ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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第六十六話 残骸の幕引き

「ハハハ!!凄い、凄いぞ!この機体はまさにこの僕にこそ相応しい!!」

 

『一体何なんだ!?あの金色のMSは!』

 

『クソォ、駄目だ、まともに攻撃が通らねえ!?』

 

黄金に輝く一機のMSが迫りくる連合のMS部隊を撃墜していく。本来、エースカラーというものは機体に色を塗ることでわざと目立たせ、味方の士気を高め、敵の士気を挫く為のものである。そして、それをある意味最も体現しているのは彼、ルドルフ・ヴィトゲンシュタインと言っても過言ではなかった。

 

「甘い、甘いぞ!戦いの中で敵を選べると思っているのかァ!」

 

『おい、ルドルフ!突出し過ぎているぞ!前へ出るのはいいが味方の戦線を乱すな!』

 

アレックは最早ルドルフの行動を諌める気すら起きない。精々忠告して余計な動きをしないように見張る程度だ。そうして戦線がザフト優位に進む中、複数の連合機がルドルフの機体を取り囲むようにしてミサイルを放つ。巻き起こる爆発――――連合兵は誰もがやったか、と敵の撃墜を確認しようとする。しかし――――

 

「僕の勇姿を刻む為に散る華となるがいい!!」

 

魂の叫びをあげるかのように声高々に叫びながら、爆煙の最中から全くの無傷と言ってもいい状態でそれを潜り抜け、敵を貫いた。以前のギャンよりも騎士のようなより洗練された様相を見せる機体。原型はギャンであることに間違いない。そして堅牢性を増し、大型のランスを持っている。

 

『グッ、ウアァァァ――――!?』

 

ギャンクリーガー――――ルドルフのこれまでの功績によって新たに造られた彼の専用機とも言える機体。データだけで見るなら優れた機体であるのは事実だが、製作の為のコスト、パイロットへの適性、整備性、その他開発関係において割に合わないことから、彼が一部私財を投じることでようやくの完成を経て用意された機体である。

この機体の開発と並行して多くの機体を造っていたクラウの疲労に関しては推して知るべしだろう。ギャンクリーガーの性能は核動力こそ使っていないもののセカンドシリーズとも対等以上に渡り合える機体であり、いつものごとくゴールデンカラーが施されているが、製作者であるクラウ曰くエマルジョン塗料によってビームに対する耐性がそれなりに(・・・・・)高いらしい。

 

「さあ、死にたいものからかかって来くるがよい!この騎士の美貌を兼ね備えた私が手ずから仕留めてやろうではないか!!」

 

勿論、その装甲自体防御力が高くシールドも存在する為、実体弾に対しても防御性能が不足しているという事は一切ない。ルドルフはその驚異の性能を発揮して敵部隊を次々と蹴散らしていった。尤も、本来ならばラー・カイラム所属の彼は後方で待機すべきであり、最前線に出てきているため戦線は非常に面倒なことになっていた。御目付け役といえるアレックが居なければ彼は戦線を混乱させ、戦況を悪化させる可能性があったことを彼は知らない。

要するに、彼はいつも通り平常運転であったというだけの事だ。

 

 

 

 

 

 

「やはり駄目か……」

 

アガメムノン級の旗艦でジョゼフは連合が次々と討たれていく様を見ながらそう言葉を口にする。

 

「これ以上の接近は不可能でしょうな。このままでは直に戦線は瓦解します。どうされるおつもりで?」

 

この大部隊の指揮官も顔色を変えずにそういう。彼が顔色を変化させないのは軍人としての矜持というよりも、諦めからきているのだろう。とはいえ、何の抵抗も出来ないままに死ぬ気も起きない。せめて忌々しいあのコーディネーターの巣窟を一つだけでも潰してやろうではないか。そう思わせるような目つきでジョゼフに向けて視線が示される。

 

「核攻撃部隊、出撃せよ。この距離からでも構わん。核攻撃にて敵に少しでも被害を与えるのだ」

 

無策、無能と罵られようとも他に手立てはない。今下がれば敵にまともな被害すら与えられずに自軍だけ大きく削らされたと言う結果しか残らないのだ。核自体は迎撃されてもいい。ただ、こちらの戦力と同等、欲を言えばそれ以上の戦力を失わせればいいのだ。それならば核を散発的に或いは広範囲で放てばいい。

 

「MSが戦争を変えた。そして、そのMSという概念においてザフトは連合やその他の勢力と比べ一歩、いや二、三歩以上先に進んでいる。それは別にかまわない。だが、世界は優秀な兵器があるから勝ってきたのではない。あくまで兵器はただの道具だ。引き金を引く人間が、そして数がこの世界の戦争で勝利を与え続けてきたのだ。ならば、その先人たちを見習い、私は最後の意地というものを見せてくれる」

 

司令官のその言葉に周りの士官たちは察した。この戦争は我々の敗北しかないのだと。それでもなお、我々は戦い続け、敵に立ち向かわなくてはならないのだと。決して士気は高くなくとも、彼らは自分たちの上官について来たのだ。ならば立ち向かわなくてはならない。

