ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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微グロ注意。序盤は流し読みの方が良いかも?


第三十九話 続く闘争

最早ヘブンズベースに残っている敵残存戦力は殆どないと言っても過言ではなかった。損傷しているデストロイが二機と大幅に数を減らしたMSや戦闘車両、沈みかけの艦。そのどれもがまともに戦闘を続けることなど出来ない。決着は時間の問題と言えただろう。

 

『捉えた、切り込むぞ!』

 

レイはこれまでのデストロイの動きを完全に把握して読み切り、攻撃を回避して出来た隙に付け入る。

 

『そこが弱点だろう!』

 

そう言って切り裂いたのは背面部に僅かに出ているジェネレーターだ。そこを零距離で突き抜かれ、デストロイのIフィールドシステムが沈黙する。

 

『沈め!』

 

Iフィールドを失ったデストロイはレジェンドの脅威になり得ないとばかりに背面の六基のドラグーンと腰の二基を回頭させ、一斉射撃を放つ。頭部、腕部、脚部、胸部と言った風に、次々と突き刺さるビームの連撃はまるでデストロイのこれまでの暴虐を裁く光のようだった。

 

『デイルや民間人を殺すような、こんなやつらを俺はッ!!』

 

残った最後のデストロイもルナマリアとショーンが押し始める。こちらに銃口を向けるエクステンデットも、それを作ったロゴスも許さないとばかりにショーンのゲルググJG型がデストロイにビームマシンガンで攻撃しながら、その機動力を生かし一気に後ろに回り込んで、隙を狙いビームサーベルで背面部を切り裂いた。

 

『貰ったわ!』

 

そしてショーンの攻撃に気を引かれたデストロイはそのままショーンを狙おうとして正面で防戦に回っていたインパルスに隙を見せる。その隙をルナマリアは逃すことなくエクスカリバーで切り裂き、頭部を切断した。それによってバランスを崩すデストロイ。

体勢を崩したデストロイの胸の砲頭部分をショーンはビームサーベルで使って貫く。質量自体も大きく、VPS装甲にも全くビーム耐性が無いという訳ではなく、Iフィールドが展開されていることから貫ききれないかった。しかし、それはデストロイのパイロットにとっては逆に不幸だっただろう。少しずつ下へと押し寄せてくるビームサーベル。徐々にコックピットに届くそれはまるで恐怖が形となって襲い掛かるかのような光景だと言えた。

 

『クソが!?コーディネーターが!宇宙(そら)の化け物風情が!!俺達ナチュラルを弄びやがってッ!死ね、死ね、殺してやッ―――!?』

 

ヘルメットが割れ、体中が焼ける熱さに苦しみながらも呪詛を吐く。爆発した機械類の破片が体中に突き刺さっており、痛みに苦しむがそれでもふり降ろされるビームは止まることなどない。

機体のコンピュータが破壊されたのか、デストロイは一切動かず、そして最後までその言葉が誰に届くこともなく最後はビームサーベルがデストロイのパイロットを抉れるように溶かしつくした。

 

 

 

 

 

 

「で、目的地はどうするのだね?」

 

「月のダイダロス基地だ!あそこには切札と造らせておいた新型機があるはずだ!」

 

「新型機というとあの緑の大型機の事か?ザムザザーやゲルズゲーと何が違うのやら?」

 

「フン、あれとは圧倒的に機動力が違うぞ!あのクローの威力も桁違いだ!その発展機もビームを素で防ぎきる程の防御性だ!」

 

「やれやれ、デストロイとやらの二の舞とならんことを祈るばかりだ」

 

生き残ったロゴスの二人、ジブリールとアズラエルは今後の行先について検討しあっていた。ジブリールが断言するように最終的な目的地はダイダロス基地である事には変わりないだろう。だが、問題はその過程をどうするかだ。

 

「宇宙に上がるにはどの場所が良いか……」

 

反ロゴスの風潮が進んでいる以上、地上にヘブンズベース以上の防衛が整った所はロゴスにはない。宇宙に上がろうにも中途半端な施設では上がる前に撃ち落とされるか取り押さえられてしまうだろう。東アジア共和国のマスドライバー施設のあるカシュオン、連合最高司令部のグリーンランド、防御の固いスエズ、マスドライバーもあり逃亡先としては最も堅実であろうパナマ、同じくマスドライバーのあるビクトリア――――――

しかし、そのどれもが逃亡先として検討するには決定打が欠ける。消去法でいくなら堅実なのはスエズだが、ザフトも当然それは予期していることだろう。監視の目は厳しいはずだ。こういう時にこそ、情報部のデータが欲しいのだが、脱出した潜水艦ではまともな通信を取ることは出来ず、判断を自らで行わなければならない。

