鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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本日二つ目の投稿です
これの前に五皿目その2を投稿してあるのでご注意ください


箸休め2:艦娘+1会議?

 その日の夜。鎮守府内の作戦立案室。

 

 昨日の会議室とは違い、提督室に併設されたこの部屋は、海図が広げられ艦娘や深海棲艦の模型やデータファイルが所狭しと並んでおり、出撃前の作戦立案・分析などに使われる部屋だ。

 

 薄暗く、締め切られたその部屋の正面に設えられた提督用の席に着いたさくらが、机の上で組んだ手に顎をのせながら重々しく口を開く。

 

「さて、まずは川内の話から聞こうか」

 

「司令、真面目にお願いします」

 

 進行役としてさくらの横に立っていた霧島が手元のリモコンで室内の照明をつけながら、眼鏡を光らせて言った。

 

「えー、なんか暗いほうが、悪巧み感が出ていいじゃない……あ、ごめんなさい……じゃ、川内よろしく。今日一日やってみてどうだった?」

 

 霧島に怒られながら仕切りなおすさくら。この提督の悪ふざけはもはや日常茶飯事なので、ほかの艦娘たちは今さら突っ込まない。

 

「そうねー、優しくていいひとだったよ。料理もおいしいし、いろいろ教えてくれるしね。それに、普通の女の子としてっていうか、普通の女の子としてしか扱われなかったから逆に拍子抜けかも」

 

「確かにね。最初こそ驚いたり、気にしたようだったが、すぐにそんなことはなくなったね。ただ、私達を見る目が艦娘というより……その、幼い子供を見る目だったのは気になったけど」

 

「そうね、私たちの時は鎮守府祭の話になって思い出して、それまではすっかり忘れているようだったわ。その後、演習の話になったら逆にキラキラした目で話を聞いていたけれど」

 

 川内の言葉に響をはじめ、ほかの艦娘からも賛同の声が上がる。

 

 そう、今回この部屋に集められているのは、この二日間で『喫茶 鎮守府』に行った艦娘たちだ。彼女たちの意見を聞いて、今回の件の手ごたえを探る……それが今回の会議の趣旨だ。ただ、第六駆逐隊のうち暁と電は夜も遅かったので欠席だが。

 

「そう……それは一安心ね。まぁ、彼なら大丈夫だとは思ってたけど」

 

 さくらはそう言って胸を撫でおろすが、不意に心配そうな顔になる。

 

「なんだ?提督、まだなにか心配事か?」

 

「んー、普通の女の子として接してくれるのはありがたいのだけど、それはそれで別の心配事がね……」

 

「わかりマス。私達が戦い、傷ついた姿を見られたら……という事デスネ」

 

 顔色を窺い訊ねてきた長門の言葉に、口ごもりながら答えたさくらだったが、最後まで言い切らなかったさくらの言葉を金剛が継いだ。

 

 彼女が指摘したことは今までにも何件か報告が挙げられていることでもあった。軍の内外にかかわらず、艦娘を普通の女の子として接してきた人の中には彼女たちが戦い傷つくことに衝撃を受け、これ以上戦わせられないと艦娘否定派に回る人もゼロではなかったのだ。

 

「そうだな、一応艤装と衣装がダメージを肩代わりしてくれるから、俺たちの肉体的にはかすり傷とか打撲程度だけど、見てる方は痛々しく見えちまうのかもな……でもあの兄ちゃんなら大丈夫だと思うぜ!」

 

 金剛の言葉に提督の懸念を察した天龍がそこまで口にしたところで、頭を掻きながら周りを見回して言葉を続ける。

 

「俺さ、自己紹介の時思わず『大将』って呼んじまったんだ。世間の店じゃそう呼ぶ事があるって聞いたことがあって、言ってみたくってさ……そしたらあいつは『軍人が大将なんて言って大丈夫か』って。まぁ、とっさに出た一言で大した意味は無いんだろうけどさ、ちゃんと俺たちが戦ってるっていうのもわかってくれてると思うぜ……まぁ実際に見たらショックを受けっかも知んねーけどさ、そんときゃさっさと怪我治してまた店に食いに行ってやりゃいいんじゃねぇの?」

 

 天龍が話し終えると室内は静寂で包まれた。提督をはじめ一同が「まさかこいつが」と言った顔で天龍を見つめていたのだ。そんな雰囲気を真っ先に破ったのは彼女の妹だった。

 

「天龍ちゃんが真面目なことを言ってる~。妹としても鼻が高いわ~」

 

 天龍をからかうように龍田が言った。「たーつーたー」という恨めし気な天龍の声をスルーして室内は笑いに包まれ、和やかないつもの鎮守府の雰囲気が戻ると天龍に乗っかるように川内も話し始めた。

 

「今日お仕事しながら店長といろいろ話したんだけど、その中で『私たちが戦ったり、輸送船の護衛したりしてくれるおかげで料理ができる』って言ってくれたの。それ聞いたら私嬉しくなっちゃってさ……だから、店長なら大丈夫よ」

 

「なによ、あんたたちさっきから聞いてればやけに秀人のこと持ちあげるじゃない?まぁ、初めてまともに話した普通の男ってことで、浮かれる気持ちは解るけどほどほどにね」

 

 さくらも二人に対してからかいの言葉をかけ、室内が再び笑いに包まれる。そんな中で一人不満そうに頬を膨らませる艦娘がいた。

 

「どうしました?お姉さま。そんなお顔は似合いませんよ?」

 

「ワタシももっとヒデトさんとお話したいデース」

 

「そんなこと言って、昨日お店からさっさと出てきてしまったのはお姉さまではありませんか。それに、これからいくらでも話す機会はありますよ」

 

「むー、それはそうデスが……」

 

 今一つ納得しきれれない金剛と、それを窘める霧島を横目に会議は進んでいく。

 

「まぁ、みんな秀人と仲良くやれそうでよかったわ。とりあえず金剛の懸念は大丈夫だとは思うけど、様子見でってところね。とやかく言った所で実際にそうなってみないとわからないってのもあるし……」

 

 さくらはそこまで言うと、ぱんっと一つ手を叩いて話題を変えた。

 

「さて、あいつの話はそれぐらいにして、今日は川内もいるから観艦式の演出も詰めちゃいましょうか」

 

 和やかな雰囲気の中で、会議の夜は更けていく。

 




拗ねる金剛かわいい


明日は六皿目その1になります
今度は誰が来店するのでしょうか

お読みいただきありがとうございました
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