ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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完全オーバー。セウト(0時ジャスト)にすらなることなく毎日更新は途切れ去った……


第三十五話 ジブラルタルの一時

デスティニーの設定を確認し、インパルス内にあるシン自身のデータを取りに来る為に、シンは一度ミネルバの近くまで帰ってきていた。その時、ルナマリアがシンに声をかけて用件を言う。

 

「え、食事?」

 

「そうよ、ここのところ艦内での食事ばっかりだったじゃない。そりゃミネルバの食事がおいしくないってわけじゃないけど、どうせならおいしいところで食べたいでしょ?」

 

ルナマリアは以前話したときにクラウから予約を取って貰ったレストランにシンを誘っていた。代金は既に前払いで済ませているらしく、行って予約券を渡すだけで済むらしい。そんなわけで早速彼女はシンをディナーに連れて行こうとする。

 

「そうかな?ミネルバの食事でも十分満足してるんだけど―――」

 

しかしながら相手はそういった恋愛系の機微に疎いシンである。しかも彼は今新しい機体を受け取ったばかりである為、そちらに目が行っており、ルナマリアの誘いを中々受け入れない。

 

「あ、どうせならマーレさんと行って来たらどうだ?あの人そういうの慣れてるだろうし」

 

シンの中で最も大人なイメージのあるマーレを誘ったらどうだという(実際はアーサーの方が年上だが精神的なものではマーレの方が大人びた、というより落ち着いた感じだとシンは思っている)。

ハイネやアスランを誘うように言っても良かったが、ハイネはシンと同様に新型機を貰っていたし、アスランにはラクス(ミーアだとシンは知らない)という婚約者が居た筈だと、いらぬお節介でマーレを上げる。

 

「―――この馬鹿ッ!」

 

ルナマリアはその鈍さに思わず怒りを爆発させ、その場から去っていく。その様子を見たシンは何をいきなり怒り出したんだと不機嫌そうな顔で文句を言う。

 

「馬鹿って何だよ、いきなり―――」

 

「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いんだ?このニブチン」

 

ボードを持ったクラウが後ろから現れ、それを使ってシンの頭を軽く叩く(といっても十分痛いが)。

 

「痛ゥッ―――いきなり何すんだよ、クラウ!?」

 

「むしろ俺の方が怒りたい―――なんで食事を断ったんだい?」

 

「いや、だってデスティニーの調整とか早いところしたいし、それにロゴスを討つためにそんな悠長な事も言ってられないんじゃ……」

 

軍人としては至ってまともな意見だとも言えるが、それで他のメンバーと不仲になったら尚悪いだろ、とも思ってしまう。というかシンは何故こんなに鈍いのだろうか?オーブにいた頃にもっとそういった方面を教えてやるべきだったかも知れない。そんな事を考えながらクラウは溜息を吐き、何とかシンがルナマリアと食事に行くように説得する事にする。予約しておいた店はやたらと高いキャンセル料が発生するのも説得する理由の一つだ。

 

「いいか、シン。まずデスティニーは議長も言っていたと思うが完成していない。その状態でデータを調整したりしても大した成果は得られないよ。その上で―――ミネルバのクルーは今日まで戦い抜いてきて精神的にも疲れが出ているはずだ。それはシンだって例外じゃない。そんな中でルナマリアが折角誘ってくれた食事に行かないなんて……男として、いや人としてどうかと思うぞ」

 

そうやって長々説明すると流石のシンも折れて、ルナマリアに謝って一緒にいってくる事になった。シンはせめてルナマリアの好意に気付いてくれたら良いんだが。その上で相手の好意に対応するならともかく、何も気付かないままに振られると言うのは可哀想過ぎる。あくまでも個人的な意見だが。

そんな馬鹿らしい恋愛事情を考えながら、クラウは完全に徹夜になるであろう仕事をこなす為にMS格納庫へと戻っていくのだった。これ以上長い事放置していたら逃げられたと思われて、余計拘束される時間が延びるだろうと思いつつ。

 

 

 

 

 

 

クラウ・ハーケンはシンの説得を終えた後、格納庫でMSの完成を急いでいた。セイバーも搬入されており、四機のMSには多くの技術者が忙しなく動いている。

 

「一番進んでいたレジェンドに関してはどうなっている?」

 

「レジェンドの武装も第二段階までは取り付け完了しました。第三段階のドラグーンの装備も現在取り付け中です」

 

レジェンドの背面部分のドラグーンは円形の周りについている突出した部分だけでなく、円形部分そのものにも取り付けられている。その形自体は平たい形をしている為、邪魔にはなっていない。腰部にもフリーダムのレール砲のような形をしたものが取り付けられているが、おそらくこれもドラグーンの一種なのだろう。