 

「オーブだ……」

 

「は?」

 

「現段階での移動先はオーブにすべきだ。何、あそこの今の国家元首代理は私にとって純情な飼い犬でしかない。あそこならばそれなりに時間も稼げるはずだ」

 

理に適ってる、とまでは言わないが、確かに検討の余地は十分あるだろう。下手な基地に逃げ込むよりは途中で見つかる可能性も低いはずだ。

 

「とはいってもここからオーブまでは遠いぞ」

 

「だからこそだよ―――まさかこんな所に、といった相手の心理を逆手に取る。なに、アメリカ経由で行けば問題はあるまい?」

 

「しかしそれならば道中にパナマとてあるぞ」

 

彼らはその後も意見を出し、検討を続ける。決して彼らの仲に友情や信頼関係というものは生まれないが、生き延びるために利用できる相手として互いに信用はしている。今は一蓮托生の身である以上、互いに真剣に意見を出し合うのだった。

結果、しばらく行き先が決まらず、ヘブンズベースから脱出できたは良いものの移動先を決めあぐねてとりあえず補給の為に潜水したまま一度別の港まで行くことになった。ついでに言ってしまえば未だに目的地は決められていないというのは完全に余談と言えよう。

 

 

 

 

 

 

ヘブンズベースのロゴスが白旗を上げたのは、デストロイが倒されてすぐの事だった。

 

「勝ったのか……?」

 

『ようやく終わった―――』

 

敵の攻撃が沈黙し、ロゴスが完全に敗北したと通信でも告げられる。

 

「皆、よくやってくれた。帰還するぞ」

 

『は、はい!』

 

アスラン達はミネルバに帰還し、コックピットから降りると大勢のクルーから称えられる。

 

「やったぜ、シン!」

 

「これってさ、やっぱパイロット全員勲章ものだよな!」

 

皆浮かれている。当然だろう。ロゴスという大敵を捕らえることに成功したと思っているのだ。彼らはジブリールやアズラエルが先に脱走していることなど知らない。戦争がこれで終わると思っていた。

 

「やりましたね」

 

「ああ、これで戦争が終わるといいんだが」

 

シンとアスランも互いの奮闘を褒め称え合いながら終わったことに喜びを感じる。彼らは全員がそうやって喜びを分かち合っていた。ロゴスの一部がまだ逃げ延びているという知らせを聞くまでは――――――

 

 

 

 

 

 

「凄いね~ザフトは。あのヘブンズベースがあっさりと陥落しちゃったみたいよ。堅牢な基地も落とされる時は一瞬なんだね~」

 

中継ステーションの護衛を終え、月のアルザッヘル基地で補給を受けていたネオ達はたった今届いたヘブンズベースが落ちたという悲報に驚いていた。

 

「コーディネーターに協力するような愚盲なナチュラル共のせいだ」

 

「まあまあ、落ち着きなさいな。しっかし、ジブリールは宇宙に帰ってこれんのかね?帰ってこれなかったら俺ら無駄足じゃね?」

 

エミリオが怒りを表す様子にダナは落ち着けとばかりに宥めながら話題を変える。

 

「それよりさ、こいつ等!ミネルバの奴等は一体いつになったら来るんだよ!」

 

宇宙ではバスケも出来ないとばかりに不満をこぼしながら、ヘブンズベース陥落の悲報の際に出てきた復讐の対象であるミネルバを指差してそう言う。

 

「そう言われてもね、俺も困っちゃってるわけでな、アウル―――」

 

「なんだよ、この役立たず!」

 

「い、今のは胸にグサッっときたぞ……」

 

「ロアノーク大佐は何馬鹿やってるんだか?」

 

アウルとネオのやり取りを見ながらダナは馬鹿がいると呆れ果てる。

 

「大佐―――地上から新型機がこちらに送られてくるそうです。大佐の部隊のファントムペイン宛とのことなので連絡を回したのですが―――」

 

「ああ、わかった。すぐにいく。少しばかり待っていてくれ」

 

新たに配属されるらしい機体は誰が担当することになるのか?順当に考えればアビスを失っており、スローターダガーやウィンダムで出ているアウルだろうが、機体によっては変更もありうる。エース向けの機体はロッソイージス、ネロブリッツ、ライゴウガンダムの三機だ。ユークリッドなどもあるが、あれはエースというよりもベテラン向けの機体だろう。

 

「何にせよジブリールが死んでしまえば俺達も用無しって事になるんだろうな。そればっかりは避けたいんだが―――」

 

