これの前に三皿目の3を投稿してますのでご注意ください
この『箸休め』は基本的に主人公がいない場所での話になるので
三人称になります。よろしくお願いします
所変わって、こちらは鎮守府のとある一室。この鎮守府の中心となる艦娘たちが集まり、会議が行われていた。
彼女たちはこの鎮守府ができるにあたり、今回の件に賛同した既存の鎮守府から立ち上げ時の核として集められた、ある程度の練度を持った精鋭達だ。なので、忙しくあちこち飛び回る司令官に代わり、こういった会議を定期的に行い彼女たちが主動して鎮守府を動かしている。
もちろん、最終的な判断は司令官が行い、決して司令官が仕事を投げているわけではない……はずだ。
「――――という提案を司令にしたいのですが、長門さんはどう思われますか?」
その会議の最後に霧島から、昼間喫茶店で話題になった件が議題に上った。
「ふむ……いいのではないか?確か島内活動だったか、教育カリキュラムにも入っていただろう?それに、空いた時間で料理を教えてもらえるというのもありがたいな。私も教わりたいものだな」
「ええ、ただその活動に関しては第一次産業実験施設とその周辺区域が対象だったと思うのだけれど」
霧島に『長門』と呼ばれた武人然とした艦娘が答えると、その横に座っていた青い袴の艦娘『加賀』が疑問を投げた。
「なに、いずれは一般区域でも行うのだろう?それが早まっただけだ。そういえば、お前たちも行ったのだったな。店主殿はどんな人物だったのだ?天龍」
「あぁ、まあ普通の兄ちゃんだったぜ。つっても今までに会った連中といやぁ、軍の連中ばっかりで、それと比べればって感じだけどな。少なくとも俺は気に入ったぜ、多分あのちびっ子たちもそうだろう。帰り道でさんざん話してたからな」
嬉しそうにそう話す天龍の様子を見て、端に座って会議の様子を眺めていた金剛も大きく頷いている。先ほどから会議の中心になっていた長門が、その金剛の様子を横目でチラリと見遣ると、加賀とアイコンタクトをして話し出す。
「よし、今回の提案については私の方からも提督に話をしておこう。彼は提督の信頼する友人であるとのことだ、おそらく提案は通るだろう……となるとだ、誰を派遣するかということになるわけなのだが、それについては何か案は?」
「ハイ、それなのですがある程度期間を区切り、何人かを交代で派遣しようと思いマス。ヒデトさんのお話によると、仕事内容は難しいものではないという事ですカラ、低練度の艦娘を中心にできれば多くの子に体験してもらいたいデース」
長門の質問を受けて、金剛がそう答えたところで黒髪おさげの少女が手を挙げた
「長門さん、意見具申良いかな?」
「時雨か、遠慮しなくてもいいぞ。どうした?」
「その、誰を派遣するかなんだけど……できれば指名制にしてくれると嬉しいかな。僕たち駆逐艦に限らないと思うんだけど、みんなあのお店ができるの楽しみにしていた様だし、普通に働くという事にも興味津々みたいだから立候補にしたらみんな行きたがって収拾がつかなくなると思うんだよね。指名制なら、選ばれなくて残念ではあっても納得できるでしょ?」
時雨と呼ばれた彼女は、この会議室にいる艦娘たちの中では唯一この鎮守府で建造された艦娘だ。
ちなみにこの鎮守府が立ちあげられることになった経緯の特殊性から、現在所属している艦娘は、軽巡洋艦以上は前述の通り他の鎮守府から転属してきたのだが、駆逐艦はこの鎮守府で建造された者のみである。
生来の真面目さから、そんな練度の低い駆逐艦たちのとりまとめとして彼女が選ばれ、この会議にも出席しているのだが、この発言を聞けばその理由も納得できよう。
「なるほど、それは一理あるわね。先ほど金剛の話を聞いていて、わたしも早く行ってみたく思いましたから」
普段冷静沈着で知られる加賀がそう気炎を上げるあたり、時雨の懸念もそう的外れではないのだろう。
「うむ、さすが時雨だ。それに今はまだ少ないが、今後人数も増えて来るとさらに行きたい者が増えて大変だろう。よし、その点も含めて提督が帰ってきたら話をしよう。霧島、議事録はとっているな?金剛、一緒に来て説明してくれるか?」
「sure! お供しマース!」
「あのー、一つええか?低練度の子からってーのは異存ないんやけど、その前に一人推薦というか、行かせたい奴がおるんよ。ウチと同じトコから来た奴なんやけど……店長はんを利用するようで心苦しくもあるんやけどな……」
長門がまとめに入り、今回の会議もお開きの流れになっていたところで、それまで黙っていた一人の艦娘が、遠慮がちに話し始めた。
「どうした龍驤、珍しくはっきりしないな」
「んー、あんな、今までは鎮守府内だけのことやったしウチらも半分諦めててんけど、こっち来て街中であれやられたら他の人に迷惑になるんちゃうかなーって」
龍驤がそこまで話したところでほかの艦娘たちから「あー」という声が漏れる。誰の事か気づいたようだ。
「せやから、その店長はんに協力してもろて、あの子の生活リズムを整えられへんかなーって……あはははは……」
いくらなんでもさすがに街中でそんなことはしないだろうという声も聞こえてきたのだが……そんな彼女たちの耳にとある艦娘の声が飛び込んできた。
「さぁ!夜戦の時間だ!夜はいいよね。夜は!さ!!」
その言葉を聞いて、沈黙した部屋の中で誰ともなくつぶやいた。
「……ったく、あの夜戦バカ……」
いやー、いったい何内さんなんだろうなー(棒
一応補足しておくと、この方も転属組ですが
会議からハブられている訳ではなく
夜間哨戒中なだけです……自主的に。
というわけでまだ来店していない艦娘も出てきたり
鎮守府の現状もちょろっと語られたりしましたが
こんな感じで鎮守府側の話だったりちょっとした説明などを
今後『箸休め』を使ってたまにやっていきたいと思います
明日はいつも通り一本、四皿目の1を投稿いたします。
読んでいただいてありがとうございました