ゲルググSEED DESTINY   作:BK201

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第七十八話 諸行無常

「議長、後始末を終えましたが?」

 

「そうか、ご苦労だった。色々と面倒だったとは思うが良くやってくれた」

 

そう思うのならばもう少し労わって欲しいと思いつつも、クラウ・ハーケンは議長に命令を遂行したことを報告し、議長はそれに対して応えを返す。そしてクラウはそのまま報告書を纏めて渡してから退出しようとした。

 

「――――では、これで失礼します」

 

「まあ、待ちたまえ。そうすぐに退出することもないだろう?」

 

しかし、退出しようとしたクラウを態々止め、議長の座っている所からテーブルを挟んだ対面にある席に座る様に促される。立場的にも逆らいようがない為、クラウはそのまま礼をしながら席に座った。

 

「何、そう面倒だというような顔をするものではない。そこまで時間は取らないさ。今は忙しい時期だからね。君もそこまで暇というわけではないのだろう?」

 

「ええ、ザフトの新型機が多数存在しているせいでそちらに時間が割かれているのが一番の原因ですね。とはいえ、連合から収集させたデータの統合もまだ終わっていないので、そちらの方でも随分と忙しいのですが……ノイエ・ジールⅡに関してはどうでした?不具合はないかと思いますが一度本人からも聞いておくべきでしょうし」

 

振られた話題には応えるとばかりに返事を返すクラウ。その様子にデュランダル議長は気を良くしたまま答えを返す。

 

「ああ、悪くはないな。Iフィールドもドラグーンも非常に優秀な兵器だ。MAとしての機体の特性から一人での操作性に難があるのが欠点と言えるが――――それもまあ複座機にすれば解決する程度の問題だろう?」

 

それは勿論と首を縦に振るクラウ。

 

「フッ、今の機体の事に関してはそこまで深く追及する必要もない。こちらはまだ問題はない。とはいえ、完成は急いでもらわなくてはな。まだアレの調整は時間が掛かりそうかね?」

 

「一応議長の実戦データも手に入ったので、これで幾つかの過程は飛ぶことでしょう。しかし、議長――――それをいうのは無茶というか横暴というべきです。機体の完成だけならば既に終わっていたにもかかわらず、OSの設定や他のデータの統合、その他にも多数の作製、改良を加えろというのですから……」

 

面倒事ばかりで、と言葉を濁しながらもお前のせいだとクラウは言い放つ。しかし、その言葉に気を悪くすることもなく議長は会話の継続を促す。

 

「なるほど……とはいえ、そこまで長期的にかかる様なものでもないのだろう?」

 

「もちろん必要だと思っている時までには間に合わせましょう。それが俺の仕事ですから」

 

そろそろ退出しても良いかと目線で訴えかけ、クラウは席を立つ。今度は議長も止める気はない。だが、最後の質問を議長は彼に投げかける。

 

「……そう言えば、君に意見を聞くのを忘れていたな?前々から知っていたとは思うのだが、クラウ――――君はこのデスティニープランに対してどう思っている?」

 

問われたことで立ち止まって振り返り、そのまま議長の方へと向き直る。彼はいつもと変わらない様子で返した。

 

「――――どうでもいいです。俺の運命が(・・・・・)これで変わるというのなら賛同しますが」

 

その答えにならない答えを返し、今度こそクラウは退出していった。

 

「フム、これはある意味想定外だな――――だが、逆に分かりやすくもある。もうしばらく彼は使えるな……」

 

議長はそう呟くが、その言葉を聞き取った人は当然一人もいない。無論、議長も誰かに聞いてもらう為に呟いたわけではない。寧ろ、彼からしてみれば一人そう言葉を紡ぐことによって頭の中を整理させるための行動なのだろう。

 

「平凡の才を持つものでありながら非凡の存在と成している――――しかし、何も特別なことではない。そう、彼は己の才覚を万全にまで持ち上げてきただけの存在だ。故に、枠を超えることのない……いや、決して超えようとしない彼は私にとっては非常に便利な手駒だ」

 

クラウ・ハーケンの遺伝子に囚われない異質な存在であると、以前はそう思っていた。しかし、確かに新たな技術の発見や新型機の開発に関してはそういった面を見たが、別に遺伝子を超えたわけではないのだ。パイロットとしての技能、技術開発者としての実力、エクステンデットを治療した際の医療技術、それらは総てが高い数値を示したものの、その総てが遺伝子が示す才能を超えてはいなかった(・・・・・・・・・)

 

「彼の持っているものはどれも限界に至る事によって補ってきた技術ということ――――」

 

