ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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第二十一話 覚醒の交響曲

シンがSEEDの覚醒を果たし、カオスやムラサメを撃墜していたとき、アスランとキラもまたぶつかり合っていた。

 

「もう止めろ!お前だって分かっているだろう!こんなことをしても意味が無いって!?」

 

『けど、アスラン!こんな戦いをオーブにさせたらいけないんだ!』

 

シールドとビームサーベルが交差しあう。何合目かも分からないほど打ち合っているが、未だ互いに致命傷は与えられない。

 

「だからって、今更出てきてどうなるって言うんだ!お前のせいで何人の人が死んだと思っている。アークエンジェルが介入してきたからこそ、散った命だってあるんだぞ!!」

 

『それでも、僕はこの戦闘を放っておけない!』

 

セイバーとフリーダムのビームサーベルが同時に斬りあう。しかし、互いにシールドで防ぐことによって有効打となることは無い。

 

「お前の今のその力は戦場を混乱させてるだけだぞ!撃ちたくないといいながら何だお前は!!」

 

『だったら君はオーブの人間が死ねば良かったっていうのか!カガリも僕もオーブに討たれて欲しくないんだ!』

 

「オーブが撃たれるのは嫌で、他なら撃ってもいいって言うのか!!お前は!」

 

埒が明かないと判断したのか、距離を離し、収束ビーム砲をセイバーが放つ。フリーダムは上空へと逃れ、フリーダムもビームライフルで反撃する。セイバーはシールドでそれを受けつつ、再度接近を繰り返し、フリーダムと再び斬り合う。

 

『分かるけど、君の言うことも分かるけど―――――』

 

ビームライフルを腰に置き、サーベルを二本抜いたフリーダムは逆に攻めようと切りかかる。セイバーはそれを見た瞬間、MAに変形してすり抜けるように避ける。後ろをとったセイバーはMSに変形し、背後から強襲するようにビームライフルを撃っていくが、まるでフリーダムは後ろに目でもあるかのように回転しながら回避した。

 

『でもカガリは今泣いているんだ!こんな事になるのが嫌で、今泣いているんだぞ!何故君はそれが分からない!?』

 

「涙で悲しみが拭い去れるのか!泣いているなら理解してもらえるって言うのか!だったらキラ、お前がこの場に連れて来た事、それこそお前の責任だろう!!」

 

『違う!ここに来ることを決めたのはカガリだ。僕達はその意思を助ける為に動いたんだ。この戦闘も、この犠牲も、仕方のない事だって、全てはオーブとカガリのせいだって、そう言って君は撃つのか!?今カガリが守ろうとしているものを!?』

 

今度はフリーダムが一気に距離を詰めてくる。セイバーは収束ビーム砲を放つがそれを躱しつつ、一気にビームサーベルを振りかぶる。セイバーはそれをシールドで受け止めた。

 

「この馬鹿野郎!!今オーブ軍を守って、本当に国が守れるとそう思っているのか!?」

 

『守れる!守ってみせる!』

 

「人の命はそんな軽いものじゃない!!」

 

ミゲルの死んだ瞬間が、ニコルが斬られた瞬間が、デイルが撃たれた瞬間が思い返す。

 

『なら僕は……』

 

「そうやって、言い訳ばかりかざして、他人を見下して……そんなことを言い張るって言うなら俺が」

 

『君を』

 

「お前を」

 

「『討つ!!』」

 

二人が同時に覚醒する。セイバーがフリーダムのシールドを蹴り飛ばす。フリーダムはそれにも構わず二本のサーベルで切りかかり、ビームライフルを断った。セイバーはMA形態に変形し、一気に距離を引き離す。幾らフリーダムでもMAのセイバーに直線軌道では追いつけない。

引き離したセイバーはMSに変形し、フリーダムと同時に収束ビーム砲を構え放つ。どちらも直撃は受けないが互いに掠める程度に攻撃が当たる。

 

『うっ!?』

 

「ぐうッ!?」

 

状況は五分、しかし核動力のフリーダムとバッテリーのセイバーではセイバーの方が分が悪い。このままでは遠からずエネルギー切れでセイバーが敗北することは確実といえる。

だが、キラはアスランとの戦いに意識を向けすぎた。カガリへと向かう攻撃はバルトフェルドが抑えている。事実、砂漠の虎と呼ばれる彼は、キラだけでなくアスランや大戦を知るザフト兵、連合兵の多くがその実力を認める程のエースだ。だからこそキラはカガリの護衛を彼に任せた。しかし、自分達を含めたSEED覚醒者はそういったレベルの常識を覆すのだ。

 

『言ったよな!アンタが俺達を討つって言うなら、今度は俺達がお前を討つって!!』

 

