鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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今まで箸休めはおまけ的な扱いで
本編と一緒に投稿していましたが、ストックがギリなこともあって
これからは単品で投稿していきたいと思います
パターンが崩れるのは心苦しいですが、ご了承ください。




箸休め8:艦娘会議+1再び

 薄暗い作戦立案室の中で、提督席に座ったさくらが重々しい口調で話し始めた。

 

「それじゃ川内。報告を……」

 

 そのさくらの言葉を受けて川内が話始めようとした時だった……

 

「提督、それは以前もやったのでもういいです。川内も乗らないの」

 

 霧島がリモコンで部屋の電気をつけながらそう言った。そのやり取りまでは既定路線だったようで、周りに座っている他の艦娘たちも苦笑いをしていた。

 

「はーい、ごめんなさーい。それじゃ改めて川内、昨日の夜間哨戒の報告よろしく」

 

「はい、昨日ヒトキュウマルマル出撃。その後、予定されていたチェックポイントをたどりつつ島の周囲を索敵するも、電探には目立った反応はなく、本日マルゴーサンマル帰投。長門管理艦に完了報告を行い任務終了しました。航路については資料に纏めてありますので、そちらをご覧ください」

 

「ありがとう。まぁ、今朝あった時にざっくり報告は受けたけど、何にもなしか……長門どう見る?」

 

「そうだな、赤城よ、あの時見たのは確かに艦隊だったのだな?いつものようなはぐれなどではなく?」

 

「えぇ、報告書にも書いたように、軽巡1駆逐艦3の小規模ではありましたが、確かに艦隊行動をとっていました。もっとも、こちらの航空機を発見すると即座に反転、海域を離れていきましたけど……」

 

「しかし、その後は発見できずか……となると、やはり侵攻目的ではなく、たまたま近くに出てきていたのを発見したという事だろうな。提督よ、特に問題視することも無いと思うぞ」

 

「やっぱりそう思う?とりあえずしばらく哨戒シフトを厚くしましょうか。報告書を見る限り進路もこちらに向かってくるというよりは、島の索敵範囲に入らないようにうろうろって感じだし。確かに赤城達がたまたま範囲外に飛ばさなければ見つからなかった距離だしね」

 

 彼女たちが話しているのは、先日赤城と翔鶴が鎮守府近海にて艦載機運用の調整を行っているときに、敵艦隊が発見されたという件についてだ。

実は秀人たちが海上にいる彼女たちを見かけた後の出来事だったりするのだが、赤城の言う通りすぐに海域からいなくなったことと、その後の索敵にも引っかからなかったことから、緊急招集などはかけられなかった。そしてそのことを受けての昨日の夜間哨戒だったという訳だ。

 

「じゃぁ、それについては後で詰めるとして、次は新艦娘の着任についてね。加賀、艦娘の建造状況は?」

 

「はい、軽巡と思われる二隻は間もなく建造完了。軽空母と思われる一隻は明日の午前中に完了予定です。そしてなけなしの資材を投入した大型艦建造ですが……」

 

 もったいぶる加賀の言葉にどことなく皮肉めいたものを感じはしたが、それをグッとこらえてさくらは次の言葉を待った。

 

「……おそらく大和型ではないかと」

 

「よっしゃ!来た!」

 

 加賀の言葉にかぶせ気味にしてさくらが叫び声を上げた。それを聞いた加賀はため息をつきながら、頭を抱えた。

 

「いいですか提督。今回はどうしてもということで大型艦建造を行いましたが、本来でしたらそんな余裕はないんですから。おかげで資材もカツカツです……まったく、本部から海域攻略を進めるように言われているというのに。ある程度資材がたまるまでは、しばらく遠征部隊に頑張ってもらわなければなりませんね」

 

 さくらの喜びもつかの間、加賀のお小言で小さくなってしまった。

 

「ったく提督はしょうがねぇな。ま、俺たちがまたガッツリ資材集めてやっからよ!そんなしょぼくれんなって。加賀もその辺にしてやれよ、戦力が増えるのはありがたいことだろ?」

 

 それはそうですが……と加賀の勢いもなくなったところで、さくらが息を吹き返す。かと思いきや、龍田が「当分出撃はおあずけだけどねー」と追い打ちをかける。収拾がつかなくなってきたところで、金剛が手を叩いて室内を纏めた。

 

