高嶺の花と   作:haze

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元々アイドルマスターについては全く知りませんでしたが、友人がVRを持つ私の家にわざわざアイマスVRをするために転がり込んだのを機に知りました。

さて、その中で、あ、このキャラクター書いてみたいなぁと思ったので勢いに任せて筆を握った次第です。もう一つの作品の改訂を進めつつこちらはゆっくりと進めていこうと思います。


相席

 今日の作業がようやく終わった。パソコンを閉じて電源を切って立ち上がる。座っての作業で凝り固まった体をほぐしていく。

 事務室の窓から外を眺めると桜の木が鮮やかだった花びらが散って、新緑の新たな芽を覗かせている。

 大学卒業後にどうにか就活を成功させて今は都内にある博物館で学芸員として勤務している。ここで働くようになってもう五年ほどでそれなりに使える人材になったと思う。

 とはいえ、毎日毎日が史料の調書作成では仕事に対する熱意もとうに薄まってしまった。日々の仕事をこなしては家に帰り酒を煽る。そんな日々ばかり過ごすようになったのは一体いつからだろう。

 柄にもなくそんなことをつらつらと考えながら帰り支度を済ませる。

 

 「そんじゃ、お先に失礼します」

 

 片付けを始めだした同僚に声を掛けて事務室から出る。帰る前に警備員さんが見回ってくれたとはいえ、閉館後の館内を誘導経路に沿って歩く。

 ここに就職する前に初めてこの博物館を訪れた時はさぞかし変人に見えただろう。展示物を見ずに展示ケースや照明、通気孔の位置をガラスフィルムの使用箇所、展示品の固定方法ばかり見ていたものだ。

ここに面接に来た時も館長にその様子を見られていたらしく覚えていたよと言われた。

 

 そんな気力に満ち溢れていた過去を振り返りつつ歩いていると出口に到着する。そして、最後に展示室の照明を落として外へと出る。

 

 

 

 

 

 外へ出るとまだまだ冷たい風が吹き付けてくる。上着の襟を寄せつつ今晩の飯をどうしようかと考える。最近は余り外食をしていないので久しぶりに学生の頃からの行き付けだった居酒屋へ行こうかと思い道を歩き始める。久しぶりに少しは良いものを食べようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 繁華街から少し離れて横路に入ると一見民家に見えるが幟の出ている店が見えてくる。

横開きの扉を開けて、久しぶりに中へ入る。厨房で支度をしている店主が顔を上げて俺を迎え入れる。

 

 「いらっしゃい。お、久しぶりだな。どうだ?仕事の方は?」

 

 髭達磨でまるで山賊といった風貌の店主が相貌を崩しながら話しかけてくる。

 

 「お久しぶりです。もう仕事には慣れましたよ。」

 

 久しぶりに会った店主は、俺が学生の頃から相変わらずのようで温かく迎え入れてくれた。

 とはいえ、どうやらカウンターはくたびれたサラリーマンで埋まっているようだ。まぁ、他の人から見ると俺もそう大差無いように見えるだろう。

 

 「すまねぇな。カウンターは全部埋まっちまってるんだ。そこのテーブルのほうでいいから座ってくれ。久しぶりにお前さんの話を聞きたいからな」

 

 「いやいや、一人でテーブルとか邪魔になるじゃないですか。俺ならまた今度来ますよ」

 

 そう言って店主は二人用のテーブル席を顎で指す。店内はそこ以外が埋まっており居酒屋特有の騒がしさが包んでいる。

 

 「バカ野郎。お前さんの前にそう言って今日までなかなかこなかったじゃねぇか。いいから、座んな。あとこれは久しぶりに来てくれた礼だ。ごちゃごちゃ言わずに受け取んな」

 

 そう言って厨房から出てきた店主が右手で俺の背中をバンバンと叩いきながら俺を無理やり座らせる。左手には盆を持ってビールと枝豆が載せられている。大柄な店主が持つとおままごとのおもちゃのようだ。

 

 俺は店主の好意を有り難く受け取ってジョッキを握る。

 

 「んじゃ、店長有り難くいただきます」

 

 厨房に戻った店主に向かってジョッキを掲げてから一気に煽る。店主は次の料理を作りつつこちらをちらと見て笑う。

 今日もどうやらこの店は繁盛しているようだ。ジョッキを机に起き店内を見渡す。どこの席も埋まってそれぞれの客がそれぞれ今日の疲れを癒している。俺は余り騒がしいのが好きではないがこういった居酒屋の騒がしさは嫌いじゃない。

 

 

 ビールを煽りつつ、店長の手が空くのを見計らってつまみを何品か注文する。いつも部屋で飲む酒よりも数段旨い。

 

 そんなこんなでつまみを堪能していると入り口の扉が開いて一人の客が入店してきた。キャップとマスクをつけているが、キャップから覗く綺麗な髪と左目の下にある泣きぼくろだけでも美人であることが伺える。

 

 「おーい、どうした?聞いてるか?」

 

 ふと新たに入店してきた女性を見ていたら目の前に髭達磨が映る。んぎゃー!妖怪髭達磨!

