鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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今回は四皿目その2

今日は提督と川内の朝ご飯と、ちょこっとお手伝い開始です




四皿目:アルバイトは夜戦バカ?2

「おまたせ~」

 

「待ってました!おいしそうな匂いがこっちまで漂ってきてお腹すいたわ」

 

「店長、ありがとう。さっきから提督のお腹の音がうるさかったのよ」

 

「ははは。今日の朝定は鯖一夜干し定食だ。昨日釣り好きの自衛官さんが何匹か開店祝いに持ってきてくれたんだ。まぁ、しっかり食べてお仕事頑張ってくれよ。ごはんと味噌汁はお替りもあるから気軽に言ってくれ」

 

 釣り好きって言うとあのおじさんかな?とさくらが知り合いだったようでお礼と伝言を頼んでおく。

 

 鎮守府の立ち上げ作業の合間、手隙な艦娘を連れてちょっと沖合まで釣りに出ることもあるらしい。釣果は自分たちの食事にも反映されるので、最近では自衛官たちから「作業は自分たちにまかせてどんどん釣りに行ってうまい魚釣ってきてくれ」と言われているちょっとした有名人のようだ。他の自衛官の話ではわりと地位も高いらしいのだけれど……いいのか?そんなんで。

 

 そんな話をしていると、食べ始めた川内が目をつむって天を仰ぐように顎を上げていた。心なしか震えているようにも見える

 

「どうした、川内?」

 

「……店長……やばいよ、これやばい。こんなおいしい朝ごはん食べさせられたら夜戦なんてしてる場合じゃないよ」

 

「……え?」

 

 どうやら川内は気に入ってくれたようだが、そんな川内の言葉にさくらはありえない物を見るように目を見開いて驚いていた。

 

「あんたがそんなこと言うなんてどうしたの?熱でも出た?」

 

「ひっどーい。いいから提督も食べてみてよ!この焼き鯖も見た目が良いだけじゃないんだよ!キュッと締まった身から溢れる脂とうま味。さらに程よい塩味だから、この大根おろしに醤油をちょっと垂らして一緒に食べれば……んー。また違った味わいが……はぁ……おいしい。それにこの味噌汁もシンプルでほっとする味だよねー。お出汁もしっかりとってあるし……なんか朝からこんな贅沢していいのかなぁ」

 

「あ、あなたが夜戦以外にこんなに夢中になるなんて驚きだわ。いや、うん。確かにおいしいのはわかるんだけど、そんなに食レポみたいに言われちゃうとあたしの言う事なくなるわね」

 

 うわー、恥ずかしくなるくらいほめてくれてるわ、この子。確かに今朝のメニューは我ながらうまくできたと思うけど、焼き方や出汁の取り方の基本を教えてくれた師匠のおかげだな。

 

「気に入ってくれたみたいで嬉しいよ。どうやら川内も料理するみたいだし、給仕だけじゃなく簡単な仕込みや調理も手伝ってもらおうかな。余裕があればいろいろ教えられると思うし」

 

「ホント!?絶対だからね?約束よ?」

 

「うんうん、なんか上手くやれそうでほっとしたわ。秀人もこの子のこと頼むわね?というわけで、ご飯お替りもらえるかしら?」

 

 身を乗り出して聞いてくる川内に割り込むようにさくらが茶碗を差し出してくる。川内もやる気があるみたいだし、確かにこれなら上手くやれそうだよ。そんなことを考えながら、さくらのご飯のお替りを持って行くと、今度は川内が茶碗を差し出しながら待っていた。はいはい、お替りね。

 

「いやー、朝からちょっと食べすぎちゃったかな。でもなんか力出てきた気がするわ、じゃぁお仕事行ってきますかね」

 

「おう、行ってらっしゃい。しっかりな」

 

「そうだ、9時過ぎくらいに工場からいろいろと野菜が届く手筈になってるわ。システムチェックなんかも兼ねて、試験生産させた分はこっちに回すようにしてもらったから。モニターって形にしてあるからお金はいらないけど、その代わりに量が指定できないのと味とか食感とか使ってみた感想なんかの簡単なアンケートに答えて欲しいってさ」

 

 おお、それはありがたい。量はまだそんなに必要ないというか、今ある分で何とかするし簡単なアンケートなら全然かまわない。

 

「それと、今日のお昼過ぎに長門と加賀って子を来させるわ。金剛と合わせてうちの秘書艦三人娘の二人ね」

 

「おう、わかった。どんな子なんだい?」

 

