ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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出会ったときから別れは始まっているという意味で、会った人とは必ずいつか別れるものだということ。人生の無常を表している言葉。


第十五話 会うは別れの始め

さて、タイトルのような辛気臭い諺から始めるのもどうかと思う。

ならもう一つ別の諺『鳶が鷹を生む』と言う言葉をあげよう。早い話が平凡な両親からすぐれた子が生まれたという意味だ。ナチュラルの両親がコーディネーターを産むのも、ある意味これに当てはまる一例と言えるかもしれない。

そして、クラウ・ハーケンはその言葉に相応しいと言える人間だった。両親は第一世代コーディネーターであり、つまりクラウは第二世代のコーディネーターだ。しかしながら、クラウの両親からしてみてもクラウは天才といえた。若くして大学を飛び級で卒業。オーブにいた頃もモルゲンレーテ社に入社している。転生者故に当然と言えることではあるが、そんなことは本人以外誰も知りはしない。

そして何より、既に鬼籍に入った両親の与り知らぬことではあるが、パイロットとしての技量は異常だった。

 

「相手してやるよ、フリーダム!」

 

真っ先にフリーダムに向かったのはオーブ艦隊に突出していたシン達や戸惑っていたアスランではなく、クラウの試作型フライトユニットを装備していたゲルググシュトゥッツァーだった。

 

『クッ、どいてくれ!』

 

フリーダムのサーベルをシールドで受け止めた。出力は核搭載MSであるフリーダムが上である以上、押し込まれていく。しかし、そのタイミングを計るかのようにウインチユニットを起動させた。二基のアームが動き、不意を突く様に攻撃を仕掛ける。それはまるで蛇が毒牙を向けんとしているかのようだ。とはいえ、フリーダムはあっさりとそれに対して距離を取って躱し、太陽を背に上からクスィフィアスレール砲でウインチユニットを破壊しようとする。だが―――

 

「その程度で倒せるなんて、舐めてもらっちゃ困るな!」

 

回転しながら攻撃を回避し、今度はこちらの番だとばかりにビームサーベルを抜き、斬りかかる。フリーダムは咄嗟にシールドを構え、防ぎきるがパイロットであるキラにとっては安堵することなど出来ない。

 

『このパイロット、強い!?』

 

そう、純粋に強い。反射速度や身体的な実力による行動では確実にキラが上だ。だが、それを補って余りある経験とその土台が存在する。

そして、油断ならない相手だと感じ取ったキラはSEEDを覚醒させる。

 

「ッ―――!?」

 

油断など一切していない。クラウは長年培った直感でフリーダムのビームサーベルを紙一重に躱す。しかし、連続してキラは反対側、左手からもサーベルを抜出、斬りかかる。

それを見たクラウは咄嗟に右手に持っていたビームサーベルを捨て、ワイヤーカッターで防いだ。

 

『サーベルを!?』

 

ワイヤーカッターはビームコーティングをしている為、フリーダムのビームサーベルを防御する事に成功する。

 

「やはり、パワー負けしているのか……ッ!?」

 

しかし、ビーム、スラスターの出力共に核搭載のフリーダムに敵うことが出来ず、押し込まれていく。後ろに下がり、距離を取ろうともしたが連撃によってそれすら許されない。

 

「だったら!」

 

再びウインチユニットを起動させ、ウインチナックルで攻撃を仕掛ける。手数はこちらが出力ではあちらが優位。だが、戦局は予期しなかった方向で決着がついた。

 

「なッ、しまった!?」

 

無理を重ねた機動の連続によって試作型のフライトユニットが不具合を起こす。バランスを崩したゲルググシュトゥッツァー。当然キラはその隙を逃すことなどなく、容赦なく切り裂き撃墜した。

 

 

 

 

 

 

 

 

キラとクラウが戦っている間にも戦局は動いていく。ミネルバはレイ、ルナマリア、ハイネの三機を出撃させ、連合もセカンドシリーズの三機が同様に出撃する。

 

『オーブ軍、私の声が聞こえないのか!言葉が届かないのか!?戦闘を止めろ!』

 

「戦況を混乱させるだけして、何を血迷ったことをッ!」

 

マーレが左手に持ったビームバズーカをストライクルージュに放ちながら襲い掛かる。

 

『おっと、邪魔をさせるわけにはいかないんでね』

 

黄色と赤に塗装されたムラサメがカガリの乗るストライクルージュの援護をする為に行く手を阻む。

 

「チッ、邪魔だ!」

 

ミサイルハッチを全て開き、外部装甲のミサイルベイを、左腕に装備してある三連装ミサイルランチャーを、ビームバズーカを、腰だめのビームライフルを、右手のビームライフルに肩部のビームキャノンといった総ての兵器を一斉斉射し、ムラサメごとストライクルージュを落とそうとする。