「ハーイ、皆サン、落ち着いてくだサーイ!ひとまず、霧島・赤城・川内で哨戒シフトの見直しを。長門と加賀は新造艦の受け入れ態勢をお願いしマース。特に長門は大和型の子の事をおねがいしマスネ」

 

「うむ、了解した。さすが金剛だな、頼りになる」

 

 横道にそれ始めていた会議を、一瞬で立て直すあたり伊達に秘書艦はやっていないという事だろうか。室内の他の艦娘たちも、長門同様感心していた……その中にさくらが入っているのは、この鎮守府ならではかもしれないが。

 

「では、気を取り直して、最後の議題デース。テートク、なにか駆逐艦の子達から相談があったみたいデスネ?」

 

「ええ、この間暁・電・時雨の三人が秀人と一緒に出掛けたときに、麦畑を見に行ったらしいの。そこで麦を育てている研究員の人に色々話を聞いたみたいで、自分たちも何か育てたいって言って来てね。他の駆逐艦たちも乗り気みたいだし、私は良いことだと思うんだけどみんなはどうかしら?」

 

「いいのではないか?もちろん本来の我々の役目である、深海棲艦から人々を守るということをないがしろにするようでは問題があるが、家庭菜園レベルであれば元軍艦である我々でも何かを育てることができるということは、大きな経験になるだろう。かく言う私も畑には興味があったのだ。このビッグセブンの力を戦闘以外にも活かせないものかとな。求めがあれば手伝うことはやぶさかではないぞ」

 

 力こぶを作りながらそう話す長門を、ほかの艦娘たちは若干冷ややかな目で見ていたが、駆逐艦たちの畑づくりということに関しては皆賛成のようだった。

 

 むしろ自分たちもやりたいようで、あれを作りたい、これを作りたいと盛り上がり始めていた。いつも冷静な加賀さえも「やはりここはじゃがいもを育てて肉じゃがを……」なんてことを言っている。

 

 そんな感じで、再び会議が脱線しそうになるのを引き戻したのはやはり金剛だった。

 

「ハイハイ、皆サンの気持ちは解りました。皆サン賛成でいいデスネ?基本的には駆逐艦の子達に頑張ってもらいますが、何かあったら皆サンでHelpお願いしマース。よろしいデスカ?」

 

 了解!と他の艦娘たちの声がそろった所で会議はお開きになって、それぞれの役割をこなすために部屋を出ていった。その場に残った金剛とさくらも次にどう動くか相談を始める。

 

「それじゃ金剛、畑の件は研究所の方にも連絡しておくから、後で暁たちを連れて話をしてきてくれる?どうせならそれなりのものを作ってもらいたいからね、畑を作る場所や、必要な道具、作る作物の種なんかももらってこれるように言っておくわ」

 

「了解テートク。テートクはどうするノ?」

 

「私はもうちょっと資料とにらめっこね。後はもう一度赤城と翔鶴から話を聞いてみるわ」

 

「フーン。何か気になるデース?」

 

「んー、危険が無いのは間違いないんだろうけど、気にはなるわね。もし何か気づいたら金剛や加賀、長門には真っ先に意見を聞くから。その時はよろしくね」

 

 その後、金剛が部屋を出ると、さくらは海図を手に取った。その海図には、赤城・翔鶴の艦載機が観測していた深海棲艦の動きが記録されていたのだが、そこにチェックを入れつつ見直していく……なんなのかしらね?この動き……そんなことをつぶやきながら。

 




文中での建造のくだりですが、建造や解体周りの設定に関しては
明言はしませんが、それっぽい辻褄合わせの設定はあります
今後そんな感じの表現がもし出たら察していただければ……

そして、文中の建造状況は
実際にデイリーのついでに空母レシピ1回軽巡レシピ2回で回して
出てきた子を使う予定です。
(彼女たちの後は重巡レシピと戦艦レシピでも回してみましょうか)
そして調子に乗って回した大型建造。今まで居なかったあの方を狙ったのですが……

ありがとうございます。一発ツモでした(さくらのセリフはまんま作者のセリフ)
ただ……本編で登場するのは何話か後になりますが



そしてひとつお知らせです
とりあえずMenu-2はこれで終わりになります
鎮守府祭りにクリスマス~お正月の各イベントと
艦娘たちとのお出かけ等
初期プロット上で予定していたことも終わりましたので。

次回からはMenu-3をお届けします
ゆるゆると書いていきますので、お楽しみに

それでは、少々長くなりましたが
お読みいただきありがとうございました

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