ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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何か面白い小説ないかと日刊ランキング見てたらランキングに乗ってた。喜びよりも先に驚愕した。その後も「嘘だと言ってよバーニィ」ってしばらくは思ってた。その後は「こんなにも嬉しいことはない」の状態です。
とりあえず、皆さんには感謝感激です<(_ _)>。今後もこの作品にお付き合いいただけたら幸いです。


第五話 狂気と破滅

「これ以上の追撃は無理ね……」

 

ミネルバの艦長であるタリア・グラディスは損害状況を見て、そう判断する。左舷のエンジンは被害が大きく、CIWSもミサイルを迎撃する最中、デブリとの衝突で幾つか使えなくなっている。MSも撃墜や大破したものこそいないものの、中破、小破している機体は多い。このまま整備せずにすぐに発進可能なのはパーツを変えれるインパルス位だろう。

 

「本艦はこれをもってボギーワンの追跡を終了いたします。議長、よろしいでしょうか?」

 

口調こそ疑問形だがはっきりとこれ以上の追撃は無理だと目線で告げる。

 

「止むを得んさ。皆、尽力してくれたことに変わりはない。我々に運がなかったと言うことなのだろう」

 

普段と変わることのない柔和な笑みを浮かべながら、ミネルバクルーを労う言葉を言う。計算された人誑しっぷりにクラウは苦笑いを隠せずにいた。

 

「所で、これ以上の追撃が不可能といっても港へ戻るのは時間が掛かるだろう。その間、姫に我が艦を見せたいと思うのだが構わないかね?」

 

「議長、それは……」

 

最新鋭の兵器を他国の人間に見せるというのは示威行為としてはともかく、情報を盗まれる可能性もあるためあまり喜ばしくない。そう思いタリアは口ごもるものの、議長は意見を変えるつもりはなく、そのまま説得して艦内を案内することになった。

 

 

 

 

 

 

ザク、グフ、ゲルググと量産される機体の違いというものは数多くあるが、その一つに機密性の違いが存在する。既に量産されているザクは機密性は他のMSとあまり差異はないと言えるだろう。

未だ配備の為に量産が間に合っていないグフは他のMS生産とは独立している部分もあり機密性が高い。

では、ゲルググの機密性は如何なのか?答えはややグフ寄りと言った所だろうか。他国に見せるほど公開はされていないが、その存在自体は確認出来る程度の機体だ。度合いでいうならセカンドシリーズの方が機密度は高いだろう。

 

「そんなセカンドシリーズの運用を目的としているミネルバ艦内を案内させるなんて、議長も何を考えてるのやら……」

 

今日になって何度目か分からない溜息をつきながら俺は客室で椅子に腰を掛ける。丸テーブルにコースターとロックグラスを置き、適当に貰ってきた酒を注ぎ込む。議長はカガリ首相とアスランを案内しに格納庫までいったのだろう。流石に案内役を命じられることもなかったので部屋で暇をつぶしている。

 

「ユニウスセブン……」

 

確か、この後にこれが落とされるはずだ。これで戦争が始まる。ゲルググは人殺しの兵器として大層活躍するだろう。それはなんて―――

 

「―――素晴らしい事じゃないか」

 

兵器が兵器として真っ当に活躍する。まさに技術者冥利に尽きる。戦闘データが手に入れば、ますます強化することも可能だろう。戦時中の技術革新という大義名分をもって機体をこの世界だけじゃない知識を使い改造することも出来るはずだ。

 

「ククク、ハハハッハハ………」

 

俺はイカれてるのだろう。死への恐怖心を失ったことからなのか、何回もの転生をしたからなのか、それとも最初からなのか、原因は知らない。だが、戦争が起ころうと起こるまいと関係ない。結局の所、俺は俺自身が楽しめればいいのだ。

主義も主張も理想も存在の在り方も―――自由にすればいい。どんな意見であろうとも俺は笑って祝福してやろう。特にシン・アスカ―――俺はお前のことを高く評価してるんだから。

……問題はない。普段は鳴りを潜めているこの本性も酒で多少のタガが外れただけだ。暫くすれば元に戻る。

そう思い、どこか狂った笑いを上げながら俺は部屋でグラスを傾け、酒を煽っていた。

 

 

 

 

 

 

ユニウスセブンが落下軌道をえがきはじめたと報告がミネルバに入り、彼らはユニウスセブンまで向かっていた。途中、アスラン・ザラことアレックス・ディノも本人たっての希望によりザクに乗り出撃することになり、準備が進む。

 

『コンディションレッド発令!ユニウスセブンにて敵が出現した模様です!』

 

すぐさま武装を持つように切り替え、全機出撃準備を開始し、ユニウスセブンに向けて出撃した。

 