 

『うおッ!?不味いね、これは!』

 

防御火器でミサイルを撃ち落としつつ、ビーム系の武器はシールドで防御していくが、ビームバズーカやビームキャノンの威力は高く、ムラサメのシールドを破壊する。

 

『くそっ、不味った!?』

 

バランスを崩したムラサメにミサイルの群勢が襲い掛かり、被弾させていく。そして、残りの攻撃は全てストライクルージュへと向かっていった。

 

『カガリ様!』

 

オーブ軍の一人のパイロットが叫び、盾になる。反逆行為とも取れる行動だが、オーブ軍の殆どの人間はそれを黙認していた。

 

『クッ……ザフトのMS隊を撃ち落とす。あの賊軍はその後だ!行くぞ!』

 

ムラサメ部隊はひとまずアークエンジェルの部隊を無視し、ザフトを撃つことに専念する。マーレやミネルバのMS部隊は迫りくるオーブ軍を前に火器を集中させ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、数だけは増えてんじゃん!何色あるんだ?選り取り見取りってかぁ!!」

 

「いい加減しつこいんだよ、アンタ等!」

 

アビスがショーンのゲルググに迫り、連装砲を放つ。ショーンもそれをスラスターを使って躱し、そのままライフルで応戦する。しかし、アビスは戦場の特性を生かし、水中に潜り込み、その攻撃をあっさりと躱していく。

 

「だったらこれで!」

 

デイルがジャイアントバズーカを構え水中に撃ちこんでいく。だが、アビスにそんな緩い弾など命中することはなく、まるでモグラ叩きのように二機を翻弄していた。

 

一方で地上でのガイアとグフの戦いも一方的な展開を見せる。

 

「こいつ、今までの敵とは違うッ!?」

 

ステラは近接戦を仕掛けるも、ハイネはそれをシールドで防ぎ、逆にビームソードで反撃する。そして距離を取ろうとガイアが離れた瞬間スレイヤーウィップがガイアを捕らえた。

 

「ザクとは違うんだよ、ザクとは!!」

 

以前、自分が乗っていたMSとの性能差に思わず声を上げてそう叫ぶハイネ。そのまま敵の動きを止めつつ、ガイアを翻弄し続ける。

 

セイバーは突如現れたアークエンジェルとフリーダムに通信で呼びかけようとするが、オーブの頃に使っていた回線はオーブ軍も持っていることから通じる気配がない。心当たりのある回線を繋げようとするが一向に繋がる様子もなく、カオスが迫ってきた。

 

「クソ、キラ!何でこんなことを!?」

 

「ハッ、今度こそ落としてやるぜ」

 

スティングの駆るカオスに接近され、アスランは迎撃せざる得ない状況に追い込まれる。こちらの攻撃パターンに対して対策を立ててきたのか、或いはアスランが冷静さを取り戻していないからか、依然と違い終始圧倒するというわけではなくなっていた。

 

「如何した、見せてみろよ!前よりキレが悪いぜ!!」

 

ビームサーベルで攻撃し、躱して体勢を崩したセイバーをビームクローで蹴り上げる。自身がイージスに乗っていた時の攻撃と類似していた為に咄嗟に気付き、すかさずセイバーはシールドで防いだ。

 

「このォッ―――!」

 

「近づけさせるか!」

 

タンホイザーが破壊されたミネルバは損耗が激しく、敵のムラサメ、アストレイ隊はミネルバを沈めんと接近していく。それを迎撃していくのはレイやルナマリア。

ルナマリアのゲルググC型はビームキャノンを放ち、ムラサメを近づかせないように必死にカバーする。レイも極短時間ながらも空中に跳びあがることでムラサメの接近を許さず、ナギナタを両端にだし、下から切り上げる。ムラサメもそれを察知し、MS形態に変形し、シールドで塞ぐがレイはそのままナギナタの持ち手を変え、逆に回転させることで反対側の刃で切り裂いていく。

 

「あいつらッ、今更出てきて軍を引けなんて―――何、滅茶苦茶なことをやってるんだ!!」

 

シンはアークエンジェルのあまりのお粗末な内容によって被弾させられたミネルバを見て怒りを露わにする。

 

「ミネルバ、ブラストシルエットを!あんな奴ら、全員薙ぎ払ってやる!」

 

すぐさま射出されたブラストシルエットを装備し、近づいてきたアストレイはレールガンの餌食にし、そのままミサイルを放てるだけアークエンジェルに放つ。

 

「イーゲルシュテルン起動!アンチビーム爆雷も出して!」

 

