マクロスΔ~銀河を断つ斬艦刀~   作:自己満足です

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改訂版です。


ステージ02「ミラージュ・ファリーナ・ジーナス」

 アル・シャハル宇宙空港の一画にあるレストラン。 

 橙色の髪を持ち、身体中から元気が溢れででいる少女──フレイヤ・ヴィオンは涙目になりながら食べていた。

 その食いっぷりに周りが驚いているのを気にすること無く、猛然と食べていた。

 周りが引いている中、本人とその正面に座る黒髪の美女──ノエル・マリファスだけが平然としている。

 

「ノエルちゃん、何から何までほんまあんがとね!!」

 

「ううん、私とフレイヤちゃんの仲じゃない」

 

 フレイヤとノエル。

 可愛い系美少女とスタイル抜群の妖艶な美女。

 どんな関係なのかを周りの者たちが推測するが、単純に()()だと言う答えにたどり着くのはそうはいないだろう。

 二人の年齢が14歳と17歳と知れば簡単に想像できる関係だが、如何せんノエルは10代に見られることはまず無い。

 本人の悩みの種でもあるが、最近ますますスタイルが良くなってきたせいである。

 そんな話は親友とは言え、()()自身のスタイルに不満も持つフレイヤの前では口が裂けてもノエルは口にしないが。

 

「それに謝らないといけないのはこっちのほう。 ごめんね、フレイヤちゃん。 私のミスで入国手続きでゴタゴタしたよね・・・・」

 

「き、気にしてないんよ! そもそもノエルちゃんがいなければ()()()()()()を出ることも出来んかったんよ!!」

 

 フレイヤの言葉は本心からだ。

 彼女の故郷である惑星──ウィンダミアはフォールド断層に囲まれた宙域に位置する。

 航海する上で非常に厄介な宙域であり、ただでさえ行き来する宇宙船が他の惑星より少ない上に、新統合軍との関係悪化により地球文化及び交流の機会が全面的に排斥され、他の星に行くだけでも困難な状態だ。

 自分が田舎者で世間を知らないとは言え、フレイヤもウィンダミアから脱け出すのは容易なことではないことぐらい理解していた。

夢を叶えるために、ウィンダミアから脱け出したかったフレイヤは、駄目元で外界の唯一の知り合いにして親友であるノエルに相談したのだ。

 手紙を出して1週間後、何時もの手紙と共にフレイヤの運命を切り開く1枚のチケットが同封されていた。

 それが──アル・シャハル行きの航空チケットであった。

 地球文化への取り締まりは厳しかったが、他星との接触は割り許されており、 新統合軍や地球関係企業からの郵送物でない限り閲覧は割と雑だ。

 大きな荷物や複数の荷物が短期間に運ばれてくれば何かあると疑う者もいるだろうが、手紙程度では4枚だろうが、5枚だろうが気にする者はいない。

 だからこそ手紙1枚程度の厚みしかない航空チケットと、極小マイクロチップが同封されていても気がつかれない。

 おまけに()()()()()()()()()()()()()には流れていない高性能探知波欺瞞紙──1枚数十万の代物──に包まれていれば発見される可能性は万に1つに無い。

 問題はフレイヤの住んでいた村から宇宙港まで行けるかどうか、という事だった。

 フレイヤは多少の紆余曲折あっての旅立ちであったが何とかなった。

 3日間で()()()()()()()()()、入国手続きに手間取ったというアクシデントがあったものの概ね予定通りに到着できた。

 今ここで二人で食事が出来るのも、()()()()()()()()()()()()()のも、全てがノエルのおかげであることにフレイヤはわずかな疑いさえも持たない。

 

「私はオーディションに必ず受かって、ノエルちゃんに借りた借りをきっちり返すかんね!」

 

「ふふふ、フレイヤちゃんは昔からそうだものね。 期待して待ってます」

 

「まっっかせてーな!!」

 

フレイヤは、あまり豊かではない胸を張って答えた。

 

「それじゃ、そろそろ宇宙港に行こう。 もう時間だよ」

 

「はいな!」

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 ハヤテ・インメルマンは宇宙ターミナルを駆けた。

 数得きれない人波をすり抜け、職場への最短ルートである宇宙港ターミナルを抜け、目的地へと着いた。

 

