ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

65 / 117
ハロウィンが終了し、次話が投稿されたので閑話として単独の話として投稿されました。二話連続投稿となっているので間違えないように注意してください。


Trick or Treat! Happy Halloween!

「よし、これで完成だね!」

 

「何してるの?」

 

一人で作業をしていたクラウを見かけたステラは何が完成したのかという好奇心から彼に話しかける。

 

「ああ、ステラ?丁度良かった。ジャーン!」

 

「?――何それ?カボチャのお顔?」

 

それは中身がくりぬかれたカボチャだ。大小様々な大きさのカボチャがあり、中には下に穴が開いてかぶれるサイズのものまである。

 

「そう、今日はハロウィンだからね。カボチャを使ってジャック・オ・ランタンを作ったんだよ。本当はカブらしいけど見栄えはこっちの方が良いし」

 

顔の形をしたカボチャはランタンの役割を果たすものと頭から被るものの二種類存在する。特にランタンの役割を果たす方は目や口に薄いカバーを張り、小さいものは手に持てるように頭が掴めるようになってる手提灯だった。

 

「ギルの機体は良いの?まだ完成してないって言ってたけど……」

 

「いいの、いいの。たまには休息も必要だよ。あ、そうだ――――ハロウィンの衣装があるから着ていきなよ。シン達にTrick or Treat!って言えばお菓子がもらえるだろうし」

 

「お菓子!わかった!!」

 

ステラは子供に近い精神年齢からか、お菓子という単語に食い付いてくる。クラウは笑いながら衣装と小さめのカボチャ、そしてお菓子を入れるポーチを用意してステラに手渡した。

 

「じゃあ行ってきます!」

 

「あ、お菓子持ってない相手には悪戯するんだよ」

 

素早く着替え、三角の帽子に魔女風の黒いミニスカートドレスを着て、コウモリの柄が付いたポーチを肩に掛ける。手提灯サイズのカボチャの中に電気のランプを入れて手渡す。

準備を整えたステラはそのまま颯爽と駆け抜ける。その速さはまさに強化人間ならではの速度と言っても良かった。

 

「さて……」

 

ステラがクラウの目に映らなくなったあたりで後ろから殺気が漏れ出す。伊達に十六回の人生を繰り返したわけでないクラウはすぐさまそれに気づき、そして心当たりのある相手が思い浮かばれ、まるで油を差していなかった機械のように軋む様に首だけ後ろに向ける。

 

「やあ、クラウ――――先程から随分楽しそうな会話をしていたじゃないか?」

 

そこにいたのはいつものように笑みを絶やさず、そしてその裏ではまるで般若のような怒気を撒き散らしているデュランダル議長その人だった。

 

「あの、議長……何をそこまで怒っていらっしゃるのでしょうか?」

 

「なに、先程の会話を少し聞いていただけだよ。別に怒ってなどいないさ………所で、この後時間はあるかね?」

 

「い、いやー、確か仕事が残っていたような気が――――」

 

冷や汗をかきながらクラウは必死に言い訳を探そうとする。議長の怒りは尋常のものとは思えない。まるで阿修羅すら凌駕した存在感を発揮している。おそらく、彼が本気を出せば赤く染まり、三倍にまでスペックが跳ね上がる事だろう。下手すれば量子化するかもしれない。

 

「その仕事は延期したまえ。ランタンを作っている暇があったんだ。別に構わんだろう?有給を使う暇はなかったはずだ。たまには落ち着いて休みたまえ――――尤も、それが最後の休みとなるかもしれんがな」

 

その日からしばらく、クラウが休むことなく仕事をするようになったのと、カボチャを見るたびに震えるようになったのは完全に余談と言えよう。

 

 

 

 

 

 

「~~~♪」

 

鼻歌を歌いながら機嫌よく歩いていたのはルナマリアだった。彼女は珍しくシンをデートに誘おうと画策していた。デートスポットもメイリンに頼んで事前に調べており、彼女自身も準備を整え、後はシンを誘うのみ。シンの事だから珍しい書店と食事、そしてハロウィンという日であるという要素で誘えるはずだとルナマリアは確信していた。

本来、ハロウィンは乱暴な言い方をすれば日本のお盆のような魂の鎮魂であり、その他には秋の収穫祭、悪霊払いを意味するものだ。だがプラント、というか現在のC.E.の時代では宗教の力は非常に弱いものとなっており、もう一方の秋の収穫祭と言われてもプラントに季節的な意味はあまり存在しない為、コーディネーターにとってハロウィンは最早日本でいうようなバレンタインデーなどとほぼ同じ、即ち一種のイベントデーでしかなかった。

 

(最近は忙しかったうえにステラって子にずっとシンが取られてたし、今日こそは絶対誘ってやるんだから!)

