マクロスΔ~銀河を断つ斬艦刀~   作:自己満足です

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お久しぶりです。
まだ生きてました(笑)

32、6、3若干内容変更しました


ステージ07「それぞれの開幕」

──デルタと〈ワルキューレ〉の合同演習から遡ること9日前。

 

 

昨日、ノエルはハヤテと同日で、ラグナ第二戦闘航空団第二飛行隊イプシロン小隊よりデルタ小隊に転任していた。

ハヤテ・インメルマン、ノエル・マリファスを加えて6人体制となったデルタ小隊。

ハヤテは──デルタ6、ノエルは──デルタ5のコールナンバーを与えられた。

6人揃っての初の訓練が行われることになった。

戦闘フォーメーション、コンビネーション等の戦闘だけでなく、〈ワルキューレ〉のバックダンサーとしての航空ショーのためのアクロバット飛行、フォーメーション飛行を──ハヤテ抜きで──行った。

初の6人体制での訓練であったが、アラド・メルダースが予想しているよりも遥かに高いレベルにデルタ小隊はあった。

そのため、アラドは本日の訓練時間を大幅に減らし、急遽デルタ小隊員の懇親会を開くことにした。

場所は、美しい自然と海が見渡せるラグナの一級住宅街。

そこに建つメルダース宅でのホームパーティである。

趣味の良い広々としたウッドデッキに並べられた折り畳みのテーブルの上に、色とりどりの料理や酒が並べられている。

 

「マイワイフのお手製の料理の味はお墨付きだ。 バンバン食べて飲んでくれ。 それじゃあ、乾杯といこう。──乾杯!」

「「「「「乾杯」」」」」

 

ウッドデッキには固定の大きなテーブルが2つあり、先ずは男性陣と女性陣が別れて座った。

 

「ハヤテ、行ける口か?」

 

アラドはビール瓶を持って軽く振る。

 

「常人以上には」

 

ハヤテはコップを持って答えた。

 

「良い返事だ」

 

アラドはニヤリと笑うと、ビールをハヤテのジョッキに注いだ。

続いてハヤテがアラドのジョッキにビールを注いだ。

二人は満タンになったジョッキを軽く当て合い──

 

「「乾杯」」

 

一気に飲み干した。

 

「くうぅぅぅ!! やっぱ仕事の後の一杯は格別だよな!」

「同意します」

「くっくくく、ほんと今日は愉快な日だ」

 

アラドの機嫌は非常に良かった。

デルタ小隊に強力な増員が果たせたのだ。

イプシロン小隊で飛んでいたノエルの技量が高いのは知っていたが、想像以上のセンスを持っていた。

荒削りなところもあるが、デルタでさらに鍛えれば伸びるのは間違いないだろう。

ノエル以上の掘り出し物がハヤテだ。

操縦の正確さに加え、何よりも天性の感──本能──と経験──理詰め──による攻めの上手さ。

記憶を失おうとも、経験は、身体は忘れていない。

アラドはハヤテを素人だとは微塵も思っていなかった。

 

「アラド隊長。 1つ疑問があるのですが、聞いてもよろしいでしょうか?」

「どうした?」

「何故俺をデルタに勧誘したのですか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは、榊博士から説明を受けて存じています。 しかし、それでも()()()()の男を引き入れ、なおかつ機密の塊である《ジークフリード》のパイロットを任せるのはどう考えてもリスクが高すぎるのでは」

「勘だ」

 

アラドは真顔で即答した。

 

「お前さんは身元不明だ。それだけなら未だしも、とても一般人とは言い切れない高い戦闘技能、操縦技能を持っている。 それらから考えれば・・・・ひょっとしたらどこぞの企業のスパイ、或いはテロリストでもおかしくないだろうな。 だが、俺はハヤテ・インメルマンという()を見て判断した。 お前さんは不義理な行いをできるような器用さ──」

 

アラドは言い直すと、苦笑した。

 

「いや、()()()()()()()()()()()()しか持っていないのさ。 長年、様々な者たちを見てきたからな。 自信はあるぞ」

「俺としても異論はありません。 器用には生きられないと思います」

「ハハハハ! そう切り返すか! やっぱ俺の見込みは当たっていたな!」

 

アラドはさらに上機嫌となってぐいぐいビールを空にしていく。

現代科学はタブレット1つで、体内アルコールを数分で完全分解が可能となっている。

それにより、パイロットたちは何時でも名一杯酒を呑むことが出来るようになり、デルタ小隊員全員が参加する酒の席が用意できるのであるが。

ハヤテたちは仕事の話は打ち切り、何気無い会話と酒と料理を楽しむ。

そんな中──女性陣のテーブルでは、何故かミラージュ・ファリーナ・ジーナスが暗い顔をしていた。

 