 

「全部隊、攻撃開始。一機でも多く戦線を突破させるのだ!」

 

ウィンダムや旧式のダガーが現れ、突貫していく。自殺行為とも言える攻撃の数々。だが、逆に言ってしまえば敵の攻撃を無視してでも攻撃をすることによって敵の被害をより大きくする為の攻撃とも言える。

 

『特攻だと!?』

 

『狼狽えるな、核を撃ってくる気だ!ニュートロンスタンピーダー起動。敵の核が無意味だという事を教えてやれ!』

 

第一波の核攻撃は見事に迎撃される。出来る限り広範囲にばらけたつもりだったのだろうが、ザフトの猛攻によって移動する位置を絞られ、見事に誘い込まれたのだ。

 

「クッ、すぐに第二陣を準備させるんだ!」

 

「敵大型MA、来ます!」

 

「何だと!?接近を許すな!艦砲を全てそちらに向けろ!」

 

赤紫に染められたザフトのノイエ・ジールⅡが接近する。少しでも守ろうと立ち塞がった機体は容易くビームガンやドラグーンに撃ち落とされ、艦隊の砲撃も命中など碌にせず、寧ろ味方のいる場所に向かって放たれることで混乱が巻き起こるだけだった。そして、抵抗など無意味とばかりにノイエ・ジールⅡの接敵を許してしまう。

 

『これで終わりだよ、ジョゼフ。連合という組織そのものの崩壊だ――――』

 

「おのれッ、デュランダル!」

 

ノイエ・ジールⅡに乗るパイロットがデュランダル本人だとジョゼフは知らない。だが、それでもこの戦闘を行う原因となった敵に対して怨み言を言う位しか彼に出来ることはなかった。そして、デュランダルが乗っていることを終ぞ知らないままにジョゼフの居たアガメムノン級の艦橋はノイエ・ジールⅡのビームサーベルによって切り捨てられることとなった。

 

 

 

 

 

 

旗艦が落とされたことによって連合の戦線は更に混乱を増した。元々アガメムノン級の司令はアルザッヘルの司令でもある。だからこそ、アルザッヘル基地のパイロットたちはそれに従っていたのであり、それ以外の指揮権を持つ人間でまともに指揮を執れるものなど殆どいない。

また、この作戦を提唱した人物である大西洋連邦大統領であるジョゼフもまたアガメムノン級に搭乗していた為、最早組織の最高の権力を持ったん人間の死によって瓦解に大きな影響を与えていた。

 

『私、ギルバート・デュランダルはここで戦闘行為を終了し、諸君らに名誉ある投降をしてもらいたいと願っている。何故、こうも連合が抵抗したのか?考えていただければ諸君らにもお分かり頂ける筈だ!大西洋連邦大統領のジョゼフ・コープランドが己の私欲へと走ったからである。自らの地位にしがみつき、他者を足蹴にしてでも保身の為に動こうとする――――その身に余る欲こそが我々と諸君らを戦場へと駆り立てる結果となったのだ!

今のあなた方に本当に平和を思う気持ちがあるのなら、争いを無くしたいと思うのならば、どうか投降して頂きたい!繰り返すが、これは名誉ある投降であり、決して他者によって貶されるようなことではないのです!!』

 

完全に目的意識を砕かれたに等しい連合は、その多くが投降を始める。一部の連合部隊は無駄とも言える抵抗を続けたり、すぐさま戦況を立て直す為に撤退するもののその数は決して多くはなかった。

 

『名誉ある投降だと?どこまで傲慢を気取るつもりだ、宇宙の化け物め!!』

 

「いやまあ傲慢なのは認めるけど邪魔はしないでほしいかな」

 

投降の呼びかけを放送しているデュランダルに対して連合の一人のパイロットが動きを止めたノイエ・ジールⅡに向かおうとするが、現在のクラウの役割は彼の護衛であるためそのようなことを許すはずもなくリゲルグのビームライフルで撃墜する。

 

「戦場のど真ん中で立ち止まって演説とか、こっちの心臓に悪いんだけどね……」

 

一人そうやって愚痴る事しか出来ないクラウはデュランダルの行動に溜息を吐きながら戦況を確認する。どうやら投降しなかった敵部隊は一ヶ所に集結して、部隊を再編しようとしているようだ。撤退の動きからそれが分かってしまう。

しかし、議長は敵の投降を優先しており、追撃は必要最低限しか指示していない。独断で突撃するようなものはともかく、ザフトとしては積極的に追うつもりはない様だ。

 

「最も、それが狙いな気もするな。全く――――議長は何を考えているのやら?」

 

クラウでさえ議長の行動は予期、予測できないものだ。とはいえ彼にとっては自身が切られない限り議長の目的が何であっても構わないと思っている。元々彼は最終的に自分が死のうが死ぬまいがどちらであっても別段気にしていない。