つまり、不可解ではあるが不可能ではない。彼の持つ総てはそういう事なのだ。誰でも才能が無くとも永遠と努力を行えば秀才にはなれる。クラウの持つ実力はまさにその秀才と同じことだといえた。

やはり、ポーンは所詮ポーンでしかなかった。プロモーションを行う事で己を変質させることは出来たのだろう。しかし、それもまたルールの内側に束縛されたものでしかなかったということだ。ポーンが己の枠を超えてキングになる事もなかったし、ルールに存在しない存在になる事もなかった。当たり前ではあるのだが、その当たり前ではない出来事を望んでいた議長としては些か以上に期待外れだったとも言える。

 

「結局、彼が私の望んだ立場に立つことはないだろうが――――新たな可能性を見出すためのきっかけとなったことは事実だ。そして、彼のおかげで本当の意味で私の望んだ立場に立つ者が現れた。大きな収穫だよ、これは……」

 

普段と変わらず、彼が笑みを崩すことはない。寧ろ今浮かべている彼の笑みは獲物を狩る狩人の様に鋭いものであった。

 

「さあ、そろそろ私も君たちと同じ舞台に立とうではないか。その為の慣らし運転は既に済ませたのだからね」

 

 

 

 

 

 

「これが新たに用意された機体か……使い物になるのか?」

 

「私も一兵士に過ぎないのでそういった機体の性能の保証に関しては私の方からはどうにも……一応データ上では機体の性能はグフよりも上の筈なんですけど……」

 

イザーク達ジュール隊の面々は状況によっては同じザフトと戦うことになるという事を知っても、その殆どはジュール隊としてイザークについて行くという意見を受け取っていた。勿論、デスティニープラン賛同者が少数ではあるものの居ないわけでは無かった為、そういった者らに対して無理強いさせるでもなく彼はナスカ級で伝令という名目で先にプラントへと帰還させていた。

そして、現在イザークが要請していた機体が到着し(今はまだアスランを中心としたミネルバ側が裏切ると確定したわけではない為、補充要請は普通に受け入れられた)、その機体のデータを受け取ったのだが、イザーク自身はその受け取った機体に対して少々懐疑的な目線を向けていた。

 

「銃撃武装が実弾しかないってのは……実際どうなんだ?いや、まあPS装甲の機体っていうのもそう多いわけじゃないだろうけどさ」

 

隣にいたディアッカもイザーク同様、目の前の青い機体のスペックを見て懐疑的な目線を思わず向けてしまう。ガルバルディやギャンクリーガーと同様に造られた唯一(ワンオフ)機。ザフトには新型をこう次々と造れる予算がよくあるものだと思う気持ちもあるが、元々ユニウス条約によって機体数の制限が加えられていたこともある為、質を求められることで数の少ない新型機の類は必然的に多くなるのだ。

 

「えーと、一応他にも機体は受領されているの隊長は他の機体に乗るという事も可能ではあるんですが……」

 

「そうだな――――ディアッカ、これは貴様が乗れ。こいつはバスターと同様に射撃向きの機体だ。貴様の方が向いている。俺は隣のリゲルグとやらで構わん」

 

イザークは隊長命令としてディアッカに機体を受領させるよう指示し、代わりに自分は隣にあったリゲルグに乗るという。リゲルグは現時点でマーレ機しか生産されていないRFゲルググとは違い、これまでのゲルググのデータ回収目的の為に極僅かではあるが少数生産され、その余った一機がジュール隊に配備されたのだ。

そして一方でもう一機の方は強襲用の軽装甲機だが機体の武装は射撃武装が充実している事から、さしてバスターとコンセプトは変わらないだろうと思ってディアッカをパイロットとして指名した。

 

「ちょっと待てよ、俺のザクは何ともないぜ?」

 

しかし、大破したイザークのグフとは違い、ディアッカのザクは未だ健在の筈だ。それなのに乗り換えるとはどういうことなのだと問いかける。そして、イザークはスペックの表示を見せながらディアッカに対して説明した。

 

「この機体、些か癖が強すぎる。並のパイロットでは乗りこなせん。俺が乗っても構わんだろうが、先ほど言ったようにこいつは射撃向きの機体だ。ならお前の方が適任だろう。俺の副官をやっているのならこのくらいの機体、乗りこなしてみせろ」

 

「やれやれ、無茶いうぜ。ま、そういう事なら仕方ねえか」

 

ディアッカはイザークがそこまで言うならと自分が機体に乗る事を了承する。ジュール隊に補充された新たな機体はイザークやディアッカ、他の隊の隊長やシホといったエース、機体を失ったパイロットが受け取る。