クラウはドラグーンを増やした事による地上での空戦能力の低下を防ぐ為に脚部スラスターにも大幅な強化を施していた。

 

「デスティニーの方は?二人にあわせた強化が必要な以上、手間はよりかかるよ!」

 

元々はある程度生産される予定だった機体だが、ワンオフ機に近い形で仕上げた事によって、その手間とコストの関係上からシンとハイネの専用機として事になっていた。これはクラウの責任というよりはデスティニーの製作者に問題があったと言えるだろう。

 

「武装面に関してはアロンダイトの問題点であったビームサーベルとの相性の悪さは、対ビームコーティングを部分的に施す事で解消されたかと……しかし、これではアロンダイトのビーム自身も弾いてしまうのでは?」

 

「発想を変えてみれば簡単だろう?アロンダイトの層を二重にしておけばいいんだよ。普通にビームを展開する部分の下の層に対ビームコーティングを施せば問題ないんだよ……大体、対ビームコーティングって言っても当たってもいないビームを弾くなんて事はないんだから。ビームが当たってるならそれこそ何で対艦刀自身は自分のビームに溶かされてないんだって話だろ?」

 

「え、ああ―――なるほど、確かに」

 

本当に技術畑出身か?と茶化しながらクラウは仕事に戻る。シンのデスティニーには特殊性の高い装備がされており、当然ながらクラウが推測したNT専用の武装が施されている。

バイオセンサーと呼ばれる機体のコントロールシステムの補佐を行う機能を有する種類のデバイスを取り付けることで機体を直接操作する事が無くとも部分的な動作を行わせる事が出来る。装甲に関しても特殊な装甲を施しており、バイオセンサーと連動させる事によって、理論上はパイロットの思考を直接機体に反映させる事が出来ると言われている。

更に冷却システムであるMEPE=金属剥離効果を取り付けており、ただでさえ出力が高くオーバーヒートする可能性のあるデスティニーの欠点を取り除いていた。尤も、言うまでもなくクラウ自身の本来の目的は違うものだが。

 

「ともかく完成を急がせないとね。ヘブンズベースに間に合わなかったら全部無意味になるんだからな……」

 

ついでに言えばこれはハイネの機体も同様なのだが、光の翼の出力は自由に調節できるようになっている。クラウ曰く、自身の速度にあわせた調整をその場で最善にする為らしい。もっともらしい事を言っているし、メリットがあるのも確かだが、そういうのは普通は技術屋の仕事である。

一方でハイネの機体にも専用の調整が施されている。近接戦での能力が高い為、収束ビーム砲の代わりにジャイアント・ガトリングガンを装備していた。弾薬の種類は戦場によって実弾、ビーム、ハーフの三タイプに切り替え可能だ。

 

「主任!この調子だとセイバーは間に合うかわかりませんよ!」

 

「仕方ないな……そっちに行くからデスティニーとレジェンドの作業は続けていてくれ」

 

そう頭を掻きながらクラウはセイバーの方に向かっていく。セイバーの改造は主に近接戦における武装面のカバーだ。動力面においてデスティニー、レジェンド同様の改造を施すには時間が足りない。

銃火器に関してもビーム兵器はエネルギーの問題が、実弾系統はあまり多く積むと持ち前の機動力を殺す結果になるので今回の改造では見送られている。

 

「カオスのデータよりもイージスのデータを参考にしておきなよ。あれの実戦データは二年前とはいえ本人が乗ってたんだから」

 

主な改造は脚部の先端にビームサーベルを取り付ける事と、これまで使っていたビームサーベルの連結、翼に回収したガイアのビームブレイド、そしてシールドにビームクローだ。ヴァジュラビームサーベルは性能的には申し分ないのだが、アスランの実戦データを見る限り好んでビームサーベルを使っている例は多く、射撃武装の充実よりも格闘系統の強化の方が良いだろう。

脚のサーベルの形状はカオスと変わりなく、威力もヴァジュラビームサーベルと変わりないのだが、MA形態での使用は不可能であるため、取り付けるメリットは大きくない。しかし、脚部のビームサーベルはセイバーでのフリーダムとの戦闘時、蹴りで腕を吹き飛ばしていたりしたことから攻撃手段として確立させるべきだという判断の元装備される事となった。

一方でシールドに捕り付けているビームクローは優秀だと技術部は豪語している。武装としてビームサーベルを連結して使っているため、片手での運用が可能であり、それによってシールドから不意打ちを行う事が出来るらしい。インパルスのビームジャベリンのように投げても短時間はビームの維持が可能とか。MA形態においてシールドからのビームクローと翼からのビームブレイドを展開しての格闘攻撃も可能らしい。

 

「アレの装備はどうなっている?」

 