 

 「お、おうよ!なんや?」

 驚きすぎて口調がめちゃくちゃになってしまった。いやいや、突然の髭達磨ドアップはきつい。

 そうしていると店主が申し訳なさそうに俺に言う。

 

 「すまねぇが、お前の所しか席が空いてねぇんだわ。相席頼めるか?」

 

 ふと、もう一度ぐるりと回りを見渡す。他の客は、各々の料理を堪能しつつアルコールを胃に流し込んでいるが、未だにどこも席が埋まっている。

 

 「相手さんがよろしければこっちはいいですよ」

 

 そう伝えると店主はありがとよ、と呟きニッと笑うと女性の方に歩いていく。そこで幾つか言葉を交わした後、店主に案内されて女性がこちらへ歩いてくる。

 俺の目の前まで来た女性は、俺に向かってふわりと微笑みながら

 

 「相席失礼します」

 

 と言った。目元しか見えないが俺は少し見とれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに楽しく酒を呑んだ気がする。俺はビールを片手に軟骨揚げをつまみ、彼女は日本酒のお供に銀杏をつまんでいた。

 日本酒が届くとすぐさま彼女は日本酒を飲むためにマスクを外した。そこで初めてまじまじと彼女の顔を見ていたら、

 

 「あら、食事時に帽子は失礼ですね」

 

 といい帽子も外した。そんな彼女は、こんな髭達磨が店主の居酒屋には似つかわしくないほど綺麗な人である。とはいえ、あまり他人の顔をじろじろと見るのも失礼なので誤魔化すようにジョッキを煽り店主におかわりを頼む。

 

 しかし、彼女の顔を俺は何処かで見たことがあるような気がする。はて、何処かで会っただろうか?しかし、こんな美人と会って忘れるほど俺の脳は退化していない。思い違いだろうか。というかこんな美人と同席するならもう少し回りに気を遣った格好をすればよかった。そう思い中途半端に剃った髭を手で撫でながら皺の寄ったスーツを見る。とはいえ、今さらどうしようもないので潔く諦めるしかない。

 そう思い顔を上げると彼女はお猪口を両手で持ちくいっと煽っていた。細い喉がコクン動きふぅと息を吐くのが見える。そんな様子を見ていると不意に彼女と目があった。そして、照れ臭そうに

 

 「私日本酒が大好きなんです。ここのお店のお酒は私の口にぴったりです。貴方はビールがお好きなのですか」

 

 と微笑みながら言う。

 

 

 そこから、気がつけば彼女とは店の閉店時間まで呑み続けていた。いつの間にか饒舌になり俺は仕事の愚痴まで彼女に話していた。そんな俺の話を彼女は楽しそうに、時折小さく笑う。彼女は聞き上手なようで普段はあまり話さない俺の口から次から次へと言葉が零れる。

 閉店時間になり店主に声を掛けられて初めて時間に気が付くくらいには二人とも楽しんでいた。

 会計を済ませて店を出る。恐らく彼女と再び会うことは無いだろう。まぁ、この店でもしかしたらまた会うかもしれないが。

 繁華街も店の明かりがまばらになり、タクシーを拾える道まで、彼女を見送る。

 道路脇でタクシーに向かって手を挙げて停め、彼女を送る。タクシーに乗り込み窓を開けた彼女は俺に向かって礼を言ってくる。

 「今日はありがとうございました。初めて居酒屋でお酒を呑みましたがとても楽しめました。貴方のお陰です。それでは、また何処かでお会いしましたら一緒に呑みましょう」

 

 社交辞令ってことくらい分かるが美人な彼女に言われてしまうとアルコールで緩んだ思考だとくらっとどころかグラグラと思考が緩む。

 とはいえ、彼女との相瀬は偶然の産物である。この辺りでさらっと別れておくほうがいいだろう。

 

 「こちらこそ楽しかったです。では、また何処かで」

 

 そう言って俺はタクシーの運転手に目配せをして出してもらう。

 走り去るタクシーの後部座席から後ろを振り向き手を振る彼女が見えたのでこちらも手を振り替えした。

 

 さて、明日からも仕事である。

 

 

 

 

 

 

 

 帰宅後に久しぶりにつけたテレビをふと見ると先ほど別れた彼女が映っていた。驚きのあまりテレビに釘付けになってしまった。今巷を席巻する大人気アイドルらしい。そんな彼女と俺は今日相席していたようだ。

 こりゃ、密かにまた会いたいと思ってても会うのは難しいよな。1日ではあったがいい夢を見させてもらったものだ。

 

 俺は、そう思いテレビを消して明日の準備をするのだった。

 

 




 さて、タグの時点でヒロインが誰かはお判りかと思います。今のところ登場人物とヒロイン共に名前がまだ出ていませんが…
まぁ、相席しただけじゃ自己紹介なんてしないよね普通ということで
アイマスについて詳しいとは言えませんが、アニメもあったみたいなのでネタ探しとキャラクター構成のために一回くらいは見ておこうと思います。




 
 ビールを主人公が煽るシーンを書いていたら自分も飲みたくなりストックしておいたベルギーのチェリービールを開けてしまいました。最近は国外のビールにはまっている作者です。
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