今年もどうぞよろしくお願いします
さて、今回はお正月の特別編をお送りいたします
今回の特別編も本編の時間とはちょっとずれてますので
??皿目としております。ご注意ください
??皿目:鎮守府島の初日の出
茹で上がったそばを流水でぬめりを取って締めたら、もう一度お湯にくぐらせて温めなおしてからお湯を良く切って器に入れる。鍋で温めていたつゆをたっぷり注いだら、最後に玉ねぎとセリのかき揚げをのせれば出来上がりだ。
春の七草として有名なセリだけれど、これも例の野菜工場で作られているもので、土を使わない溶液栽培とかいうので作ってるらしい。今まで使ってきたレタスやホウレン草なんかの葉物野菜や、トマトなどもこの育て方で作っているのだそうだ。
なんだかすごいなと小学生並みの感想を思い浮かべながら、かきあげそばの入った器を『二つ』お盆に載せてこたつまで運んでいく。
「はいよ、年越しそばお待ち。熱いから気をつけろよ」
「待ってました!おー、かき揚げうまそー!あっ、秀人卵、卵ちょうだい。月見にするから」
へいへい、と適当な返事をしながら台所へと引き返す。なんか癪だから俺も月見にしよう。
大みそかの今日は、一人でのんびりと年を越そうと思ってたのに、さっきいきなりさくらがやってきて年越しそばを要求してきた。もともと作るつもりで準備してたからいいんだけど、せめて連絡くらい欲しいものだ。
「はい、卵……ところで、実家の方には行かなくていいのか?」
「さんきゅー……今年はこの島で初めての年越しだしね。あの子達にはゆっくりしてもらおうと思って、今年は私が鎮守府に詰めることにしたのよ……そういうあんたはどうなのよ」
熱々のそばを吹いて冷ましながら俺の質問に答えたさくらが、逆に聞いてきた。俺も最初は帰るつもりだったんだけど……
「だからか。おじさんとおばさんがうちに来て年越しパーティーするとか言ってたのは。なんか色々作らされそうだからこっちに避難してきたんだよ。あの人たち飲む量も食う量もかなりのもんだからな。いいように使われるに決まってる」
それを聞いてさくらも納得したように「あーね」と一言返して、そばをすすった。それからしばらくそばをすする音だけが聞こえていたが、そろそろ食べ終わるかという頃だった。
――――ゴーン……
遠くから鐘の音が響いてきた。この島に一つだけあるお寺の鐘の音だ。この音は昔から変わってないな。
「あー、もうこんな時間か。そろそろ鎮守府戻んなきゃ」
「そうなのか?もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
さくらが時計をみながら、残念そうにそうつぶやいてそばつゆを飲み干した。
「ごちそうさま。今日は私が戻ったら守衛さんにも上がってもらうことになってるのよ。警備なら妖精さんがいれば完璧だし、夜間に関しては最低一人『人間』の当直がいれば大丈夫ってことになってるからね」
へぇ、そいつはご苦労さまだ。っと、そうだ。
「そうだ、じゃあ明け方お邪魔してもいいか?あそこ確か日の出が良く見えたろ?」
「あー、そういうこと……いいわね。それならあの子達にも声かけましょう。んで秀人、食堂の調理場を開けるから、あったかいものお願い」
「いいねそれ。正月休み明けの営業で出すつもりで、茹で小豆仕入れてあるんだ。それ使って汁粉でも作るよ」
よしよし、楽しみになってきた。年越しはのんびりとなんて言っておきながら、こういう話が出てくると俄然テンションが上がってしまうあたり、我ながら料理バカだと思う。まぁ、相手が両親たちではなく、かわいい女の子達っていうのも大きいのだけれど……
「よっし、それじゃあたしは戻るわ。着いたら門の所のインターフォン鳴らして頂戴。妖精さんに迎えに行ってもらうから。じゃあねー」
手を振りながらさくらが出ていってしばらくすると、外から電動スクーター特有のモーター音が遠ざかる音が聞こえてきた。
さて、それじゃまずこれを片付けて、厨房に置いてある材料を確認して……日の出の時間も調べとかないとな。となると仮眠する時間はあるかな……ま、何とかなるか。
もう何回目かわからなくなった除夜の鐘を聞きながら、洗い物を済ませていった。
東京よりも南にあるとはいえ、一月の夜中ともなれば気温も一桁まで下がる。下手したらビルに囲まれた都内よりも寒いかもしれないくらいだ。
そんな田舎の寒空の下、スクーターを走らせて鎮守府への道を走っていると、ぼんやり光る謎の飛行物体が接近してきた。すわ、人魂か?と思ってビビるが、よく見てみると以前鎮守府に行ったときに挨拶された飛行機の妖精さんだった。
迎えに来てくれたらしく、スクーターと並行して飛びながらこちらに手を振ってくれた。というかこの速度で飛べるんだ……あれ?何気にこれってものすごい体験してないか?