「全力で間に合わせてます。ほぼ確実に使い捨てになるでしょうが、元々小型化が不可能に近かったことを考えれば手の甲に取り付けれたのは十分許容範囲ですよ」

 

セイバーにも新たに装備した切札がある。尤も切札というには語弊があるかもしれないが。そうやって各々の整備が進んでいく。クラウは自身の機体であるリゲルグの調整を既に完了させていて良かったと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

スウェンは拘束を解除され、既にラー・カイラムから降ろされていた。片手にはラー・カイラム内で生活していた時に渡された道具が入った手提げ袋、もう一方の手には二枚の資料が握られている。

 

「………」

 

スウェンの拘束が解除された理由はロゴスが世間で敵として認知されたからだ。よって元ファントムペインであった彼は本来ならば軍事裁判を受けることになるのだが、ロゴス(正確にはブルーコスモス)による洗脳教育が原因であり、またエクステンデットを一人の軍人の保護下に置かれたの例(ステラとシンのこと)や多くの連合軍がロゴス討伐の為に協力を申し出ていたことから彼は加害者としての立場ではなく、被害者として扱われた。

正直な所、一人の捕虜に構っている時間がなくなったと言ってもいい。とはいえ、全くの無罪というわけでもなく、民間企業、或いはザフト軍での奉仕活動による一定期間の労働が義務付けられている。彼が手に持っている資料はその奉仕活動先だった。

 

「星か……」

 

ジブラルタルの空を見上げながらそう呟く。連合やザフトのMS、戦闘機、ヘリが飛び交う空の先、今の昼という時間帯で肉眼によって見ることは出来ないが、宇宙に浮かんでいるであろう星を眺める。

DSSDと書かれた資料とザフトの兵士としてラー・カイラムに配属される資料。他にも当然あったのだが、絞り込んだ結果がこの二つだった。

ラー・カイラムに関しては単純な理由で義理を果たすべきか迷ったからだ。敵であった自分を助け、選択肢すら与えた。だからこそ、義理を果たすべきだとそう思ったからこそだ。

もう一つのDSSDに関してはもっと単純である。星を目指したい。子供のころからの夢の一つ。昔から追いかけていた今でも忘れられない夢。だからこそ、悩み考える。そうやって上の空で歩いていたせいで、誰かとぶつかる。

 

「すまない」

 

「ああ、気にすんな―――その制服ってことは連合軍か?」

 

「いいや、もう連合所属じゃないさ。ただの一般市民だ」

 

無表情に近いスウェンと、ぶつかった相手の不機嫌な表情。傍から見れば喧嘩でも起こっているのか思えてしまうような状況だが、別にそんなわけではないようだ。

 

「ま、気を付けろよ。俺もいつだって許すわけじゃねえんだ。他の誰かだったら許してないかもしれねえしな」

 

そう言って、大した関係にもならないとばかりに歩き去っていく男性。その様子を眺めながらスウェンはどちらを選択するべきか考え続ける。やがて、答えが出たのか片方の資料を袋にしまい込みもう一方を手に持ちながら歩き出した。

 

 

 

 

 

 

複数人の連合開発者がヘブンズベースでデータを解析し、一機のMSを完成させようとしていた。

 

――――――デストロイのデータをベースに、カオス、ストライクシリーズのデータを取り入れて完成を進める。VPS装甲は電力を抑えるためか全体的に青色だ。デストロイがベースにも関わらずサイズは一般的なMSと大差がないことが見る限り最大の特徴と言えるだろう。

 

「全く、ジブリールの奴も無茶を言う。こんな機体の完成が間に合うっていうのか?」

 

一人の開発者が愚痴を零しながら作業を進める。確かに機体は基盤こそ完成しているように見えるがデータを見る限りでは殆ど未完成と言えた。

 

「幸いなのは開発するための基礎基盤はデータ上では完成してるってことかね?核動力だからデストロイのようにエネルギー切れの心配もないしな」

 

「だがパイロットは誰なんだ?ファントムペインでも優秀な奴らはこぞって宇宙にいるって聞いたが……」

 

ネオの部隊もダナとエミリオの二人も既に宇宙に上がっている。スウェンの部隊も壊滅した。故にこの機体の機体に相応するようなパイロットはいないのではないのかと一人の開発者は懸念する。

 

「どうもこの機体は他のエクステンデットを乗せるらしいぞ。元々のコンセプトが技量の劣る部品でも自在に動かせるっていうことだからな」

 

部品とエクステンデットの事をそういう彼等は気にした様子もなく作業を進める。

――――――ヘブンズベースの死闘まであと数日――――――




スウェンと出会ったのはマーレです。不機嫌そうな顔という時点で彼しかいないのですが(笑)スウェンがどっちに付いたかは決まったけど描写はされずです。次話以降でどうなったか出ると思います。

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