「お? ハヤテじゃねえか」

 

 親方がハヤテを見つけた。

 ハヤテは息こそ切らしていないようだが、その顔には普段は見れないハッキリとした焦りの色を浮かべている。

 だからこそ、親方はハヤテの様子からただならぬ様子を感じて事情を問う。

 

「どうしたんだ? そんな──」

 

「親方! 早く皆に避難指示を!!」

 

「は? どうしたってんだ?」

 

 ハヤテが、いきなり突拍子も無いことを言ったことに親方は怪訝そうな顔をした。

 

()だ! 魔性を帯び──」

 

『ヴァール警報が発令されました! 市民の皆様はシェルターに避難して下さい! 繰り返します! ヴァール警報が発令されました! 市民の皆様は──』

 

 けたたましいサイレン音と同時に、緊急放送が辺りに響いた。

それと同時に──

 

「爆発だ!! あっちは街の方じゃねえのか!?」

 

「やべぇぞ! 意外とこっちに近いじゃねえのか!?」

 

「に、逃げるぞ!!」

 

 緊急事態に浮き足立ち、()()()に逃げようとする作業員たち。

 それはかなり危険な行為だ。

 緊急避難時、一人一人の勝手な行動が入らぬ犠牲者を生み出す原因となる。

 おまけに、ここにはグレードダウンされたとはいえ、軍用機であった《ナイトホース》や、作業用重機が山ほどある。

それらが無秩序に動くとなると、物だけでなく人的被害は計り知れない物になるだろう。

 

「静まれっ!!!」

 

「「「「「──!!!!?」」」」」

 

親方の鋭い一喝。

 

作業員たちの喧騒や重機の駆動音でけたたましい港内においても、その声は静寂を生んだ。

 

 ゼントラーディ(巨人族)の血を受け継ぐ者の持つ優れた肺活量から生み出された声量は確かに大きくはあったが、機械が生む騒音を越えてはいなかった。

 

 それでも声が通ったのは声に()があったからだ。

 

「《ナイトホース》と重機はすべて格納庫に入れろ!」

 

「えっ? それじゃあ移動に時間が──」

 

「すべこべ言うな!! いいか! ここから1番近いシェルターには人がごった返しているばすだ! どのみち乗り捨てる事になる! それにな、緊急事態にてめえだけの事を考えてるのは、長生きしねぇんだ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

「火事場泥棒をする不届き者対策もしなくちゃならねぇ! さっさと始めろ!! 手の空いてる奴は手分けして戸締りに回れ!! 終わったら各班長は人員報告を上げろ!!」

 

「「「「「りょ、了解!!!」」」」」

 

 作業員たちは親方の迫力におされ、反論することも許されず行動を開始した。

 そんな中、ハヤテは爆炎が上がる街を見ていた。

 好奇心からではない。

 ()()()()とでも言うべきか、先ほどから囁きかけてくるのだ。

 

──しかと見よ。

 

 ()は誘う。

 ハヤテはその()から意識を外すことは出来ない。

 

──汝の()()()()()は炎と血が渦巻く彼方、戦場にしかない。

 

 ()は問う。

 

──汝は欲するか?

 

 ハヤテは心を決めた。

 

「ほらよ」

 

「──?」

 

 それをまるで待っていたかのように、親方はカードキーをハヤテに渡した。

 

「行くんだろう。向こう(戦場)に」

 

 ハヤテは頷いた。

 

「ええ」

 

 何故親方が自分の心を分かったのか、ハヤテは“直感的”に理解した。

 答え合わせをするように、親方は語りだした。

 

「・・・・俺は元軍人でな。 ドンパチに辟易しちまってよ」

 

 親方は複雑そうな顔で苦笑いを浮かべた。

 一言では片付けられないほどの多くの経験を積み、それはきっと良い思い出は少ないだろう。

 ハヤテは親方の雰囲気から察していた。

 

「軍人として得るものは少なかったが・・・・。 人脈と()()()()()は鍛えられたつもりだ。 だから分かっちまったよ。 お前さんの目は()()をしてる。 これから逃げようとする人間がする目じゃねぇ、ってな」

 

「・・・・」

 

