新規作品って投稿に勇気がいりますねと個人的に思ってます。
さてアイドルマスターは登場人物が多いですね。こんなに多いなんて知らなかったわい
「では、改めましてご挨拶させていただきます。私、高垣楓と申します。今日はよろしくお願い致します。どうぞ楓とお呼びください」
「こちらこそよろしくお願い致します。本日案内を務めさせていただきます当館学芸員をしております小暮航と申します」
初めて会ったのは居酒屋で殆ど相手のことを知らなかったので割と気軽に接することが出来ていたがいざ相手が今を時めく人気アイドルだと分かってしまうと緊張してしまう。俺は知らず知らずのうちに触れていたスーツの襟を正した。
「小暮航さんと言うのですね。以前お会いした際はお互い自己紹介をしなかったのでなんだか改めて自己紹介すると気恥ずかしいものがありますね」
そう高垣さんは言い微笑む。
「そうですね。まさか再びお会いすることになるとは思ってもいませんでした。高垣さんが明後日の取材で来られるレポーターの方なんですね」
「そうなんです。レポーターのお仕事はとても久しぶりになるので緊張しちゃって。今回のお仕事も出来るだけ皆さんのお力になれるようにプロデューサーにお願いして来ちゃいました」
そういいながら照れくさそうにはにかむ。間近で見るアイドルとは、ここまで可愛いものなのだろうか。こうやって軽く話しているだけで微笑ましい気持ちになる。とはいえ何時までもここで話し込む訳にもいかない。これは仕事だ。自分にはするべきことがあるのを忘れてはいけない。
「高垣さんは、とても仕事熱心なのですね。では、そろそろ企画展示室のほうに向かいましょうか」
そういって彼女をエスコートした。そろそろ他の来館者たちも彼女が誰であるのか感づいてしまうかもしれない。ここに来る人があまり騒がしい事をするとは思えないがそうなった時の事を考え場所を移動しておいたほうがいいだろう。何かあれば館としても迷惑になるし、高垣さんにも迷惑を掛けることになるだろう。
さて、企画展示室は普段開放している常設展示室の隣にある。俺は腰に付けたキーケースから企画展示室の鍵を取り出す。
「ここが今回私が取材する場所ですか?大きな扉ですね」
俺の隣に立ち扉が開くのを待っている彼女がそう言う。彼女が言う通り展示室の扉は大きい。横四メートル縦三・五メートルという大きさだ。俺は扉を開けながら彼女の疑問に答える。
「そうですね。ここは色んな展示をしますから。展示物が屏風だったり襖絵だったりすると大型のものも多いのでそういったものでも安全に搬入できるようにこんな大きさなんです。さて、どうぞ」
扉の片方だけを開けて彼女を中に招き入れる。
「それじゃあ、失礼しますね。あら、とても綺麗な屏風ですね」
彼女は、入るや否や感嘆の声を上げる。彼女の目線の先には、今回の企画展示の目玉である国宝の屏風が展示されている。彼女はそのまま展示室をまっすぐに歩いて間近で鑑賞する。彼女の鑑賞している屏風は、国宝に指定されてから初めての外部への展示となる。恐らく関係者以外で見るのは彼女が初めてだろう。俺は、彼女が見入っている姿を後ろで静かに見守る。時折、作品と俺とゴリちゃんが騒ぎながら作ったキャプションとの間を交互に見つつ鑑賞している。
「これは
そういって後ろに控えていた俺に声を掛ける。彼女の後姿に見とれていた俺は、そうです、とどうにか答える。危うく展示物を鑑賞する彼女に見とれて反応が遅れてしまうところだった。
その後は、予め設定しておいた誘導順路に沿って彼女を案内する。展示物を見ては立ち止まり、またゆっくりと歩きだす。
「あの、小暮さん。本日はありがとうございます」
順路を歩きながら彼女はふと俺に向かった呟く。
「いえ、私としても非常に有意義な時間を過ごせているのでむしろ有難いくらいです」
本当ならば今日もむさ苦しいゴリラの隣で手伝いだったがそれがこんなに楽しい時間になっているのでむしろ感謝したいくらいだ。それにこうして気遣いをしてくれる高垣さんマジ女神。
「本当は、ここには取材日以外で来る予定はなかったんです」
「そうなのですか?」
再び歩き出した彼女がそう呟く。二人しかいない展示室には彼女の透き通った綺麗な声が響く。
「ええ、でも以前あの居酒屋で小暮さんにお会いして博物館のお話を聞いてから興味を持ちまして、この仕事が入った時にプロデューサーにお願いしたんです」
まさかそのような事だったとは思ってもみなかった。あの時の俺good job!!