「・・・・なんでこんなに美味しいですか」

 

テーブルに並べられている料理の1部はハヤテが作っていた。

ミラージュも人並みに料理は作れる。

けれども腕は普通であり、作った料理で特別な感動を与えさせることは無い。

 

「ポテトサラダみたいな単純な料理って、腕の差がモロに出るって言うけど確かにそうみたい! こんなにポテトサラダって美味しいんだ!」

 

箸を止めずに食べ続けるノエル。

惚れ惚れするような動作とキレイな形で箸を持っているにも関わらず、時々ポロっとポテトを溢すのは、さすがは残念系美少女というところだろうか。

 

「ミートパスタも美味しいわ」

 

ミラージュとノエルが女子寮を出る時に、〈ワルキューレ〉リーダーのカナメ・バッカニアが偶然居たため、彼女もホームパーティーに誘われた。

特に用事もなかったので、彼女もホームパーティーに参加することになった。

 

「・・・・やっぱりソースに拘っているのかしら? 今度ハヤテくんに聞いてみようかな」

 

〈ワルキューレ〉だけでなく、《ケイオス》で最も女子力の高いと言われているカナメをも唸らせる1品だった。

 

「ホントにそうね。 でも、ハヤテくんのお嫁さんになる人は大変よ。 奧さんはダンナ様ばかりに料理をさせられないものね」

 

今回のホームパーティで大量の料理のその8割を1人で用意したアラドの妻──マリー・メルダースがにこやかに笑った。

子を持つ母とは思えないほどに若々しく、実年齢より確実に若くしか見られないスタイル抜群の金髪美女である。

《ケイオス》の医療スタッフでもあり、家庭と仕事を両立しているキャリアウーマンでもある。

 

「マリーさんの料理もハヤテさんに負けてないと思いますよ! すっごく美味しいです!」

「ふふふ。 ありがとう、ノエルちゃん」

「そうだよ! ママのりょうりがいちばん!!」

 

アラドとマリーの1人娘である──アイナ・メルダースがハヤテを睨み付けながら言った。

 

「あんなめつきのわるいオジサンに、ママはまけてないよ!」

 

6歳のアイナからすれば、20歳(推定)のハヤテは十分にオジサンになるだろう。

しかし、彼女は幼いが故に気づいていない。

アラドやマリーはハヤテより10歳は歳上であるという事に。

カナメの方が年上である事に。

 

「オジサンのは・・・・まあまあだったし!」

 

そう言う割には、彼女が4回に渡り更にパスタを自らの皿に盛り、ソースが口回りにベットリとなるまで食べていたのだが。

「そうね。 アイナちゃんのママの料理が1番ね」

 

カナメは優しい顔で、アイナの頭を撫でた。

その際、さりげなく彼女の口回りをナプキンで拭き取りも行った。

 

「さすがはカナメおねえちゃん! 〈ワルキューレ〉はやっぱりちがうね!」

 

アイナの矛盾をわざわざ正すような大人気ない者はこの場にはいない。

ホームパーティは終始、和やかに時間が過ぎていった。

 

この時までは──

 

「そう言えば、隊長の家にはカラオケがありましたよね? ここは1発、新人の歌声でも披露してもらいますか。 我らの守護する()()()()()たちに敬意を払うという事で」

 

ほろ酔いとなったチャック・マスタングが提案した。

 

「良いですよ! 歌はそれなりに歌えますから!」

 

ノエルは自信ありとその表情から伺えた。

天性の優れたリズム感覚を持つ彼女は、ダンスや歌は特技の1つである。

その実力は〈ワルキューレ〉メンバーをも唸らせるものであり、特にダンスは〈ワルキューレ〉よりも上手いとも言われる実力を持つ。

 

「異論はない」

 

ハヤテも()()()()()()()()()()()()に頷いた。

それを見たアラドは、アルコールが回った状態だが違和感を覚えた。

 

──とてつもないミスを犯した。

 

どんな高性能レーダーよりも、時に自らに危機を告げてくれた最も信頼する危険察知機能──勘──が先ほどから凄まじい警告音を上げている。

これを疑わなかった者たちだけが、わずかなミスと不運により命を散らさずに戦場で戦い続けられる()()()()()()()()に成れるのだ。

今のアラドは、結構な量の飲酒により勘と知性を鈍らせていた。

「それじゃあ、最初はハヤテさんに譲りますね」

「分かった」

 