 

女にここまで準備させたんだから断るなんて言わせない、とばかりに闘志を燃やすルナマリア。男冥利に尽きると言うべきか、察しないシンに鈍感、氏ねと言うべきかは判断に迷う所である。しかし、シンの部屋の前まで来た彼女は、部屋の前で彼女の強敵とも言える存在を発見する。

 

「シン、Trick or Treat!」

 

「え!?あ、そうか!今日はハロウィンか!えっとHappy Halloween!ちょっと待ってて、お菓子用意するから!」

 

ステラがハロウィンのコスプレをしており、割ときわどいミニスカート姿にシンは狼狽えながらもお菓子を自室から探そうとする。その様子を見ていた同室のレイはくだらないなと思いながらも栄養補給に優れているという理由で持っていたチョコレートを取り出し、ステラに渡していた。しかし、一方でシンはお菓子など普段からあまり食べず、今日がハロウィンだという事などすっかり忘れていたので用意など当然できておらず、ステラに申し訳ない気持ちで謝る。

 

「ごめん、ステラ――――今お菓子手元にないんだ」

 

「えー、あ、じゃあステラ、シンに悪戯する!」

 

その言葉を聞いた瞬間、場の空気が凍り付く。確かにクラウはお菓子を持っていない相手には悪戯しろと言った。それに他意はない。そして、ステラ自身も悪戯という意味に裏など当然ない。しかし、ステラに好感情を持っているシンとステラを強敵だと認識しているルナマリアにはその手の発言は○○な意味で悪戯をするものだと想像してしまった。

 

「ルナマリアか――――そんなところでどうした?」

 

そして、レイの空気の読め無さはこういう時に限って発揮される。ルナマリアの存在に気付いたシンは慌てて弁明しだした。

 

「ル、ルナ!?違うぞ、これはそういう意味じゃないはずだ!?ステラ、ちょっと待ってくれ!お菓子は用意するから悪戯は止めてくれ!頼む!!」

 

「?ステラ変なこと言った?」

 

そういった意味で捉えていないステラにとってシンの発言はそんなに悪戯が嫌だったのだろうか程度にしか感じない。だからこそ、そんな事を尋ねるのだが――――それは火に油を注ぐ結果となった。

 

「シンの……バカァァァ―――――――!!!」

 

「ヘブゥッ―――!?」

 

シンはルナマリアに攻撃を食らい、しばらく気絶する結果となった。彼の受難はステラの精神年齢がもう少し成長するまで続くことだろう。尤も、精神年齢が成長すればステラもルナマリアを敵認定する結果となって激化する可能性も大いにあるが。

ステラはとりあえずシンに悪戯――――水性ペンで顔に猫の落書きをする程度の可愛らしいものだ――――をして次のお菓子を貰いに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

「あ、菓子だァ?」

 

「うん、Trick or Treat!」

 

次にステラが来たのはマーレとハイネの所だ。彼らは丁度訓練中だったらしく、どちらがスコアをより多く稼げるかという賭けをしながら訓練していた。

 

「どうするよ?菓子なんか持ってるか?」

 

「いや、待ってろ。確かこっちにあったはずだ」

 

ハイネは菓子を持っておらずマーレに話を振るが、どうせマーレも持っていないだろうと思っていると予想外の返答が来て少しだけ驚く。

 

「ほら、これでいいか?」

 

箱に入ったお菓子を投げ渡すマーレ。ステラは持ち前の反射神経で上手く掴み、パッケージを確認する。

 

「何これ?タバコ?」

 

「おいおい、タバコはまずいって。税金も高いの知ってるだろ?」

 

見るからに紙タバコの箱にしか見えないものを渡され、ハイネは思わず年齢的な事だけでなく、税金的な事でもツッコミを入れる。プラントのような空気が限られている場所である上に、健康に害悪を及ぼすタバコは物凄い税金がかけられている。プラントではタバコ一本吸うくらいなら高い酒でも飲んだ方が良いと言われるほど外聞的に印象に悪く、高いものだ。

