ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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第四十五話 混沌の闘争

ルドルフは勝利を確信していた。相手の実力はたかが知れている。よくもった方ではあるが所詮は準エースクラス―――本物のエースである自分には役不足だ。そう感じさせていた。ギャンのスペックは格闘戦に重きを置いている。欠点として射撃武装が実弾兵装しか存在しないというものがあるものの、それが逆にアカツキとの相性の面で有利だった。

ヤタノカガミはビームを弾くことは可能だが、実弾に対しては通常の装甲と何ら大差ないものだ。PS装甲系統でなかった為に、アカツキは攻撃をシールドで受け止め、距離を詰められることとなった。そのアカツキが両端からビームが出ているサーベルを抜き出す。近接戦の強いギャンを相手に接近戦で挑もうとするその気概は十分だが、甘いと言わざる得ない。

 

「教えてやる、ここは僕の距離だ!」

 

放たれる連続の突き。その攻撃を前に敵はシールドで受け流すしか対処のしようがない。そのまま攻撃を続けることでアカツキは追い込まれていく。そうしてついに体勢を崩し、そのまま止めだと真っ二つにすると言わんばかりに上から振り下ろす。だが、アカツキも必死の抵抗とばかりにその腕に蹴りを入れて、そのまま反動で下がる。そうして背中からビーム砲を放ってきた。

 

「甘いぞ!今の僕は―――」

 

しかし、所詮は苦肉の策だ。ビーム砲をシールドで受け止め、ビームを受け止めながら突き進む。ギャンのシールドだからこそ出来る芸当とも言えるこの力技。今度こそ止めとコックピットに向けて突きを放った。

 

「阿修羅すら凌駕する存在だッ!!」

 

突きを放ち、勝ったと確信を持つ。だが、それは完全に油断であり、ルドルフは敵を甘く見積もり過ぎていた。

 

「何だと―――!?」

 

アカツキの動きが突如機敏になる。貫こうとしたサーベルを僅かに動くことによってアカツキの胸部の横をすり抜けるように突破した。ビームが触れるか触れないかの位置。ヤタノカガミというビームに対する耐性が高い機体だからこそできる無茶だ。

 

『私は、国を、オーブを守る!その為になら―――私は誰とだって戦って見せる!』

 

カガリがSEEDを覚醒させ、再び斬りかかったギャンのビームサーベルをカガリはシールドで受け止め、逆にサーベルで反撃する。ルドルフは当然それをシールドで受け止めた。だが、追撃するようにそのままアカツキはサーベルを回しながら反対側のサーベルによってギャンの足を切り裂く。

 

「そんな馬鹿なッ!この僕が!!」

 

敗北など認めるわけにはいかないとばかりにギャンはビームサーベルで再び攻撃を仕掛ける。しかし、ルドルフのその苦し紛れに近い攻撃はアカツキのシールドによって受け流され、反撃の蹴りによって吹き飛ばされた。

 

「クッ、この僕を、この美しい僕を足蹴にしただとッ……許さないぞ!」

 

アカツキに手痛い反撃をくらい、怒りを露わにしながら攻撃を仕掛けようとするルドルフ。だがそれゆえに、彼は冷静さを失いオオワシが分離したことを見逃す。

 

「落ちるがいい!この僕が引導を渡してやる!!」

 

再び接近戦を仕掛け、今度こそとばかりにアカツキを貫こうとする。しかし、アカツキはそれを防ぎきり、遠隔誘導によってオオワシから放たれたビーム砲によってギャンは撃ち抜かれた。

 

「ば、馬鹿なぁッ!?」

 

ルドルフのギャンはそのまま海に墜落していく事となった。

 

 

 

 

 

 

「こちらはサーペントテールの叢雲劾だ。悪いが依頼なんでな。この戦闘に介入させてもらう!」

 

紅の機体―――インフィニットジャスティスに乗った叢雲劾はオーブ軍を支援し、ザフトの部隊を撃ち落としていく。

 

『クッ、この野郎ォ!』

 

グゥルに乗っていたザクがオルトロスを放つ。しかし、劾はそれをビームキャリーシールドを展開することによって防ぎ、逆にビームライフルを放ち、胸を撃ち抜く。

 

「甘いぞッ!」

 

ザクを落とした隙を狙って、後ろから斬りかかろうとしたグフの攻撃を左手のビームキャリーシールドからシャイニングエッジビームブーメランをビームソードとして展開しつつ、回転して振り向きざまにグフを真っ二つにした。そして、そのままビームブーメランをシールドから射出し、ビームソードを展開したままに地上に降りようとしていたゲルググを切り裂く。

 

『やらせるかッ!』

 

