鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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さてさて、今回から本編に戻りまして十五皿目その1です




Menu-2:本格営業開始
十五皿目:新艦隊到着1


 祭りも無事に終わり島民も戻ってきたということで、うちの店も営業時間を延ばすことにした。午前八時に開店して午後一時まで、その後二時間休憩をもらって午後三時から閉店の午後八時までの営業だ。

 

 そのうち十一時まではモーニングメニュー、その後午後一時まではランチメニューで営業する予定だが、まあ個人営業のうちの場合メニューなんてあってないような物だしな。作れるものならなんだって作る。

 

 そして今朝のモーニング営業初日、さっそくさくらがメニュー外のおにぎりセット――日替わりおにぎり二個と小鉢、味噌汁――を頼んできた。しかもドリンクはホットコーヒーというなかなかの強者っぷりだ。

 

 その時の彼女の話では、数名の新しい艦娘が本日着任するとのことで、顔合わせと案内を兼ねて夕食を食べに来るそうだ。なんでも今まで東南アジアの方の泊地にいたらしく、和食に飢えているという事なので、そっち系のメニューでお願いということだが……さて、どうしたものか。

 

 今日は手伝いの艦娘がいないので、一人でどうにか午前中の営業を終わらせた後で、何かヒントがないかと休憩中に商店街をふらついてみる。前もって話は済ませていたらしく、多くの店舗が例の生産施設から仕入れて営業を開始していた。

 

 そのうちの一件の魚屋を覗いてみると、漁師達も今朝からさっそく漁に出ていたらしく、近くで獲れたらしい魚介が『祝初荷』の手板と共に並んでいた。

 

 さすがに初めての水揚げと言うことで、ご祝儀相場でいい値段がついているが、良いものが揃っているのでせっかくだからいくつか買って行こう。と品物を見繕っていたら、とある魚を見つけた。

 

「あれ?おやっさん、コレどうしたの?この辺じゃ獲れないよね?」

 

「おう、田所んとこの坊主か。でっかくなったなぁ、今度店に食いに行くからサービスしてくれよな……って、あぁそいつか。そいつはな、東京の市場の知り合いに頼んで、今日に合わせて送ってもらったんだよ。ま、そのうちこの島でも養殖もんなら仕入れられるようになるらしいがな」

 

 聞くと、海自の輸送船のスペースの一部を間借りする形で、一定量までなら本土から荷物を運べるらしい。

 

 それはともかく、コレも買っていくか。結構いいサイズだから一本あればいろいろ作れるだろうし、今日はこいつでフルコースといこう。お祝いに使う地域もあるし、着任祝いってことでもちょうどいいんじゃないかな

 

「じゃぁおやっさん、こいつとこれと……あとそっちのもちょうだい」

 

「まいど!こいつもおまけしとくからよ、使ってくんな」

 

 やったね、おまけまでもらってしまった。買ったものを氷と一緒に発砲スチロールに入れてもらい持って帰ることにする。とはいえ、結構な量と大物が一本いるので台車を借りることにした。後で俺も一台買っておこうかな。

 

 予想以上の大収穫にホクホクしながら店に戻り、簡単な昼飯を済ませると午後の営業が始まる。接客の合間を縫って仕込みをしていこう。

 

 島の皆は昨日の今日ではさすがにまだ落ち着いていないようで、あまりお客さんが来ないまま夜を迎えて、例の艦娘の子達のご到着と相成った。

 

「こんばんは、店長さん。例の子達を連れて来ました」

 

 加賀さんに連れられて、六人の艦娘が店に入ってきた。落ち着いたお姉さんぽい子から、今風の子、こんな子が?と思うような小さな子まで様々だ……ちなみにさくらは、仕事が残っていて来られないという内容の、悔しさあふれる長文メールが来ていたので『どんまい!』とだけ返しておいた。

 

「さ、あなたたち、店長さんにご挨拶を」

 

 俺がカウンターから出て出迎えると、加賀さんに促されてそれぞれ自己紹介をしてくれた。

 

 まずは空母の翔鶴さん。青みがかった長い銀髪がきれいな、巫女服風のおねえさん。そして重巡洋艦の鈴谷さんと熊野さん。今どきの女子高生とお嬢様っぽい喋り方のこの二人は、今は重巡洋艦だけれど、いずれ航空巡洋艦?とか言うのになって、最終的には軽空母にもなれるらしい……ってことは、偶然にも今日のメインの魚にピッタリだ。

 

 続いては球磨ちゃんと多摩ちゃん。熊とタマではない。二人は否定しているが、小動物っぽい愛らしさは否定できない。ただ「クマー」という語尾はどうかと思うが……で、最後は海防艦の佐渡ちゃん。まさかと思ったが、この子も艦娘らしい。どことなく天龍さんを思わせるようなヤンチャな言葉遣いと自分のことを『佐渡様』と呼ぶあたりが、逆に可愛らしい。

 

 と、この六人が新しく来た艦娘たちなのだそうだ。とりあえず挨拶を済ませたところで、テーブル席に案内する。

 

