高嶺の花と   作:haze

7 / 12
明日はおそらく執筆時間が取れないだろうと思うので投下じゃ

今日はいつもより冷え込みましたね。外を歩いていたら息が白くなってました。


出会いと朝

 陽気な小暮さんに手を引かれて歩く。一緒に飲もうという提案を受けた私の手を小暮さんは流れるような動作で優しく握りました。

 

 「ごめんね。飲まずに待とうと思ってたんだけど」

 

 「いえ、こちらこそ。待ち合わせ時間に行けなくてごめんなさい」

 

 「いやいや、気にしてないよ。それに今こうして会えてるしね」

 

 そう言って小暮さんは、少し赤みの差した顔でにこりと笑う。

 

 「それより、酒買いに行こうか。この時間じゃ酒屋も閉まってるから24時間スーパーかコンビニくらいしかないけどいいかい?」

 

 「ええ。大丈夫ですよ」

 

 お仕事をされている時の小暮さんと違ってオフの時の小暮さんは表情も言葉遣いも違っていて親しみやすい雰囲気になります。

 

 「ふふっ、お仕事をされている時の小暮さんとは全然違いますね」

 

 そう言うと小暮さんは頭を掻きながら

 

 「やっぱり違いますか?まぁ仕事柄貴重な文化財を扱うから生半可な態度でやってたら色々と取り返しのつかないことになるから。やっぱり変だよな」

 

 「いえ、お仕事に真剣な小暮さんはかっこいいと思いますよ。でも、そうですね私はオフの時の小暮さんも素敵だと思いますよ」

 

「おやおや嬉しいこと言ってくれるねぇ。高垣さんにそんなこと言われると惚れちまうって」

 

 お酒が入って赤くなっている顔を更に赤く染めた小暮さんが呟きます。どうやら照れているみたいです。普段は真剣にお仕事をされていて一見話しかけにくい雰囲気の小暮さんですが今はこの様子はとても微笑ましいです。小暮さんの初めて見る表情に少し得をした気分になります。やっぱり柔らかな雰囲気の小暮さんは素敵です。

 私は顔を赤く染める小暮さんを少しからかいたくなり、小暮さんの耳に口を寄せて

 

 

 「ふふっ惚れてもいいですよ」

 

 自分でも少し大胆な事をしたと思います。少し気恥ずかしかったですがそれよりも小暮さんがどんな表情を見せてくれるか気になります。

 私の言葉を聞いた彼は、呆気にとられた後ニヤリと笑い手を引きます。私たちは手を繋いだままだったので私は彼のほうに引き寄せられます。彼はそんな私がバランスを崩さないようにゆっくりとした動作で私の腰に手を添え受け止め耳元で

 

 

 「本当にいいんですか?」

 

 余りに急の出来事だったので次は私が呆気にとられてしまいました。それから自分でも分かるぐらい顔が赤くなったのが分かります。小暮さんはそんな私の様子を確認し悪戯が成功した子供のような顔をしてサッと離れます。

 

 「俺をからかったお返しだ」

 

 そう言って笑いかけてきます。からかうつもりが逆にからかわれてしまいました。

 

 「もう!小暮さんってば意地悪な方ですね」

 

 「んな馬鹿な。俺ほど紳士的な男はそうそういないって。それより顔が真っ赤ですが大丈夫ですか?まぁそんな高垣さんも非常に可愛らしいけどね」

 

 おどけながら小暮さんは言います。言葉では彼に勝てそうにありませんね。私は抗議するかのように手を握って彼の肩をポカリと叩きます。しかし、私のそんな行動さえも彼を笑わせてしまうだけでした。

 

 「ほらほら落ち着いて落ち着いて。それより早く酒買いに行きましょう」

 

 「もう、小暮さんがこんな意地悪な方とは思いませんでした」

 

 「ははっ、少しいじりすぎましたね。詫びに好きな酒なんでもいいので献上致します」

 

 「仕方ないですね。分かりました」

 

 

 

 

 それから、スーパーに着き籠を取った彼は、ビールを籠の中にどんどんと入れた後私のほうに振り返り

 

 「高垣さんはどうする?」

 

 「そうですね。小暮さんと同じのでいいお願いします」

 

 「本当にそれでいいのか?スーパーとはいえ他にもいろいろあるけどいい」

 