ファントムペインのような部隊の人間が戦後になって残されるとは思えない。よくて軍事裁判、悪ければその場で私刑にあうことは間違いないだろう。何せベルリン等の都市を焼き払ったのはファントムペインなのだから。

 

「上の命令だからっていうのは当然通じないだろうしな。かといって今更寝返ろうにもどこにって話だよな……」

 

強化人間、条約違反の兵器、これまでの経歴、思想的な問題―――すぐに上げられる問題だけでも解決しがたい。

 

「結局は、奴と一蓮托生ってわけかね」

 

溜息をつきながらネオは届けられる機体について調べに行く。レクイエムという切札があろうとも、負け戦の可能性が高い面倒事だとネオはそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

「ネビュラ勲章授与にフェイス任命……随分おめでたい事ではないでしょうか?ザフトにエースが増えるというのは」

 

戦闘が終了し、ラー・カイラムの貴賓室でデュランダル議長は態々俺を呼びつけて、要件を話していた。互いに対面しながらテーブルに置かれたチェスを動かす。議長が後攻の黒だが俺と議長では実力に差があり過ぎるために既に追い込まれている。

 

「いやね、君には申し訳ないと思っているんだよ」

 

「―――何がですか?あ、ルーク貰います」

 

心当たりは全くございませんが、そもそも疑われてるのか信頼されているのか微妙に判らない議長とは一緒に居たくないのですが、と内心を吐露したくなるがそんなことを言うわけにもいかず彼と対面しながら会話を続ける。

くッ、ルーク取った代償がクイーンとか痛すぎる。

 

「君は様々な方面で活躍をしていながらまともに勲章を与えることも出来なくてね。いや、評議会も頭が固い。技術屋風情に軍人の称号は与えれないとの事だ。自分たちを支えているもの達を蔑ろにしているようにしか聞こえんのが耳に痛いよ」

 

「正直に言いますと、面倒なんで構いません。とやかく言われるよりは今の立場の方が気が楽ですし……まったありですか?」

 

「無しだ。だがそう言ってくれるとありがたいよ。正直本当にどうしようかと考えていたものでね」

 

切り込んでいたポーンとビジョップが……それはともかく実際に今の立場の方が楽ではある。面倒事は少ない。議長のお気に入り扱いだからそれなりに権限がある。自由に出来る。開発主任なのでやりたい放題。うん、老後までこれだったら嬉しい。まあ、デスティニープラン的にも俺の行動的にもそれはありえないだろうが。

 

「それにしてもデスティニーは驚異的だったね。正直いって予想以上だったよアレは」

 

「そうですね。まあ議長が目に通していたのは完成前の状態でしたし、性能に差があるのは当然かと」

 

そもそもデスティニーの開発にこっちが無理矢理捻じ込んだんだし。向こうは良い顔してなかったが代わりに色々と対価を払ってやったのだから文句は言わせない。―――やはり、最初にナイトが取られたのが痛いな。

 

「後々はセイバーの改良やレジェンドの武装が完成することを私は楽しみにしているとも。では、今回も私の勝ちだな。チェックメイトだ」

 

「ああッ!?」

 

防いでいた防衛陣が完全に瓦解されキングは無情にもナイトとクイーン、そしてプロモーションしたもう一騎のクイーンに取り囲まれる。逃げ場はない。完全に詰んでいた。

 

「つ、次こそは負けませんよ……」

 

「それは楽しみだな。これで六勝二敗五分けだ。レイに相手をしてもらうといい。彼も中々手強いからね」

 

それは流石につらいものがある。畜生……オセロとかなら自信あるのに。

 

「では、要件は終わりみたいなんでこれで退室させてもらいます」

 

「すまないが、最後に一ついいかね?」

 

「何でしょう?」

 

そう言って退席しようとしたのだが議長は呼び止める。あまり面倒事でなければ良いのだが。

 

「以前言っていたNTというその存在……君自身はそれについてどう思っているのだ?」

 

「――――――可能性の一つでしょうね。幅は広がっていきますが、必ずしもそれが人類にとって導きなるのかも有用なのかも知りません。俺は所詮オールドタイプなので。ただ、そう言ったことは後の歴史家達が記すだけですよ」

 

今度こそ部屋から退室し、艦の自室に戻ることにする。よし、もっと強くなろう。次は勝つ。

 




言ったでしょう、ビグロ注意って!え、違う?アンケートの方はまだ続いてます。ロゴスがどこ行くかで接戦していて行き先が決めれなかったです。次話までには締め切ります。

チェスの技量
議長≧ラウ≧レイ>クラウ
純粋な意味でのMSの技量
議長(多分?)≒アスラン≒シン≧レイ≒ハイネ≧クラウ

議長とクラウのスペック差(笑)

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