「お前さんに渡したカードキーは港の北東のに・・・・ちょうどドンパチを派手にやってるゼントラーディ駐屯地に最も近い倉庫のモノだ。 いかんせん道楽で買ったものだ、整備は万全だが・・・・()()は期待するなよ」

 

「いえ、十分です」

 

「ドンパチやることになっても規則云々は気にするな。 そこはこっちが尻を持つ。なぁあに、 ()()はいくらでもある! 派手に暴れてこい!!」

 

「感謝します!」

 

 ハヤテはそう言い残すと、己の感覚に従って地を駆けた。

 まるで──疾風のようだ。

 その姿はあっという間に戦場へと消えていった。

 

「・・・・戦場に若いのを送り出すのは、軍から離れても後味はわりぃわな」

 

 親方は懐から葉巻を取り出し、火をつけた。

 

「まぁ・・・・結局は止めようとしても止められねぇがな。 ──死ぬんじゃねぇぞ、ハヤテ」

 

 親方の呟きは、朱く染められた空へと霧散した。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 ()()()が見つかる前にヴァール警報と同時にミラージュ・ファリーナ・ジーナスには帰艦命令が下った。

 彼女は《ケイオス》ラグナ第三戦闘航空団第一飛行隊司令部付Δ(デルタ)小隊に所属するパイロットだからだ。

 《マクロス・エリシオン》に戻ったミラージュは、発艦準備が整っていた愛機──白地に赤紫のカラーラインが入ったVFー31C《ジークフリード》を駆り、同じデルタ小隊のメンバーとともに《アル・シャハル》の空へと出撃した。

 白地に青緑と赤のカラーラインが入ったVFー31S《ジークフリード》を駆るデルタ小隊隊長──アラド・メルダース。

 白地に黒のカラーラインが入ったVFー31F《ジークフリード》を駆るデルタ小隊エース──メッサー・イーレフェルト。

 白地に黄のカラーラインが入ったVFー31E《ジークフリード》を駆るデルタ小隊の電子戦担当──チャック・マスタング。

 いずれも、パイロットとして一流以上の技量を備えた頼もしい戦友たちだ。

 4人は()()()()の準備が整うまで、市民の被害拡大を阻止するために直ぐ様散開して戦闘に突入した。

 シャハルシティが、本格的に戦場に変わるのにたいした時間はかからなかった。

 今回のヴァールシンドロームの主たる発生場所がゼントラーディ駐屯地であったためだ。

 シャハルシティの防衛力の大半がゼントラーディ兵であり、駐屯地は悪いことに街と隣接しているのだ。

 普段は頼もしい戦力であるが、ヴァール化してしまえば命を惜しまないタチの悪い強力なテロリストだ。

 しかも装備も整っているというダブルパンチ。

 状況は最悪である。

 

「くっ!!」

 

 VFー31C《ジークフリード》に弾丸の嵐が襲い掛かるも空と陸というアドバンテージよりも何より、圧倒的な性能の違いにより用意に回避は成功する。

 《ジークフリード》に銃弾を浴びせたのは、ゼントラーディ兵士が好んで使用する標準的なワンマン戦闘ポッド──《一〇四式リガード》の2機だ。

 《一〇四式リガード》は最新の量産型で上部にガンポッド2門、下部にビーム砲1門を備える標準型と、上部にマイクロミサイルポッドを装備した重兵装タイプがある。

ミラージュが相手取る《一〇四式リガード》は、どちらとも重兵装タイプである。

 ()()()()()()なら、()()()()()()()ならば1対2であっても《ジークフリード》とミラージュならば瞬時に方が着くだろう。

 だが──

 

「大人しくしなさいっ!!」

 

 ミラージュは苛立ちを露にしていた。

 否──焦りというべきか。

 ファイター(航空機)からバトロイド(人型)に変形し、()()()()()()するために脚部を照準しようとするが、もう一機の《リガード》が射線に入って邪魔をする。

 ならばと、両腕に収納しているアサルトナイフを引き抜き接近戦を試みるが、至近距離で誘爆の危険を全く考えずにミサイルを放ってくる相手に近付けなかった。

 《ジークフリード》の高出力エンジンが生み出したエネルギーから生成されたエネルギー防壁──ピンポイントバリアで防ぐ事は可能だが・・・・爆発によって生じた力は《リガード》に容赦なく降り注ぎ、中のパイロットは機体もろとも爆死するだろう。