「あれか!?」

 

シンはフォースシルエットの状態で味方を撃墜していく敵を発見する。

 

『あれは、ジン!?』

 

『気を付けろ、あの機体、旧式だがかなりの改良が施されている』

 

ルナマリアが敵の正体に驚き、レイがすぐさまその特徴を指摘する。ジンハイマニューバ2型―――純粋な性能こそザクやゲルググには劣るが、武装を持っていない味方機は次々と屠られていく。

 

『援護するぞ、下がれ!』

 

アスランはメテオブレイカーを守っていた一機の近くに付き、ビームライフルを撃ちながら迎撃する。その様子に気付いた一機のスラッシュザクファントムがアスランに通信をした。

 

『貴様、こんなところで何をやっている!』

 

『イザーク!?いや、今はそんなことはどうでもいい!作業を急ぐんだ!』

 

通信相手に驚愕こそしたものの、アスランは自分たちのやることを思い出し、指示する。

 

『分かっている!それと、今は俺が隊長だ!命令するな、民間人が!』

 

『相変わらずだな、イザークは』

 

『貴様もだ』

 

そういって、とっさの連携をするが、そこに違和感はなく、長年の戦友を思わせた。その後も奪取されたセカンドシリーズの介入によって三つ巴の戦いを呈しながらも、シン達はメテオブレイカーを守ろうとする。

マーレ、レイ、ルナマリアは奪取されたセカンドシリーズと、アスランやシン、ショーンやデイルはジンと戦う。

メテオブレイカーも大半が起動し、残ったのは起動させていたMSが撃墜されたものが殆どとなり、残った部隊が移動して、起動させようとした時、

 

『こんなひよっこ共に、我らの思いやらせはせんわァッ!!』

 

今回のテロリストの代表格ともいえるサトーが現れた。

 

 

 

 

 

 

『うおおー!これ以上はやらさん!』

 

『あいつ等まだ!?』

 

現れた、おそらくは残り少ないであろう最後の部隊によって次々とザフトのMSを屠っていく。

 

『我が娘のこの墓標。落として焼かねば、世界は変わらぬ!』

 

『―――娘?』

 

『何を―――!?』

 

シンやアレックスはその嘆きの中に放たれた主張にたたらを踏む。

 

『此処に無残に散った命の嘆き忘れ。撃った者等と何故、偽りの世界で笑うか?貴様らは!』

 

僅かな数のジンの部隊は特攻するかのように襲い掛かる。機体の性能差を実力であっさりとジンのパイロットたちは覆していく。

ショーンの機体であるゲルググA型がナギナタでジンを切り倒そうとするが、逆に腕が斬り落とされる。そのまま流れるようにジンは動き、ゲルググを蹴りで吹き飛ばして、左手に持ったビームライフルによってザクを撃ち抜いた。そして、一機のザクがヒートホークを振りかぶり、ジンの頭を叩き斬り、倒したかと油断したすきに突進され誘爆し、相打った。

 

『軟弱なクラインどもの穏健派に騙され、ザフトは変わってしまった。何故、気づかぬか!?我等コーディネーターにとってパトリック・ザラの取った道こそが唯一正しき物と!!』

 

なるほど、共感できる。サトー達の主張に、一人マーレ・ストロードはそう思っていた。彼は命令された事と、来る敵を振り払う程度の認識でユニウスセブンを落下させようとしていた敵を倒していた。

元より、ナチュラルを守るようなこの作戦にやる気など起きようはずもない。適当に自分の身に危機が迫った時だけ、強奪されたセカンドシリーズを相手取る時だけ対応していた。

ユニウスセブンが落下限界地点を越え始める。最早、メテオブレイカーによって大きく二つに分かれたが、それ以上、砕くことは不可能だろう。

 

『我らの憎しみを、嘆きを、ユニウスセブンよ、あの忌まわしき記憶と共に逝くがいいィ―――!!』

 

破損し、大気圏突入能力のないジンはそのままエンジンの熱が限界を超え、爆発していった。

 

「シン、アレックス撤退するぞ!」

 

『了解』

 

『……ああ、了解した』

 

残った機体も次々と撤退し、母艦に回収されていく。

 

 

 

 

 

 

部隊が回収され、最後の意地とばかりにミネルバが大気圏へと突入しながら陽電子砲を放つ。マーレはミネルバに残したが、俺は議長と共にシャトルでプラントに戻っていく。元々俺は議長のおまけみたいなもんだったんだから当然と言えば当然だ。

タンホイザーの威力はすさまじいもので、下手をすればプラントの一角を蹂躙できるほどの威力はあるだろう。しかし、ユニウスセブンを貫くことは出来ない。元々今のユニウスセブンは核によって破壊されて尚、顕在しているものだ。その質量は計り知れないものであり、いかに陽電子砲といえども破壊は困難だ。