「さて、さくらから聞いたんだけど、みんなは今まで南の方にいたんだって?」

 

 お冷とおしぼりを渡しながら、さくらから聞いていたことを話題に出してみる。すると、翔鶴さんが答えた。

 

「ええ、東南アジアの泊地にいました……そこで色々ありまして、この度こちらの鎮守府に転属となったんです。あ、でも、佐渡ちゃんはついこの間来たばかりですので、それほどあちらにいたわけではありませんが」

 

 そんな翔鶴さんの言葉を聞きながら、佐渡ちゃん以外の子達はなんとも言えないような苦笑いを浮かべていた。なるほど、いろいろあったのね。

 

「そうなんだ……それで、今日は和食でって聞いてるんだけど、それでいいかい?」

 

 あんまり突っ込まない方が良いような表情だったので、話題を変えて聞いてみると今度は鈴谷さんと熊野さんが返してくれた。

 

「そうそう、向こうじゃなかなか食べられなかったんだー、せいぜい魚の塩焼きがいいとこだったし」

 

「ええ、あちらの料理がまずいわけではないのですが、やはり和食が恋しくなりまして。こちらに帰ってきたときに、インスタントのお味噌汁は頂きましたが、ちゃんとしたお料理もいただきたいですわ……インスタントでも鈴谷は目を潤ませていたようですが」

 

「ちょ!熊野やめてってば!マジ恥ずかしい……」

 

 悪戯っぽく熊野さんが言った言葉に鈴谷さんが顔を赤くして縮こまってしまった。でもまぁ、海外にしばらくいると、醤油やみそがやたらと恋しくなるっていうし、以前ならともかく深海棲艦が現れてからは、そう言った日本の調味料は海外では簡単に手に入らなくなったみたいだからね。そう恥ずかしがる事ではないと思うよ。

 

 すると横からも声が上がった。

 

「さかな!多摩はおさかなが良いニャ!」

 

「球磨も魚が良いクマー。向こうの魚は、なんか、こう、違うクマ!」

 

 あー、何となくわかるよ。あくまでイメージだけど、やたら派手な魚が多そうだよね。よくよく見れば日本の魚も結構派手なのいるけど、見慣れてないとちょっと尻込みしちゃうっていうか……

 

「了解。今日は良い魚が手に入ったから、ちょうど良かったよ。佐渡ちゃんもそれでいいかい?」

 

「おう!いいぜぇ。うまいの頼むな!」

 

 足をプラプラさせて話を聞いていた佐渡ちゃんにも確認して、さっそく一品目を用意するために厨房へと下がる。さてと、気合入れて美味しいもの作らないとね。

 

 まずは魚屋のおっちゃんにおまけでもらった『あさり』を使って定番の酒蒸しを作ろう。

 

 油をひいたフライパンでみじん切りにした生姜・ニンニクを熱して香りを出したら、砂抜きをしてよく洗ったあさりを入れて、軽く炒める。その後酒を振ってふたをしてしばらく蒸して、あさりが口を開けたら醤油を少し回しかけて、刻んだ青ネギを入れてサッと混ぜて出来上がり。

 

 この島で獲れたものなんだけど、しばらく獲る人間がいなかったからか、大きく育っていてプリプリの身が旨そうだ。酒のつまみにも最高の一品だけど、この香りとあさりの旨味が胃袋を刺激して、さらに食欲を煽ってくる品でもある。そして、意外と子供も好きなんだよね、コレ。俺もそうだったし。

 

 さすがにいきなりこれだけだとパンチが強すぎるので、さっぱり系として大根・キュウリ・大葉を千切りにしてポン酢で和えた、簡単大根サラダを一緒に持っていく。お好みで茗荷を入れても美味しいけれど、手に入らなかった。残念。

 

「はい、お待たせ。まずはこれでもつまんでてくれるかい?」

 

「やっば!なにこれめっちゃいい匂いなんですけど!」

 

「いひっ!うまそうだなー、これはよぉー」

 

 出来上がったものを持って行くと、歓声を上げるみんなの横で加賀さんが何やら物欲しそうにこちらを見つめていた……

 

 え?お酒はまだ仕入れてないんですよ。この酒蒸しに使ってたやつ?確かに飲んでも美味しい日本酒を使ってますが……わかりました、一本だけですよ。

 

 加賀さんの悩ましげな表情に根負けして、徳利を一本だけつけることにした。「やりました」じゃないですよ、まったく。

 

 お酒を持ってくるなり、翔鶴さんと嬉しそうにお酌しあっている加賀さんは置いといて、次の料理の準備に取り掛かる。と言っても、すでにできているので器に盛りつけるだけなのだけどね。

 




新しい艦娘たちは、クリスマス特別編で出てきた子達でした

そして、主人公が魚屋で見つけた魚とはいったい……
まあ、無駄に引っ張ってるなぁとは思いながら
せっかくなので次回持越しです
ヒントは結構でてるので、わかる人は簡単にわかるかもしれないですね


お読みいただきありがとうございました
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