鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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今回は五皿目その2
料理の話もないのでサクッと終わらせてつぎに行こうと思います


五皿目:ビッグ7と一航戦(青)2

「はい、なんですか?」

 

 長門さんが急に真面目な顔をしてそう言ってくるものだから、何かと思いながらも腰を据えて話そうと、椅子を引っ張りだして座りながら答える。

 

「真面目な話と言っても、そんなに堅苦しいものではないのだが……加賀、あれを」

 

「ええ、店長さんこれを」

 

 そう言って渡されたのは数枚のコピー用紙。そこには『第一回鎮守府祭(案)』と書かれていた。

 

「鎮守府祭?」

 

「うむ、鎮守府祭だ。約二週間後帰島船団の第一陣が組まれ、三日間かけて数百名の島民の帰島が行われることになっているのだが、それが終わった翌日にこの祭りを行おうと思っていてな。そこで屋台を出してもらえないだろうか」

 

「屋台を出すのは構いませんが、またどうして祭りなんかを?」

 

 手渡された計画書をペラりとめくりながら尋ねる。

 

「まぁ一言で言えば、本格的な交流を開始する初めの一歩だからな、インパクトのある一発をぶち上げるといったところか。とはいえ、本土の基地祭などに比べると小規模なものだがな」

 

 はぁ。なんというか、さすが軍艦が元になった艦娘らしいパワフルな企画というべきか。でも考えてみれば、例のPVだって自分たちで考えたって言ってたし、そういうのが好きなのかもしれないな。

 

「確かに簡単に言ってしまえば長門さんの言う通りなのですが、もう少し詳しく説明するわ。お祭りは第一部と第二部に分かれていて、午前中の第一部では簡単な式典と観艦式、公開演習が行われます。それらが終了後、その流れで自由に……と言っても許可された範囲でですが、第二部として鎮守府内の各催しを見て回ってもらいます。現在企画されている催しとしては、艦娘に関するパネル展示、艤装や装備品の展示、食料生産実験施設の説明会と資料展示、そして店長さんに今お願いしたような有志による屋台です」

 

 一気に説明してしまったけれど、何か質問は?と聞いてきた加賀さんの言葉に、企画書を見ながら考えてみる。企画そのものは特におかしなことは無いように思う。招待客も軍のお偉方に各鎮守府の提督と、メインはこの島に引っ越す予定の住民達か。あとは……

 

「屋台をやるとして、メニューはなんでもいいのかな?使える機材とか食材とか」

 

「メニューはなんでもいいわ。ただ、自衛軍の方でも結構な人数が協力してくれることになっているから、よくある屋台メニューはそちらにお願いすることになっています。なので、被らない物が望ましいわね。そのあたりのメニューと使用可能機材、食材に関しては一覧が載っているから」

 

 あぁ、これか。なになに、焼きそばに焼き鳥、お好み焼き、たこ焼き、かき氷、フランクフルト等々よく見る屋台メニューは網羅されているようだ。

 

「出店はさせてもらうが、メニューに関してはちょっと時間をもらえるかな?何ができるか考えてみるから……っとそうだ、当日の川内の予定は?できれば手伝ってもらいたいのだけど」

 

「私は手伝いたいんだけど……長門さん、どうなの?」

 

「残念だが、川内にはこちらを手伝ってもらいたい。観艦式は全員参加だし、公開演習でも川内には水雷戦隊の旗艦として指揮してもらいたいからな。店主殿、すまないが……」

 

「いやいや、構わないよ。というかそっちが本業なんだから謝ることもないって」

 

 手伝ってもらえないのは残念だが、まぁ何とかなるだろう。それより、艦隊旗艦なんてすごいじゃないか、実はなかなかの実力者だったんだな。

 

「えへへー、改めてそう言われると照れちゃうな。そうだ、長門さん!午後!午後からなら手伝っても大丈夫でしょ?」

 

「うむ、そうだな。一部を除き午後は皆自由時間になっているからな、構わんのではないか?」

 

「やったぁ!店長、午後になったら手伝いに行くからね!その代わり、演習見に来てよ」

 

「そうだな、早めに準備を済ませて川内の雄姿を見に行くか。金剛さんや他のみんながどうやって海で活動してるのかも気になるしね」

 

「絶対だからね!約束よ!」

 

 その後も祭りに関して細かいところを話していく。さくらが言っていたように事務関係は加賀さんが取り仕切っているようで、主に彼女と話を詰めていったのだが、なるほど真面目で頼りになる子のようだ。

 

 その間他の二人はと言えば、演習に関する話で盛り上がっていた。時折熱が入りすぎて声が大きくなる場面が見られたが、そのたびに加賀さんにたしなめられていた。何事にも全力で取り組む気質のようで、今回のことも絶対に成功させてやろうという想いが現れているようだった。うん、そういう熱さは嫌いじゃない。

 

 最終的に、川内も訓練や準備が必要ということで一週間前から鎮守府に戻るということになり、それに合わせて店も一時的に閉めることになった。それまでは毎日営業するつもりだし、休みの間も何回か見学がてら鎮守府にご飯を作りに行くことになっている。

 

 なにより、こっちに来てすぐに営業しはじめたし、空いた時間でゆっくり島を見て回るのもいいかもしれないな。例の生産施設にも行ってみたいし。

 

 そうして話しているうちに日も傾き始め、何人かの軍人さんが小腹を満たしに来たところで話を終えた。

 

「さて、店主殿そろそろお暇しようと思う。祭りの件もそうだが、今後ともよろしく頼むぞ」

 

「では、なにかあったら川内を通して連絡を。今度は赤城さんと一緒に食べに来るわね」

 

「えぇ、うちもまだプレオープンって感じで十分な品数を用意できなくて心苦しいのですが、またいつでも来てくださいね」

 

「うむ、そうさせてもらおう。そうだ川内、今日は帰りに鎮守府に寄ってもらえるか?祭りもそうだが少し話があるのでな」

 

「了解!じゃぁまた後で」

 

 川内はそういってさっき来店したお客さんに水とおしぼりを用意しに行った。長門さんと加賀さんも手を振り帰っていったので、俺も仕事に戻るとしよう。

 

 結局その日はその後何人か軍人さんが来て営業終了。川内も初日だし、鎮守府に呼ばれていることもあったので、片付けを引き受けて先に帰らせることにした。

 

 最後まで手伝うと言ってくれたけど、洗い物も大した量じゃないしそんなに気にするなって。また明日よろしくね。

 




これにて五皿目終了です
鎮守府でのお祭りイベントはある意味定番かもしれませんね
一応このお祭りの式典で正式に鎮守府が稼働開始となります(今は建前上はまだ準備中)
ただ、しばらく先のことなのでもう少し今までのような感じで進みます

今日はこの後『箸休め2』を投下して明日の六皿目に繋げます

読んでいただいてありがとうございました

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