 「はい」

 

 日本酒でもよかったけど前に居酒屋で会った時の小暮さんが美味しそうにビールを飲んでいたので私も一緒にのみたいなと思います。

 

 「はいよー。んじゃ適当に見繕っとく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の家はスーパーから歩いて15分ほどもマンションでした。

 

 「さて、どうもいらっしゃい」

 

 鍵を開けた彼は私を招き入れます。男性の家に入るのは初めてです。

 

 「お邪魔します」

 

 彼の部屋は古本屋のような紙の匂いがします。机には出しっぱなしの書類や本が積み重ねられ、本棚には仕事で使うであろう専門書がぎっしりと詰め込まれています。

 興味深そうに部屋を眺めている私をしり目に彼は冷蔵庫の中に先ほど買ってきたビールを入れていきます。彼の背中越しに見えた冷蔵庫の中にはビールばっかり入っています。台所にはカップラーメンが積まれています。それから彼は飲む分のビールを二本右手で持ち左手でつまみを持って机に置きます。そして、立ったままの私を手招きし

 

 「さて、んじゃ飲むか」

 

 「はい」

 

 「んじゃ乾杯」

 

 「はい。乾杯」

 

 

 

 

 

 そこから彼とはまた楽しくお話しながら飲みました。

 ここで改めて今日の待ち合わせに間に合わなかったことを謝ろうとしたら彼に止められました。優しく微笑みながら

 

 「もう済んだ事だし、それより楽しく飲もうぜ」

 

 そう言って私に見せるようにグイっといい飲みっぷりを披露しました。彼の小さな気遣いに感謝しつつ私もグイっとビールを飲みます。その様子を小暮さんはとても微笑ましそうな表情で見ていました。

 

 

 それから、二人ともいい感じにほろ酔い気分になり好みのお酒やプライベートや趣味の事まで話していました。そんな中ふと小暮さんが私を見つめているのに気がつきました。

 

 「どうかされましたか?」

 

 「いや、綺麗だなと思ってさ」

 

 「?」

 

 「高垣さんってオッドアイなんだ。どっちも綺麗だな。それに肌とか髪もすっげぇ綺麗だしさ。それに性格だって気配りもちゃんとしてるしさ」

 

 不意に小暮さんに誉められて私は少し恥ずかしくなりましたがそれよりも嬉しさの方が大きくなんだか胸が温かくなりました。

 それから二人で気がつけばどんどん缶を開けていきました。しかし、次の日も二人とも仕事があると言うことに気が付いたので

 

 「あちゃあ、これで最後にするか」

 

 「そうですね。名残惜しいですが明日もありますし」

 

 「帰りはどうする?タクシー呼ぶ?それとも泊まるかい?」

 

 小暮さんが子供な無邪気な表情で私に言います。むぅ、これはまた私をからかっていますね。

 

 「では、泊めさせていただきますね。お願いします」

 

 そういう彼は呆気に取られそれから言葉を飲み込んだようで突然の慌てだしました。

 ふふっ、仕返し成功です。やりました。私は慌てる彼の前でガッツポーズします。彼はタクシーで私が帰ると思っていたようですが泊まってやります。

 

 

 

  ……泊まる?……?……っ?!

 

 

 その時の私は小暮さんと同じくらい慌て顔が耳まで真っ赤になってたと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの…その…お手柔らかにお願いしますね」

 

 「へっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 それから二人して何処かぎこちなくなりながらもどうにか普通にしようと努力しました。その後1つしかないベッドを小暮さんは

 

 「高垣さんを床に寝かせるわけにはいかない」

 

 と言い、私は

 

 「家主は小暮さんなのですからあなたが使ってください」

 

 という私の間で押し問答になり気がつけば二人で寝ると言うことになっていました。

 

 壁に寄せてあるベットに貼り付くように入っている小暮さんを見て私は笑ってしまいました。勢いでこうなってしまったとはいえ男性と一緒に寝るとなると警戒していましたが、小暮さんの姿を見て方の力が抜けてしまいました。