彼の行動原理は愉悦、未知、異常、変革など――――そういった現状の変化を求めているからだ。勿論、停滞であろうとも構わない。人生とは得てしてそういったものだと納得して死ぬだけだ。彼にとってはこの人生は数ある人生の中で多少大きくかかわっただけの一つに過ぎない。

 

「でもまあ、ここまでするからには勝ってほしいものだね」

 

議長の搭乗するノイエ・ジールⅡを見ながら彼はそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

「グッ、まだだッ!ここで終わるわけにはいかんのだよ!!」

 

イザークと周りのザフト部隊に苦戦を強いられながらも必死に抵抗していたネオはイザークと再びぶつかり合う。しかし、ビームソードを突破することは出来ず、機関砲を浴びせようとしてもイザークは咄嗟の判断力でそれを回避して攻撃を殆ど受けずにいた。

近接戦では不利だと感じていたネオは距離を出来る限り取り続け、ビームライフルで攻撃を続ける。直接機体からエネルギーを供給しているライゴウのビームライフルは実質核動力によって動かしているライゴウにとって無限の弾薬がある状態だ(銃身がもつわけではないので永遠に撃ち続けることは不可能だが)。

しかし、目に見える範囲でいるザフトの部隊に核動力が居ない上に、敵のエースのMSは近接戦向けの機体な為、銃撃戦でなら敵よりも優位に立てる。だが、それはあくまでも一対一でならの話だ。

 

「畜生ッ……!?数が多すぎるだろ!!」

 

ネオ達の部隊は正面から突破しようとしている部隊はたったの三機だ。周りでかく乱しようと攻撃を続けている部隊もいるが、それとてガーティ・ルーに配備されている機体しかいない。戦術規模の戦力で戦略規模の敵を打ち砕くことなど、竹槍で戦車や戦闘機を落とすに等しい事だ。

 

『単機でそこまで粘ったことは褒めてやるが、これ以上はやらせんぞ!』

 

そう言って再度接近してくるイザークのグフ。それから逃れようにも周りの敵部隊が逃げ道を無くすように囲い込んできている状態だ。厄介なのは突撃してくるのは正面のイザークの乗る白いグフだけであり、周りのMSは距離を取って、こちらの攻撃を警戒しているという事だ。

 

「だが、これ以上接近させるかッ!」

 

『チッ!?』

 

スペキュラムパックに装備された虎の子のミサイルが放たれる。そしてすかさず機関砲を放つことであえて誘爆させ敵の対応を鈍らせた。

 

「ウオオォォォ――――!!」

 

そのまま突撃を仕掛け、ライゴウはグフにタックルを行い吹き飛ばす。イザークは危うい所で何とかシールドを正面に構えて受け止めるものの、衝撃自体は殺されることなく受けてしまった為、大きな隙を見せてしまう。

 

『しまったッ!?』

 

このままでは止めを刺される、とそう思ったイザーク。体勢を崩した今の状況では確かにビームの一光で撃ち落とせるだろう。しかし、予想した攻撃は繰り出されなかった。

 

『……クソッ、手を煩わせるまでもないという事か!!』

 

憤怒の表情でイザークは敵を見つめるが、それは単なる見解の相違でしかない。ネオの目的はただ敵を仕留めるのではなく、コロニーレーザーを出来る限り短時間で制圧するという事だ。一方で、イザーク達の目的はあくまでも敵の迎撃。一応はコロニーレーザーに対して何らかのアクションをしようとしていると当りをつけているものの、それ自体に確証はないものだ。

その達成目標の違いが彼らの命運を分ける結果となった。もしネオの目的が単純に敵部隊への攻撃であったならイザークを仕留めていただろう。だが、同時に彼は周りの敵部隊によって致命的な隙を曝す結果となり、落とされていたかもしれない。

 

「これ以上、時間を掛けるわけにはいかん!このまま戦線に無理矢理穴を空けさせてもらおう!!」

 

スペキュラムに再び火を入れ、加速させる。その正面からの強行突破を前にザフトの部隊は次々と砲弾の雨霰を繰り出すが、回転しながら躱し、ミサイルなどは機関砲で迎撃し、シールドで防いで、時にはビームライフルで敵を貫いて、突き進む。

 

『いかせるな!なんとしてでも止めろ!!』

 

後ろからイザークが追いかけるが、機動力に関してはこの場にいる誰よりもライゴウはバランスが良く、速かった。

 

「また会う機会があれば、今度こそ相手をしてやるよ、ザフトのエースパイロットよ!」

 

そのままライゴウはその戦線を抜けきった。

 




議長「足がついていないのだな……」
クラウ「今の段階でノイエ・ジールⅡは百パーセントの性能を発揮できますよ」
議長「当たり前の事を一々言わんでもいい」
このあたりのネタを前話か前々話あたりでやっておけばよかったと後悔……。
連合のトップが、壊滅した。ひゃっほう、これで議長を阻むものはいなくなったぜ!アークエンジェル?知らんなぁ(すっとぼけ

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