ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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用事あったけど帰ってきてから書いて、なんとか今日中に投稿できた。


第二十四話 デストロイ

ステラの治療(再調整)を終えたクラウはラー・カイラムでディオキアを発ち、ジブラルタル基地に向かっていた。しかし、アフリカ経由で移動する予定だったのだが、ベルリンに敵が現れたため、そちらに向かうように命令されていた。

 

「一体何があったんでしょうな?」

 

ラー・カイラムの艦長席で座るグラスゴーがクラウにそう尋ねる。明らかに不機嫌な様子だが、まあ理由としては簡単だ。エクステンデットが未だに艦の一室にいるからだ。しかも、拘束こそされているが普通の私室にだ。

艦長としてはクルーに危害が及ぶ可能性のある存在が艦内にいるのだ。しかも、自身が解剖することを要求した相手だ。

 

「知らないよ。まあ、厄介事なのは確かだろうな。それにしても、ベルリンねぇ……?」

 

ドイツ料理は好みだし、あそこの女性は若いうちは綺麗どころが揃ってるからな、と下世話なことを考える。使える機体は別途輸送中のリゲルグを除いて数機。一機は鹵獲したガイアで修理もしてないが、残りの数機も実戦では使用してない試作機、まあ一応新型と言えるものだ。

 

「―――データが転送されました!こ、これは!?」

 

「どうしたんだ?早く教えてくれ」

 

「は、はい……ベルリンは連合の大型兵器と思われる機体によって壊滅的被害を受けているもよう!ザフトだけでなく、現地の住民ごと巻き込み虐殺しているようです!」

 

「何だと!?状況はどうなっている!MS部隊は!?」

 

グラスゴーがその報告を聞いて焦ったように現状の状況を見定めようとする。クラウは艦長の仕事だと言わんばかりにそのまま腰を下ろして様子を眺めていた。その様子が余計にグラスゴーの神経をささくれさせる。

 

「それが、ベルリンにいた駐屯部隊は初期の段階でろくに抵抗も出来ずに全滅……外部からも要請され近くにいたものは攻撃を開始したようですが、こちらも攻撃が殆ど通用せず敵の攻撃で全滅したと……そのため機動力が高い我々とミネルバが呼ばれたようです」

 

馬鹿な、とグラスゴーはうろたえているが、クラウは相手にするのが面倒くさいので放置している。指示待ちをしているクルーには適当に現場に向かえと命令していた。そのうち到着するだろう現場に備え、クラウは席を立つ。

 

「待て!何処へ行く気だ!?」

 

「何処って、そりゃ格納庫ですが?俺は技術屋でパイロットですよ。MSの準備をするのは当然でしょう?」

 

そうやって艦橋から出て行くクラウ。しかし、グラスゴーにとっては、というより指揮官の命令に従う人間には好都合だろう。指揮系統を持つ人間が現場に二人もいれば混乱するのだから。だが、自分が侮られていることは明らかであり気分のいいものではない。

 

「クッ、侮りおって若造が……」

 

グラスゴーはクラウにこそこうやって侮られているが、優秀で大胆な指揮官だ。MSの利点を把握し、様々な運用方法でMSを最大限に生かそうとする指揮官である。クラウの勝手な行動には苛立ちが募るし、文句を言ってやりたいものだが、艦長としての職務を全うするためにクルーに不安を見せるわけには行かない。

 

「我々の仕事はその大型兵器の撃墜だ。だが、我々が総て背負うわけではない。主力はザフトのエースであるミネルバの部隊に任せることになるだろう。我々は彼等が辿り着くまでの時間稼ぎと掩護を行えばいい」

 

「しかし、ミネルバが到着するまで、こちらが持つでしょうか?」

 

一人のクルーが不安を煽る様にそう呟く。確かにザフトの多数のMS部隊を一掃した敵なのだ。艦一隻と僅かなMSで対応が出来るはずもないと、そう思う。

 

「だが、やるしかあるまい。この艦と新型のMSとやらを信じるしかないな」

 

明らかに余り信用してないと言えるような態度だが、クルーはその様子を見て余計に口を噤む。愚痴を溢した所で状況は変わらず、戦闘は始まることになるのだから。

 

 

 

 

 

 