バルトフェルドの乗るムラサメを撃退し、ブラストインパルスのケルベロス収束ビーム砲がチャージを完了する。カガリの乗るストライクルージュに向け、それを放った。それに気付き、行動できたのは同じSEED覚醒者の二人―――フリーダムはセイバーに背を向けすぐさまカガリを守ろうとする。

そして、それを見たアスランは一瞬迷ってしまった。

 

(俺は今、何を……何てことを考えたんだ!?キラとカガリに対して―――)

 

撃つか、撃たざるべきか―――守るのか、守らないのかを。その躊躇いが一瞬彼の動きを止める。背中を向けたあの瞬間、思わずアスランはビームライフルを構え、撃とうとした。カガリがシンに撃たれると分かった瞬間、自らが愛した人だったにも関わらず、守るべきなのかを悩んだ。

結果的にはフリーダムは間に合い、シンの放った砲撃を防ぐ。そのことにアスランは安堵を覚える。死んで欲しいわけではない。寧ろ親友と愛した人だからこそ生きていて欲しいと思う。だが、それと同時にこの戦いへと介入したことに苛立ちを感じ、それが躊躇いを生むことになった。

 

(俺達は分かり合えてたはずなのに……如何してこうなったんだ)

 

唇を噛みながらも、分かり合えないことに苛立ちを感じつつも、アスランは戦うことを止める訳にはいかない。

 

「シン!援護を―――ミネルバ、デュートリオンビームの用意をしてくれ!」

 

『チッ、分かりましたよ!』

 

シンはミサイルランチャーを一気に拡散しながら放つ。実弾系統の攻撃は意味を為さないが、この弾幕攻撃は牽制には向いている。フリーダムにセイバーを近づけさせないようにするにはこれが一番有効だろう。

セイバーがミネルバの直線上に立ち、デュートリオンビームで補給する。一瞬、完全に無防備な姿を晒すがシンが必死に援護することでそれを防ぐ。補給を完了させ、アスランは再びフリーダムと相対しあうことになる。

 

 

 

 

 

ユウナは席で肘掛を殴りつけながら苛立ちを表す。

 

「ミネルバは落とせない!アークエンジェルもそれは同様―――ああ、もう一体どういうことだよ!?」

 

殆ど総てのMS隊を出しながら、あれだけ準備しておきながら何一つ確実な戦果を得られていない。ミネルバは確かに空走不能だろう。だが、それだけでは意味が無い。落としてこそ戦果というものは与えられるものなのだ。

事実、序盤は良かった。ミネルバの足を止め。MS部隊も動きが制約され、ようやくとばかりに首級の一機を落とせる所だったのに――――――

 

「何で……何だってこんな所で邪魔をするんだよ、カガリィッ!?」

 

不沈艦アークエンジェル。演説はご立派だ。代表自ら戦場に出て、語り掛けるそのさまはユウナには絶対に持ちえることの無いカリスマと言えるだろう。だが、内容が余りにもお粗末だ。

その発言を公式なものとするにしても時期が悪い。オーブに戻って、自分との結婚を認めないと言い、その上で政治的判断でオーブの理念を貫き通すというのなら、中々にうまいシナリオをきっと父ウナトや他の役員達が用意してくれただろう。

その際に、自分は当て馬になるんだろうことは―――苛立たしいし、満足できないことだが、納得も理解も出来た筈だ。彼女は戻ってくるべきだったのだ。オーブに―――

圧倒的な国民の支持、カリスマ性、理念を貫き通そうとする真っ直ぐとした熱意―――そんな彼女に惚れたのも認めよう。不覚にも美しいって感じたものだ。だが、今の彼女はまるで―――

 

「オーブへの裏切りとしか感じられない……」

 

「ユウナ様!!」

 

天を仰ぎながら放ったその呟きに反論する一人の軍人。彼もまたカガリの折れない信念に惹かれたものなんだろう。だけど、彼女の信念は折れていないだけで曲がっている。間違っている、こんなやり方は。

皮肉にもユウナのその思いはアスランが懐いている思いと似通っている。敵同士であり、互いにいることも知らないが同じ人に惚れたが故に、同じようなことを考えたのだろうか。だとしたら、運命の女神とやらはユーモアというものをよく理解している……本人達が知ればきっと、殴ってしまいたいほどに。

 

「八式弾の第二波を用意しろ―――」

 

「装填に時間が掛かるものと思われますが……?」

 

「イージス艦のイワツツノオを後方へ下がらせて八式弾に切り替えさせろ。あの疫病神を落とす」

 

決断する。アークエンジェルを本気で落とさねばならない。あれさえ落とせば母艦を失ったストライクルージュはこちらに帰還せざるえない。連合への言い訳は捕虜にしたとでも言えばいい。無理矢理にでもこっちに連れて来る。その為には、まずあれを落とさないといけない。

 

「正気ですか!?アレは我が方の―――「煩いッ!!」!?」

 

反論を口にしようとした下士官に対してユウナは遂に怒りを爆発させる。

 

「我が方の何だ!?味方か?テロリストか?それとも何か?救世主とでも言うつもりなのか?馬鹿は休み休み言え!今のアイツ等は国家元首を攫った敵だ!ストライクルージュのパイロットはカガリかもしれないさ!ああ、認めてやるよ!でもな、お前は国家元首を攫った組織を信用しろって言うのか!?