「そうでしたか。実際に来られていかがですか?」
「そうですね。こういった静かな場所でゆっくりと鑑賞できるのはいいですね。それに小暮さんにもまたお会いできましたし」
そういってクルリと身を翻して彼女は笑顔で言う。
さて、特別展示室の案内も終わり、彼女は次の仕事があるらしく帰らなくてはならないそうだ。
「本日はありがとうございました。時間があれば常設展示室にも足を運びたかったのですが申し訳ないです」
「いえいえ、こちらこそお忙しい中わざわざこちらまでご足労頂きましたこと感謝しております」
互いに社会人らしくお礼を言う。その後彼女は後日お世話になる他の職員にも挨拶をしておきたいというので事務室に案内する。こういった彼女の小さな心配りが彼女を人気アイドルへ押し上げた一因なのだろうと思う。
さて、事務室についた彼女は、ほかの職員に取材協力に対するお礼を述べていたが、ゴリラを中心とした男性職員はまさかここに来るとは思っておらず狂喜乱舞の様子で発狂していた。煩いゴリラには鉄拳制裁をおみまいしておいた。因みに彼女のファンだという館長は、事務員に手を回したゴリラの復讐であと一週間は出張である。仕事を増やされた社畜の恨みは大きい。
……というかゴリラってこの時間は外回りでいないんじゃなかったのか?話し合いが必要のようだ。
騒がしくなった事務室内を放置し俺は彼女を見送ることにする。
「皆さんとても楽しい方々ですね」
「すいません。うちの同僚がいつもはそれなりに静かな奴らなんです。高垣さんみたいなお綺麗な方が来られて舞い上がってるんです」
「あら?そういう割には小暮さんは普通ですね」
そういって高垣さんは、悪戯気な笑みを浮かべて一歩俺に近づく。近い近い!なんかいい香りがするし!上目遣いは反則です!
「それは…まぁ、何と言いますか。ほら、私の強靭なる精神力で抑えていると言いますか。なんというか」
「ふふっ、そうだったんですか。以前お会いした時とは全然様子が違いましたので」
「それは、まぁ、あの時はプライベートですし、今はお互い仕事ですからね。けじめってやつです。それより、お帰りは如何されますか?」
ごまかす様に話を逸らして急場をしのぐ。俺の問いに彼女は思案顔になり
「そうですね。プロデューサーにお願いするのも今の時間ですと他の子の面倒を見ているでしょうから迷惑を掛けますし、電車で事務所まで帰ろうかと思います」
「いやいやいや!あなたのような人気アイドルが突然駅に現れたらパニックになりますよ!」
「そうかしら?」
「そうです。もしよろしければ、こちらでお送りしましょうか?」
「あら?よろしいのですか?」
「はい。高垣さんさえよろしいのなら」
「それじゃあよろしくお願いしますね。小暮さん」
「承知しました」
どのみち、この後仕事で出かける用事があったのだ。その道中に彼女と一緒に居られるとなるならそちらを選ぶに決まっている。
「では、職員出口にご案内致します。車を回してきますので少々お待ちください」
「はい。分かりました。待ってますね」
俺は今、高垣さんと一緒に車に乗っている。博物館の社用車の後部座席には仕事道具を放り込み運転席に座る。助手席には高垣さんを乗せていざ行かん。
「あの小暮さん少しよろしいでしょうか?」
「何でしょうか?」
俺は、前から目をそらさずに答える。視界の隅に高垣さんがこちらを見ているのが分かった。
「あれからあの居酒屋には行かれてるんですか」
「そうですね。たまに飲みに行きますよ」
「まぁそれは羨ましいです。もしよろしければまたご一緒していただけませんか?」
ここでまさかのお誘いである。心の動揺が運転に出ないようにどうにかこらえる。
「あの?駄目でしょうか?」
俺が動揺を抑えるのに手間取っていると彼女は俺が嫌がっていると勘違いしたようだ。俺は慌てて返事をする。
「いえいえ、私も以前のあの居酒屋ではとても楽しかったですし、こちらからお願いしたいくらいですよ。しかし、いいのですか?」
「なにがです?」
そういって彼女は不思議そうに小首を傾げる。
「その今を時めくアイドルが私のような一般人を居酒屋であってたりしてもです」
「あら、そんなことですか。もう、アイドルにだってプライベートはあるんですから大丈夫ですよ」
そういって彼女はぷくっと頬を膨らませる。その様子があまりにも可愛らしかったのでつい笑ってしまった。
「あら?どうしてそこで笑うんですか?」
「すみません。ははっ、あまりに高垣さんの仕草が可愛らしかったものでつい」
そういうと彼女はぷいっと反対側を向く。
「もう仕方ないですね。それと小暮さん。自己紹介の時の事は覚えていますか?」
「なんです?」
「どうぞ楓とお呼びくださいと言いましたのに、高垣さんとしかおっしゃらないのですね」
「ほら、それはその仕事中ですし、いきなり名前呼びはその気恥ずかしいと言いますか」
そう答えると彼女は、噴き出して笑う。
「ふふっ、あははっ、小暮さんってとても純粋な方なんですね。見た目は怖い人かとおもったらお優しいですし」
そういって彼女は笑いすぎて目じりに溜まった涙を拭う。案外笑い上戸なのかもしれない。
そうこうしているうちに彼女の事務所の前に到着した。事務所前に車を停めて、助手席のドアを開けてエスコートする。車から出た彼女はこちらに向かって一度礼をする。
「それでは、本日はありがとうございました。小暮さんには今日はずっとお世話になってましたね」
「いえ、こちらこそ楽しい時間をありがとうございます」
そういって彼女を見送る。事務所に向かう前に彼女はもう一度お辞儀をして帰っていった。
それを見届けた後、俺は本来の仕事を片づける為に車に乗り込みアクセルを踏み込んだ。
この作品は、基本的に大人っぽい落ち着いた雰囲気で進めていきたいと思います。
仕事をしつつプライベートを充実させるというのは案外難しいものです。
さて、作中に登場する国宝ですが有名なものなので知ってる人は知ってるかと思います。
二人の関係についてはこれからゆっくりと進めていこうと思います。
もし、よろしければご感想のほうよろしくお願い致します。