媚を売るザフト兵。それを安易に受け入れるナチュラル。議長の考えてることはわかるし、現実的にナチュラルを殲滅することなんか出来るわけないと思ってるから仕方ないとは思う。

だが、理性ではそう思えても、感情は納得いかない。下手すればこの苛立ちはオーブに居た頃よりも上だろう。オーブと違い、仲良くしてるコーディネーターはザフトの人間なのだから。

新たに加入したフェイスのハイネとの顔合わせは朝の段階で既に終えている。アスランが馬鹿みたいに女性関係で色々と巻き込まれてたが、そんなことはどうでもいい。

ルナマリアの買い物にメイリン、ショーン、デイルが連れていかれてたが―――それもまあ、いつものことだ。あの四人は何だかんだ言って割と一緒にいることが多い。恋愛感情とかそういうのは一切なさそうだが。

町をうろつくのが嫌になってきたので仕方なくミネルバに戻ると、何やらいろんなものがミネルバに搬送されているのが見える。

 

「オイ、ありゃ何だ?」

 

MSスタッフのリーダー、マッド・エイブスに尋ねる。

 

「マーレか、随分と早い帰りだな。あれはお前さんの上司が持ってきたもんだよ。ゲルググの新装備だとか、今度配属される機体だとか。あと、グフとかいうのも配備されるらしいぞ」

 

「あれが?」

 

コンテナに入って運ばれているものを見ながら思わず声を上げる。雑多なパーツが大量に運ばれ、何やら角ばった黒いゲルググやオレンジ色の議長の言ってたグフイグナイテッドという機体が運ばれている。

だが何より気になったのはジャンクとしか思えなさそうな部品が大量に積まれたケースがあることだった。

 

「ああ、あれは修理用のパーツだとよ。ある程度機体が破壊されても修復できるようにってやつだ」

 

なるほどとは思うが果たしてあれほど大量の部品を用意して、デッドスペースを作っていいものなんだろうか。上司のクラウは時々訳が分からんことをするなと思う。

 

「ん、マーレだったか。如何した、町に出てたんじゃないのか?」

 

整備士たちが色々と運び込んでいるのを見ていたらそう後ろから声が掛かったので振り向く。

 

「ハイネか。単に町がつまらなかっただけだ。お前の方こそどうしたんだ?」

 

「ああ、ミネルバのクルーに挨拶を、と思ってな。ハイネ・ヴェステンフルスだ。よろしく頼むよ」

 

質問に応えながら先程まで話していたマッドに対しハイネは挨拶を交わしながら手を差し出す。

 

「マッド・エイブスだ。MSメカニックのリーダーをやってる。機体の調子が悪かったりしたら俺に聞いてくれ」

 

その手が握手だと理解したマッドは手袋を脱ぎ去り握手を交わす。

 

「その時は頼むよ。さて、マーレ。暇だったら艦内案内してくれないか?ナスカ級とどう違うのかとかも見てみたいしな」

 

「まあ暇だから構わんが、そんな面白いもんでもないぞ。他の艦とは違うっちゃ違うが―――」

 

「いいねぇ、どこが違ってたりするんだ?やっぱ便利だったりするのか?」

 

親交を深めるという意味でも必要だろうと思い、俺はハイネに艦内を案内することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

クラウは一人喫茶店でノートパソコンを開き、データを打ち込んでいく。今回ミネルバに持ってきたのは結構な数の新装備だ。中にはまだテストが終了しきってないものだってある。

 

「この店のコーヒー美味いな……」

 

開発部で飲んでるインスタントはいつもクソ不味いので個人的には喜ばしい。眠い時にはあのインスタントで目が覚めるから癖になるんだが。

 

「とまあ、そんなどうでもいいことは置いといて―――」

 

設計図を開く。F型の実戦データがミネルバで多く手に入っているので非常に参考になる。

 

「とはいえ、これじゃF型はまともに使えないかね……」

 

水中戦での実戦データを見る限りこれならアッシュで戦った方がましかもしれない。

 

「やはり一番の問題は装甲か……切り替えて正解だったかな?」

 

ゲルググF型は今や水中用装備を生産せずに他シリーズと共通の武器にしている。早い話が例外を除いて水中運用を諦めたからだ。水中用対策はもう別に立てることにした。

 

「でも、この実戦データは参考になる。俺の機体はF型を基礎に改造したわけだし」

 

黒くカラーリングされた自分の専用機となる機体のデータを立ち上げる。有視界戦対策に黒く塗れとかとか言ってたけど、地上で使うんじゃ夜戦でもない限り意味ないような気もするな……

 

「後は用意した新装備の件っと―――」

 

PCに新しい画面を立ち上げながら打ち込んでいく。完成しきってないものまで持ってきたから、データだけでも早いとこ終わらせないと、と思いながら一日を喫茶店で過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

ロード・ジブリールはいつもの私室にて大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドと話し合っていた。いや、どちらかといえば一方的に怒鳴りつけていたと言うのが正しいだろう。

 

「一体どういうことだ!宇宙でのプラントの攻撃に関してはともかく、地球圏のザフトすら追い出せないとは!?」

 

「強引に同盟を結んで開戦したは良いですが、基地への攻撃は全てかわされてしまってる。ユニウスセブン落下による被害の支援をプラントが行ってるせいで民衆が反抗を始めてるんです。正直言って内乱を収めるので精一杯なんですよ」

 

「あれだけ反コーディネーター論を盛り上げたのに情けない!」

 