ハヤテが選曲し、マイクを持った瞬間──アラドは雷鳴に打たれたかのように思考がクリアになった。

 

「待ってハヤ──」

「#*※@*&#※@*&#♪♪♪」

 

魔性の歌(?)が始まった。

きちんと言葉を発しているはずなのに、まるで聞き取れない。

それほどまでに壊滅的で、破滅的で、致命的な音のズレによる衝撃。

尋常離れしている肺活量も相まって声量が大きくて、原曲の音も耳に入らない。

だからハヤテが歌っているのが、〈ワルキューレ〉の持ち歌の1つ『いけないボーダーライン』だと気がつける者は、実際に歌っている〈ワルキューレ〉リーダーのカナメでさえ気が付けないのだから、誰も分からないだろう。

 

「「「「「──────!?!?!!!??」」」」」

 

茫然自失となり、下手をすれば気絶している者もいる。

そんな中でもハヤテだけがわずかに口元を緩め、気持ち良さそうに歌っていた。

そう──ハヤテ・インメルマンは音痴であった。

それも本人が全く自覚症状が無い、という絶望的なものだった。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

──デルタと〈ワルキューレ〉の合同演習から遡ること8日前。

 

 

いよいよ()()()()の〈ワルキューレ〉新人メンバーオーディションが《マクロス・エリシオン》内の《ケイオス》ラグナ支部で開催された。

書類審査の1次選考と、身体検査の2次選考を潜り抜けた29名及び()()()()()()()()で、最終オーディションが行われることになった。

 

「約10000人の希望者から絞られ、最終選考で29人。 その中でもフォールドレセプターの規定値に達しているのは0。 届きそうな者は5人ほど、か」

 

《マクロス・エリシオン》CDC(統合司令室)にて、アラドはオーディションに参加している少女たちのデータを見ながらぼやいていた。

 

「豊作ですよ。 まったく候補者がいない時もザラでしたし」

 

カナメは苦笑した。

 

「ところで、見せたいものってのは?」

「こちらです」

カナメがノート型端末を操作すると、モニターに()()()()()が映し出された。

 

「頭で光ってるのは・・・・()()、だな。 そうなると、ウィンダミア人ということか。 この子に、規定値の反応が?」

「はい。 それも異様に高い数値です。 瞬間的ではありますが、美雲に届きそうな時もありました。 さらに驚くべきは、美雲の数値も彼女の歌が聞こえだして上昇した事です」

「ほぉ・・・・()()()()()()()()()()は、何か持ってるということか」

 

1次及び2次選考を通過していないにも関わらず、最終選考からの参加を許可された特別な1人──その顔に()()()()アラドは見覚えがあった。

 

「フレイヤ・ヴィオン・・・・なるほどな、あの肝っ玉の据わった子だったか」

 

アラドはニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ワルキューレ〉新人メンバーオーディションが佳境に入った頃、《マクロス・エリシオン》を構成している艦の1つにして、左腕に相当するデルタ小隊の母艦である空母《アイテール》内の格納庫ではハヤテとミラージュが近接対人戦闘を行っていた。

ハヤテとミラージュはそれぞれ刃引きされた模擬ナイフを持っていた。

それで、かれこれ10分ほどやりあっていた。

「・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

しかしながらハヤテは何語もなかったように“汗1つかくことなく”平常を保ち、対称的にミラージュはとてつもない運動量を物語るように息を荒くしていた。

「こりぁ・・・・」

「あー、何と言うか・・・・」

「う~ん・・・・」

 

パイロットの名家として知られているジーナス家。

その本家の者であるミラージュの腕は、家名に恥じない事を休憩時間に野次馬として集まっている整備員たちは知っていた。

メッサーやアラドと言ったデルタ小隊の超一流(規格外)パイロットの影に隠れてはいても、一般パイロットとは比較にならないテクニックを持つ事をパイロット以外で最も知るのが整備員たちだ。

ミラージュは教科書通り、マニュアル通りの動きと酷評される事もあるが、先人たちが構築し研鑽してきた優れた技術──マニュアルを完璧に習得出来ているというのは並みの才能では不可能な事でもある。