「ウチは秘書艦三人体制でね、まずあなたも会った事のある金剛は社交的な性格を見込んで、対外的なところを手伝ってもらってるんだけど、長門には出撃や遠征・訓練なんかの戦闘実務関係、加賀には兵站や資材の数値管理や事務関係を主に手伝ってもらっているわ。二人とも真面目で信頼できるいい子達よ」

 

 ふーん、なるほどね。まぁ、あとは会って話してみればわかるだろう。

 

「じゃまた食べに来るわね、ごちそうさま。川内は明日からは出勤時に秘書艦の誰かに連絡してくれれば直行直帰でいいわよ。」

 

「了解!」

 

 さくらはそう言って出勤していった。それじゃあ川内、まずは片付けから始めようか。

 

 それからしばらく片づけや開店準備を進めていると、さっきさくらが話していた野菜が到着したようだ。

 

「おーい店長、野菜が届いたけどどこに置いておく?」

 

「おう、こっちの調理台に頼むわ」

 

「はーい!」

 

 そう言って川内が持ってきたのは、台車に積まれたいくつかの段ボールだった。一つの箱に何種類かごとに分けられた野菜が入っていて、結構な量があるようだ。

 

 その中身はレタスやグリーンリーフなどの葉物をはじめ、トマト・キュウリ・なす・キノコ類など多岐にわたった。

 

「ねぇ、店長。この野菜は工場から来てるのよね?島の反対側にそういう施設があるのは知ってるけど、そもそも工場で野菜ってどういうことなの?」

 

「えーっと、俺もひとから聞いたりテレビで見たりしたくらいであまり詳しくないんだけど……」

 

 川内からの問いにそう前置きをしてから説明を始める。

 

 元々『野菜工場』自体は深海棲艦の侵攻前から増えつつあったのだが、費用対効果の面から採算がとれる野菜の種類も少なかった。それでも農学研究の発展やLEDや水耕栽培ユニットなどのハード面の技術向上もあって少しづつ増えてきていた。

 

 そんなときに深海棲艦の侵攻があって、食料自給率や避難民の住宅用地不足が問題になった時、その解消の一手として農水省主導で農業の工場化が一気に進められた。それまで技術はあってもコストが合わないっていうんで作らなかったものも作るようになったり、さらに作れる種類を増やそうって研究もやっていて、その施設の一つがこの島にあるってわけだ。もちろん露地栽培の研究も進んでおり、この島でもその実験は行われている。

 

「なるほどねー、だから食料不足からすぐに立ち直れたんだね」

 

「まぁ、その点に関しては他にも理由があるんだけどね。もともと米をはじめいくつかの農作物は過剰生産気味だったし、輸入に関しても『作れない、足りないから輸入する』んじゃなくて『政治的理由』で輸入している物もあったしね」

 

 個人的にはそれ以上にエネルギー問題が何とかなりそうなことも大きかったと思う……と、これを話し始めるとまた長くなってしまうのでやめておこう。

 

「んー、難しい……」

 

「ははは、ちょっとお堅い話だったね。とりあえず言えることは、君たちが深海棲艦を倒すだけじゃなく、タンカーや資材運搬の護衛をしてくれてるおかげでこうして料理ができるって事かな。ありがとね」

 

「そっか……そっか……」

 

 柄にもないこと言っちゃったけど、川内はじっと手を見ながらそうつぶやいて微笑んでいた……感謝してるっていうのは伝わったかな。

 

「さぁ、開店まであんまり時間ないよ。俺は仕込みの続きするから川内はそれを野菜用の冷蔵庫にしまっちゃってくれるかい?終わったらこっちを手伝ってもらうから」

 

「はーい、任せておいて!」

 

 その後も仕込みや、ホールのセッティングなど作業を続けて開店時間を迎える。それからしばらくは自衛官の方や施設の人がちょこちょこ来てくれて、いろんな話を聞かせてくれた。

 

 そんな中で川内はと言えば期待以上の働きをしてくれていた。

 

 持ち前の明るさと人懐っこさでお客さんからの反応も上々だし、普段から料理をしているのか簡単な下ごしらえなら任せられるほどだ。もちろんスピードはまだまだなところもあるが、それもいずれ慣れるだろう。

 

 なかなか楽しみな人材が手伝いに来てくれたな。

 




川内は夜戦が絡まなければ割と女子力高いと思うのです
時報を聞くとごはんも作ってるみたいですし
他の三水戦の子達からも慕われていて面倒見もよさそうだし
……あと私服modeかわいい


四皿目はこれで終わりです
明日の五皿目では、本文にもあったように長門と加賀が来店します

それでは、お読みいただきありがとうございました
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