しかし、シャトルは離れ、見え辛くなり始めているものの、その光景はまるで、燃え広がる絵画のようで美しく、幻想的であった。たとえそれが、多くの人間を虐殺することになるものだとしても。

 

「議長、これからどうするつもりで?」

 

折角なので議長がどう動くつもりなのかを聞いてみることにする。

 

「少なくとも、これから地球圏への救援活動が主となるだろうね。我々は唯一被害にあっていない隣人として手を差し伸べるべきだ」

 

「―――差し伸べた手を叩かれる結果となっても?」

 

その言葉に返答はない。つまりはそう言うこと。議長は寧ろそうなることを望んでいるのだ。口元が笑みで緩みそうになるのを必死で堪えながら再び外の光景を覗く。

さあ、演目は戦争、舞台は地球圏。幕は上がることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

地上に降りたミネルバはカガリ首相を届けるためにオーブへと向かうことになっていた。ミネルバは新造艦とは思えないほどに(内外含めて)ボロボロだ。破損したエンジン、傷だらけの外装、殆ど機能しないCIWS、大気圏突入時に無理を重ねたこともあって色々と部品も悲鳴を上げている。

更には本来乗り込むはずだったセカンドシリーズの三機も存在せず、インパルス以外の機体は小破、ないし中破の状況だ。マーレ機はビームバズーカを失い、ルナマリア機は砲撃し続けた武器が、レイ機も無理な機動を繰り返した結果、スラスターを含めた機動関連が、ショーン機は右腕を、デイル機も所々に被弾を受けている。

 

「発艦からこの短時間でよくもまあ、こうまでなったわね」

 

艦長室でタリアは報告書を見ながら溜息を吐く。カガリ・ユラ・アスハがオーブ代表として、ユニウスセブン落下の際に全力を尽くしてくれたことを報いるために、修復してくれるそうだがと思いつつ、仕事を続ける。

艦長として至らぬ部分も多くあった。この失敗を生かして次へとつなげよう。そう思わないとやっていけないと感じていた。

 

「マーレ・ストロード、入ります」

 

艦長室へマーレがやってくる。少しばかり無礼と言える状況だが、マーレは元々ミネルバのメンバーでなく、此処では独立した人間であるためコンディション・イエロー以上にならない限り、艦長の指示に従う必要はない。尤も、必ずしもそうだと言うわけではないし、無礼を働いてもいいという理由になるわけでもないのだが。

 

「とりあえず、これから俺は如何したらいいわけだ?」

 

率直に要件を尋ねるマーレ。マーレの直属の上官であるクラウがプラントに帰還した以上、この場の最高責任者である艦長職の人間に指示を仰ぐのは当然と言えた。

マーレもプラントへ帰還すべきかこのミネルバに残るのか。少なくとも艦長ならクラウから何らかの言葉は受けているだろうと思いここに来たようだった。

 

「ええ、彼から指示を受けてるわ。これを渡すようにってね。中身は読んでないわよ」

 

そう言ってタリアは書類をマーレに渡す。それを受け取り読んだマーレは顔つきを変えた。

 

「―――すまんが、失礼させてもらう」

 

「え、ちょっと、これからどうするつもりなの!?」

 

一枚目を見てすぐさま退出しようとするマーレに驚き、タリアはせめてこれからどうするつもりなのかを尋ねる。

 

「しばらくはミネルバにいるさ。この書類に書いてある通りになるならな」

 

そういって、マーレはそのまま退出していった。

 

「はあ、一体何が書いてあったていうの?」

 

困惑したままタリアはまた一つ溜息をつくことになった。

 

 

 

 

 

 

 

マーレは書かれていたことを読んで思わず、声をあげて笑いそうになる。

 

『戦争が始まる可能性が高い。だからこっちが迎えに行くまで暫く自由にしていい』

 

戦争が始まればナチュラルを殺す大義名分を得ることが出来る。そういう意味じゃいろんなところから注目を浴びるミネルバは好都合ともいえた。

 

「いいぜ、そうこなくっちゃ―――」

 

獰猛な獣の笑みを浮かべながら与えられていた自室まで戻るのだった。

 




タイトルの狂気に当てはまるのはどっちかというとサトー達ではなく、クラウやマーレの方。サトー達、ユニウスセブン関連者はどっちかというと破滅の方。
クラウは自覚ある愉悦破綻者。マーレはナチュラル虐殺をごく当たり前と思ってる思考破綻者。どっちも日常を過ごす分には問題ないし、普段から鳴りを潜めてるがある日突然爆発する可能性があります。用法、取扱いには注意しましょう。

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