そのまま飛行機と並んで走るという、衝撃体験を続けることしばし。鎮守府の明かりが見えてきた。そして、到着した門の所では誘導灯を持った妖精さんが待っていてくれて、門を開けてくれた。お礼を言って中に入ろうとすると「ちょっと肩をお借りしますね」と言って肩に乗ってきた。
おぉ!なんだこれ。新年早々テンション上がりっぱなしだ。そのまま妖精さんに案内してもらって、スクーターを止めて食堂へ入る。するとそこにはすでにさくらが待っていて、声をかけてきた。
「待ってたわ秀人……っていうか、あんたもだいぶ妖精さんに懐かれたわね。あたしより懐いてんじゃない?軽くジェラシーだわ」
右肩に門のところにいた妖精さん、左肩に飛行機を消した妖精さんを乗せて入ってきた俺に、さくらはよくわからない文句を言ってきた。そんなこと言われてもねぇ……どう思いますか?妖精さん。
「はぁ、まあいいわ。あと一時間くらいしたらあの子達も来るから。そしたらみんなで初日の出を拝んで、ここに戻ってきてお汁粉を飲むと。いい?」
「了解。んじゃさっそく準備にかからせてもらうよ」
執務室に戻ると言ってさくらが出ていったところで、持ってきた段ボールから店で仕込んできたこしあんを取り出す。かなりの量を作ってきたので結局仮眠はとれなかったけど、これでみんなが喜んでくれるなら安いもんだ。
そのこしあんと同じ量の水を鍋に入れて、強火で焦げないように混ぜながら溶かしていく。沸騰したところで弱火にしたら、こしあん自体には味付けをしていないので、砂糖と塩を適量入れてコトコト煮込み、適度に煮詰まったら完成だ。後は食べる前に焼いた餅をお椀に入れて、そこにこいつを注いで食べてもらう。もちろん塩昆布も忘れずに。
と、出来上がったところで、肩に乗って一緒にここまで来た妖精さんに頼んで、ほかの妖精さん達を呼んでもらう。
しばらくすると、かなりの人数の妖精さんが集まってきて、食堂のテーブルの上が途端に騒がしくなる。そんな彼女たちにカップ――妖精さん用のちいさなカップが食器棚に置いてあった――にお汁粉の汁だけを注いで配っていく。餅は危なそうなので無しだけど、みんな嬉しそうにお礼を言いながら受け取ってくれた。
全員に配り終わったところで、この間挨拶してくれた司令部付の妖精さんの号令で「いただきます」と唱和して、一斉に口に運ぶ。
――ふぅふぅ……ずずっ……こくり
みんな揃って吹いて、啜って、飲み込んで……「はぁー」とため息のようななんとも言えない声が漏れた。あったかい飲み物を飲んだ時、思わず出ちゃうあれだね。作り手としては、飲んだ人からそれが出ると嬉しくなるね。ほっと一息って感じで。
それから口々に「おいしい」「うまい」「最高であります」なんて声が聞こえてきた。そんな彼女たちのおいしそうな表情を眺めていると、入口の所からさくらが顔を出して叫んできた。
「みんなが来たわよー、あたしたちも行きましょう」
その言葉を受けて、妖精さんの代表が片付けは任せてくれと言ってくれたので、火の元だけ確認してさくらについていくことにする。食堂を出る時に背中にかけられた、妖精さん達の「行ってらっしゃいませ」の声がなんかこそばゆい。
迎えに来たさくらから、妖精さん達の懐きっぷりをからかわれながら海の方に回ると、まず最初に目に入った金剛さんから声を掛けられた。
「ヘーイ、テートクにヒデトサン、Happy new yearデース!」
「あけましておめでとう、金剛さん。今年もよろしくね」
金剛さんの言葉に近づきながら返事をすると、周りにいた他の艦娘たちからも同じように声がかかる。何人か眠そうな子もいたけれど、ひとしきり挨拶を交わしてみんなで海に向き直る。
「なんか甘い匂いがするっぽい」とじゃれついてくる駆逐艦の子達と、わちゃわちゃしながら待っているとだんだんと水平線の辺りが白んできた。
さくらの横に立つ長門さんは「これぞ暁の水平線だな」と感慨深げにつぶやいていた。その周りの子達が頷いているところを見ると、艦娘的に思うところがあるのだろうか。
それにしても、初日の出をこんな風に見ることができるなんて、今年はいい年になりそうだ。
長門の言葉に感慨深げにしている艦娘たちと対照的に
女の子と並んで初日の出というシチュエーションに鼻の下を伸ばす主人公
ま、所詮若い男なんざこんなもんですわ
明日の投稿は、
急に思いついたネタが書きあがれば、特別編第二弾をお届けします
ただ、今日明日と昼間は書けないので、夜でなんとかなれば……
って感じですかね。正月がらみのネタなので、できれば書きたいのですが
間に合わなければ、ストックしてある通常版を投下しますので
その時は「こいつ間に合わなかったのか」と笑ってやってください
お読みいただきありがとうございました