 ビームガンポッドで射撃するか、隙をついてアサルトナイフで接近戦をするか、ミラージュが迷っていると──

 

『デルタ(フォウ)! チェック(シックス)!!』

 

 彼女の背後──6時方向──に《リガード》が回り込んでいた。

 それにいち早くそれに気がついたコードネーム──デルタ2(ツー)のメッサーが警告する。

 ミラージュが()()()()()()し、前腕部に装備されているレールマシンガンを敵に発砲──全弾命中。

 電磁誘導により加速された弾丸が《リガード》を蜂の巣へと変えた。

 

「──っ!!」

 

 彼女は動体視力が良いばかりに、穿たれた穴から部品と油──()()()()()が撒き散らされたことを鮮明に確認できてしまった。

 そして──《リガード》は力なく地に崩れ落ちて爆散した。

 普通の機体なら未だしも、《リガード》等のゼントラーディ兵が使用する戦闘ポッドには間ともな脱出機能はついていない。

 それが意味するのは──死。

 ミラージュは図らずも殺してしまった兵士に意識をとられ、正面の2機を完全に失念してしまった。

 ロックオン警報。

 《重装備リガード》2機のマイクロミサイルが全弾発射態勢。

 流石の《ジークフリード》とて、70発のマイクロミサイルを貰えばただではすまない。

 バトロイドからファイターに変形し、離脱しようとしたが──

 

「しまった!!」

 

 モニターには逃げ遅れた民間人たちが映った。

 離脱を諦めたミラージュは、盾となるべくそのまま左右腕部のピンポイントバリアにエネルギーを回し、最大出力で展開する。

 来るべき衝撃に備え、覚悟を決めるミラージュ。

 そんな時──

 

『何をやっているデルタ4!!』

 

 叱責と同時に、《重装備リガード》2機は天空より飛来した銃弾の矢が突き刺さり爆炎に包まれた。

 パイロットは勿論──即死だ。

「デルタ(ツー)!」

 

 ミラージュはメッサーの対応に不満を覚えた。

 あっさりとパイロットを見捨ててしまう選択は、おかしいのでは無いか、と。

 悔しいがパイロットとして自分より数段上の技量を持つメッサーならば、殺さずに無力化できたのではないか、と彼女は考えたからだ。

 彼女はメッサーに意見しようとするが、さらなるメッサーの叱責によりまともに口を開くことが出来なかった。

 

『撃つのを躊躇うからだ!!』

 

「で、ですがっ!」

 

『目的を履き違えるな! 彼らは()()だ! 俺たちは()()()を、()()()()()()を護ることが任務だ!! ()()()()が無いとは言わせないぞ、()()()()()()()!!』

 

「ぐっ!!」

 

 ミラージュはメッサーに反論する言葉を持たなかった。

 そう自分たちの、デルタ小隊の最大の任務はヴァールシンドロームに対する唯一の対抗手段であり、人々の希望である〈戦術音楽ユニットワルキューレ〉の護衛である。

 彼女たちを失えばヴァールによる被害は今の比では無いし、ヴァールシンドロームを罹患した者たちを解放するには、“殺すしか”手段が無くなるのだ。

(・・・・覚悟を持った軍人とはいえ、死んでいい訳がない。 しかもヴァール化しているだけ。 自らの意思に反して戦わされてるだけ。 彼らの犠牲は必要? いや──)

 

 小を殺して大を生かす。

 ミラージュが嫌な言葉であるが、現実(戦場)はフィクションのように全てを救うなんてことはそうそう出来るものではないのが当たり前だ。

 彼女もよく理解している。

(今は考えては駄目だ! ここで撃たなければ──悲劇が拡がり続ける! だから! 私のやるべき事は!!)

 

 ミラージュはきつくスロットルを握り混むと──

 

「うおぉぉぉぉっ!!」

 

 吼えた。

 自らの迷いを振り切るように、罪の意識に飲み込まれないないように。

 VFー31C《ジークフリード》は先ほどとはうって変わって好戦的になる。

 量産される《リガード》のスクラップの山。

 それはイコール屍の山。

 現実から目を背けないことが──彼女の出来る無慈悲な現実への精一杯の抵抗だった。

──女神はまだ来ない。

 

 

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