「喰らえッ!!」

 

追撃がビーム兵器だと予測したマリューはビーム兵器対策をするよう指示する。そして、シンは最大限までチャージさせた高エネルギー長射程ビーム砲、ケルベロスを一気に放つ。それと同様のタイミングでアークエンジェルはアンチビーム爆雷を展開させた。

アンチビーム爆雷によって威力は減衰したものの完全に間に合ったわけでもなく、艦の左舷下部に命中する。

 

『ツゥッ―――!?』

 

ブリッジにも衝撃は届き、アークエンジェルは激しく揺れる。とはいえ、対艦・対要塞用の大出力ビーム砲であるケルベロスの出力こそ高いが、アンチビーム爆雷とラミネート装甲を前にしたのでは大きな結果を生み出すことは出来なかった。

 

「畜生ッ!」

 

そして、さらに間の悪いことにクラウがフリーダムに落とされたのとほぼ同時だったために、フリーダムに狙われる。

ビームジャベリンを抜き放ち、すぐさま抵抗しようとするが、接近されてしまった状況では些か以上にインパルスが不利である。デュートリオンビームによる補給もしないまま大出力のケルベロスを放ったために、エネルギーも心許ない。

接近してきたフリーダムにジャベリンで突きを放つが容易く躱される。そのままではやられると判断したシンはバックしながらシールドを構え一閃を防ぐが、左手に持っていたもう一本のビームサーベルにシールドを構えていた腕を断たれた。

 

「このッ!?調子に乗るな!」

 

至近距離でミサイルを放つシン。見事にフリーダムに命中し、爆発を起こすが共にPS装甲、VPS装甲であったため距離を取る事と衝撃を受ける事位にしかならない。

だが、エネルギーが限界寸前だったインパルスはVPS装甲が落ちる。フリーダムはこれで無力化出来たと判断し、別の機体へと向かっていった。

 

 

 

 

 

フリーダムの介入によって一気に戦況は変わる。ミネルバが不利な状況を見たフリーダムは連合やオーブの機体に向かっていき無力化していった。

 

「くそ、誰彼と落としていって、お構いなしかよ!?」

 

デイルが悲痛な声で叫びながら次々と落とされていくMS部隊を目にし、恐れ戦く。

 

『うわっ、こっちに来たぞ!?』

 

ショーンが言ったようにフリーダムは次の狙いをこちらに定め迫って来る。

 

「シンもクラウさんもやられる様な相手だぞ!勝ってかよ、こんなの!?」

 

そう言いつつも逃げることは不可能だと感じ、シールドを構え、ナギナタを抜き出す。両側にビームサーベルを出しても使えるが、どちらかといえば苦手な為、片方にだけ刃を出し、迎撃の構えを取る。

 

「うあぁぁぁ―――!!」

 

先手必勝とばかりにナギナタを振りかぶるが、フリーダムは紙一重にそれを横に傾けて回避し、そのまま流れるような動作でサーベルを使い、両腕を切り裂いていった。

 

『クソッ!?』

 

おそらくは躱しにくいであろうとショーンは判断し、シールドをフリスビーのように回転させて投げつけるが、それすらもレールガンを咄嗟に放ちフリーダムはシールドを吹き飛ばしながらショーンのゲルググに近づく。

ビームライフルを構え、撃ち抜こうとするが、フリーダムがその前にゲルググの腕を蹴り上げ、ライフルを吹き飛ばし、右腕で頭部を掴みながら左腕に持っていたビームサーベルで切り裂いた。

 

戦闘力を僅かな時間で刈り取られた二機。そして、その瞬間を待っていたかのように水中からアビスが現れる。

 

『お待たせってねェッ!!』

 

両肩シールドの裏側を広げ、カリドゥス複相ビーム砲と共に七つのビームを放つアビス。フリーダムは握っていたゲルググをそのまま投げ飛ばし、自身は空へと回避した。しかし、たった一機、この場から動けずにいた機体に命中する。

 

「あっ―――?」

 

一機のゲルググを貫く射線。七つのビームがまるで糸を垂らすかのようにゲルググを突き抜ける。

 

『デイルッ――――――!!??』

 

瞬間、巻き起こる爆発。その火花は明らかに彼の生存を絶望させるモノだった……

 

『デイル機、ロスト!?』

 

悲痛に流れるメイリンの声。これまで一人たりとも欠けることのなかったミネルバのMSパイロットの命が今ここで一つ消え去った――――――――――――

 

 

 

 




ハイネの代わりにデイルが死にました……。ショーンとのコンビで中々良い奴だったのに……。
あ、そういやクラウもフリーダムに落とされたね。まあ、そっちはどうでもいいか。

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