連合の大型兵器によってベルリンが焼かれているという情報は、海底を移動していたアークエンジェルにも報告が来ていた。

 

「これは―――」

 

「行くしかないね」

 

「ええ、そうね。こんな所で手を拱いているわけには行かないわ」

 

「しかし、修理の方はどうなってる?」

 

艦内のほぼ全員がデストロイを止めるために行動を起こすことに賛同するがアークエンジェルの現状がどうなっているのかをバルトフェルドが尋ねる。MSが使えなければ大型兵器を相手取ることが難しいだろう。そう思い、整備士のコジロー・マードックに回線をつなぐ。

 

『艦長、一体どうしたんですかい?』

 

「突然だけど、出撃が必要になりそうなの。修理はどのくらい進んでいるかしら?」

 

『一応、フリーダムは優先的に修理しといたから大丈夫って感じですね。ですが、他のMSに関しては動かせるのはストライクルージュとムラサメが何とか数機が間に合いそうって所ですよ―――バルトフェルドさんのに関してはとてもじゃないけど修理するには無理があるんですがね』

 

「あらら、そうか。いやー、良いの貰っちゃったからねー」

 

『ホントにそうですよ。こんなところ、下手したらそのまま爆発してオジャンになるところだ。ま、出来る限り状態の良いのから修理してきます。何機かは間に合うと思いますよ!』

 

そう言って回線を終了し、マードックの報告にもう一度意見の擦り合わせを行う。

 

「マードックさんはああは言ってるけど、実際何機間に合うか……」

 

「大丈夫だよ。いざとなったら僕が一人でも出るよ」

 

「馬鹿を言うな!お前にだけ戦わせるわけには行かない!私だって出るさ!」

 

キラの発言にカガリは自分も出ると主張する。

 

「でも、カガリが本当にするべきことをする前に、こんな危険なことをさせるわけには行かない。君が落とされたらオーブはどうなるの?」

 

「だが、だからといってこんなことを見過ごすわけにはいかないだろう!」

 

「大丈夫、僕一人でもやれる」

 

キラはカガリに戦場に出ないよう説得するが、カガリはそれは間違っていると反論する。アスランが言っていた。オーブは撃てないで、他国は撃てるのかと。だったら逆はどうなのだ?他国が被害にあっているのを無視して、守らないで、果たして本当にオーブを守れるというのか?

答えを、真実を知るために彼女は戦場に出る選択を取る。

 

「……分かった。でもオーブの皆と一緒にだ。カガリは彼等と共に行動してくれ」

 

しぶしぶながらも妥協するキラ。話が終わった様子を眺めていたマリューはベルリンへ向かうよう指示を出した。

 

「では、本艦はこれより連合の大型兵器の撃破のためにベルリンへの移動を開始します。アークエンジェル発進!」

 

 

 

 

 

 

「どうですか、このデストロイの威力は?」

 

ロゴスの会合にてロード・ジブリールは自らの要求した機体ともいえるデストロイの戦果をお披露目していた。

 

『うーむ、なんと言うべきか―――』

 

『圧倒的ですな。しかし、既存のMSやMAとは思えない大きさだ……』

 

「当然でしょう。デストロイは最早戦略級兵器なのです。コーディネーターの造るようなMSなどという出来損ないでも、既存の枠にとらわれたMAという兵器とも違うのですよ」

 

ロゴスの面々が感嘆の声を上げる中、ジブリールは己の功績に気分を良くする。ワインを煽りながら彼は次々と散っていく命を前に笑みを浮かべる。

 

『しかし、どこまで焼き払うつもりなんだこれで?』

 

ロゴスの一人がそんなことを呟く。ジブリールはそれを聞いて高らかに宣告する。

 

「勿論、そこにザフトがいるかぎり、どこまでもですよ。変に馴れ合う連中にもう一度はっきりと教えてやりませんとね。我等ナチュラルとコーディネイターは違うのだということを。それを裏切るような真似をすれば地獄に堕ちるのだということをね」

 

余りの荒唐無稽な発言にロゴスのメンバーも堪らず苦笑いする。しかし、ジブリールはどうやら本気らしく、彼らとしても失敗したところでリスクはないとばかりに傍観することにした。

 

『そうそう、確か頼んでおいたファントムペインの彼等は、要望通りにしてくれたのかね?』

 