 それから私もゆっくりとベッドに入り横になりました。真横で誰かの呼吸が聞こえるというのは子供の頃に親と一緒に寝ていた以来で少し自分が子供になってしまったように感じました。静かになった部屋には小さく時計の針の動く音以外は二人の呼吸の音が微かに響くだけです。その音に耳を傾けていると隣では小暮さんが動いたようで衣擦れの音が聞こえてきました。

 少しビクッとなってそちらを向くと何と小暮さんはもう眠っていました。自惚れているわけではありませんがこれでも人気アイドルをしている私に目もくれず眠ってしまった小暮さんをジト目で見てしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 それから気がつけば私も眠りに落ちていたようです。朝目を冷ますとベッドから離れた位置で頭を抱える小暮さんが目に入りました。どうやら起きた私が目に入っていないようです。私はこちらに気づかない小暮さんに挨拶をします。

 すると彼は目をパチクリとさせてから

 

 「あ、おはようございます。ってそうじゃねぇ!あのですね。なんでこんなことになってんのかなぁとおもいまして」

 

 「ふふっあらあらお忘れですか?」

 

 「いや、どうも相当酔っていたようで記憶が曖昧で」

 

 どうやら小暮さんは、途中から記憶が曖昧だそうです。これは、チャンスですね。

 

 「あら、あんなことまでされましたのに」

 

 そう言って私は口元に手を当てわざとらしく視線を下げます。あんなことと言っても小暮さんは私の手を握るぐらいしかしていません。そこまで考えてその後に小暮さんにからかわれた出来事を思い出し私は、また顔を赤くしてしまいました。

 

 「すいませんでした!」

 

 私の表情を見た小暮さんが不意に土下座をされました。

 

  「あら何をされているんですか?小暮さんが謝る必要はありません。元々私が待ち合わせに間に合わなかったのが悪いのですから。それに居酒屋では飲めませんでしたがここで小暮さんと一緒にお酒を飲めたので私は満足しています」

 

 私にしては、昨日から今日で自分でも驚くくらい大胆なことをしたと思います。でも、本当にとっても楽しい時間でした。その後、小暮さんに事務所まで送っていただくことになりました。

 

 事務所まで送ってくれた小暮さんは、わざわざ運転席から降り、助手席のドアを開けてエスコートしてくれました。そこにわざとらしさを感じさせない自然な動きでできるのは彼の魅力だと思います。

 その後、小暮さんにお礼を言い別れましたが小暮さんと連絡先を交換していないことを思い出し、急いで鞄からメモ帳を取り出し連絡先を書いて戻ります。幸いまだ彼はそこにいたので呼び止めます。プロデューサーさんは彼と名刺交換していたので後でも大丈夫と言えば大丈夫ですが、私は直接彼と連絡を取りたいと思いました。

 無事連絡先を渡してどうにか一息ついて彼とお別れします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事務所に着き荷物を置き座ります。

 

 「小暮航さん」

 

 昨日彼に握ってもらった右手を見ながら小さな声で呟いてみます。今までここまで男性とお話したのは初めてですし触れ合ったのも初めてです。とっても素敵な時間でした。初めて会ってから再び再開した時の彼の一つ一つのふとした仕草を思い出します。なんだか胸が温かくなってきました。そしてふと自分のスマホに着信があるのに気が付き手に取ると小暮さんからでした。文面は少し堅い感じでしたがこれからお願いしますと書かれています。分を見ながら彼の朝の様子を思い出して頬が緩んでしまいます。返信をした後彼からのメールをもう一度開きます。

 

 「あら楓さん。おはよう。朝から笑顔ね。何かいいことでもあった?」

 

 私がスマホを見ているのを今ちょうど来た川島さんに見られたようです。

 

 「おはようございます川島さん。そうですね。最近新しい飲み友達ができました」

 

 「あらそれは良かったわね。どんな人なの?」

 

 「そうですね。とっても素敵な方です」

 

 「気になるわね。もしかして男だったりする?」

 

 「ふふっ、さぁどうでしょうね。それよりもうすぐレッスンのお時間ですので先に行きますね」

 

 私は、スマホを置いて立ち上がります。彼も今頃はお仕事でしょうか。私も彼のように今日も頑張ろうと思います。

 

 

 




この作品を投稿してまだ三日ほどですが多くの方に読んでいただけているようで作者冥利に尽きますね。
自己満足で書いているとはいえ感想をもらえたりすると俄然やる気が湧いています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。