二機のゲルググB型が挟み込むようにナギナタを解き放って斬りかかる。劾はジャスティスのシュペールラケルタ ビームサーベルを抜出、一機のモノアイを貫き、もう一機の攻撃を機体を傾けさせることで躱し、脚を振り上げながら脚部の武装であるグリフォンビームブレイドを展開し、ゲルググのナギナタを持っている腕を切り裂く。

頭を潰された機体と腕を斬られた機体の二機はそのままビームサーベルによって追撃を受け、撃墜された。そんな圧倒的な性能を見せつける中、一機の機体がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「あの機体は―――」

 

『下がりな、お前ら!アイツはエースだ。お前らじゃ荷が勝ちすぎるぜ!』

 

オレンジカラーのデスティニーが劾の乗るジャスティスを発見し攻撃を仕掛けてくる。先制攻撃とばかりにガトリングを放つデスティニー。その攻撃はジャスティスの軌道を予測したもので並のパイロットならば躱そうとしてそのまま撃ち抜かれる結果となっただろう。しかし、それをジャスティスはファトゥム―01のリフターを取り外すことによって速度差を出し、そのまま反転して逆にリフターを蹴り付けて速度を一気に加速させる。

 

『チッ、やるじゃねえか!』

 

アロンダイトを展開し、リフターに向かって振り下ろすディスティニー。ジャスティスのリフターの衝角部分も、アロンダイトの実大剣部分も共にビームに対して抵抗力が高い。故にどちらもビームを共に突破できずにぶつかりあうことになる。しかし、当然ながら劾はその隙を逃すようなことはしない。

 

「悪いが、これで終わらせる」

 

ジャスティスはそのまま後ろからビームライフルを構え放つ。

 

『不味いッ!?』

 

出力の関係上、アロンダイトでジャスティスのリフターを押し込み始めているものの、今こちらを手放せば間違いなくリフターはデスティニーに襲い掛かる。だが、だからといってそのまま撃たれるわけにもいかない。そしてハイネは一瞬の賭けに出る。

ビームライフルが放たれる直前に、ハイネは光の翼を消す。推力を一気に落としたデスティニーはそのままリフターに押し込まれ後ろに突き進む。そして、それによってジャスティスの放ったビームライフルは外れ、再び光の翼を展開し直し、今度は自分から後ろに下がっていく。

リフターによって後方に下がる勢いがついていたデスティニーは光の翼も展開させることでさらに速度を上げてリフターとの距離を取ることに成功した。一歩間違えればそのままリフターに真っ二つにされていただろうが、ハイネは成功するという自信を持っていた為、当たり前のようにそれを回避することに成功する。

 

『今度はこっちの番だ!』

 

ガトリング砲を取り出し、弾幕を展開する。先程とは違い、射角を広く取ることで回避を困難にさせる。

 

「グッ!だが―――」

 

グフやシグーに取り付けられていたガトリングよりも大口径のデスティニーのガトリング砲は攻撃を受け続ければいかにジャスティスであろうとも蜂の巣になる。ビームと実弾が入り混じるなか、ジャスティスはシールドを広く展開させて防いでいた。いかに火力が高くとも、ガトリング砲の一発一発の威力はたかが知れている。故にビームシールドを広く展開しても突破されることはなかった。

そして、ビームシールドの内側からビームを放つジャスティス。ジャスティスのビームシールドは展開中であっても内側から外側に向かっての攻撃が可能なのだ。

 

『こいつッ!』

 

「貴様は機体の性能を出しきっていないッ!そこが貴様の付け入る隙だ!!」

 

ビームライフルを躱す為に一瞬見せた隙に加速してデスティニーの懐に入り込むジャスティス。ビームシールドを展開させたまま突破を図ってきた劾にデスティニーは押し込まれる。

 

『やらせるかよッ!?』

 

左手のガトリング砲がデッドウェイトとなるが、右手のパルマフィオキーナを使用して反撃しようとするハイネ。しかし、自ら懐に入り込んだ劾がその攻撃を予測しないわけがない。

 

「その程度、予測してないとでも思っていたか!」

 

デスティニーの迫る右手首をビームシールドを展開させていた左腕で弾きあげ、紙一重で頭部をすり抜けるパルマフィオキーナ。そのまま脚のビームブレイドでデスティニーは胸部を裂かれ、ハイネのデスティニーは大打撃を受ける。止めとばかりにリフターのビームソードを発生させ貫こうとした。だが、流石のハイネもそれは許さないとばかりにガトリング砲を打撃武器として振り回す。

ぶつけたことでガトリング砲が使い物にならなくなるが、止む得ないと判断して引き下がる。追撃しようとする劾。しかし、両者の間にビームが放たれ、それは防がれる事となった。