「あなたのご自慢のファントムペインだって大した働きをしていないじゃないですか。未だに例の艦一隻も落とせていないのでしょう」

 

ジブリールはあまりの愚鈍さに腹を立てるが、その言葉に苛立ちを感じたジョゼフも思わず反撃する。それを言われて思わず口を噤ませるが、ふと思い出した案を言う。

 

「そうだ、オーブを使えばいい。こないだも面白いものが飛び出してきたし、反論できまい」

 

アークエンジェルの画像を出しながらそう言うジブリール。元々戦力として見てなかったのだから使い潰した所で問題ないだろうと考えてのことだ。

 

「民衆はね、どうせ強い方に付くんですよ。ここであの艦を落とせば向こうの士気は一気に落ちる。そうなれば一気に戦況も傾きますよ。その頃になればあれも完成してるでしょうしね」

 

ジョゼフも勝手に納得してくれたと思い、胸をなでおろす。オーブを使うという案は意外と妙案だなと思いながら手配するように自分の部下に命じさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ色々あって代表が不在というとんでもない状況のわが国だ。だからこそ、国の姿勢ははっきりと示しておかねばならない!しっかりとよろしく頼むよ……今度こそ!」

 

オーブ軍の出兵を命じられ、アークエンジェルの件を含め色々と言われたユウナはオーブ軍の出撃を行う事にする。ユウナは国民の不安を取り除く為には指導者足り得る英雄が必要だと思い、自ら出陣することも告げていた。

正直言って政治家としてはともかく軍人に向いていないであろうユウナが来ることには大いに反対したいが、ただの一艦隊指揮官であるトダカ一佐にそれを行う権限はない。

 

「戦力は空母タケミカヅチが一隻、その護衛艦が六隻か。しかも喜望峰回りとはな」

 

溜息をつきながらトダカ一佐は発進を命じた。唯一の救いはこんな義のない戦いで、不満を持つものが多くてもオーブを守るという信念の為に士気は高いということ位だった。

しかし、実際に現場にたどり着いてみれば仮面をかぶる様な凡そ信用できないであろう大佐に良いようにユウナは言い包められる。

 

「ですから、ザフトの要となっているであろうミネルバをここで落とすことが出来れば、敵の軍勢は一気に総崩れとなるでしょう」

 

「素晴らしい!流石はオーブの総司令官。ユウナ殿は政治家としてだけでなく将としての才能もあるようだ。でしたらミネルバに関してはそれでは先陣を切ってザフトを誘っていただき、こちらはその側面からということで、貴君らにお任せしても?」

 

「そうですね、それが美しい!」

 

調子よく褒め称え、ユウナをその気にさせつつ、自分たちは後方で援護を買って出ると言う。一見すればユウナはミネルバという首級を譲ってくれたと捉えれるが、実際は盾、弾除けとして使われ、こちらを含め敵が消耗したところで叩き潰す算段なのだろう。

トダカ一佐にはそれがありありと理解できたが、どうすることも出来ない。

 

「任せてくれたまえ!よし―――全軍、ダルダロスの暁作戦、開始!」

 

「は?」

 

いきなり訳の分からない作戦名を告げられ流石のトダカも困惑する。すると、困惑していることに気付いたのか、学のない人間だなとばかりにユウナは自慢げに説明をした。

 

「なんだ知らないの?この海峡の由来になったギリシャ神話だよ。ちょっとかっこいい作戦名だろ?」

 

そういう事を聞きたいわけではないのだが、と思うがかぶりを振って何事もなかったように開始することにする。

確かに作戦名と言うのは軍の士気を上げたりするのに使われる手立てだが、今必要なのはそういうことではないとトダカ一佐は考えてしまう。

 

「どちらにせよ、我々オーブにはこうする他ないか……オーブ近海時のことも含めて恩知らずなことをと思うが我々も必死なんだ。恨んでくれて構わない」

 

そう一人呟きながら指揮を執り始めた。

 

 

 

 

 

 

次の作戦であるダーダネラス海峡の防衛任務にオーブが敵の増援として来る。その話を聞いたアスランはミネルバの甲板で海を眺めながら気持ちが沈んでいた。そこに新しく配属されたハイネがやってきて声を掛ける。

 

「オーブにいたのか。いい国らしいよな?」

 

「ええ、そうですね」

 

「やっぱ戦いたくないか、オーブとは?」

 

「はい」

 

やはり自分の気持ちに嘘はつけないとアスランはオーブと戦いたくないことを伝える。すると、ハイネは真剣な表情をしながらこう言った。

 

「じゃあお前、何処となら戦いたい?」

 

「どことならって……」

 

「あ、やっぱり?オレも!……そういうことだろ?」

 

ハイネは明るく、しかし表情は真っ直ぐにアスランを見て答える。

 

「割り切れよ。今は戦争で、俺たちは軍人なんだからさ。でないと……でないと、死ぬぞ」

 

「はい」

 

アスランは覚悟を決めたようにそう言葉を紡いだ。

 

 

 




暇だったら艦内案内死てくれないか?
いい国ら死いよな?
真剣な表情を死ながら
変換した時、何故かこうなった。そこまでハイネを死なせたいのかこのPC……

マーレにとってはディオキアという町は喜ばしくないもよう。観光とかもせず、そのままミネルバに戻りました。そして、ついにクラウの専用機も来ました。しかも、他のゲルググを含めた新装備付です。これで誰もこの作品の主人公がマーレだなんて言わせない(笑)
きっとオーブ軍など一蹴してくれることでしょう。え、アークエンジェル?ハイネ生存フラグ?そんなことまでは知らない……

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