鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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タイトルからバレバレではありますが(むしろ昨日の会議からバレバレ)
金剛たちとの話題に出たお手伝い第一号が今日から登場です

それではどうぞ~


四皿目:アルバイトは夜戦バカ?1

 さて、今日は開店前の仕込みを手短に終わらせてとある人物を待っている。

 

 というのも、昨日閉店後にさくらが送ってきたメールによると、さっそく金剛さんたちが掛け合ってくれたらしく、今日アルバイトの艦娘を一人連れてきてくれるらしいのだ。

 

 どうも生活リズムの矯正も兼ねているということで、元島民たちが本格的に引っ越してくるまでの三週間で何とかしたいという話だった。仕事に関しては「やるときはやる子だ」なんて言ってたけど、むしろその一言は不安になるんだが……

 

 でも、朝から夜までしっかり働けば、自然と生活リズムなんて整ってくると思うんだよね。明るいいい子だとも聞いているので、まぁなんとかやっていけるだろう。

 

 出勤前の早い時間に行くからついでに朝食も用意してくれという事だったので、準備をしながら待っていると、ドアを叩く音が聞こえてきた。

 

「ひーでーとー、きーたーわーよー!」

 

 はいはい、今開けますよっと。

 

「おはようさくら。そっちの子もいらっしゃい」

 

 ドアを開けながらそこに立っていた制服姿のさくらと、その後ろに立っている女の子に挨拶をして、店内に促す。

 

 二人がカウンター席に着いたところでお冷とおしぼりを出すと、さくらが恥ずかしげもなく顔を拭きながら話し始めた。

 

「というわけで、バイト連れてきたわ。昨日の晩長門と金剛に説得されてね……ほら、川内挨拶」

 

「川内、参上!よろしくね!」

 

「店長の田所秀人だ。こちらこそよろしく、川内さん」

 

「川内でいいよ、店長」

 

 お互いに挨拶をして握手を交わす。朝が苦手と聞いていたが、元気に挨拶してくれた。人懐っこそうないい子じゃないか。そう思って安心しているとさくらが詳しく説明してくれた。

 

「この子ってば夜戦が大好きでね、夜になると夜戦させろってうるさいのよ。昨日は今日のこれがあるからって無理やり寝かせたんだけど、下手すると夜通し騒いで朝になったら寝るなんてこともあってね」

 

 あー、そりゃよくないな。完全に昼夜逆転か。

 

「きちんと昼間の任務に出ればそんなことは無いんだけど、ウチはまだ本格始動してないからなかなかね……どうしようかと思ってたら昨日金剛たちから提案があったから、昼間はここで働かせてもらおうと思って連れてきたのよ」

 

「そういうわけで、よろしくお願いします!いやー私もよくないとは思ってるんだけど、夜になるとついつい血が騒いじゃうのよね……なんなら、店長が夜戦してくれてもいいのよ?」

 

 え?夜戦て……え?そういう?

 

「せーんーだーいー、変な事言わないの!秀人も本気にすんな!……ったく、生活リズムを整えるのはあんたのためでもあるんだからね。前のところの提督から聞いてるわよ?せっかく夜戦を想定して出撃させても、前の日夜更かししてぼーっとしてるもんだから昼戦で余計な損傷出す時があるって……最奥部なら中破で夜戦突入してもいいけど、その前に中破されると撤退させざるを得ないって愚痴ってたわ」

 

「むー、それはよく言われたかも。神通にも怒られたし……でも、でも!そのぶん避ける訓練だってしてるし、私だって決めるときは決めるよ!」

 

「それはわかってるわ……わかってるから余計に残念なのよ……」

 

 そう言ってさくらは頭を抱えた。えーっと、言ってることの半分くらいはわかんないけど、なんかヒートアップしてきちゃったし止めた方がいいかな。

 

「まあまあ、お二人さんそれくらいにして。朝飯食っていくんだろ?」

 

 そう割って入った途端、二人の目が輝きだした。

 

「そうよ!それが楽しみで今日来たんだから。頼んでおいた朝定よろしくね。ごはん大盛で!」

 

「はいはい、すぐできるからお茶でも飲んで待っててよ」

 

 そう言って濃い目に入れた緑茶を出して、厨房へと引っ込む。さーて、作りますか。

 

 さっきさくらが言ったように昨日のメールで『朝定食』のリクエストがあったので、今朝は焼き魚定食にすることにした。というのも実は、昨日来てくれた自衛官さんの中に仕事の合間に釣ったゴマサバをお土産にと持ってきてくれた方がいたので、それを一夜干しにしてみたのだ。

 

 作り方は簡単。カマと腹骨を残したまま三枚におろしたサバを10%位の塩水に一時間漬けた後、さっと水で汚れなどを洗い流し水気をよく取る。後は干物作り用の籠に入れて一晩風通しのいいところに置いておくだけだ。今朝は天気も良かったので、少し天日に当ててから取り込んだ奴を焼く。

 

 んー、これは見るからに旨そうだ。何尾かもらったので、昨日晩飯でシンプルに振り塩で食べたのだけれど脂がのっていて旨かった。その旨味がさらに干すことで凝縮されていると思うと……二人に出してもまだ余るので、持ってきてくれた自衛官さんにも食べてもらわねば。確か今日は無理だけど明日また来るって言ってたし。

 

 そんなサバの一夜干しを焼き台に乗せて、脂の滴る「ジュッ」という音を聞きながら、味噌汁を完成させる。今日の味噌汁はシンプルにわかめとねぎの味噌汁だ。できればここに豆腐か厚揚げを入れたいとこなんだけど、まだ手に入らないので残念。

 

 先ほど昆布と鰹節でとった出汁に乾燥わかめと大きめに切ったねぎを入れて煮立たせる。火が通ったところで、味噌を溶き入れて沸騰直前まで火をいれたところで止める。

 

 そうこうしている間に、焼き鯖を確認してひっくりかえすと、皮目に良い感じの焦げ目がついてパリッと仕上がっている。後はこのまま身の方を焼いて完成だ。

 

 ちなみに魚の焼き方で『川(魚)は皮から海(魚)は身から』なんて言葉もあるが、実際は盛り付けるときに上になる方から焼くと教わった。なので今回のような切り身の場合は皮目を上に盛るので、先に皮から焼いて色よく仕上げよう。

 

 さてさて、鯖はほどなく焼きあがるのでご飯と味噌汁をよそっておこう。あとは漬物と小鉢として昆布とキャベツの即席漬けを用意してある。これは、だしを取った後の昆布を細切りにして、醤油・だし汁・柚子果汁を合わせた漬け汁にざく切りにしたキャベツを数十分漬け込んで、簡単に作れるし出汁がらも無駄にならないのでお勧めだ。

 

 鯖も焼きあがったところで、焼き串から外しながら皿に盛る。脇に大根おろしを添えれば焼き鯖定食の完成だ。こんがり焦げ目のついた皮目と香ばしい匂い、じゅうじゅうふつふつといった音が食欲をそそる。焼き鯖・ごはん・味噌汁・小鉢・漬物をお盆に乗せて一人前……うん、これなら文句ないだろう。

 




てことで、川内さんにしばらく手伝ってもらうことに……
はてさてどうなるやら……

読んでいただいてありがとうございました

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