 

「よく見ろ、ココアシガレットだ。単なる菓子だよ、そりゃ」

 

そう言われ、もう一度見てみるとパッケージこそそっくりだが、箱にココアシガレットと書かれている。

 

「あ、ホントだ、ありがと、マーレ!」

 

そう言って、ステラはポーチに入れ、持って行った。相変わらず不機嫌そうな顔つきは消えず、憮然とした様子だが、どことなく彼の目線はいつもより優しく見えただろう。

 

「ていうかそれ、どこで買ったんだ?」

 

「ヘブンズベースでだ、悪いか?」

 

その後も彼らは訓練を続けていった。

 

 

 

 

 

 

「Trick or Treat!」

 

「ハハハ、Happy Halloween!さあ、お菓子を与えようではないか!」

 

次にステラが来たのはルドルフとアレックのいた場所だ。彼らはMS関係の場所に来ており、相変わらずルドルフの金色思考によって振り回されている兵士たちを前にアレックがルドルフを抑えていると言ったようであった。

しかし、ステラが来たことによってルドルフは待っていましたと言わんばかりにお菓子を次々と取り出す。どこからそんなものを持ってきたのか?というかどうやって用意したのかと言わんばかりのお菓子の数々に流石のアレックも驚きを通り越して呆れていた。

 

「さあ、どれにする?金箔付きのココアに色とりどりのマシュマロ、シェフに用意させたリンツァートルテなどの焼き菓子やケーキ、パイも存在するぞ!」

 

「すっご~い!!」

 

まさにお菓子のお城いわんばかりの山を前に目を輝かせるステラ。アレックは最早、諦めの境地に至っていた。もう何を言われても突っ込むまいと決意する。

 

「う~んとね、じゃあ全部!」

 

「オイ!?」

 

とはいえ、流石に全部とか言われたらアレックも思わず突っ込んでしまう。あっさりと決意が砕かれるが仕方のない事だろう。ルドルフ一人に対して我慢すればいいと思っていたらステラもまたボケ役というべき存在だったのだ。全部とはまた欲張りだなとか、どうやって持って行くつもりだとかなど突っ込む要素はいくらでもある――――しかし、その驚愕の斜め上を行くのがルドルフである。

 

「構わんとも、何なら持って行くように命じさせようではないか!我が財はまさに至高の宝物ばかり、王たるものの務めとして総ての原型を持ち得ているのだからな!」

 

「ルドルフ、お前は王ではないだろう!?」

 

完全に王様気分になっているルドルフの暴走を止められるのはアレックしかおらず、必死でアレックがルドルフを抑えている中、ステラはお菓子を運ぶルドルフの部下と一緒にその場から離れていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「痛てて――――」

 

頬をぶたれたシンは痛みを堪えながらも食堂に艦内放送で呼ばれ来ていた。ルームメイトのレイや他のミネルバクルーである人達も大勢いており、誰が何のために呼んだんだろうと思いつつもヴィーノやヨウラン、ショーンと話し合う。

 

「で、結局誰が集めたわけ?」

 

ルナマリアもずっと不機嫌な様子を隠さないままシンを睨みつけている。そこまで怒ることないだろうとシンは思いつつも、悪い事したなとは思っていた。ルナマリアがシンと買い物や食事に誘おうとしてたことをメイリンから聞かされたのだ。とはいえ、その話を聞いておきながらデートだと認識していないあたりシンは本当に鈍い奴である。

 

「あ、いた!」

 

「ステラ、え?何それ!?」

 

ステラが食堂にやってきて後ろにあるお菓子の山に驚愕する。

 

「皆、Happy Halloween!一緒にお菓子食べよう!」

 

そうして、いつもより随分とにぎやかな様子を見せるハロウィンパーティとなったのである。

 

 

 

「フフフ、艦内放送は私からの悪戯だよ。Happy Halloween――――皆、楽しみたまえ」

 

「ぎ、議長……もう許してください」

 

「まだだ、まだ終わらんよ」

 

そうやって陰ながら見守るように話をしていた二人が居たとか居ないとか。

 

 

 

「ずっとスタンバってました」

 

トリィ型のキャンディとハロのチョコを用意してたアスランは哀愁を漂わせながら一人、体育座りをしてそう呟いていた。

 




暗躍最強はデュランダル議長。日常最強キャラはステラに間違いなし。勿論、異論は認める!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。