その中でイザークは少数生産されている最新鋭のゲルググタイプの一機であるリゲルグを、ディアッカはイザークの申請によって補充された同じく最新鋭の青いMSケンプファーを受領した。

 

 

 

 

 

 

「さしずめ、ミネルバ側についた彼らは英雄派とでもいった所かな?」

 

議長が演説を行った後、状況を理解した者の多くはミネルバか議長のどちらかにつくことを選択した。中には中道・日和見を決め込む者もいたが、時間がたつにつれてその数が少なくなることは想像するにたやすい。ともかく、今やザフトの勢力は二分したといっても過言ではなかった。

 

「しかし、愚かなことです。いくら英雄であってもギルに従わないというのならば、己の才能を生かすことが出来ないただの殺戮者に成り下がるだけだというのに」

 

レジェンドに乗ってアスランとマーレを抹殺しようとしたレイは議長の部屋からクラウが退出した後に、議長の所に来ており、レイは議長と話をしていた。軍人として生きることを定められたのならば上層部に逆らうというこの行いは確実にただの反逆者でしかない。レイはそう主張するが、議長は一概にそう思っているわけでもないようだ。

 

「そう言ってやるな、レイ。人は己の在り方を知らぬことに恐怖を覚えると同時に、知る事に対しても躊躇いを持っている。そういった恐怖心から逃れるために彼らもまた徒党を組まざる得ないのだよ」

 

「ですが――――」

 

議長はそれを今の段階でミネルバ側についた彼らやミネルバを直接議長は罰するつもりはなかった。寧ろ、彼はこうやって一つの勢力となる事を受け入れてすらいた。

 

「英雄の絶対条件に自分達の勢力につくという条件は存在しない。英雄に善悪の区別は必要であっても敵味方に条件があるというわけではない。だから我々が悪役(ヒール)であるというわけでもなく、彼らが必ずしも正義の味方であるということもない。そこにあるのはただ英雄と名付けられた立場だけだ」

 

「しかし、そうであったとしても立場というものは十分に強大です。それを何故わざわざ?クラウに止めさせなければあのままレジェンドで斃して――――!」

 

「今はそこまでリスクを負う場面ではない。少なくともレイ――――君の命を掛け金にしてまで止めようとするべきではないだろう?」

 

英雄という立場は確かに強力なものではあるが、それは絶対的なものではない。前大戦の英雄であったアークエンジェルがそれをある意味証明しているだろう。今大戦時において彼らという存在は、少なくとも周りにとっては傍迷惑なだけの存在であったことは確かだ。なら、あえてそれを止めるほど脅威と言える称号でもない。

 

「ギル……」

 

自分のことなど構わずともと思うのだが、そう考える一方で嬉しく思うレイ。その様子を見ながら議長は言葉を続ける。

 

「それに、物事を成し遂げるためにはそれに見合う障害が必要だ。チェスの盤面の様に少しでも対等に近づけなくてはな。そうでなくては大衆にはその存在の価値は薄まって見えることになる」

 

例え対等でなくともチェスの様に見た目だけでも体裁を整えるべきだと議長は言う。そういった理由を聞いたことでレイは納得して受け入れた。

 

 

 

 

 

 

「まだ足りないのか……それともこれで十分なのか?」

 

宛がわれた一室で腰を下ろすクラウは部屋の電気をつける事すらせずに独り言を話す。

 

「変えなきゃ終われない、終えることが無い……繰り返し、まだ続ける?馬鹿らしいな」

 

仮に他者に聞かれたとしても彼の言っていることの意味を理解できるものは居ないだろう。

 

「どうせまた役を演じて、それで終わり。いつも通りの演劇の終了――――そういう演目も飽き飽きしている。飽いている、飢えているというのかな。いつまでたっても終わらない連鎖に」

 

クラウが言っていることが何を指しているのか。誰にもそれは理解されるものではなく、クラウ本人にしかわからない。何せその原因となる出来事を体験しているのはこの世界にはクラウしかいないのだ。

 

「なんで、今更そんなこと考えるんだろうね。頭の中では理解してとっくに諦めたつもりのはずなんだけどな」

 

何を諦めたのか、何に対して理解したというのか。それもまた本人にしか理解できない。

 

「介入し過ぎたせいかな……らしくもない。面倒を嫌う性質なのにね、俺は」

 

そう言って彼は壊死した自己の内面を変えることもなく、ただ状況に流されることを良しとした。

 




師も走ると書いて師走~。忙しくて辛いです。この時期は(笑)

ディアッカが前回不遇だったので良い機体に乗り換えさせることにしました……本当の所はいい加減黒でクラウと被らせるのはどうかと思ったからだけど(ボソッ
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