アレは落とす。ストライクルージュだってMSさ。無限に移動できる馬鹿みたいな兵器じゃないんだ、母艦が落ちれば捕らえられるさ。それでカガリの乗る機体をこちらで取り押さえればいい。そうだよ、初めからそうすれば良かったんだよ」

 

自分でも無茶苦茶な理屈だってこと位は分かってる。でも、こうする他ないのだ。おそらくオーブは負ける。考え方が完璧主義に近いユウナにとって、それは耐え難い屈辱だが連合に威光を知らしめることは出来るだろう。ましてや連合側はMSを出しながらもあっさりと落とされていたのだ。それでは連合側も強くは言えない。

 

「―――クラミツハ、イワサクを前進。イワツツノオを護衛しろ。八式弾を装填するまでMS部隊を近づけさせるな。八式弾第二波、目標はアークエンジェル」

 

「トダカ一佐!?」

 

「命令だ。ユウナ・ロマ・セイランのな……どちらにせよ、我等軍人に彼等を止める術など、このくらいしかない」

 

軍人である以上、ユウナの指示には従うしかなく、そして軍人が示せる行動など軍事行動以外、存在しない。そして何より、ユウナの言っていることもトダカは理解できるのだ。どちらにも正義はある。どちらの意見が明確に正しいかなど、後の世にでも成らない限り分かるはずもないのだ。

だからこそ、トダカは今軍人として戦うことに誇りと信念、そして何よりも意思を伴った行動を見せなければならない。

 

「全艦、イワツツノオに攻撃を届かせるなよ。ミネルバへの警戒も怠るな。空走出来ずともアレは相当やっかいな艦なんだからな」

 

 

 

 

 

マーレは思う。何故こうも自分は中途半端なのかと―――

昔からそうだった。目標へと羽ばたくことが出来る、ナチュラルとは違う、自らの優秀さを知っていた。しかし、後一歩が届かない。

マーレ・ストロードはアカデミー時代の当時、同期生に届かぬ相手がいた。コートニー・ヒエロニムス―――必死に追いつこうとしてもいつも自分の上を行かれる。正直苦痛だった。

そんな中でゲルググのテストパイロットの要請が来たときには自分は特別な存在として認められたのだと思った。上司だったクラウ・ハーケンは事実、俺の実力を認めていた。俺はゲルググを使いこないし、後輩達と出会い、柄でもない先輩をしたりしたものだった。

ミネルバに配属することになったときも、うっとおしいといった様子こそ見せていたが、内心では喜んでいたのだ。

 

「何時からだ、こんな風に牙が抜け落ちたのは……」

 

俺は特別だ。ナチュラルなんて蛮族とは違う、コーディネーター。その特別だと言うことに絶対の自信を持って俺は胸を張って生きてきた。それが今や如何だ?ナチュラル嫌いは変わっていないがナチュラル殺しの思想は薄くなってる。悪いとは言わない。だが、何時から自分はこうも甘い存在になった?

右腕が断たれている?そんなことは関係ない。エネルギーが残っていない?違うだろ、本当のエースって言うもんはそう言う事で測れるもんじゃねえ。

 

「俺は、俺は――――――」

 

何かの壁を越えたような感覚が芽生える。明らかにこれまでとは違う。意識を向ければ後ろにだって目があるような感じだ。動きが、読める。相手の次の動作が読める。

 

「ゲルググと俺の組み合わせじゃあよ……模擬戦でも実戦でも―――負けなしなんだよッ!!」

 

迫り来るムラサメ部隊を次々と落とす。ビームバズーカの弾数を意識しつつ、敵を貫いていく。こちらに近づく敵には容赦なくナギナタをお見舞いし、逆に遠ざかろうと、ミネルバへ向かおうとする敵は撃ち抜いていく。

 

「俺は負けねえ……ナチュラルにも、ナチュラルにいい顔するコーディネーターにも負けはしねえッ!!」

 

マーレ・ストロードの戦闘はオーブに対し、鬼気迫るものを彷彿させ、恐怖へと陥れた。

 




執筆が遂に追いつかなくなり始めた……個人的に一番盛り上がりを見せるところで、なんてことだ……。
これからの更新が不安だぜ……。

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