 

『ハイネッ!』

 

シンのデスティニーとレイのレジェンドが両者の間に割り込んでくる。レイはドラグーンを稼働させ、ビームを途切れさせることなく放ち続けることで近づけさせないようにする。その間にシンは光の翼で幻影を生み出しながらビームブーメランを放ち、アロンダイトで斬りかかった。

相手のアロンダイトには対ビームコーティングがされていると察した劾は逆にそれを利用してビームサーベルを二刀に分離し、十字に構えてそれを防ぐ。

 

『一度下がってください。その機体の状態では戦闘の継続は難しいかと』

 

『ああ、分かってる。後輩においしい所持っていかれちまったな。けどサンキューな、実際ぎりぎりだったから助かったぜ』

 

『礼なら後で―――今は奴を倒すことに専念します』

 

ぶつかっては離れてを繰り返すシンのデスティニーと劾のジャスティスの二機。レイは正確にその動きを読み取りドラグーンのビームでデスティニーのアロンダイトの距離から逃がさぬようルートを塞ぐように牽制を続ける。

 

『レイッ!』

 

『分かっている!』

 

次の瞬間、一斉に放たれるビームの雨。二十を超えるビームの豪雨が劾とシンに襲い掛かる。普通ならばこのような味方すらも巻き込む銃弾を放つはずがない。だが、シンとレイは驚異的な連携を持ってその射線をデスティニーは躱して、アロンダイトのその切っ先を劾のジャスティスにまで届かせた。

 

「グゥッ―――!?」

 

ギリギリでシールドで受け止める劾。しかし、吹き飛ばされ、体勢を崩しつつも反撃をしていた。グラップルスティンガーによってデスティニーの腕を捕らえ、こちらに引っ張る。

 

『こいつッ!』

 

すぐさまビームブーメランを抜いてサーベル替わりにして切り裂くが、お互いに体勢を立て直す為に追撃を行う事は出来なかった。劾は圧されつつも耐え凌ぐ。戦闘は未だ続いていく事となる。

 

 

 

 

 

 

マーレはMS隊と艦隊を潰しながら国防本部へと向かって行っていた。道中金色の二機が戦っていたのを見たが、それは見なかった事にしている。援護が必要なら始めから呼んでいた筈だろうと思い。

 

「敵の国防本部はまだ遠いか……」

 

ロゴスの部隊の一機だったのだろうウィンダムをビームライフルで撃ち抜き、接近を許そうとしない地上のアストレイ部隊をフルバーストで一気にまとめて撃破する。すると、横合いからビームが放たれ、マーレはそれを回避する。が、周りにいた数機のザフトMSは次々と放たれたビームに撃ち抜かれていった。

 

「青い機体―――オーブの新型か?」

 

数機で並んで飛行してきた戦闘機のような敵にマーレは疑問の声を上げる。戦闘の一機は大型のビーム兵器を持っているらしく油断はできない。

 

『各機、散開せよ!あの機体は俺が止める。他は国防本部へと向かえ。ゴウ、指揮は任せるぞ!』

 

『了解!キサカ一佐もお気を付けて!』

 

マーレが青い機体といった最新鋭機であるリゼルは一斉に散開する。

 

「そう簡単に行かせると思ってるのか!」

 

散開するリゼルに向かってビームバズーカを放つマーレ。しかし、MS形態に変形し、キサカは足止めするためにシールドでそれを防いでサーベルを振りかぶる。

 

「チィ!」

 

バックステップで回避するマーレ。当然反撃とばかりにミサイルランチャーを放つが、リゼルも同時にシールドランチャーを放ってそれを防ぐ。巻き起こる爆発。しかし、マーレはそこからリゼルのいるであろう位置を読み切り、ビームキャノンを放った。

 

『グッ、敵はこちらの位置が分かっているのか!?』

 

視界の利かない状況で正確にこちらの位置を把握しているマーレに驚愕するキサカ。ぎりぎりでシールドによる防御が間に合ったものの、次もそうやって防げる保障などない。

 

「所詮は―――ただの隊長機って事か!」

 

実力不足だとばかりにマーレはキサカのリゼルにそう言い切る。煙が晴れる直前にナギナタを構えたマーレが斬りかかってきた。その攻撃は腕を断ちきり、確実にキサカを追い込んでいた。

 




所詮ルドルフは噛ませだった。前回の活躍が嘘みたいにあっさりと落とされたよ、彼(笑)
そしてハイネ無双を止めるかのごとく現れた劾。彼も彼でやばいくらいチートだよ……。
リゼルは活躍する描写はありません。彼らはムラサメと同じ扱いですよ、ええ。単なる引き立て役です。

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