突然、この場とは関係のない話をしだすブルーノ・アズラエル。いきなりどうしたんだと他のロゴスの面々は訝しげな様子を見せるが、それを気にした様子もなく、気分を良くしていたジブリールは答える。

 

「ああ、彼等の話ですね。確かに一人減って困っていたところでしたしね。あなたの要望どおり、イタリア経由でアフリカからやって来ているというザフトの新型艦とやらにぶつけておきましたよ。しかし、あなたも人が悪い。アズラエル財閥の人間とはいえ、こちらの知らない情報をひた隠ししていたんだからね」

 

『代わりにこちらも相応の対価は支払っただろう?』

 

「ええ、分かっていますよ。ですが、以後は私に早く教えていただけると嬉しいと思っていますよ」

 

会話の内容に耳を傾けていた他のロゴスの面々を無視して彼等は会話を続ける。その様子を見て、他の一人のロゴスのメンバーが尋ねる。

 

『ところで、ザフトを蹴散らすのは良いが、ベルリンの後は何処を目指す気じゃ?あの大きさじゃあ補給もそれ相応の場所でないと受けれんじゃろ?』

 

話を振られ、話題がもう本題から外れていたのか、すぐにその話題に応えるジブリール。

 

「ええ、確かに、アレの欠点は核動力でないということですからね。しばらくはベルリンで暴れさせてその後はユーラシア連邦の領内で補給を受ける予定ですよ。その後はそのままアフリカまで制圧しながら目指してもらいますよ」

 

『やれやれ、一体いくつの焦土が出来ることやら』

 

『まあ、わし等はそれだけ儲けるのだからやってくれて構わんがな。無論、やり過ぎは困るが』

 

 

 

 

 

 

ブルーノ・アズラエルはロゴスの面々と会話するための席から一度離れ、自室へと戻り、通信を開く。通信回線は開くが、その画像に文字しか写らず、音声通信ですらない。

 

「君の言ったとおり、ファントムペインの部隊をイタリア方面で新型艦に相対させるように要請させたよ。流石だね、君の情報はジブリールすら知らないものだったよ。すぐに食いついた」

 

《ジブリールは最大限の情報元である『一族』を失っています。ある意味当然の事でしょう》

 

無機質な文字列が並び、情報が送られる。

 

「しかし何故、ファントムペインの部隊を送るのだ?これではみすみす戦果を与えることになるんじゃないのか?」

 

《新型艦と新型機の性能は未知数です。下手な部隊を送った所で返り討ちでしょう。ファントムペインほどの部隊なら、あっさりと返り討ちになることもないはずです。今は恩を売れる事の方が良いはずです。失敗したところでこちらに失うものもありません》

 

「フム、そうか―――ならそれでも構わんか……しかし、ムルタもこのような遺産を残していたとはな。私にとっては驚きだよ」

 

この諜報部は最近まで連絡のなかったものだが、ムルタ・アズラエル用の秘匿回線から送られてきたものだった。曰く、ムルタ・アズラエル子飼いの諜報部の一つだったらしい。

ムルタの死と共に自動的に解散されていたのだが、戦争が始まると共に活動を再開し、縁者であるブルーノに送ってきたようだった。

 

《では、引き続き、情報をお送りいたします》

 

「はは、これからもよろしく頼むよ」

 

初めは信用していなかったが送ってくるデータは正確なものが殆どでブルーノとしても、この短期間で信頼に値するものだと判断していた。

しかし、ブルーノ・アズラエルは気付かない。ムルタ・アズラエルがそんな諜報部など持っていなかったことを。仮に、持っていたとしても、もっと怪しむべきだったのだ。だが、無能だとムルタに言われ、アズラエル財閥の座を奪われた男にそんなこと気付けるはずもないのであった。

 




今ここで言っておこうと思いますがバルトフェルドさん、あなたそう言えばラクスと一緒に宇宙に上がってませんよね?余りにもラクスの出番が省かれてるので色々と変化してても違和感なく存在してました。
理由としてはミネルバの戦力が予想以上に多かったためです。ラクスやバルトフェルドも流石にキラ一人では難しいと感じたのでしょう。結局シンに落とされましたが。現在の彼は愛機を失って、その上頭に包帯巻いてます。まあ頭の怪我の方はないに等しいので問題ないでしょう。

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