超一流とまではいかないが、マニュアルを習得しているという事はパイロットとして一流であると言える。

それは同時に、操縦に不可欠な反射神経、判断力、筋力等の身体能力が高いという事だ。

その身体能力と戦闘技能の腕をかわれて、パイロット以外にも〈ワルキューレ〉の護衛を務めるミラージュが弱い訳が無い。

そのミラージュをして、まるで子供と大人のケンカのように簡単にあしらっているハヤテが強すぎるだけだ。

 

「言ったはずだぞ、ミラージュ・ファリーナ・ジーナス」

 

ハヤテは静かに告げた。

 

「君は攻撃時に()()()()()いる。 故に、折角の鋭さが、正確さが鈍る」

「くっ・・・・うるさい!!」

 

ミラージュ本人も自覚しているのだろう。

まともな言葉を返せない。

彼女は激昂とともに右手で刃を振るうが、それをハヤテは簡単に模擬ナイフで払った。

「戦闘時に雑念は隙を呼ぶ。 コントロールされていない激情もまた」

「しまっ──」

 

体勢を崩したミラージュの左腕を掴む。

それと同時に理想的なまでの見事な足払いを決め、さらに彼女の勢いを利用して──投げた。

彼女はコマのように空中で回転し、その勢いとは裏腹に静かに甲板上に仰向けに転がされた。

おまけとばかりに捕られた右手は極められ、自らの模擬ナイフが首筋に突き付けられる始末。

「・・・・降参、です・・・・」

 

悔しそうなミラージュの敗北宣言。

 

「「「「おおぉぉっ」」」」

 

あまりにも鮮やかな空気投げを魅せられた整備員たちは、静かに喝采を上げた。

勝負が一段落した頃合いを見て、ガタイの良いちょび髭の中年──ガイ・ギルグッドが声をかけた。

 

「ハヤテ! お前さん上からお呼びがかかってるぜ! CDCに来いってよ!」

 

ガイは《マクロス・エリシオン》整備員のリーダーだ。

階級は技術少佐。

()()と呼ばれて整備員から慕われ、またその腕とおおらかな性格から上下関係なく信頼される人物だ。

「承知」

 

ハヤテはミラージュに手を差し伸べた。

ミラージュは苦々しい顔をしながらも、それを拒絶することなく握って立ち上がった。

 

「ありがとう。 良い修練になった。 また頼む」

「ありがとうございました。 ・・・・いいですよ。 次こそは借を返させてもらいますから」

 

ハヤテに対してあまり良い感情を抱いていないミラージュだが、それでもきっちり礼儀を通すのは生真面目な彼女らしい。

「模擬刀、貸して下さい。 戻しておきます」

「感謝する」

 

ハヤテは一礼して去っていった。

それを合図にしたかのように、整備員たちはそれぞれの仕事に戻っていった。

この場にはミラージュの他に、整備員たちと一緒に見学していたマキナ・中島とレイナ・プラウラーの仲良しコンビが残っていた。

「ねぇ、ミラミラ。 ()()()()した?」

マキナが顔を少し赤く染めて聞いた。

ちなみに、マキナは人とはひと味違った愛称をつけることでも知られている。

 

「・・・・質問の意図がわからないのですが?」

 

ミラージュは本当に心当たりが無さそうだ。

 

「ふふふ、ホントに~? ハヤハヤにバッチリ()()()()()()()じゃない♪ 顔1個分の至近距離! 抱き合い、お互いの吐息がふれあうキスの間合い! まさに!!」

 

マキナがレイナを抱きしめ、二人は顔を寄せ合う。

 

「いけないボーダーライン・・・・」

 

レイナは無表情ながら、わざとらしくモジモジとして言った。

 

「な、ななななな、な、何を言っているんですか!!?」

 

耳の先まで真っ赤にしたミラージュが、分かりやすすぎる動揺を見せた。

 

「くっ、訓練です!! 何もやましい事はありません!! 何も感じてはいません!! それに抱き合ってはいません! そんな事を考えているお二人の方がイヤらしいじゃないですか!!」

「えぇ~~? ミラミラも満更じゃなかったように見えたけどなぁ~~?」

「ミラージュ、ムッツリ・・・・」

「だ、誰がムッツリですか!!?」

 

三人がガールズトークで楽しんだり、からかわれる事──数分。

マキナとレイナに、〈ワルキューレ〉リーダーのカナメから連絡が入った。

 

『3人とも協力して・・・・()()()()()()()()()()()に』

「りょ~かい! 行こう、レイレイ! ミラミラ!」

「うん・・・・!」

「了解です!」

 

この3時間後──見事に最終試験を乗り越え、フレイヤ・ヴィオンが〈ワルキューレ〉の5人目として加入した。

 

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